久留米昆メンバーによる「綾町・照葉樹林探訪」 その5 丸目岳での採集

7月21日から26日までの綾町滞在中に、畑山、國分、今坂の3名は、木野田さんの案内で、綾町から1時間ほどで行ける丸目岳で採集する機会を作っていただいたので、その様子を紹介しておきます。

木野田さんのご教示によると、丸目岳は宮崎市南部、清武町にある標高603mの荒平山の、すぐ南にある標高605mのピークのことで、地図等には名称の記載はないそうです。

(丸目岳の位置)

丸目岳の位置

舗装された林道の終点は公園化されていて、広い駐車場があります。

(荒平山の看板)

荒平山の看板

ここから、廃道になった林道を200m程度上がった鞍部の西側斜面には、周囲をスギ植林などで囲まれながら、マテバシイなどの広葉樹林が残っていました。

この場所は、綾町でも活躍されている笹岡さんがやはり調査されていて、オオスミヒゲナガカミキリを採集されており、ほぼ、本種の北限地となっているそうです。

木野田さんからその情報を聞いた畑山さんは、綾町に久留米昆メンバーが集合する22日の正午前に、木野田さんにお願いして、朝からライトFITを設置に出向かれたわけです。

翌、23日には、昼過ぎの夕立で気勢を削がれていた中、どこで灯火採集をやろうか悩んでいたのですが、前日の綾南川での灯火採集がそれほど虫の集まりが良くなかったこともあり、目先を変えて、丸目岳でやろう、ということになったわけです。

丸目岳での採集日程としては、
7月22日午前中、木野田・畑山がライトFIT設置。
7月23日夕方から、木野田・畑山・國分・今坂が灯火採集、および、周辺で任意採集、畑山はライトFIT回収と再設置も。
7月26日午前中、畑山はライトFIT回収と再設置、國分と今坂は任意採集です。

23日夕刻、木野田さんの車に3人便乗させていただいて、出かけました。
木野田さんによると、丸目岳の駐車場から上の鞍部までの廃道が、地道で足場が良くない上にひどく狭く、私の車幅ではとても通れないと言うことで、1台で出かけたわけです。

綾町からは、高速道路も含めて、約1時間です。
前記の駐車場まではスイスイ走れるのですが、そこから先が大変で、木野田さんのコンパクトな車であっても、狭いカーブを曲がるたびに、車の側面やタイヤは木々に擦れ、また、スリップし、こんな悪路を、よくもまあ、無理を言って、案内して貰ったものです。
木野田さんには、心よりお詫びと共にお礼申し上げます。

さて、鞍部に着いたときは、ほぼ日没直前とあって、車から急いで灯火採集のセットを降ろし、白布を張る場所を決定し、そして設置作業にかかります。

西向きの斜面は、結構、大木のマテバシイがまばらに生えており、立ち枯れや、倒木も、そこここに見られます。
畑山さんは、斜面のあちこちに、下の方までライトFITを設置されており、一旦、回収して、再設置されていました。

白布を張ると間もなく、夕陽は沈み、あたりは暗くなってきます。

(灯火採集)

灯火採集

到着少し前まで夕立が降っていたようで、木々の葉は濡れていました。
この地点は標高570mということで、さすがに綾町の低地とは違い、日暮れと共にひんやりしてきました。
それでも、湿気が多いこともあり、少し動き回ると汗が噴き出してきます。

(灯火採集の白布)

灯火採集の白布

灯火採集の白布には、前日の綾南川と違い、チラホラと虫が来るだけです。

じっとしていても仕方が無いので、ハンマーとスプレーをやってみようと、ヘッドランプを付けて立ち枯れやキノコを探して、斜面を歩いてみました。

細い立ち枯れや、倒木をハンマーリングしてみますが、あまり虫は落ちてきません。
30分ほどキノコの着いている木でスプレーをし、枯れ木をハンマーをしながら斜面を彷徨してみましたが、さすがに湿気が多いのか、汗びっしょりになりました。

(丸目岳の任意採集品)

丸目岳の任意採集品

採れたのは、メダカチビカワゴミムシ*、ヨツボシミズギワゴミムシ*、カワツブアトキリゴミムシ、ハスモンヒメキノコハネカクシ*、シリアカデオキノコムシ、キバネクチボソコメツキ*、チャイロコメツキ、クチブトコメツキ*、ウスオビカクケシキスイ、ムーアシロホシテントウ、ナミテントウ、ヒゲブトゴミムシダマシ、マルツヤキノコゴミムシダマシ*、クロホシテントウゴミムシダマシ、アトモンマルケシカミキリ*、ホシモンマダラヒゲナガゾウムシ*、オオクチブトゾウムシくらい。

(ホシモンマダラヒゲナガゾウムシ)

ホシモンマダラヒゲナガゾウムシ

大部分普通種で、あまり芳しくありません。
集計して、ふと、気がついたのは、綾町では408種を採集していましたが、この丸目岳では、4割くらいは、綾町では見なかった種(*マークを付けています)が採れています。

綾町での採集地は大部分が2-300mの低標高地ですが、丸目岳はより高く、570mくらいあり、尾根部の斜面でもあり、環境が相当異なるということもあるかもしれません。

白布の所に戻ってきましたが、虫はあまり来ていません。
大型のウスバカミキリ*や、ノコギリカミキリが目立つくらいで、コガネムシ類も少なく、そして、蛾もあまり来て無くて、國分さんも暇そうです。

ヒメオサムシが幕の近くを歩いていて、他に、ノコギリクワガタ、ナガチャコガネ、コクロコガネ*、セマダラコガネ、オオナガコメツキ、カタボシエグリオオキノコ*が来た程度でした。

(丸目岳の灯火採集品)

丸目岳の灯火採集品

木野田さんと、畑山さんは、それぞれ、ライトを持って、立ち枯れを見回っているようで、なかなか、戻ってきません。
國分さんと二人、暇をもてあまして、少し眠くなってきました。

突然、斜面の下の方から、「オオスミヒゲナガカミキリやっといましたよ」と、木野田さんの声が掛かりました。
1♀見つけたそうです。

なかなか戻ってこなかった畑山さんも、オオスミの姿は見たそうですが、樹幹の高いところで、だいぶ粘ったものの降りてこなかったそうで、残念そうでした。
木野田さんは、「何とか、1♀だけでも採れてよかった」と、さっそく、畑山さんにプレゼントされていました。

(オオスミヒゲナガカミキリ*♀)

オオスミヒゲナガカミキリ♀

畑山さんは、オオスミを探す傍ら、スプレーもやっていたそうで、後日、その成果を見せていただきました。

彼は、22日にもライトFIT設置と共に、ビーティングやスプレーをやられています。
また、この後述べる26日には、ライトFIT回収と再設置をやられています。
彼の採集品は、22-26日分を一纏めにされているので、いつ採られたかは解りませんが、ともかく、ビーティングとスプレーで採られた分は以下の54種です。

メダカチビカワゴミムシ*、ヨツボシミズギワゴミムシ*、アオグロヒラタゴミムシ、カワツブアトキリゴミムシ、コキノコゴミムシ、キノコゴミムシ、キノコアカマルエンマムシ*、オオヒメキノコハネカクシ*、カメノコデオキノコムシ*、アカバデオキノコムシ*、ヒメクロデオキノコムシ*、シリアカデオキノコムシ、アイヌコブスジコガネ*、ツキワマルケシキスイ*、キノコヒラタケシキスイ、マルガタカクケシキスイ、クロオビセマルヒラタムシ、アカグロムクゲキスイ、ミヤマオビオオキノコ、カタボシエグリオオキノコ*、ベニモンムネビロオオキノコ*、ナミテントウ、クロミジンムシダマシ、ツヤナガヒラタホソカタムシ、ダルマチビホソカタムシ、ヒゲブトコキノコムシ、アヤモンヒメナガクチキ、

(キノコゴミムシとコキノコゴミムシ)

キノコゴミムシとコキノコゴミムシ

カツオガタナガクチキ、クロチビアリモドキ、オオクチキムシ、コブスジツノゴミムシダマシ、チビコブツノゴミムシダマシ、ナガニジゴミムシダマシ、モンキゴミムシダマシ、クロホシテントウゴミムシダマシ、テントウゴミムシダマシ、オニツノゴミムシダマシ*、ルリスジキマワリモドキ、ウスバカミキリ*、コバネカミキリ、ウスイロトラカミキリ*、ビロウドカミキリ、ゴマダラカミキリ、キバラヒメハムシ、イチモンジハムシ、キンヘリノミヒゲナガゾウムシ、ウスモンツツヒゲナガゾウムシ、アンナヒゲナガゾウムシ*、コモンヒメヒゲナガゾウムシ*、クロホシメナガヒゲナガゾウムシ*、カシワクチブトゾウムシ、サカグチクチブトゾウムシ、ツバキシギゾウムシ*、アカナガクチカクシゾウムシ、マエバラナガクチカクシゾウムシ、コササラクチカクシゾウムシ*、ダルマクチカクシゾウムシ、タイワンモンクチカクシゾウムシ*、オオゾウムシです。

(左から、チビコブツノゴミムシダマシ♂♀、オニツノゴミムシダマシ♂)

左から、チビコブツノゴミムシダマシ♂♀、オニツノゴミムシダマシ♂

私の採集品とほぼ同じく、54種中20種(37%)は綾町で採集していないので、綾町と丸目岳では、4割程度ファウナが違うと言えるかもしれません。

このうち、アンナヒゲナガゾウムシは、屋久島以南の琉球と伊豆諸島で記録されていて、九州では日南市南郷町と宮崎市青島の記録が知られるだけです。
目が逆ハの字型につくのが特徴です。

本種は琵琶湖博物館の今田さんに写真で同定していただきました。お礼申し上げます。

(アンナヒゲナガゾウムシ、頭部前面)

アンナヒゲナガゾウムシ、頭部前面

また、ダルマクチカクシゾウムシ、コササラクチカクシゾウムシ、タイワンモンクチカクシゾウムシの3種も、アンナヒゲナガゾウムシとほぼ同じ分布パターンで、ダルマとタイワンモンは綾町でも見つかっています。
コササラは当地と都城市青井岳、そして、佐多岬から記録されています。

(左から、ダルマクチカクシゾウムシ、コササラクチカクシゾウムシ、タイワンモンクチカクシゾウムシ)

左から、ダルマクチカクシゾウムシ、コササラクチカクシゾウムシ、タイワンモンクチカクシゾウムシ

この日は少し疲れたこともあり、灯火にも虫が来ないので、早めに切り上げて帰ることにしました。

帰りも木野田さんの運転で、他の3名はうつらうつらしながらの帰宅でした。
遅くまで、案内、そして、運転していただいた木野田さんに、心よりお礼申し上げます。

さて、その次に丸目岳に出かけたのは、綾町最終日の7月26日です。
この日は私の運転で、丸目岳のライトFITを回収し、その後、畑山さんを宮崎空港まで送る予定でした。

前回、その4で紹介したように、朝から、綾神社のライトFITを回収した後、丸目岳へ向かいます。
先日、木野田さんの車で出かけたばかりですが、乗っているのと自身で運転するのとは大違いで、道はほとんど覚えていません。
それで、事前に木野田さんに地図を用意していただき、同乗の國分さん・畑山さんに、シッカリ、ナビをしていただきました。

まあ、その甲斐もあって、殆ど間違えずに丸目岳の駐車場までたどり着くことが出来ました。
しかし、中腹以上はガスが掛かり、小雨もパラついています。

(丸目岳の駐車場で、少し上空は霧が舞っている)

丸目岳の駐車場で、少し上空は霧が舞っている

私の車ではここから先へは行けないので、トラップ地点までは徒歩で登ることになります。
私は、この後、宮崎空港まで畑山さんを送って、その後まだ、3時間余り掛けて久留米まで運転することになるので、自重して車の周辺でブラブラすることにしました。

可哀想ですが、畑山さんには、一人でライトFITの回収に行ってもらいました。

彼が戻ってくるまで1時間余り、じっとしてても勿体ないので、ビーティングネットと網を持って、駐車場周辺をうろつきます。

林縁の葉上に小型の蛾が静止していましたが、写真を撮るなり、飛んで行ってしまいました。

(葉上の蛾)

葉上の蛾

(追記、
九大の広渡先生を通じて、この画像をメイガ類に詳しい方に見ていただいたところ、「おそらくキオビトビノメイガと思われる。この種は昼行性でライトにはあまり来ない。」とのコメントをいただきました。ご教示いただいた専門家の方と、仲介いただいた広渡先生に、お礼申し上げます。

なお、キオビトビノメイガで、インターネットで検索して出て来た画像では、前翅・後翅ともに、地色は同じ焦げ茶色ですが、写真の個体の前翅はかなり赤み強く、後翅とはハッキリ色が違っています。この写真だけで採集はしていないので、宮崎県南部で採集される方は注意してみてください。)

周辺の草木を叩いても、ほとんど虫が落ちてきません。
駐車場の先は草地が広がっていて、スウィーピングしてみると、こちらは多少虫が入ります。

採れたのは、ムラサキオオゴミムシ*、キバネクビボソハネカクシ、セマダラコガネ、マメコガネ*、ミツモンセマルヒラタムシ、カワムラヒメテントウ、ミカドテントウ、フタモンクロテントウ*、クロテントウ*、ルリスジキマワリモドキ、アオバネサルハムシ*、マダラアラゲサルハムシ、ツブノミハムシ*、ツマキタマノミハムシ*、アオヒゲナガゾウムシ*、ニセチビヒョウタンゾウムシ*、サカグチクチブトゾウムシで、同様に、17種中9種(53%)が綾町では採っていません。
大部分、草地ものなので、ファウナの違いより、綾町ではそれだけ草地をやっていないということになりそうです。

(丸目岳の採集品)

丸目岳の採集品

このうち、ニセチビヒョウタンゾウムシは草地の地表を徘徊していると思われる種で、近縁種のチビヒョウタンゾウムシが林床の落ち葉の中にいるのと、生態がハッキリ分かれます。
口吻の触角から前の部分が丸く広がる(矢印)ことで、まっすぐなチビヒョウタンと区別できます。
本種は宮崎県から知られていないようです。

(左から、ニセチビヒョウタンゾウムシ、顔面、チビヒョウタンゾウムシ顔面、同)

左から、ニセチビヒョウタンゾウムシ、顔面、チビヒョウタンゾウムシ顔面、同

しばらくして、畑山さんは、ライトFITの回収を済ませて、戻ってこられました。
「交換のFIT液を持って行くのを忘れた」とかで、弁当用に持って行ったお茶で代用された由。

全て撤収されるのかと思いきや、「もったいないから、このまま継続する」とのこと。
木野田さんに、回収をお願いされたそうです。

お願いされた木野田さんには、その後、大変なことが降りかかったそうで、木野田さんから、その後、顛末を伺いました。

「丸目岳には、その後も継続調査し何度も回収にでかけました。

8月29日にライトFITをセットし、30日には雨の中、回収に行ったのですが、あの悪路を車で無理に登ったところ、スリップしたので、慌ててバックしたら、右側が脱輪し、立木にぶつけて、車右後部を大きく損傷。

自力では動けなくなり、笹岡さんなどに助けを求めたところ、来ていただけたので、宮崎市(笹岡さんは宮崎市在)の山中で助かったー!

翌日、車を道に引き出し、自走してそのまま修理工場へ。修理に約一ヶ月かかりました」とのことです。

やはり、あの道は車で走るべき道ではありません。
その後は、歩いて、回収に行かれたようです。

さて、私たちは、その後、下山してうどん屋で昼食をとり、宮崎空港へ向かいました。
しかし、まだ時間が早すぎると言うので、日帰り温泉を見つけて入浴しました。
おかげで汗を流してスッキリすることができ、ようやく、空港へ。

土産物を買って、お茶をしてから、1週間ほどの畑山さんのお供からやっと解放(失礼!)。
國分さんと二人、高速を走って帰路につきました。

その後、畑山さんから送ってきた丸目岳産ライトFITの採集品は、むしろ、綾町の彼自身のライトFIT採集品より多かったようです。
彼が丸目岳での採集に拘った理由が良く解りました。採集品の写真をざっと集めて紹介します。

(7月22日から26日までのライトFIT採集品)

7月22日から26日までのライトFIT採集品

写真に写っているものだけで84種に上り、このうち、26種(31%)は綾町で採集していません。

ムネミゾマルゴミムシ*、オオアオモリヒラタゴミムシ、サドモリヒラタゴミムシ*、ムナビロアトボシアオゴミムシ、クロツブゴミムシ*、コキノコゴミムシ、ヒメキノコゴミムシ、ハギキノコゴミムシ、コヨツボシアトキリゴミムシ、ベーツホソアトキリゴミムシ、キノコゴミムシ、ヒラタアトキリゴミムシ、ヒメゲンゴロウ*、シマゲンゴロウ*、ケシガムシ*、セダカマルハナノミ*、

(左から、サドモリヒラタゴミムシ、シマゲンゴロウ)

左から、サドモリヒラタゴミムシ、シマゲンゴロウ

ナガチャコガネ、クリイロコガネ、ビロウドコガネ、カミヤビロウドコガネ、マルガタビロウドコガネ、ヨツバコガネ、サクラコガネ、コヒゲナガハナノミ、サビキコリ、ムナビロサビキコリ、オオサビコメツキ*、フタモンウバタマコメツキ、オオクシヒゲコメツキ、フトツヤハダコメツキ、メダカツヤハダコメツキ*、オオツヤハダコメツキ*、クリイロアシブトコメツキ、オオナガコメツキ、チャイロコメツキ、ヒメホソキコメツキ、ヒラタクシコメツキ、クシコメツキ、ルイスクシコメツキ*、ムナグロナガカッコウムシ、ヨツボシケシキスイ*、セスジムクゲキスイ*、

(左から、ヒメキノコゴミムシ3個体、コキノコゴミムシ2個体)

左から、ヒメキノコゴミムシ3個体、コキノコゴミムシ2個体

カタモンオオキノコ*、ミヤマオビオオキノコ*、カタボシエグリオオキノコ*、ムーアシロホシテントウ、ナミテントウ、ツヤナガヒラタホソカタムシ、デバヒラタムシ*、ナミモンコキノコムシ、キタツツキノコムシ、カツオガタナガクチキ、クロチビアリモドキ、カタモンヒメクチキムシ*、チビコブツノゴミムシダマシ、ナガニジゴミムシダマシ、フトナガニジゴミムシダマシ、ツノボソキノコゴミムシダマシ、クロホソゴミムシダマシ*、モトヨツコブゴミムシダマシ、ミツノゴミムシダマシ、コマルキマワリ、

ウスバカミキリ*、ニセノコギリカミキリ、カタシロゴマフカミキリ*、アトモンマルケシカミキリ*、クロオビトゲムネミカミキリ、カシワツツハムシ、ミドリサルハムシ*、キアシツブノミハムシ、キンヘリノミヒゲナガゾウムシ、ウスモンツツヒゲナガゾウムシ、クロオビホソミツギリゾウムシ、ムツモンミツギリゾウムシ*、カシワクチブトゾウムシ、サカグチクチブトゾウムシ、イヌビワシギゾウムシ*、マダラメカクシゾウムシ*、コホシメカクシゾウムシ、アカナガクチカクシゾウムシ、コササラクチカクシゾウムシ*、ヒサゴクチカクシゾウムシ、マツノカバイロキクイムシ、ミカドキクイムシ*です。

(クロオビホソミツギリゾウムシ)

クロオビホソミツギリゾウムシ

山頂近くで、シマゲンゴロウやヒメゲンゴロウが採れるのも変ですね。
水物は長距離も良く飛ぶことは確かですが。

クロオビホソミツギリゾウムシは、綾町産で初めて見た種ですが、鰐塚山、宮崎市田野町、高原町、都城市など、宮崎県では比較的記録が多いようです。
それでも、他には大隅半島稲生岳、台湾から知られている程度で、国内産ミツギリゾウムシとしては、かなりの珍品と言えます。

畑山さんは、送っていただいた甲虫類以外の、専門であるハナノミやコメツキダマシ等は当然自身で保管されていて、後日、同定結果と写真を送っていただきました。

これらの大部分はライトFITで得られたものですが、中には、ナガヒラタムシ、ヒメコメツキダマシの一種、スジヒメミゾコメツキダマシ*、ハチジョウチャイロコメツキダマシ、ハラアカトゲバコメツキダマシ*、マメフチトリコメツキダマシ、ヤスマツナカミゾコメツキダマシ*、(仮称)ヒメナカミゾコメツキダマシ、ナミアカヒメハナノミ*、ホルンヒメハナノミ*、タイワンオビハナノミの近似種*、オオスミヒメハナノミ*、アワヒメハナノミ*などが含まれています。
この13種中8種(62%)が綾町では採れていません。

結局、丸目岳で採集した168種のうち、69種(41%)は綾町で採集していないので、畑山さんの戦略はかなり成功だったと言えると思います。

このうち、ハラアカトゲバコメツキダマシは、23日夜、径4-50cmの倒れかけたマテバシイの衰弱木の表面を走り回っていた1♂1♀と、22-26日のライトFITで1♂を採集されています。
本種は今回の綾調査の目的種の1つだったようです。

赤い腹と、翅端のトゲ(矢印)が特徴で、属名の元にもなっています。
綾町では採れなかったものの、丸目岳で採れ、「狙った種が採れた」と喜ばれていました。
本種は本州、九州、屋久島に分布しますが、九州では宮崎県の記録のみ、宮崎市田野町と綾町大森岳林道で記録されていています。

(ハラアカトゲバコメツキダマシ背面、腹面、翅端のトゲ)

ハラアカトゲバコメツキダマシ背面、腹面、翅端のトゲ

さらに、アワヒメハナノミ、(仮称)ヒメナカミゾコメツキダマシ、タイワンオビハナノミの近似種の3種は宮崎県の記録のない種です。

(アワヒメハナノミの後肢段刻、アワヒメハナノミ)

アワヒメハナノミの後肢段刻、アワヒメハナノミ

ヒメナカミゾコメツキダマシは、同定結果をいただくのが遅かったので、その3では紹介していませんが、綾南川の畑山さんのライトFITでも採れています。
国内の他の地域からは見つかっていません。

本種は、キイロナカミゾコメツキダマシに良く似た種ですが、触角第3節も2節同様短く、前者とは別属であるEntomophthalmus属に含まれます。この属の種は国内から何種か見つかっているようですが、まだ、1種も記載されていないそうです。

(ヒメナカミゾコメツキダマシ♂と触角、矢印は第2・3節を示す)

ヒメナカミゾコメツキダマシ♂と触角、矢印は第2・3節を示す

タイワンオビハナノミの近似種は、今坂ほか(2021)で甑島から報告した種と同じで、同様の種が、佐多岬でも採れています。
畑山さんによると「タイワンオビハナノミ Glipa formosana Pic (奄美・沖縄・台湾)の近似の別種か、あるいは亜種と考えられる。
本種♀の尾節板は沖縄産よりかなり太短く、背面の斑紋や色彩も若干異なっている」ということです。

今坂正一・細谷忠嗣・國分謙一・伊藤玲央・有馬浩一, 2021. 甑島採集紀行 その3 (2020年7月). KORASANA, (96): 21-98.

(タイワンオビハナノミの近似種♂、右は前符節、♂交尾器等)

タイワンオビハナノミの近似種♂、右は前符節、♂交尾器等

カミコシキオオチャイロコメツキダマシのような甑島と綾町、あるいは、本種のような、佐多岬-宮崎県南部-甑島という分布パターンを示す種群がいることが、今回の調査で明らかになりました。
これらは、九州南部に、九州北部とはまた違った独自のファウナがあることを示しています。

福岡県、甑島を含めて、綾町と丸目岳の位置関係を見やすいように、国土地理院の地図を引用してみました。

(綾町と丸目岳の位置関係)

綾町と丸目岳の位置関係

甑島の緯度は、ちょうど、この2箇所の間に入るようです。これらの地域の種ごとの分布の共通性に様々な推論が浮かんできます。

さらに、綾町と丸目岳の位置関係を3D図で見てみると、間にかなり広い低地が存在します。
山地性の種は、この低地を超えられない可能性があります。

(綾町と丸目岳の位置関係3D図)

綾町と丸目岳の位置関係3D図

事実、丸目岳で見つかった種のうち、タイワンオビハナノミの近似種、オオスミヒゲナガカミキリ、アンナヒゲナガゾウムシは丸目岳を北限とするようで、今のところ、綾町では見つかっていません。

今回、採集した綾町(408種)と丸目岳(168種)の甲虫を合わせると、477種になります。

このうち、以下の38種は、まず確実に、今回の久留米昆メンバーのベースである福岡県には分布しないと考えられます。

ヒロモリヒラタゴミムシ、ツマキクビボソハネカクシ、シラホシダエンマルトゲムシ、ツヤドロムシ、チャイロツツクビコメツキダマシ、スジヒメミゾコメツキダマシ、ヒメチャイロコメツキダマシの近似種、ハチジョウチャイロコメツキダマシ、(仮称)アマミコチャイロコメツキダマシ、(仮称)ニセコチャイロコメツキダマシ、(仮称)アヤオオチャイロコメツキダマシ、(仮称)カミコシキオオチャイロコメツキダマシ、クシヒゲチャイロコメツキダマシ、ハラアカトゲバコメツキダマシ、コガタフチトリコメツキダマシの近似種、ヒメナカミゾコメツキダマシ、

ヒュウガハナボタル、ムナビロカッコウムシ、キイロチビヒラタムシ、(仮称)アヤコオビオオキノコムシ、オオヒラタホソカタムシ、タイワンオビハナノミの近似種、チビコブツノゴミムシダマシ、オニユミアシゴミムシダマシ、コゲチャヒラタカミキリ、オオスミヒゲナガカミキリ、(仮称)アヤキボシツツハムシ、シイサルハムシ、アンナヒゲナガゾウムシ、ウンモンヒゲナガゾウムシ、アカマダラヒゲナガゾウムシ屋久島亜種、クロオビホソミツギリゾウムシ、サカグチクチブトゾウムシ、(仮称)アカムネアシブトゾウムシ、トサヒシガタクモゾウムシ、ダルマクチカクシゾウムシ、チビササラクチカクシゾウムシ、タイワンモンクチカクシゾウムシ。

その割合は8%程度で、1割にも満たない数ですが、1週間程度の採集で、これほど、違った種が得られたわけです。
と言うことは、綾町を含む宮崎県南部地域は、福岡県とはファウナ全体としては、2-3割以上の差があるものと推察されます。

種ごとに福岡県に分布しない理由は異なると思いますが、1種1種、その理由を解き明かすこともかなり面白そうです。

以上、5回に渡って、久留米昆メンバーによる綾町の照葉樹林と、おまけの、丸目岳についての、甲虫類の採集結果を紹介しました。

8名の会員による1週間足らずの調査でしたが、地元で採ったことのない種が続々見つかることに併せて、採集できた種数の割に新知見が続々見つかり、すっかり、宮崎の虫の虜になってしまいました。

この分では、また、来年も出かけることになりそうです。(完)