佐賀昆虫同好会149例会(採集調査会)ルポ

2007年6月9日夕刻から10日にかけて、佐賀市三瀬村藤村の林道金山脊振線において、佐賀昆虫同好会149例会(採集調査会)が開催された。

今坂は多少早めに現地(脊振山系高山・標高727m・の北側の谷)に到着したが、既に、市場会長、幹事役の吉田副会長夫妻と、高橋さんが、準備万端、待ちかまえていた。
林道脇の広がった路肩に車を止め、挨拶をする。簡易テーブルの上には、吉田夫人特製の料理類が準備され、既に、近くの谷川には飲み物が冷やされているらしい。

やや風が強く、気温が低かったが、空は晴れ、時折霧がかかる。
午後6時の開始時間までに1時間余りあるので、さっそく林内に、箒とビーティングネットを持って入った。
林内の感じは、ブナ帯下部の落葉樹林(ブナはない)のようで、小さな谷川沿いに、下草の少ない比較的若い林が広がっていた。

中は思ったより乾燥していて、幹には時折コケが生えている程度で、マメヅタは見られなかった。多くはなかったが、立ち枯れや倒木もあり、キノコが生えている枯れ木も見られた(写真)。

例によって、幹掃き採集を試みてみたのだが、湿気が少なく着生植物も少ないので、甲虫の姿は少なかった。得られたのは、大部分、立ち枯れやキノコからで、マルモンニセハナノミ(写真)、ヘリアカナガクチキ(写真)、ニセナガアシヒゲナガゾウムシ(写真・腹面も)、オニコメツキダマシ(脊振山系初)、ケブカクロナガハムシ(脊振山系初)など、甲虫30種足らずであった。

定刻までに、古川事務局長、廣川・小幡の両会員も加わり、食事しながらの虫談会となった(写真)。

上記のように、得られた種について脊振山系初あるいは佐賀県初という表示が可能なのは、まったく、西田さんによる労作・佐賀県産甲虫目録(2005)のおかげと言うのが、集まった会員の一致した意見で、今後の希望として、市場会長に雑昆虫の、古川事務局長に鱗翅目の、それぞれ県産目録作成をお願いしようということになった。

夕暮れが迫る前に、古川さんは灯火採集のスクリーンを設置し、食事の合間にも飛来したガ類のチェックを始めた。
遅くなって、祝さんが出張先から駆けつけ、さらに、にぎやかになった。

食事後、再び、暗い林内に幹掃き採集に出かけたが、低温の影響かほとんど虫の姿は見られなかった。

戻ってスクリーンをチェックすると、ヒメチャイロコガネ(佐賀県初:写真)やオオキイロコガネ、ニセジョウカイボン(写真左)、ニシジョウカイボン(写真右)などが飛来していた。

後2種は、♂交尾器以外の区別は慣れないと難しいが、上翅を顕微鏡でながめると、金色の細い毛を持つ(写真中)ものが前者であり、黒色の太くて立った毛を持つ(写真下)ものが後者で、区別しやすい。一般に、ニセ(前者)の方が、九州ではより山地性で、発生時期も遅い。

しばらく、スクリーンをながめながら祝さんと雑談をした後で、コーヒーをいれて飲み、眠くなったのでお開きにした。

翌10日、空が白みかけた5時過ぎには、明るさで目が覚めて見渡すと、古川さんが終夜点灯していた灯火採集を片づけていた。吉田夫人は朝食の用意を始め、皆の起床を確認してから、朝食となった。

その後、めいめい採集場所に出かけ、私は脊振山山頂付近のブナ林で幹掃き採集を試みてみようと思い立ち、皆さんに別れを告げた。

脊振山山頂は驚くほどの低温で、霧が巻き、風がうなりを上げていた。ブナやカエデの樹幹には、雲霧林そのもののコケ・地衣類・ヒメノキシノブなどがビッシリ着生しているものも多く見られたが、メダカチビカワゴミムシとハコネモリヒラタゴミムシ、クロホシテントウゴミムシダマシ以外は、ほとんど甲虫が見られなかった。あまりにも、気象条件が悪すぎたせいもあるが、ブナ帯での幹掃き採集は、なかなか成果が上がらないようである。

なお、先に上げた種のうち、ヒメチャイロコガネは多良山系の長崎県側と、脊振山系の福岡県側のみから記録されている西九州の固有種である。また、マルモンニセハナノミ、ヘリアカナガクチキ、ニセナガアシヒゲナガゾウムシは、佐賀県内では脊振山系のみで記録されている。

お世話いただいた両幹事と、特に、食事全般をお世話いただいた吉田夫人にお礼を申し上げます。