これは、第十六回吉野ヶ里虫の会 その1の続きです。
今回は、九州虫屋の長老、三宅さんから始めます。
(三宅さん)

三宅さんの話は「ふんどし」2題。
第一ふんどしは、流水に棲むヒメドロムシ採集法の定番としての「ふんどし流し」です。
文字通り、河川に、ふんどし様の白くて細長い布を流して、その上流の底石などを引起こしてかき回します。
石下や砂礫中に生息していたヒメドロムシ類を流下させて、それがふんどしに掴まったところでふんどしを引き上げて採集する方法です。
三宅さんは大分県内を始めとして、九州中の河川でふんどし流しを実行され、新種を含む多数の成果を上げられています。
三宅さんによると、河川の下流域、中流域、上流域、源流域でそれぞれ河岸、早瀬、トロと、異なる環境でふんどし採集することで、一つの河川であっても、何十通りもの環境を調査することになり、多種類のヒメドロムシを採集することが出来るそうです。
その極端な1例として、最近、新種記載されたカエンツヤドロムシでは、源流のさらに上、岩を起こすとやっと、水がしみ出してくる場所にふんどしを設置して、その上をしみ出し水が流れるようにして発見されたそうです(採集は三宅さんではありません)。
そんな場所でもヒメドロムシはいるのですね。
背面が燃える炎のような赤色(火炎の色)をしているのが和名の由来で、後翅は退化しているようです。
(カエンツヤドロムシ、Nakajima & Kamite, 2020より改変引用)

Nakajima, J. & Y. Kamite, 2020. A new species of the genus Urumaelmis Sato (Coleoptera, Elmidae, Macronychini) from Kyushu Island, Japan. Zootaxa, 4853 (3): 421.428.
この文献を恵与いただいた記載者の中島さんに、厚くお礼申し上げます。
久村さんの話に関連して、三宅さんも、様々な環境教育の現場に招かれて、講演や現地指導をされる機会が多いそうです。
その中で、初めて昆虫に触れる人々に、生息環境のヒントを教えて、採集を行ってもらうようにされているようです。
その結果として、自然や虫について、それまで以上に興味を持って貰えるようになるそうです。
後に、見つけた昆虫等についての問い合わせがあり、これが思わぬ珍品だったりすることもあるそうです。
結局、他人のふんどしで標本を集めることになり、これが、第二のふんどしになるそうです。
と言うか、大分昆虫同好会の会誌・二豊の虫には、毎回、三宅さんと会員の方との連名で、珍品の報告が載っています。
これって、同好会全体が、三宅さんの「ふんどし」と考えても良いのでは・・・。
なお、噂では、会の翌日、池の捜索で、思わぬアクシデントに合われたとか・・・。
同行者もいて、大事に至らなくて幸いでした。
ふんどしを締め直して、今後も頑張ってください。
私も含めて、後期高齢者は、極力、単独では動かないようにしましょう。
さて、次は斎藤さんです。
(斎藤さん)

斉藤さんはガソリンスタンドを経営されています。昨今の原油の高騰では、ご苦労が多いと思います。
それはさておき、今年は自宅近くの、九州歴史資料館の敷地内にある樹林~草地~溜池の調査を、定期的に予定されているそうです。
1月に私も同行して現地を見に行きました。
(九州歴史資料館とその周辺・グーグルマップより改変引用)

(九州歴史資料館の正面・グーグルマップストリートビューより改変引用)

(広い草地)

(溜池)

(1月に落ち葉篩いで採集した甲虫類、時期にしては色々見られた)

一方、斎藤さんは、甲虫の形の細部に興味があり、その形が生態的などういう行動に直結するのか、考えることが楽しいそうです。
甲虫のパーツそれぞれの形を1つ1つ確認しながら、画を描いているそうです。
(マイマイカブリの部分を確認→完成図)

さらに、これはお遊びですが、AIに画を描かせてみたそうです(どうやって描かすのかは、聞きそびれました)。
全く架空の甲虫だそうです。
(AIに描かせた架空の甲虫)

さて、堤内さんは、今回のメンバー中、唯一のご夫婦での参加です。
(堤内さんご夫妻)

ご存じ、大分昆虫同好会の会長を務められています。元の職場、造船所にもパートで出かけられているそうです。
コメツキ、タマムシは、県内産をほぼ纏められ、その後はゾウムシを熱心に調べられています。
私にも、グルーベルカタビロサルゾウムシの標本を持参し、プレゼントしていただきました。
また、綾町の採集記で、本種のホストを、カラスザンショウと書いていたのを、正しくは、イヌザンショウであると、ご教示いただきました。

帰宅後、早速、ホームページの記事は訂正しました。
標本のご恵与と、ご教示、ありがとうございました。
十数年前から、綾町に通われていましたが、最近、綾町のオオバヤドリギをホストとするオニヒラタチビタマムシとニセキボシツツハムシを発見されました。
昨年、相次いで、その2種それぞれに、堤内さんに献名されて、種小名が、tsutsumiuchiiになっています。
特に、前者は、触角第一節に長いトゲを持ち、上翅には数個の毛の束を持つ、日本離れした特異なチビタマムシです。
(オニヒラタチビタマムシ、Tamadera, 2025より改変引用)

Tamadera, Y., 2025. New or little-known jewel beetles on mistletoe, Taxillus Tiegh. (Loranthaceae), in Japan: Unusual morphology and biology in Habroloma Thomson, 1864 (Coleoptera: Buprestidae). Zootaxa, 5725 (1): 55-88.
ちょうど、堤内さんが1頭目を採集された当日、綾ユネスコエコパークセンターに同宿しており、夜に、顕微鏡で見せていただいたことを覚えております。
ビックリして、特異な姿から、東南アジアからの移入種かと思ったほどです。
堤内さんが話されている間に、前の席の丸山さんに、この種の話をしました。
丸山さんは、即座にスマートフォンを取り出して、近縁でさらに妙ちくりんな東南アジア産の近縁種の画像を見せてくださいました。
その種は、触角のトゲが体長ほどと極端に長く、上翅の毛の束も良く似ていました。
さすがに丸山さんは、世界中の妙ちくりんな虫は良くご存じです。
昨年の甲虫学会12月例会で、本種の記載者の瑤寺さんが、本種を含むチビタマムシの分類、生態、遺伝子を含めた系統などの講演をされました。
その中で、本種は、今のところ、国内にいるチビタマムシ類2属のうちの、Habroloma属に含められています。
しかし、サイズも含めて、余りにも違った感じがするので、将来的には、別の属になるような気がします。
さらに、後者・ニセキボシツツハムシは、和田さんが1個体を灯火で採集されて、(仮称)アヤキボシツツハムシとして、私のホームページや、今坂ほか(2024)で紹介した種です。
キボシツツハムシやリュウキュウツツハムシに良く似た種ですが、未記載種と考えていました。
今坂正一・畑山武一郎・國分謙一・大塚健之・堤内雄二・有馬浩一・斎藤 猛・和田 潤, 2024. 久留米昆蟲研究會メンバーによる「綾町・照葉樹林」の甲虫調査. KORASANA, (103): 1-87.
堤内さんは、オニヒラタチビタマムシ採集の過程で、本種も、綾町のオオバヤドリギ上から複数個体採集されています。
その採集品の♂交尾器が、前2種とは異なっていることを確認された重藤さんが、新種記載されたわけです。
(ニセキボシツツハムシ図版、Shigetoh, 2025より改変引用)

Shigetoh, H., 2025. The Loranthaceae-feeding leaf beetles (Coleoptera, Chrysomelidae) from Japan,with a description of new species. Zootaxa, 5723 (4): 577-586.
1点、色んな人に言っていますが、和名の頭に、ニセ○○と付けるのは止めた方が良いと思います。
日本産で、今時、新種記載されるような甲虫は、一部の種群を除いて、ほとんど、既知種のどれかに似ている種です。
オニヒラタチビタマムシのように、かつて国内産で、似ている種が全く無かったような種はほとんどありません。
ニセ○○と付けると、次にまた似たのが発見された際、ニセニセ○○ということになります。
そうでなくとも、索引を作ると、既にニセ物だらけです。
ニセはほとんど、種の特徴を表していないので、ニセを付けるのは止めた方が良いと思います。
だいぶ横道にそれてしまいました。
堤内さんの奥さんはフィリピン出身で、今年は一緒に里帰りして、さらに採集もしてこられるそうです。
里帰りした外国で気楽に採集できるとは、ちょっと羨ましい限りです。
おまけに、最近、奥さんの方が虫取り上手との事なので、なおさらです。
さて、次は宇都宮さんです。
(宇都宮さん)

彼は20数年前、私がアセスメント調査会社に勤めていた頃の同僚です。
現在は四国の別の会社にお勤めですが、本会や、九重町で開かれる飲み会にも、毎回、遠く四国から参加されます。
堤内さん同様、いつもご夫婦で参加されていますが、今回は、奥さんは宴会には不参加で、別行動のようです。
ご本人の弁としては、大型美麗種が好きで、定年退職して、これからは昆虫採集三昧しますとのことですが、それでも、現会社の重要なプロジェクトのため、直ぐには、辞めさせてもらえないと言うことです。
若手と思っていたところ、もう還暦との話で、ビックリしましたが、「年寄り虫屋が元気なので、今でも、若手と言われます」と苦笑いされていました。
元々は水生昆虫が専門で、新種記載も手がけられていたそうです。
本当に会社を辞めて良いと言うことになったら、地球の反対側までも、虫取りに出かけられそうな気もします。
次に北村さん。
(北村さん)

今回、宇都宮さんの紹介で、遠く大阪から、初参加されました。アセスメント調査会社にお勤めです。
彼も、かつての、私の元同僚です。
確か、私の記録にあるのは、卒業したてのバリバリの新人さんでした。
宴会前に、「今坂さん、北村です」と声を掛けられたのですが、一瞬、解りませんでした。
だいぶ頭が薄くなっていますが、あれから、四半世紀経っているんですね。
彼も、わざわざ、画像を用意して来られたようで、ミツボシツチカメムシとフタボシツチカメムシの区別について、図版を示して話をされました。
この両種は、上翅の斑紋の数以外は良く似ていて、時に、変異があることから、他に区別点が無いか、調べてみたそうです。
その結果、腹面の胸部にある臭腺あたりの構造が異なり、2種の区別に使えることが解ったそうです。
(ミツボシツチカメムシとフタボシツチカメムシの区別点)

さらに、脇さんです。
(脇さん)

朝倉さんと並んで、今回の出席者の内、一番の若手と思われます。
年寄りばかりになりつつある虫屋の会ですが、是非、若手もどしどし参加していただきたいものです。
宇都宮さんの紹介で初参加されましたが、アセスメント調査会社にお勤めで、少し前まで、宇都宮さんの隣の席で仕事をされていたそうです。
ヒメコブハムシの件で、何時か、連絡していただいたそうですが、全く記憶に無く、失礼しました。
見せていただくと、確かに、先日発行された、さやばね N.S.に、本種を高知県から、四国初記録として報告されていました。
おまけに、わざわざ、私への謝辞まで載せられていました。
確かに対応したのでしょう。
脇 悠太・久米加寿穂, 2026. 高知県南西部におけるヒメコブハムシの記録. さやばね ニューシリーズ, (61): 46.
その後の2次会でも、相席になり、ハムシの事など、色々話しました。
かつて私が、クリ・クラに投稿した、ヨモギを食べる(仮称)ヨモギキベリトゲトゲを、四国で多数観察されているそうです。
この種については、未記載種ですが、何も報告されていないので、種の特徴や生態など、是非、記録しておくように、奨めておきました。
次いで勝間さん。
(勝間さん)

勝間さんは、アセスメント調査会社などに仕事を出す、コンサルタント企業にお勤めです。
ご専門はトビケラですが、仕事では、採集も同定も一切やることはなく、上がってきた報告をとりまとめするのがお仕事のようです。
そのため、無性に虫取りがしたくなる時があり、そんな時には河川にマレーズトラップなどを設置して、カワゲラを採集されるそうです。
現在全国的に作成されている昆虫目録作りでは、トビケラ専科のヒゲナガトビケラ科の担当で、近いうちに改訂予定とのことです。
私は、個人的に、あちこちで採集したトビケラの同定をお願いしているのですが、なかなか、その時間が取れないそうです。
今後も、トビケラは、灯火採集などで採れてしまいますので、時間が許せば、是非、同定をお願いします。
首を長くして、いつまでも待っておりますので、よろしくお願いします。
最後に寺﨑さんです。
(寺﨑さん)

トンボやチョウが好きで、採集されているそうですが、それほど専門的では無く、この会には、専門性の高い他の昆虫の話を聞くのが楽しみで参加されているそうです。
そして、そのお礼に日本酒とワインを持参してきたと謙遜されていました。
三宅さん同様に、様々な環境教育の現場に招かれることが多いとのことで、その必要性を述べられていました。
以上、一通り、一人一話が終了しました。
今回は、祝さんの読み通り、宴会終了時間には、まだ多少余裕があります。
その後は、個人的に、あちこちに数人ずつ固まって、虫談ということになりました。
そして、宴会の終了時間直前、集合写真を撮りました。
(集合写真)

宴会はこれでお開きで、二次会に出かけることにします。
用事がある佐々木さんは、丸山さんを送りがてら帰宅されましたが、大半は、飲まない「ハンドルキーパー」の車に分乗して、二次会会場・どん亭へ向かいます。
(どん亭玄関)

中は広く大勢の人で賑わっていました。吉野ヶ里地区では人気の居酒屋さんの様です。
多人数のことで、1テーブルには座りきれず、2テーブルに分かれます。
(どん亭店内で2テーブルに分かれたメンバー)

それからほぼ2時間、話が弾んでいる内に、ラストオーダーになりました。
(二次会での懇談1)

(二次会での懇談2)

(二次会での懇談3)

(二次会での懇談4)

気がついたら、虫の会のメンバー以外、お客さんは誰も見られなくなっていました。
毎回、いつもは12時を過ぎて、明日になってから腰を上げていたのですが、今日はまだ11時です。
まあ、店の人もヤキモキしているだろうし、明日の虫取りの予定がある人もいることだし、これで切り上げることにしました。
また、来年、楽しく虫の話で盛り上がりましょう。
終

