沖縄甲虫図鑑が発行されました

沖縄に在住、または沖縄の昆虫研究に携わってきたメンバーにより作成された沖縄甲虫図鑑が11月9日に発行されました。

発行元は、(資)沖縄時事出版〒900-0025 沖縄県那覇市壺川 1-3-10
TEL: (098) 854-1622 FAX: (098) 855-7163 http://www.oki-jiji.com/

販売元は、(株)沖縄学販〒900-0025 沖縄県那覇市壷川 1-3-10
TEL: (098) 854-1620 FAX: (098) 854-1327

定価は2800円(+税)です。

319ページ、95カラー図版で、沖縄県産甲虫類1700(亜)種余りが掲載されています。

宣伝チラシは以下の通りです。

(宣伝チラシ)

宣伝チラシ

この図鑑では、それぞれの種がカラーで図示されており、さらに、実物大がシルエットで表示されています。

(帯)

また、養老孟司先生と、池田清彦先生の推薦文が帯になっています。

(養老先生と、池田先生の推薦文)

養老先生と、池田先生の推薦文

今坂は著者代表の松村雅史さんから、ジョウカイボン科の種について同定等の確認を依頼されたことで、この図鑑を謹呈いただいたので、若干の内容について紹介したいと思います。

(図鑑の中表紙 沖縄県を代表する日本最大の甲虫 ヤンバルテナガコガネ)

図鑑の中表紙 沖縄県を代表する日本最大の甲虫 ヤンバルテナガコガネ

まず表紙から、以下の種がレイアウトされています。

(表紙)

表紙

左1列目上から縦に
オオシマミドリカミキリ沖縄亜種
チャイロホソハナムグリ
サキシマニセクワガタカミキリ
モウセンハナカミキリ沖縄亜種

左2列目上から
オオヨツバコガネ
アマミフサヒゲカッコウムシ
イシガキチビツノゴミムシダマシ
アカバチビキマワリモドキ

左3列目上から
ヤエヤマクビナガハンミョウ
ノブオオオアオコメツキ
タイワンヨツモンテントウダマシ

中列上から
チャイロマルバネクワガタ
ヤンバルテナガコガネ
カブトムシ沖縄亜種(オキナワカブトムシ)

右3列目上から
アマミモンキカミキリ沖縄亜種
オオミドリサルハムシ
オキナワムツボシタマムシ

右2列目上から
ヤエヤマキボシハナノミ
オキナワナカボソタマムシ
クロカタゾウムシ
クメジマボタル

右1列目上から列
オキナワマルバネクワガタ
オオヒゲブトハナムグリ緑色個体
イシガキシロテンハナムグリ原名亜種
ムネモンウスアオカミキリ

(裏表紙)

裏表紙

左1列目上から
コゲチャトゲフチオオウスバカミキリ
ミスジキイロテントウ(外来種です)
トビイロエンマコガネ
ヤンバルメダカオオキバハネカクシ
オキナワハンミョウ

左2列目上から
マツダクスベニカミキリ
フチトリゲンゴロウ
オキナワジャノメカミキリ
キボシフナガタタマムシ
オキナワオオミズスマシ

左3列目上から
エサキクロタマムシ
ミツテンコメツキモドキ
サキシマアオカナブン
コザマルムネアリヅカムシ
イシイクビナガゴミムシ

中央 上から
チャイロカナブン八重山諸島亜種
アマミホソコバネカミキリ沖縄亜種(オキ
ナワホソコバネカミキリ)
ヨナグニトゲハムシ
ヒラタクワガタ八重山亜種

右3列目上から
タイワンベニボタル
ゴマダラオオヒゲナガゾウムシ
オキナワヒメヒラタタマムシ
ホソキボシアオゴミムシ
フトミツギリゾウムシ

右2列目上から
マルガタオオヨツボシゴミムシ
アトホシヒラタマメゲンゴロウ
イシガキトサカシバンムシ
ヤマトタマムシ奄美沖縄亜種(オオシマルリタマムシ)
エグリユミアシゴミムシダマシ

右1列目上から
ケブカコフキコガネ
イチジクカミキリ
サキシママンマルコガネ
ヒラズゲンセイ
キュウシュウクロホシタマムシ

背表紙 上から
ベニボシカミキリ
オオヒゲブトハナムグリ青色個体

それぞれ、沖縄を代表する美麗な、あるいは、稀少な種が選ばれています。
これだけでもお解りのように、従来の図鑑類には掲載されていない種が多数掲載されています。

例えば、同定の確認を頼まれたジョウカイボン類について紹介しますと、41図版の19種のうち、カタグロマルムネジョウカイなど5種は初めてカラー写真が公開されています。

(ジョウカイボン科の41図版)

ジョウカイボン科の41図版

お聞きしたところ、この図鑑のプレート写真は全て松村さん自ら撮影されたとのことです。

ジョウカイボン科の解説の一部を転載しますと、以下のようになります。

ジョウカイボン科CANTHARIDAE
ジョウカイボン科は日本から亜種も含め的400種が知られ,沖縄県からは約45種類記録されている. 体は軟弱であるが成虫は花上,葉上で他の昆虫を捕食し幼虫も捕食性である.小型種については難解で図示することが出来なかった.本科については今坂正一氏の指導を得た.

ジヨウカイボン亜科 Cantharinae

  1. ヤエヤマヒゲナガジョウカイ Fissocantharis yayeyamanus (M. Sato, 1986)
    8.0mm内外 3-4月 ショウベンノキなどの花 石垣,西表
  2. ベニジヨウカイ Lycocerus hiroshii M. Sato & Okushima, 2001
    10.0mm内外 3月 西表
    上翅は鮮やかな赤色で頭部,前胸背,触角,股は黒色.有毒のベニホタル類に似る.

というような感じで、体長、成虫の発生期、分布する島名、種によっては若干の特徴が示されています。しかし、これも一部の種に留まり、同定する上で必要な検索表などは掲載されていません。さらに当然ながら、沖縄産の全ての甲虫が掲載されているわけではありません。

そのため、この図鑑だけで沖縄産甲虫の種名を正しく同定することは難しいと思います。
しかし、絵合わせ等で大体の当たりを付け、分布する島なども考えた上で、Webや文献に当たれば、何も無いところから種を探すよりは随分近道になると思います。

著者、および、多くの方の協力で、全ての標本を集め、整形し、同定し、その上で撮影して、こうして図版作りをされたと思いますが、1700種余りとなると、その大変さ加減は途方も無い作業と思います。

解説についても、専門家の意見も取り入れながら、費用の点から制限が有る中で、コンパクトに解説を作ることは相当大変だったと思います。

ともかく、そうやって、図鑑作りの専門家ではない方々が作った図鑑と言うことでも、大変有意義な図鑑と思います。

著者を紹介すると以下の通りです(本文中より引用)。

著者紹介(全員沖縄昆虫同好会に所属)

松村雅史( まつむら まさふみ) 
大阪生まれ,大阪府立大学農学部農芸化学科卒業.元住友化学工業( 株),住友製薬( 株).日本甲虫学会会員,コガネムシ研究会会員.沖縄県立博物館・
美術館資料提供ボランティア.改定・沖縄県版レッドデータブック第3 版昆虫類分科会委員.
1972 年3 月パスポートを手に沖縄に,以来50 年経ちました.退職後沖縄に住むウチナームー
ク.

担当はハンミョウ科,オサムシ科,エンマムシ科,ハネカクシ科,タマムシ科,コメツキムシ科,ベニボタル科,ジョウカイボン科,カツオブシムシ科,コクヌスト科,カッコウムシ科,オオキノコムシ科,ホソヒラタムシ科,ケシキスイ科,ムキヒゲホソカタムシ科,テントウムシダマシ科,ナガクチキムシ科,ハナノミ科,ゴミムシダマシ科,カミキリモドキ科,アカハネムシ科,アリモドキ科,カミキリムシ科,その他,(編集,写真撮影)

楠井善久( くすい よしひさ) 
麻布獣医大学獣医学部卒業.東京医科歯科大学大学院卒業( 医学博士).元厚生労働省・那覇検疫所.日本甲虫学会会員.コガネムシ研究会会員.沖縄生物学会会員.国内の162 の離島で甲虫類の採集調査,沖縄県内では小さい無人島を含め62島で調査を行う.

分担はクワガタムシ科,コブスジコガネ科,ムネアカセンチコガネ科,アカマダラセンチコガネ科,マンマルコガネ科,アツバコガネ科,ヒゲブトハナムグリ科,コガネムシ科

小浜継雄( こはま つぐお) 
琉球大学農学部卒.元沖縄県職員,現在琉球大学博物館協力研究員.日本昆虫学会会員.日本甲虫学会会員.改定・沖縄県版レッドデータブック第3 版昆虫類分科会会長.

分担はテントウムシ科,ハムシ科

佐々木健志( ささき たけし) 
琉球大学博物館(風樹館)助教・学芸員.改定・沖縄県版レッドデータブック第4 版改訂委員会委員.

分担はホタル科,オオメボタル科

青柳 克( あおやぎ まさる) 
1975年山梨県生まれ.茨城大学生物学科卒業,同大学院理工学研究科修了.東京大学大学院中退.JICA 海外協力隊でブルガリアの水生昆虫類を調査.現在,(株)イーエーシー沖縄本社にて昆虫等の動物調査に従事.改定・沖縄県版レッドデータブック第3 版昆虫類分科会委員.興味のある甲虫はフタキボシケシゲンゴロウ.

分担はミズスマシ科,コガシラミズムシ科,コツブゲンゴロウ科,ゲンゴロウ科,オニガムシ科,ガムシ科(水生種),ダルマガムシ科,ドロムシ科,チビドロムシ科,ナガドロムシ科,ヒメドロムシ科,ヒラタドロムシ科,ナガハナノミ科

吉武 啓( よしたけ ひらく) 東京農業大学農学部卒.九州大学大学院生物資源環境科学府修士課程および博士課程修了.博士( 農学).( 独) 農業環境技術研究所,( 国研) 農研機構九州沖縄農業研究センター( 糸満駐在) 等を経て2021 年より同植物防疫研究部門.日本甲虫学会会員.絶滅が危惧される昆虫分類学者の一人.

分担はヒゲナガゾウムシ科,チョッキリゾウムシ科,ミツギリゾウムシ科,チビゾウムシ科,オサゾウムシ科,イボイボゾウムシ科,ゾウムシ科,キクイムシ科,ナガキクイムシ科

宣伝用に製作されたPDFから図版の見本を引用掲載します。

(図版1 ナガヒラタムシ科 から オサムシ科)

図版1 ナガヒラタムシ科 から オサムシ科

(図版2 オサムシ科)

図版2 オサムシ科

(図版19 クワガタムシ科)

図版19 クワガタムシ科

(図版20 コブスジコガネ科 から ヒゲブトハナムグリ科)

図版20 コブスジコガネ科 から ヒゲブトハナムグリ科

(図版65 アカハネムシ科 から ニセクビボソムシ科)

図版65 アカハネムシ科 から ニセクビボソムシ科

(図版66 カミキリムシ科)

図版66 カミキリムシ科

(図版87 チョッキリゾウムシ科 から ミツギリゾウムシ科)

図版87 チョッキリゾウムシ科 から ミツギリゾウムシ科

(図版88 ミツギリゾウムシ科 から オサゾウムシ科)

図版88 ミツギリゾウムシ科 から オサゾウムシ科

様々な種が掲載されています。

従来の図鑑になかった、沖縄県だけの甲虫図鑑で、現在沖縄県で知られている甲虫
類をほぼ全種を網羅しています。

沖縄の甲虫に興味があり、名前を知りたいと思われる方にとっては、必携の図鑑となることと思います。