第十回吉野ヶ里虫の会(64job会)は、今年も1月30日(土)夕刻より吉野ヶ里温泉卑弥呼の湯で開催されました。
幹事の塚田さんが、宴会の予約をしているはずですが、フロントで聞いても要領をえません。
彼が来てから改めて聞いてみると、今回の予約は、64job会(ろくよんジョブ会)という名でやったとのこと。アセス虫屋の集まりと言った意味でしょうか?
確かに、元々この会は、アセス仲間の集まりとして始まり、最初は虫屋に限らず、植物屋さん、鳥屋さん、水物屋さん、小動物屋さんなど色々な方が参加されていました。
そのうち、虫屋の数が大部分を占めるようになり、おまけに、九大関係者や、アマチュア虫屋の参加も増えて、アセス臭さはだいぶ薄まってきたのですが、それでも、7-8割はアセス屋で占められています。
ここでは、ホームページ掲載の恒例で吉野ヶ里虫の会としておきます。
いつものように、ホテルのチェックインをして、温泉に向かいます。
ゆっくり露天プロにつかり、サウナにも入って、再度お湯につかっていると、大城戸さんと出会いました。いつものように年度末のとりまとめにお忙しそうです。
今年の仕事の予想などを聞きながら長話をしていると茹だってきたので上がることにしました。
参加メンバーは三々五々集まり、6時からの開催と言いつつ、5時半には多くが会場に集まっています。今回はカモ鍋のようです。
塚田さんが登場して、さっそく開会してもらいます。
まず塚田さんによる開会の辞です。
恒例により、三宅さんの音頭で乾杯。三宅さんはウーロン茶で、ほとんど最後までアルコール無しでお付き合いいただいています。
三宅さんは皆さんのお話や笑顔に酔われているのでしょう。
多少、鍋をつついてから、さっそく一人ずつ、自己紹介です。
今回は、自身の著述など文献や会誌の紹介が相次ぎました。
まず、20代若手の築島さんから。
彼は久留米昆のホープで、長らく中国での仕事に従事し、国内で活動する時間がほとんど取れなかったのですが、今年からはシッカリ国内で活動したいとのことです。
久留米昆の会誌編集の中心メンバーで、今坂等も手伝っていますが、昨年度は2冊で300ページ超え、今年は200ページ超えと、内容も含めて充実しています。
毎年、この場に間に合うように編集・発行して持参し、数名の方には買っていただいていました。
毎年のことなので、「いっそのこと会員になった方が・・・」と、複数の方に言っていただいて、編集者冥利に尽きたようです。
久留米昆の最新会誌 KORASANA (84)については、次のトピックで紹介します。
久留米昆虫研究会会誌 KORASANA 84の発行
http://www.coleoptera.jp/modules/xhnewbb/viewtopic.php?topic_id=173
続けて、佐賀昆事務局の古川さんが、同様に会誌「佐賀の昆虫」のバックナンバーを持参し、頒布の宣伝です。
昨年夏、創立から40年余り、佐賀昆事務局〜会長を歴任された市場利哉さんが逝去されました。
その市場さんが保管されていた会誌と会報の山を、古川さんが管理されているそうで、なるべく安価に頒布したいと言うことです。
古いものについては、希望者には無償で提供できるものもあるということですから、ご希望の方は、佐賀昆事務局、あるいは、このホームページの左上の方にある「おたより」をクリックしてご連絡ください。
写真の2冊はいずれも会誌・佐賀の昆虫の「多良岳の甲虫特集号」で、右のモノクロの方は19号(1987年)、左のカラーの方は36号(2002年)です。いずれも、今坂など2-3人の共著で、前者で1469種、後者で1901種を記録し、多良岳産甲虫相について論じています。
3人目の野崎さんは環境アセス屋ですが、専門はカメムシ目で、塚田さん、宇木さんなどと共に、九州西岸のカメムシ目相を精力的に調査されています。
持参の別刷りは、一昨年に調査された下甑島のカメムシ目相をまとめられたものです。
2014年度に8回、のべ20日あまり下甑島で調査され、35科218種の異翅亜目カメムシ類を記録されています。このうち甑島列島初記録は194種、九州初記録は27種ということです。
主として南方系の、所謂九州西回り分布種など、注目すべき種を記録されています。
(下甑島の特徴的な種:野崎ほか, 2015より引用)
野崎達也ほか(2015)鹿児島県下甑島の異翅亜目. ROSTRIA, (50): 1-40.
続けて、昨年はやや北上し、天草下島南部の牛深周辺を調査されています。ここでも、かなり注目すべき成果を上げられているようです。こちらも次回は報告を見せていただけるでしょう。
そして、「今年はどこを調査しようか?」と伺ったので、手前味噌ながら、長崎昆で現在とりまとめ中の、長崎県西彼杵半島を推薦しておきました。
次は、宇都宮さんです。毎年四国高松からわざわざ遠いところを参加していただいています。
宇都宮さんは、「ぎょぶる」の宣伝です。
宇都宮さんは水生昆虫等が専門ですが、九州在住の折、北九州高校の井上先生が指導されていた魚部の顧問的存在で、魚部が発行した「福岡県の水生昆虫図鑑」に著者の一人として参加されています。
魚部では、その後も会誌等を発行されていましたが、この度、それが発展的に北九州-魚部という一般の方も含めた大きな組織になり、ギョブマガジン「ぎょぶる」として発行されることになったそうです。
以下に表紙等を掲載しているのは2015年10月に発行された第2号で定価は500円です。創刊号が6月ですから、年数回の発行予定でしょう。
魚、水生昆虫だけでなく、河や海、漁業や農業やグルメ等々、さまざまな話題が掲載されています。
(上:2015年に新種記載された宮崎県大淀川固有のオオヨドシマドジョウ、下:ヤマトシマドジョウ)
「ぎょぶる」のお問い合わせは、北九州-魚部 gyobu1998@gmail.comまで。
さて、本の紹介が続きましたが、参加者本人の紹介を続けましょう。
山口市から毎年参加していただいている山本さん。
ユスリカの世界的権威です。できれば日本語で、日本産ユスリカの解説を書いてくださいとお願いしました。
続いて、九大の村尾さん、ハナバチの専門家で、先年発行された日本産ハナバチ図鑑の著者の一人です。
こちらも九大の細谷さん、コガネムシ主科の遺伝子系統の研究がご専門で、数年来、トカラ列島のコガネムシ類の採集・調査を繰り返されています。
トカラ列島は研究目的以外、採集行為はできなくなっているので一度は行ってみたいと思いながら、誘っては頂いていますが、なかなかスケジュールが合わず実現していません。
アセス会社にお勤めの大城戸さん、専門はアリの分類ですが、本業でお世話になる機会が多い人です。
昨年から、朽木に依存する昆虫の報告を、一緒に佐賀昆の会誌に報告しています。
大城戸博文・祝 輝男・今坂正一(2015)佐賀県吉野ヶ里町、鳥栖市で2013年の朽ち木調査で確認された昆虫類. 佐賀の昆虫, (49): 657-661.
初参加の三田さんは、新しく九州大学の助教として赴任された方です。
ハチ屋さんで、カマバチ科など、寄生性ハチ類がご専門のようです。
残念ながら、直接は詳しい話を聞きそびれてしましいました。是非次回も参加して、話を聞かせてください。
次は長崎から参加の松尾さん、今年3月末で退職とか。
晴れて「毎日が日曜日」で虫三昧になることを夢見られている由、是非、長崎の手薄な地域の甲虫相解明に頑張ってほしいと、発破をかけているところです。
昨年は、三宅さん、堤内さんと共に、五島宇久島で虫を調査されて、かなり楽しい思いをされたようです。
例年ですが、このトピックで使用しているスナップ写真の半分以上は松尾さん撮影のものです。
改めてお礼申し上げます。
昨年から仕事でも手伝っていただく機会が増えた大分の堤内さん。
現地でタマムシ類について教えていただくことが多く、大変勉強になりました。今年もまた、お世話になることと思います。
すぐ隣に座っていた矢代さん、近すぎてへんな写真になってしまってすみません。
矢代さんにも同定等でお世話になりっぱなしです。わざわざ京都から毎年駆けつけていただいて嬉しく思います。
電話やメールではしょっちゅう遣り取りしていますが、近年は、年一回のこの会でしかお目にかかれなくなっています。是非、ご専門のハバチについても、何か書いていただきたいものです。
続いて宇木さん、蛾が専門とのことですが、先に書いたように、野崎さんたちと共同で、九州西岸の調査を続けていらっしゃいます。
仕事先が福岡市に変わったと言うことで、大変とは思いますが、可能なら続けてください。
さて、数年ぶりに参加の熊本の塚原さん、バッタが専門ですが、仕事では植物・動物・鳥・昆虫と何でもこなせる人です。今年は特にお世話になる予定なので、よろしくお願いします。
隣り合わせに座って、ゾウムシの話で盛り上がった今坂と、右は初参加の九大学生、辻くん、20歳です。
今回参加の最年少、それでも、昨年秋の甲虫学会では、堂々とマツノシラホシゾウムシ属の新分類について発表をしていました。まだ国内でも2-3種新種がいるようで、是非、新種記載と、私たちでも解る和文での解説を書いてほしいと思います。
若い人が絶滅危惧種になって久しい虫屋にあって、1人でも2人でも、やる気のある若手が出てくるのは嬉しいものです。
今坂の紹介は、昨年、ホームページを開設して以来、最も沢山のトピックを書いて近況を報告しましたので、興味のある方はそちらをご覧下さい。
こちらも初参加の大倉さん、大分昆の新人で三宅さんの紹介です。
水生昆虫がご専門のようで、ビオトープの設計・施工などの資格をお持ちのようです。
数年ぶりに参加の紅一点、熊本の小原さん。植物が専門ですが、鳥も、昆虫も好きなアセス屋さんです。
近年参加者が虫屋ばかりになったことと、忙しすぎてスケジュールが合わず、足が遠のいていたようですが、久しぶりに参加してみたら、様々な意味で刺激を受けられたとか。是非来年も参加してください。
三宅さんの話は、いつものように千変万化、長〜く続いていきましたが、その話題の豊富さと話術に引き込まれ、参加者全員が聞き耳を立てていました。
真冬の側溝で採れる珍品の話、松尾・堤内両氏との宇久島調査の話、そして、つい2-3日前まで採集して来られたという冬の沖縄本島でのフンドシ流しの話など、想像もできないような知らない話のオンパレードです。
中でもとびきりのトピックは、河川の水底の泥中よりマグソコガネの仲間が採れたという話です。
後ほど、顕微鏡で覗かせていただきましたが、とても水中に適応している種とも思えない普通のマグソコガネ形の種で、どうしてそんなものが水底から複数出現したのか、首をひねるばかり。
新しい水分の多い糞にくるマグソコガネは、ほとんど、水泥中にいるのと同じ状態ではありますが・・・。
何か解ったら、三宅さんご本人が発表されると思います。
しばらくご無沙汰だった岩切さん、わざわざ、宮崎県から参加です。
忙しいのとお子さんが小さいのとで、動けなかったのでしょう。
数年前に、オオタマキノコムシのiwakiriiもできたことでもあり、また、頑張ってほしいものです。
最後に、初参加のお二人、
まず、チョウ屋の福岡の溝部さん。
昨年春退職されて、知人とアセスの会社を始められたとか。
しきりと、アセスは難しいと、話していらっしゃいました。
チョウの方ではかなりのキャリアの持ち主ですが、数年前から、甲虫もかなり採集されていて、よく珍品を採集しては名前を教えてほしいとのメールが来ます。
続いて、福岡の佐々木さん、蛾が専門です。
最近は平尾台など、草原の蛾を特に興味を持って調べられているそうですが、いろんなところで、甲虫のハムシやゾウムシなどと共通した、草原特有の種が出現するので、その分布や生態的な特性の解明が面白いそうです。
お二人とも、「初めてだけど面白かった」との言葉をいただいたので、また来年も来ていただけるでしょう。
宴会の締めにいつものように集合写真です。
幹事の塚田さんから、「二次会で使う店と連絡が取れない」とのことで、あちこち電話して店をさがすもののなかなか見つからず、二次会は無理かな・・・という雰囲気が流れました。
しかしながら、しばらく待ってから、「いつもの処がやっているそうです」との連絡が入り、みんなでダラダラ歩いて行くことにしました。単に電話番号を間違っていただけみたいです。
二次会はいつもの店で、貸し切り状態。酒も虫の話も尽きません。
それでも、明日にならないうちにお開きにしました。
皆さん長時間ご苦労様でした。
玄関前で、集合写真を撮り、ホテルに戻って終了。
蛇足ながら、今回は名物が一人欠けて、今まで皆勤賞の日田の佐々木さんが欠席でした。
その原因についていろいろ憶測も流れましたが、後日届いたうわさでは、ギックリ腰だったとのこと。
な〜んだ・・・・でなくて、お互いそれなりに歳ですからね、用心しましょう。
来年は是非参加できるようにしてくださいね。