嘉瀬川ダムの甲虫調査 5

嘉瀬川ダムの5回目です。

調査地点

今回は他1の環境創出箇所と他2の採石場跡です。

どちらも、人為的に環境を改変した場所ですが、他1は元々谷間の水田跡を水生昆虫の生息場所として湿地等を創造した場所、他2は山を削って採石した場所を整地して、雨等で崩壊しないように草本の種を蒔いて草地の斜面を造成した場所です。

まず、他1から紹介します。

9. 他1(佐賀市富士町大字大野、標高295m)

銀河大橋の1kmほど北方、嘉瀬川本流と支流の神水川に挟まれた谷間に、トンボと水生昆虫、水鳥などの生息地創造を目的として造成されました。上部には一部、水田と畑が残存し、周囲の斜面の大部分は広葉樹二次林です。明るい広い谷で、元々、周囲からわき水等がにじみ出るような立地です。

(他1のダム建設前と現在の写真: 赤円内が概略調査範囲)

(2009年8月: 灯火採集)

(2010年9月: 最下部の池)

(2011年5月: 谷の上部)

(2011年11月: 谷全体の眺め)

(2012年8月: 草丈が高くなった湿地)

葉上のカタキンイロジョウカイ
葉上のカタキンイロジョウカイ

他1では任意採集として、2009年5月5, 9日、8月19日、2010年5月1日、9月29日、2011年5月6日、8月29日、11月7日、2012年5月24日、8月25日、10月31日の10回です。ライトトラップとピットフォールトラップを2009年5月2-3日と2011年5月4-5日の2回実施しています。さらに、メンバー全員参加して、スクリーンを張った灯火採集を2009年8月19日に行いました。

他1では4年間の調査で240種が確認できました。

年度ごとでは、2009年(130種)、2010年(70種)、2011年(101種)、2012年(87種)です。

このうち、以下の2種は九州の記録のない種です。伊藤さんに同定していただきましたが、同定が難しいために記録がなかったのかもしれません。伊藤さんに深謝します。

ザウテルナガメダカハネカクシ、トウヨウイクビハネカクシ。

ザウテルナガメダカハネカクシ

 

ザウテルナガメダカハネカクシ

湿地の葉上に見られました。北海道,本州,四国から知られていました。

また、以下の23種は佐賀県から記録の無い種で、佐賀県初記録になります。

ミユキシジミガムシ、アカセスジハネカクシ、アシマダラカワベメダカハネカクシ、ツヤマルクビメダカハネカクシ、ナガハネカクシ、キアシコガシラナガハネカクシ、ヨコモントガリハネカクシ、チャイロチビマルハナノミ、ヒメマルハナノミ、リュウキュウダエンチビドロムシ、ウエダニンフジョウカイ、ミヤマクビアカジョウカイ、トゲアシチビケシキスイ、ヒゲナガチビケシキスイ、コヨツボシケシキスイ、ガマキスイ、キアシツブノミハムシ、クサイチゴトビハムシ、モンチビゾウムシ、オオミズゾウムシ、ワルトンクチブトサルゾウムシ、コブナシクチブトサルゾウムシ、タデトゲサルゾウムシ。

以下の7種は、コヨツボシケシキスイを除いて全て湿地性。

チャイロチビマルハナノミ

 

チャイロチビマルハナノミ

ヒメマルハナノミ

 

ヒメマルハナノミ

そのうち幼虫が水生のものは上記2種のみです。

ツヤマルクビメダカハネカクシ

 

ツヤマルクビメダカハネカクシ

この種は水辺にいます。

ミヤマクビアカジョウカイ

 

ミヤマクビアカジョウカイ

本種は湿地周辺でしか見られません。多分、幼虫は湿地周りの湿った場所に生息していると思われます。

ガマキスイ

 

ガマキスイ

本種はガマの穂に集まります。

ワルトンクチブトサルゾウムシ

 

ワルトンクチブトサルゾウムシ

コブナシクチブトサルゾウムシ

 

コブナシクチブトサルゾウムシ

上記2種は湿地性のタデ科(ミゾソバ、ヤナギタデ等)に見られます。

コヨツボシケシキスイ

 

コヨツボシケシキスイ

本種は樹液などに集まりますが、比較的珍しいです。

さらに、以下の45種は、脊振山系から記録の無かった種で、脊振山系初記録となります。大部分が水生昆虫と、湿地周辺に生息する種、そして草地性の種です。

コクロヒメゴモクムシ、トックリゴミムシ、キイロコガシラミズムシ、チャイロマメゲンゴロウ、ホソセスジゲンゴロウ、セマルガムシ、セマルケシガムシ、エゾコガムシ、セマルタマキノコムシ、ニセヒメユミセミゾハネカクシ、ニホンヒメメダカハネカクシ、オオシリグロハネカクシ、ツマグロスジナガハネカクシ、チビヒメクビボソハネカクシ、タチゲクビボソハネカクシ、ニジムネコガシラハネカクシ、キアシチビコガシラハネカクシ、カクコガシラハネカクシ、クロガネトガリオオズハネカクシ、クロズシリホソハネカクシ、ウスイロマグソコガネ、イブシアシナガミゾドロムシ、タテスジナガドロムシ、コウゾチビタマムシ、コガタノサビコメツキ、ベニボタル、モリモトクロチビジョウカイ、キイロニンフジョウカイ、ナミモンコケシキスイ、ツマフタホシテントウ、ハラグロオオテントウ、クロヒメハナノミ、ガイマイゴミムシダマシ、アズキマメゾウムシ、アロウヨツメハネカクシ、ツヤキバネサルハムシ、コガタルリハムシ、アカバナトビハムシ、クビボソトビハムシ、スキバジンガサハムシ、ヒシチビゾウムシ、オオタコゾウムシ、ダイコンサルゾウムシ、アオバネサルゾウムシ、クロトゲサルゾウムシ。

キイロコガシラミズムシ

 

キイロコガシラミズムシ

水質の良い植物の豊富な浅い水域にいます。RDB種です。

ツマフタホシテントウ

 

ツマフタホシテントウ

草地性で、余り多くありません。

ハラグロオオテントウ

 

ハラグロオオテントウ

クワにつくクワキジラミなどを捕食します。

(訂正、当初、クワハムシを捕食すると書きましたが、これは勘違いでした。間違いを指摘いただいた松原さんにお礼申し上げます。)

その他、以下の29種は他1のみで見つかっています。このうち、8種は水生昆虫および湿地性です。その他の多くは灯火採集で得られた種です。脊振山系からは既に記録があります。

ニワハンミョウ、クロモリヒラタゴミムシ、コヒラタゴミムシ、ゴミムシ、コゴモクムシ、キベリゴモクムシ、クロズカタキバゴミムシ、ニセコガシラアオゴミムシ、ブロンズクビナガゴミムシ、クビボソコガシラミズムシ、クロゲンゴロウ、ガムシ、トゲバゴマフガムシ、トビイロマルハナノミ、サツマコフキコガネ、スジコガネ、ハナムグリ、ヒゲナガコメツキ、ヨツボシオオキスイ、ヒメマキムシ、ヨツボシケシキスイ、ヒゲブトゴミムシダマシ、ナガニジゴミムシダマシ、ニセノコギリカミキリ、クロカミキリ、ヒナルリハナカミキリ、トゲヒゲトラカミキリ、ホタルカミキリ、ウスモンオトシブミ。

ブロンズクビナガゴミムシ

 

ブロンズクビナガゴミムシ

水辺のヨシやススキにいる種です。広島県以西から琉球まで、主として海岸沿いの地方で見つかっていますが、この標高では珍しいです。本州ではチャバネクビナガゴミムシ Odacantha aegrota (Bates)が低地の河川敷から山地の湿原まで分布するのですが、九州では、九重から瀬の本の高原地帯とその周辺でしか見つかっていません。かわりに本種がいるものと思われます。

クビボソコガシラミズムシ

 

クビボソコガシラミズムシ

キイロコガシラミズムシ同様、水質の良い植物の豊富な浅い水域にいます。本種を含む後2種もかつては溜め池など平地の止水域に普通にいた種ですが、現在は、山間地の農薬などが入りにくい谷間の最奥の溜め池などに細々と残っていて、国のRDB種になっています。

クロゲンゴロウ

 

クロゲンゴロウ

ガムシ

 

ガムシ

その他、他1で確認された特徴的な種は、イチゴハムシの短翅型です。

(イチゴハムシ短翅型: 嘉瀬川ダム産)

イチゴハムシは耕作地の周りや、耕作放棄地に生えるギシギシ、スイバなどに普通にいる種です。後翅は前翅の1.5倍ほどで普通に長く、灯火などにも飛んできます。この中に、後翅が短く、飛べない個体がいることに気がついたのは、2011年12月のことです。

ハムシの交流サイト、クリ・クラでイチゴハムシはイチゴを食べるのかという話題が出ました。
それに関連して♂交尾器などを調べた際、京都市高野川産で、普通の長さの後翅を持つもの(長翅型)と、短い後翅をもつ個体(短翅型)とが混ざっていることに気がつきました。

その時投稿した写真が以下のものです。

(京都市高野川産のイチゴハムシ♀長翅型と短翅型)

高野川産は河川敷内のギシギシで採集したと思いますが、3♂2♀あり、♂は全て長翅型、♀は長翅型と短翅型が1個体ずつであることを報告しています。

(クリ・クラについては、以下の報告を参照してください。
松村洋子・佐々木茂美・今坂正一, 2011. ハムシの情報交換会「クリ・クラ」の誕生と,ササキクビボソハムシ(新称)の日本からの再発見の経緯および紹介. さやばね ニューシリーズ,Tokyo,(3): 13-19.)

この問題に、クリ・クラ内でも様々な議論が出てきましたが、当時、佐賀大学の学生であった那須君から、卒業研究でこの問題を研究したいとの申し出があり、徳田先生の指導の下、研究を進められました。
那須君は2015年に中間発表をし、昆虫学会のポスター発表として、那須・今坂・鈴木・徳田の共同で、「イチゴハムシにおける分散能力と繁殖能力のトレードオフ」という報告をしています。

「長翅形は後翅や飛翔筋が発達しているだけでなく、短翅形に比べて脚が長く、歩行速度が有意に速かった。一方、短翅形は幼虫の発育期間が長翅形に比べて有意に短く、成虫寿命が長く、生涯産卵数が多かった。これらの結果は、本種においても分散能力と繁殖能力の間にはトレードオフの関係が見られることを示している。」と結論づけています。

イチゴハムシが西日本で主な食草としているのは、耕作地跡や荒れ地などに生えるギシギシやスイバなどで、これらの植物は、裸地ができると速やかに生えて、その後、急速に他の植物に取って代わられます。つまり、これらの植物を利用するイチゴハムシ長翅型は常に飛んで移動し、ホストを探す必要があります。

一方、湿地のタデ科(ミゾソバ、ヤナギタデ等)は、冬期を除いて年間を通じて同じ場所に生えているわけで、これらを利用する短翅型は、エサ資源が豊富な場所で、1カ所に留まって早く成長し、多くの卵を産んで、多くの子孫を残すことだけにエネルギーを費やせば良いわけです。

そのためには長い足も、飛ぶための長翅も必要ないというわけです。アブラムシやヨコバイなどの無翅型の戦略と同じですね。

この短翅型の個体群のうち、地域により分化したものが、オオクラヒゲナガハムシ Galerucella ohkurai Kimoto et Takahashi 本州(岩手県早池峰山)や、オゼタデハムシ Galerucella ozeana Nakane 本州(群馬尾瀬が原)であると私は考えていますが、まだ、検証はなされていません。

その後、那須君はクリ・クラメンバーの協力を受けながら、可能な限り全国のイチゴハムシの個体群を調査し、この短翅型と長翅型の比率が地域によって異なることを報告しています。

つまり、短翅型100%の福井県越前町を始め、新潟県までの北陸地域を中心に、そこからざっと同心円状に、離れるほど短翅型の比率が下がることを報告しています。

(短翅型の分布、黒い部分が短翅型の割合: Nasu et al, 2019より引用)

Nasu, S., Imasaka, S., Suzuki, K., Ito, J., Hoshina, H., Kanno, H., Suyama, C. & M. Tokuda, 2019. Continuous variation in hind wing length of Galerucella grisescens (Coleoptera,Chrysomelidae, Galerucinae) and genetic basis of wing length determination. Applied Entomology and Zoology, 54(1): 123-128.

那須君の調査は卒業研究という限られた時間内の調査なので、調査地点が余り多くありません。その点、今後、さらに多くの地点での調査が必要と思います。なぜ、北陸地方で短翅型の比率が高いのか、そして、湿原なども存在することから、当然分布するはずの東北や北海道などで、短翅型が見つからないのはなぜなのか、という2つの大きな問題点が残されています。

この2点が解き明かされれば、上記、オオクラヒゲナガハムシやオゼタデハムシとの関係や、新たな個体群の発見に繋がるものと推定しています。

彼は、北海道、東北、四国、九州、沖縄からは短翅型を発見できませんでしたが、私からの情報である熊本と佐賀からは少数の短翅型が発見されていることも追記しています。

その佐賀産が上記の嘉瀬川ダム産です。他1ではイチゴハムシを4年間で86個体採集していますが、その中に3個体(3♀)の短翅型が含まれていました。単純計算では3.5%になります。

(嘉瀬川ダム産の短翅型3♀、1個体ずつ後翅の長さが違う)

ただし、他の地点で得られた51個体は全て長翅型なので、これらも加えた嘉瀬川ダム産としては、2.2%になります。

熊本県瀬の本高原で採集した短翅型もそうでしたが、西日本では、山地の湿地環境で湿地性タデ科が群生する場所のみ、数パーセントの短翅型が出現するようです。

多分、氷期の、西日本でも北陸地方と同じように気温が低下した時代に、高層湿原で獲得された短翅型の遺伝子が、そのような場所の個体群にのみ細々と残されているのではないかと推定しています。

この嘉瀬川ダムの湿地は、大げさに言うなら、氷期の名残と言えるかもしれません。エゾコガムシやカタキンイロジョウカイの分布も同様と考えられます。

他1で確認された240種について、生態的に依存する環境を見てみますと、他1では、広葉樹林62と3/5、針葉樹林3と2/3、草地38と3/8、裸地4、河川57と5/7、湿地45と5/8、耕作地28と集計されました。
これを総出現数240で割ると、生態要素としては、広葉樹林26.08%、針葉樹林1.53%、草地15.99%、裸地1.65%、河川24.05%、湿地19.01%、耕作地11.69%になります。

地点の中で、かなり湿地と河川の比率の高かった入2と傾向が似ています。入2と比較すると、広葉樹林と湿地の比率がやや高く、草地と河川、耕作地の比率がやや低いと言った程度です。
周1や周2など広葉樹林が大部分の地点とは驚くほど構成が違います。

湿地性種が大部分を占めるかと想像したのですが、そういうわけではなく、周囲の樹林や草地、河川からも、かなり進出してきているようです。

依存環境限定種について見ていくと、出現種240種のうちのほぼ半数の、122種でした。
そこから算出した比率は、40.57%、2.46%、10.66%、0.41%、19.67%、19.26%、6.97%となりました。
依存環境限定種でも、広葉樹林の比率が増えるものの、全体の傾向は総出現種と余り変化がないようです。先に上げた入2の依存環境限定種とも同様の傾向です。

それでは、依存環境限定種で同様に計算して年度ごとの比率を出してみましょう。

2009年度は19.30%、3.51%、10.53%、0.88%、26.32%、26.32%、13.16%
2010年度は45.71%、0.00%、18.57%、1.43%、14.29%、12.86%、7.14%
2011年度は34.04%、2.13%、8.51%、1.06%、21.28%、26.60%、6.38%
2012年度は41.67%、0.00%、13.10%、1.19%、23.81%、19.05%、1.19%

2009年度はここだけ夏の灯火採集をしているので、かなり変則的になっています。水生あるいは水辺の種が大量に飛来したものと思われます。

年によってかなり傾向が変わっていて、判断が難しいですが、元々、改変して造成した湿地ですから、年ごとに種構成も変化していくと思われます。
それでも、最終的に2012年度の各比率と、4年合計の比率が比較的似ていることから、環境も構成種も徐々に安定してきていると判断できると思います。

上記の比率を見ながら考えたのですが、河川や湿地に依存する種は、夏などの特別な分布拡大時期以外は、ほとんど、元の生息環境を離れないようです。

一方、樹林性、草地性の種は、常に、自身の生息環境以外の場所にも移動して、生息場所を探索・拡大しているような感じがします。

多分、前者の水物は環境が不連続にあるので、そこを離れない方が有利であるし、後者の樹林や草地は比較的連続してあるので、近親交配を避ける意味でも、常に新開地を目指して分布拡大しているのでは無いかと思われます。

10. 他2 (佐賀市富士町大字関屋、標高310m)

嘉瀬川ダムの左岸、ダム本体から東北に1kmほどの、周2の林道の入り口に当たる地点です。ダム本体等に使用する採石場があった斜面で、道路沿いからダム湖の水面までの間を調査しました。

2009年の調査開始時はまだ採石等が行われていて立ち入れず、それが終了した後の2011年と2012年に調査しました。

大部分が草地の斜面とごく一部の雑木、そして、水際の石下などの採集です。

(他2のダム建設前と現在の写真: 赤円内が概略調査範囲)

他2では任意採集として、2011年5月7日、8月29日、10月24日、2012年5月24日、8月25日、10月31日の6回です。ライトトラップとピットフォールトラップを2011年5月4-5日に実施しています。

(2011年5月: 上流側、湛水が半分程度進行)

(2011年10月: ダム本体側、湛水はほぼ完了)

(2012年10月: ダム本体側、湛水は完了)

他2では2年間の調査で60種を確認できました。年度ごとでは、2011年(52種)、2012年(16種)でした。2年と調査回数が少ない上に、環境が単純でごく少ない種が確認されただけです。

このうち、以下の2種は九州初記録です。2種共に本州、四国のみ記録されています。伊藤さんに同定していただいきましたが、同定が難しいために記録が無かったと思われます。伊藤さんに深謝します。

ザウテルナガメダカハネカクシ、カクムネスジナガハネカクシ。

カクムネスジナガハネカクシ

 

カクムネスジナガハネカクシ

また、以下の7種は佐賀県から記録の無い種で、佐賀県初記録になります。2011年10月24日には湛水で河川や草地が水浸しになり、そのため水面に浮かんだハネカクシ類が多数得られました。大部分はその時の採集品です。

ホソフタホシメダカハネカクシ、ヒメシリグロハネカクシ、キアシコガシラナガハネカクシ、ヨコモントガリハネカクシ、ホソチビツヤムネハネカクシ、ルイスツヤムネハネカクシ、セマルヨツメハネカクシ。

(左: ホソフタホシメダカハネカクシ、右: ナミフタホシメダカハネカクシ)

どちらも水辺の葉上などにいます。良く似ていますが、ホソフタホシは上翅の黄紋が小さく、脛節は赤褐色、ナミフタホシは上翅の黄紋が大きく丸く、脛節は黒褐色です。

ホソチビツヤムネハネカクシ

 

ホソチビツヤムネハネカクシ

ルイスツヤムネハネカクシ

 

ルイスツヤムネハネカクシ

また、以下の8種は、脊振山系から記録が無く、脊振山系初記録になります。ウスモンノミゾウムシを除いて、いずれも河川敷や水辺で見られる種です。

キボシアオゴミムシ、セマルガムシ、ニホンヒメメダカハネカクシ、ナミフタホシメダカハネカクシ、アカバナガエハネカクシ、ヒロエンマアリヅカムシ、アロウヨツメハネカクシ、ウスモンノミゾウムシ。

また、以下の3種は他2のみで確認されました。既に脊振山系からは記録されています。

ヒラタキイロチビゴミムシ、ウスアカバホソハネカクシ、オオクロコガネ。

他2で確認された60種について、生態的に依存する環境を見てみますと、他2では、広葉樹林10と1/8、針葉樹林0、草地9と1/2、裸地2と2/7、河川19、湿地11と4/7、耕作地7と3/7と集計されました。

これを総出現数60で割ると、生態要素としては、広葉樹林16.89%、針葉樹林0.00%、草地15.83%、裸地3.81%、河川31.81%、湿地19.31%、耕作地12.36%になります。

比較的、他1の比率と似ていますが、広葉樹林が10%少なく、その分、河川の比率が多くなっているだけで、他の要素はほぼ同じです。

さて、年度変化を依存環境限定種で見てみましょう。

依存環境限定種は他2では24種で、全体の4割しかありません。生態要素としては、31.25%、0.00%、12.50%、0.00%、37.50%、16.67%、2.08%です。

2011年度は22.50%、0.00%、10.00%、0.00%、45.00%、20.00%、2.50%
2012年度は50.00%、0.00%、25.00%、0.00%、16.67%、8.33%、0.00%

トラップを実施した2011年度と、実施していない2012年度、湛水で色んな虫が流されて来た2011年と、それがない2012年と、各年度の条件が全く違うので、年度それぞれの比率もまったく関連のないものとなっています。

この2年では環境は殆ど変わっていないので、上記データから環境変化を掴むことはできないと思います。

次回は、いよいよ最終回で、下1地点と、全体のまとめを行う予定です。

つづく