2012年4月20日青木先生より「日本産ホソカタムシ類図説」が送られてきて、今坂よりのお礼メール。
[ご無沙汰しています。
昨日、ご高著ホソカタ図鑑を拝受しました。
いつもわざわざ届けていただいて、心よりお礼申し上げます。
(日本産ホソカタムシ類図説 表紙)
しかし、すごいですね。
あっという間に、図鑑ができてしまいましたか。
外野で好き勝手なことを言わせていただいていましたが、それが、次々に実現してしまわれるわけで、まったく、開いた口がふさがらないと言ったところです。
他の専門家のぐずぐず具合が際だってしまいます。
あたかも、ダニご研究の現役時代に、やりたい気分をバネにどんどん蓄えていって、退職後、止めの金具をバシッとはずし、一気にバーンと弾いたようなそんな
感じがします。
楽しくて仕方ないでしょう。
前の、手書きのものと、今回の図鑑を合わせ同定して、これで日本産は同定間違いをするほうがどうかしていると、言われそうですね。
重ねてお礼申し上げます。]
この本の「はじめに」では、「初心者や専門外の研究者が最初に姿形を見た感じからおよその見当をつけるには、写真の方がはるかに役に立つ。そのことは尊敬する甲虫研究者の一人である今坂正一さんからも指摘を受け、また甲虫学の先輩である平野幸彦さんからも自分が出したヒラタムシ上科のシリース(昆虫文献 六本脚)でホソカタムシ類の図説も出したらどうかと強く勧められていた。」とあり、私と平野さんから言われて、この本を出したかのように書かれています。光栄ですが、それ以上に、恐縮します。
(中扉のサイン)
しかし、何故か、上のメールに対する返事は無く、1年余り不通のままでした。
2013年12月12日、青木先生から「ホソカタムシの誘惑 第2版」が送られてきて、そのお礼の今坂メール。
[ご無沙汰しています。お変わりなく、ご活躍のようで、喜ばしい限りです。
本日、ホソカタムシの誘惑の第2版を受け取りました。
お心遣い、心より感謝いたします。
それにしても、こんなに早いスパンで、改訂版を出され、なおかつ、これほど大幅に改訂されているのは見たことがありません。
それだけ、急激に新知見が増加したためであることは明らかです。
全て貴兄の疾風怒濤のお働きによるものと、万人が認めるものと思います。
(ホソカタムシの誘惑の第2版 表紙)
ただ、確か島原のホソカタはまだ未解決のようですね。
それと、この本でまだ、分布が飛んでいると指摘されている、イチハシミスジ(これは確か写真で確認していただきました)と、タナカミスジを長崎県で確認しておりまして、近いうちに、記録しようと思っております。
九州は関西や東京ほど熱心な甲虫屋が多くないので、分布が飛んだり、未発見の種も少なくありませんが、そのうちまだまだ見付かると思います。
まだまだしばらくは楽しめそうですね。
ありがとうございました。]
当日の青木先生のメール。
「ご丁寧なメールをありがとうございます。
第2版にイチハシホソカタムシの新分布を採録しそこない、申し訳ありませんでした。
日本の種はもう終わりと思っていましたが、宮崎県からヒュウガホソカタムシSosylus crassus Aokiが出現し、これは第2版に間に合いませんでした。九州からはまだ何か出そうな気がしています。」
(ヒュウガホソカタムシ:Aoki & Narukawa, 2013より改変引用)
Aoki, J. & N. Narukawa, 2013. A new specis of the genus Sosylus from Japan (Coleoptera, Bothrideridae). Elytra, Tokyo, (N. S.), 3(1): 105-111.
2014年4月16日の青木先生のメール。
「長らくご無沙汰しました。お元気ですか。
小生、相変わらずホソカタムシに狂っています。日本産の種はほぼ研究しつくしたと思い、東南アジアのものに手を出しかけていますが、まだ日本からもポツポツと出てきます。日本のホソマダラホソカタムシは2種が混じっていることがわかり、目下材料を集めています。
明日から3日ほどNHK仕事で壱岐へ出かけてきます。壱岐のホソカタムシはほとんど報告されていないように思いますが、いかがでしょうか。
今坂さんにお聞きしたらわかるかと思い、お尋ねいたします。どんな種の記録があるか、ご存知でしたら、ご教示ください。」
さっそく返事。
[ご無沙汰しています。
今日は、九重の黒岳まで、虫取りに出かけてまして、先ほど帰ってきました。
ご返事が遅くなって済みません。
ホソマダラホソカタムシに2種、それはまた、興味深いですね。何か入り用がありましたら、お知らせ下さい。
一昨年、壱岐の甲虫をまとめましたが、その折りの集計では、壱岐からホソカタ
ムシの記録は有りません。
ちょっと重たいので、別メールに、壱岐の記録別刷りを添付します。
採集地の参考にはなるかと思います。]
青木先生のメール。
「お返事、ありがとうござました。では、今から行ってまいります。」
2015年2月24日、久留米昆の編集部、築島君から新しくでた青木淳一編著の日本産土壌動物―分類の為の図解検索 第2版を購入したいと頼まれて、青木先生にメール。
[ご無沙汰しています。その後お変わりありませんでしょうか?
ところで、青木淳一編著の日本産土壌動物―分類の為の図解検索 第2版が発行されるという話しを伺ったのですが、友人が買いたいそうです。
著者割りとかありませんでしょうか?]
早速、青木先生からの返事メール。
「こちらこそ、ご無沙汰しています。
今回の土壌動物の出版のため、全ての時間と力を出し切っていて、ホソカタムシどころではありませんでした。
著者割引のことですが、あくまで著者が購入する場合なので、2割引きになりますが、本が私のところに届き、それを私がご友人のところに転送しますので送料がかかってしまいます。それでよろしいでしょうか、ご友人の住所をお教えおきください。」
さらに2月27日青木先生のメール。
「先日知らせしたことが不正確でした。
今回の第2版は第1版に比べて内容がはるかに充実し、執筆者が39名から56名に、総頁数が約1000頁から2000頁に、検索精度が属どまりだったものが種レベルまで行った群がかなりあります。特に、トビムシとササラダニが種まで検索できるのは大きな進歩です。そのため、価格が大変高くなっており、定価が41,040です。
しかし、編者(青木)が紹介し、購入を勧めたことであれば、著者割引が適用され、価格は32,832円になり、送料は出版部が持ってくれるそうです。発送も直接購入希望者に(私を介さずに)届きます。
もし、ご購入を希望されるのでしたら、私にお申し付けください。」
今坂の返事。
[お忙しい中、御手数をおかけして、すみませんでした。
久留米昆の会誌編集を担当している若手(20才代)の築島君が欲しいと言っていたのですが、おいくらくらいでしょうか?
それほど高くないようなら、私自身も含めて、2冊、私の所へ送って頂けば手渡せますが・・・。]
3月5日青木先生のメール。
「メール有難うございます。本は近いうちに届くと思います。厚さは第一版が5.5cm、第二版が10.5cm、広辞苑(8.5cm)よりも厚くなりました。
トビムシとササラダニの検索が種レベルまで精度を高めたのが売りですが、甲虫のところはあまりご参考にはならないと思います。主に平野幸彦さんに書いていただきましたが、彼は図を描くのが苦手で、種への検索は例外的に図解ではなく、文章による検索表になっています。
なにぶんにも大きな本ですので、ミスや間違いも多く、目下正誤表の作成に取り組んでいます。昆虫のところではEctognathaとすべきところがEntognathaになったりしています。
2分冊になっていますが、編集部の考えではあくまでひとまとめの本であり、分冊にしたのは製本上の都合だけとしていますが、使ってみると、やはりI,IIまたは上巻、下巻とした方が良かったのではないかと後悔しています。」
届いた本の写真は以下の通り。ある意味、青木先生のお仕事の集大成と言えるかもしれません。
(日本産土壌動物―分類の為の図解検索 第2版 表紙)
(おび)
(背表紙)
(ササラダニの付図)
(甲虫の付図)
2016年5月29日久しぶりに青木先生からのメール。
「Bccにて一斉メールさせていただいております。
加入しているケーブルTV会社が買収されたようでメールアドレスが変更になってしまいました。
6月のある時点で古いメールアドレスでは受信できなくなってしまうようです。」
今坂の返事メール。
「お久しぶりですね。
昨年の北九州での甲虫学会は、ご病気で欠席と言うことでしたが、その後はいかがでしょうか?
かくいう私も、今年は早春から体調を崩し、2月に3日、3月に一週間入院しました。それまで入院の経験が無かったので、自身でもビックリです。
その後は食生活も含めて、生活を見直し、病院の指導の下生活改善を実行しています。
元気なつもりでも、そろそろ、一斉点検の時期に来ていたのでしょう。
その後は虫の方はいかがでしょうか?」
翌5月30日青木先生のメール。
「本当にお久しぶりです。体調を崩されたとのこと、どうされたのでしょうか。心配しています。
しばらく採集から遠ざかっていましたが、4月には与那国島へ出かけました。80歳を超えてから一人旅は危ないと言うことで、家内がついてきました。採集の邪魔ですが、仕方ありません。
手伝ってあげると言って、普通種を持ってきますが、「こんなの、要らん」と捨てるわけにもいかず、毒瓶に入れます(疲れます)。
どうしたわけか、ホソカタムシの本を出してから、急に採れなくなりました。緑内障で目が良く見えなくなったせいでしょうか。おまけに、P病まで背負いこみ、右手が震え、精密画が描けなくなりました。分類屋が目と右手をやられたら、もうおしまいです。
それでもやっと、生川さんと共著でホソマダラホソカタムシ属の論文がもうじき出ます。日本産は1種と思っていたのが、実は2種含まれていたと言う話です(1種は新種)。
お体の回復をお祈りしています。」
今坂の返事メール。
[余計なことを書いてご心配をお掛けしました。
2月に血尿が出て、調べて貰ったら、膀胱内にポリプが見付かりました。
ガンの疑いもあるので、内視鏡で見て貰ったところ、良性で、切除して貰いました。
その後1ヶ月ほどおとなしくしていたら、こんどは指先が痺れてきて、救急車で病院に運んで貰って調べて頂いたら、脳のごく細い血管が詰まったラクナ梗塞でした。
その後は塩分控えめ、野菜中心の食事療法と、定期的な運動、血液さらさら薬の服用で、現在は体調は良好です。
今日も黒岳までFITの回収とハンマーリング採集に出かけてきました。
何が採れているのか、これから広げてみるつもりです。
貴兄よりは1周り以上、歳下ですが、まあ、このくらいの歳になると、生活態度を改善しなさいと言うことでしょう。早く処置できて良かったと思っています。
それは気の毒ですね。
私も10年くらい前から左右共に手が多少震えます。しかし、なんとか固定しつつ、最近でも2-3mmのハナムグリハネカクシやノミハムシの♂交尾器は抜きます。
ただ、イライラするのと壊してしまうので、展足はしません。
目はなんとか大丈夫ですが、現地では何が採れたのか良く解りません。
虫っぽいものはゴミを含めて全て持ち帰るようにして、自宅で顕微鏡下でソーティングしています。
新種はどこの産地のものでしょうか?まあ、論文が出れば解りますね。」
それに対しての6月1日の青木先生の返事メール。
「お体の不具合、重大な病状でなくて、良かったです。ある年齢になれば、どこか具合が悪いのは当然のことですよね。
薬だけに頼らず、生活習慣改善で対処するのが一番とは思いますが、小生のように塩辛いものが好き、生野菜大嫌いの人間は大変苦労します。最近になってやっと慣れてきました。運動の方は我々虫屋は大丈夫ですね。
ミヤマホソマダラホソカタムシ(新種)の生息地は本州中部と四国の山地(1500-2300m)です。九州からはまだ見つかってません。既知種よりもズングリした感じで、胸背の両側の突起が鋭いです。」
2017年5月10日の今坂の問い合わせメール。
[ご無沙汰しています。その後お変わりありませんか。
昨年はご病気をされたと伺いましたが、ご平癒されたでしょうか?
私も病気後は生活改善をしたおかげで、体重も減り、だいぶ調子を取り戻し、近場であちこち出かけております。
ところで、若い虫屋の伊藤玲央君が屋久島に出かけて添付したようなホソカタムシを取ってきました。体長は3mm前後のようです。
余り見覚えがなかったので、そちらに転送します。
必要なら、差し上げて研究していただければ・・・との言葉ももらっています。]
(屋久島産ホソカタムシ)
5月10日の青木先生の返事メール。
「こちらこそ、長らくご無沙汰しました。お元気になられたご様子、何よりです。
さて、お送りいただいた画像のホソカタムシですが、採集された場所が屋久島ということからすれば、ミナミミスジホソカタムシと思えるのですが、触角が細長く、球桿部が小さすぎます。最も近いのがタナカミスジホソカタムシLeptoglyphus tanakaiAoki, 2011ですが、今までわかっている分布地が奈良県、京都府、広島県だけです。やはり、実物を拝見しないと、何とも言えません。1頭でも送っていただければ、何とか同定できると思います。未知種だといいのですが...
小生の体調をご心配いただき、ありがとうございます。私が抱えている病気はP病と緑内障で、両方とも今の医学では治せない病のようです。これ以上進行しないようにするしかありません。
右手の震えが止まらず、目の視野が欠けてきているので、以前のような虫の細密画が描けなくなりました。それでも、何とか新種記載は続けており、ミスジホソカタムシ属の1新種(対馬産)、ツヤナガヒラタホソカタムシ属の3新種(奄美大島、小笠原、滋賀県)の2論文をElytraに投稿したところです。お酒は毎晩チビチビやってます。」
再度今坂メール。
[貴兄に比べればずいぶん若いのですが、一応高齢者に入っていますので、自重しながら、楽しんでおります。
ミナミミスジホソカタムシは私も先年鹿児島で採集しましたが、やけに小さいという印象でした。
この屋久島産はアトキツツツホソカタと同程度の体長がありますので、別物と考えました。
タナカミスジホソカタムシは実物を見たことがありませんので何ともいえませんが、図鑑との比較では違うようです。
採集者は伊藤玲央君という若手ですが、貴兄に直接連絡するように言ってみます。
私も手が震えるので、展足はしないようにしてます。
それでも無理無理固定しながら、ハナムグリハネカクシ類(2-4mm)の♂交尾器は抜けるように練習しています。
何にしろ楽しみは続けた方が良いですね。今年はカーネットを真面目にやろうと、今、試運転中です。]
この後、伊藤君に転送して、直接、伊藤君から標本を送って見て貰ったところ、ミスジホソカタムシであったことを、伊藤君から伺いました。
2018年11月24日の今坂メール。
[ずいぶんご無沙汰しています。
ざっと、メールの履歴を調べてみたところ、2017年5月から連絡をしていないようです。
その後、ご病気をされて、精密画が書けなくなられたとの噂をお聞きしましたが、調子はいかがでしょうか?
私も来年は古希で、それなりに、あれこれ、病気や足痛や、モロモロ、年寄りに向かっているようです。
ところで、つい先日も、大阪の伊藤建夫さんとやりとりをしていまして、氏がホソカタに熱中されていることはご存じかと思います。
10年ほど前の貴兄の勢いそのままに、各地に出かけ、サンブルの蒐集に励んでおられる様で、たまたま、氏が所蔵されていない種を差し上げたところ、大喜びされていました。
それで、ふと思い出したのですが、だいぶ前に、島原の自宅で私が採集したホソカタが不明種で、それを採集しにいけないかと、貴兄から打診されたことがありました。
私は住宅地の2階のナイターで採集したもので、今となっては、無理でしょうと返事を差し上げたと思います。
あの種は、その後、種名が判明したでしょうか?
もし、判明したとしたら、記録していただきたいと思っていますが・・・。
今年は栃木の甲虫学会まで出かけるのは大儀で出かけません。
ただし、翌週の大阪での例会には出かけて、伊藤さん等とホソカタ談義をするかもしれません。]
それに対しての、当日の青木先生の返事メール。
「こちらこそ、ご無沙汰しています。
実は、この9月初めに突然首が動かなくなりました。難病だそうです。野山を歩くことも、採集も、顕微鏡を見ることも、細密画を描くことも、すべてできなくなりました。研究者としては、もうおしまいです。
8月までは元気にテニスもしていましたし、車の運転もしていましたが、この夏の宮古島への採集の旅が最後となりました。近くへ外出しても地面しか見えず、横断歩道を渡るにも信号機が見えず、車に轢かれそうになって、こわいです。
痛いのを我慢して左手で頭を持ち上げ、右手の一本指でパソコンを打つのがやっとです。神経科医と整形外科で診てもらっていますが、一向に改善しません。情けないです。
お尋ねのホソカタムシについてもすぐにお返事できなくて申し訳ありません。
何とかして治す努力はしてみます。」
青木先生の返事にビックリ。慌ててメールを書きました。
[ご返事ありがとうございました。
そんな、大変なときにわざわざご返事いただき、ありがとうございました。苦行を強制した様で、済みません。
原因が分かって、治癒できることを祈っております。
あのホソカタムシについて、いつか、ご返事いただけることを祈っています。
平野幸彦さんも入院されたと伺いましたし、重鎮が次々リタイアされると、何も解らなくなるので残念です。
何とか治療されてホソカタムシに戻ってきてください。]
私の悲痛な叫びに対しても、その後、青木先生からのメールは来ませんでした。
そして、この後も、今坂は、ホームページに記事を載せるたびに、青木先生にも案内メールを出していました。また、久留米昆蟲研究會の会誌KORASANAにホソカタムシを多く含む報告を書いたときは別刷りをお送りしていました。
それに対して、1年に1度くらいはお礼のメールが届いていました。
2020年1月25日青木先生のメール。
「本日、重たい郵便物が届きました。中にはKorasana とSatsumaの大変分厚い雑誌が入っていて驚きました。今坂様はじめ研究会、同好会の皆様のご熱心な活動の成果なのですね。
特に、「特集:甑島の甲虫」は私も採集に行きましたので興味深く拝見しました。採集された甲虫名を挙げながら全体が紀行文のスタイルなので、まことに楽しく読むことができました。」
2020年8月7日の青木先生のメール。
「ご無沙汰しています。
何度も英彦山に採集に通われ、美しい森、採集トラップ、得られた沢山の甲虫の写真など、拝見していて胸が踊ります。
羨ましいです。一方、私の方はほぼ寝たり起きたりの情けない状態になっています。
病が進行し、舗装された道路を200mほど歩くのがやっと。体重も18キロ減少しました。おまけに、緑内障も進み、論文を読むことも、書くこともできません。
それでも、50年間続けたダニの研究に区切りをつけ、老年になってから昆虫少年に戻り、狂ったようにホソカタムシの採集と研究に没頭できたのは幸せでした。
この6月に平野さんが他界されたのは何とも残念なことです。甲虫なら何でもわかる大切な人でしたね。
そちらの方はコロナウイルスの蔓延はどうですか。くれぐれもご用心ください。」
そして、2021年8月30日青木先生の最後のメールです。
「ご拝察のとおり、体調を崩しておリました。持病が進行し手足が震え、緑内障も進行して目がかすみ、ほとんど研究ができない状態です。
長文のメールはうてませんが、ずしりと重い甑島の報告書をとても嬉しい思いで撫でさすっています。素晴らしい業績ですね。
短い期間でしたが、「虫屋」として晩年を過ごさせてただいたことに感謝いたします。
ホソカタムシ屋としての業績を認めてくださり、嬉しいです。」
青木先生は以上のように、私が知っているだけでも膨大な科学的業績を上げられています。
その青木先生が2つの宿題を残して行かれました。
1つは、アトキツツホソカタムシ沖縄亜種のシノニム処理がどうなったのか、お知らせいただけなかったことです。私にメールで明言された後、2012年発行の日本産ホソカタムシ類図説ではまだ、沖縄亜種が明記されています。しかし、2013年発行のホソカタムシの誘惑の第2版では、沖縄亜種については触れられていません。この間、どこかにシノニム処理を発表されたのでしょうか?ご存じの方がありましたら、お知らせ下さい。
2つめは、このシリーズの2回目で取り上げた島原産不明ヒラタホソカタムシです。
2009年3月19日のメールで特徴について詳細にお知らせいただき、日本からは知られていない種ということを確認いただきました。
その後、この種については、触れられることがなかったので、2018年に思い出してお尋ねしてみたのですが、ご病気でもう、検鏡されることも難しかったものと思われます。
青木先生、退職後も少なくとも10年はホソカタムシで十分に楽しまれて良かったですね。
また、長い間、私の拙い問いに対して、懇切丁寧にお答え頂きありがとうございました。心よりご冥福をお祈りいたします。
青木淳一先生によって命名記載された日本産ホソカタムシは次の通りです。日本産70種1亜種中、18種1亜種(26.8%)を10年間で記載されています。
2008年
ケブカヒメヒラタホソカタムシ Microsicus hirsuta (Aoki) 本州(奈良),対,奄,加計,徳,沖縄
2009年
ヘコムネホソカタムシ Neotrichus cavatus Aoki 母
シリゲホソカタムシ Antibothrus hirsutus Aoki 奄,徳
2010年
コウヤスジホソカタムシ Ascetoderes koyasanus Aoki 本州(和歌山高野山)
アトキツツホソカタムシ沖縄亜種 Teredolaemus guttatus yambarensis Aoki et Imasaka 沖縄
2011年
オカダユミセスジホソカタムシ Lasconotus okadai Aoki 本州(茨城・群馬・東京・神奈川・福井・京都),九州(福岡・大分)
オオヒサゴホソカタムシ Glyphocryptus grandis Aoki et Okada 対
ホソヒサゴホソカタムシ Glyphocryptus toyoshimai Aoki et Okada 本州(岐阜),四国(徳島)
ツチホソカタムシ Pycnomerus yoshidai Aoki 四国(徳島・愛媛),屋
ホソミスジホソカタムシ Leptoglyphus kubotai Aoki 九州(宮崎),伊(三宅),屋
タナカミスジホソカタムシ Leptoglyphus tanakai Aoki 本州(奈良)
2012年
クビレヒメヒラタホソカタムシ Synchita constrictus Aoki 石
セスジツツホソカタムシ Carbothrus hiranoi (Aoki) 九州(鹿児島),対,屋,種,奄,沖縄,石,西
2013年
ヒュウガホソカタムシ Sosylus crassus Aoki et Narukawa 九州(宮崎),対,屋,奄,西
2016年
ミヤマホソマダラホソカタムシ Namunaria montana Aoki et Narukawa 本州(長野・三重・奈良),四国(徳島)
2017年
ムニンツヤナガヒラタホソカタムシ Pycnomerus boninensis Aoki 母
アマミツヤナガヒラタホソカタムシ Pycnomerus nishii Aoki 奄
コブツヤナガヒラタホソカタムシ Pycnomerus strumiger Aoki 本州(滋賀)
クロミスジホソカタムシ Leptoglyphus carbonaceus Aoki et Ito 対