オオムクゲキスイの標本を探しています

今春、神奈川の平野さんが「日本産ヒラタムシ上科図説第1巻」を発行されたことは、このホームページでもお知らせしました。

http://www.coleoptera.jp/modules/xhnewbb/viewtopic.php?topic_id=86

読者の評判はなかなか好評で、引き続き、続編の準備を続けられています。

その平野さんから、

「ヒラタムシ上科第2巻にキスイムシ科、ホソヒラタムシ科などを予定していますが、オオムクゲキスイ Biphyllus satsumanus Nakane, 1988の標本が手に入りません。

どうしても入手できないときはタイプを借りますが、できたら、きれいな標本を撮影したいと考えています。
ご協力、頂けると助かります。」

との依頼が届いています。

今坂の手元には、この種の標本は所蔵しておりませんので、どなたか、ご協力いただける方はいらっしゃいませんでしょうか?

問題のオオムクゲキスイ Biphyllus satsumanus Nakaneは、図鑑等にも掲載されたことのない種なので、ご存じの方も少ないのではないかと思います。

この種は、鹿児島大学で教鞭を執られていた中根猛彦博士が、1984年5月3日に鹿児島県栗野で採集された1♀をもとに、新種記載された種ですが、その後の記録はないようです。

中根猛彦(1988)日本の雑甲虫覚え書き3. 北九州の昆蟲, 35(2): 77-82.

記載文によると、体長3.7mmで、ナミゲムクゲキスイ Biphyllus inaequalis (Reitter)(体長2.9-3.4mm)に似ているということなので、この種と共に紹介します。

ナミゲムクゲキスイの写真を見て下さい。

(ナミゲムクゲキスイ 上:上翅左側、中:背面、下:前胸右側縁)

中根博士によるオオムクゲキスイの付図は以下の通りです。

(オオムクゲキスイ)

オオムクゲキスイは、ナミゲムクゲキスイより大きく、前胸側縁は明瞭にノコギリの歯状で、上翅基部には目立ったへこみを持たないことにより、区別されるそうです。

上記ナミゲムクゲキスイ写真の、上翅肩部から斜めに金毛が光っている部分が、やや凹んでいますが、オオムクゲキスイではこの部分がフラットのようです。

鹿児島県栗野がタイプ産地ですから、鹿児島県や宮崎県などで採集された方の標本箱に眠っていないでしょうか?

疑わしい???
そうかもしれない個体をお持ちの方は是非、左上にある、「おたより」をクリックして、お知らせ下さい。

おまけとして、同じ中根博士の論文で記載された、クロムクゲキスイ Biphyllus kasuganus Nakaneも紹介しておきます。

この種は、奈良春日山産1♀をもとに、記載された種ですが、手元に、日田の昆虫巡査・佐々木さんが採集した祖母山山麓の大分県緒方町小河内産があります。福岡在住でヒラタムシ上科に詳しい、上野さんに同定して頂いた個体です。

両氏に感謝し、写真を紹介します。中根博士の付図は知られていますが、写真が紹介されるのは初めてだろうと思います。
前胸には、左右それぞれ3本の縦隆起線を持ち、側縁の後角前で、側方に尖って突出するのが特徴です。

(クロムクゲキスイ)