早春に九重まで行ってみました

2009年3月17日、前日からの暖かさに誘われて、九重の黒岳まで出かけることにしました。
3月のまだ中旬というのに、前日は20℃を超えていました。
今日も多分超えそうです。

筑後川まで来ると一面菜の花の黄色に包まれていました。
遠くまで、黄色く霞んでいる感じがします。

(筑後川の菜の花)

約2時間懸けて、筑後川岸を通って、日田市街、玖珠川沿いと国道を走り、山へ登りだして九酔渓でちょっと一休み。
見渡すと陽光の中にチョウが飛んでいます。
スジグロシロチョウです。

(上:日だまりの林縁、下:スジグロシロチョウ)

帰るまでの間に、ルリタテハ、キタテハにヒメアカタテハ、そして、テングチョウを見ました。
暖かければ彼等は喜んで飛び回るのでしょうか?

草地で甲虫を探してみましたが、イラクサの仲間にヒメゾウムシの一種が見られたぐらいで、まだほとんど姿はありません。
しからば、日だまりの林縁の葉っぱを叩いて・・・と、落ちてきたのはハルニレノキクイムシ?、ナミテントウと、ツブノミハムシ、ヒレルホソクチゾウムシと、ヒメマキムシくらい。
カワラタケが着いてる材からはクロチビオオキノコ、枯れ草からはウスチャケシマキムシ。

(甲虫の写真)

まだまだ、めぼしい甲虫は出ていないようです。

近くの河原に降りて、石起しでもしてみることにしました。
さっそく、カワチゴミムシが出てきます。

(上:河原、下:カワチゴミムシ)

土砂ごと川の中に沈めると、隠れていたミズギワゴミムシ類が浮かび上がってきます。
結構逃げ足の早い彼等ですが、水面ではもがいているだけで、早くは逃げられません。
次々に石を起こしたり、土砂を水没させていくと、結構たくさんいました。
帰宅して調べてみると、マルミズギワゴミムシ Bembidion eurygonum Bates、クロミズギワゴミムシ Bembidion oxyglymma Bates、キアシルリミズギワゴミムシ Bembidion trajectum Netolitzky、ウスモンミズギワゴミムシ Bembidion cnemidotum Bates 、ヒラタアオミズギワゴミムシ Bembidion pseudolucillum Netolitzky など、5種も含まれていました。

(上:石起し、下:ミズギワゴミムシ類)

水際の濡れたところにはコモンシジミガムシ Laccobius oscillans Sharpが這っていて、土砂を沈めると、ハネカクシ類が浮いてきます。一番小さくて短いのはアカアシユミセミゾハネカクシ Thinodromus deceptor (Sharp)、その左は、ホソフタホシメダカハネカクシ Stenus alienus Sharpと思います。

(水辺にいた甲虫)

河原の石の上を歩いて、多少疲れたので、車の所まで戻りました。
道草している間に、はや、お昼になったようです。

川を眺めながら、日だまりの中で弁当にすることにしました。

(九酔渓の川)

まだほとんどの木々は芽吹く前です。

食事の後、黒岳の男池の駐車場まで走りました。
黒岳はまだ殆どの木々が堅いつぼみのままです。
さっそく、昨年から目をつけているヤニタケを確かめに行きます。

(3月の黒岳)

ヤニタケはまだ着いていました。しかし、虫に食われてボロボロです。

(虫に食われたヤニタケ)

一部は落葉の上に落ちていて、目を凝らすと、その落ちたキノコにも虫がいました。

(上:落ちているヤニタケ、下:付いているホソアカバコキノコムシダマシ)

ビーティングネットの上で、朽ちかけたキノコを揺すってやると、虫がぽろぽろ落ちてきます。
一昨年の秋、やっとの思いで1個体採ったホソアカバコキノコムシダマシ Pisenus chujoi Miyatakeがいくつもいます。
アカバコキノコムシダマシ Pisenus insignis (Reitter)もチョコマカ走っています。
しかし、一番多いのはキノコバエの仲間と思われる双翅類の幼虫です。彼らが圧倒的な数と食欲でヤニタケを分解し柔らかくし、甲虫たちはそのおこぼれと、柔らかくしてもらった恩恵に浴しているようです。

(上:落ちてきた小型の赤いのがアカバコキノコムシダマシ、大きいのと下:ホソアカバコキノコムシダマシ)

やはり、ホソアカバコキノコムシダマシは、晩秋と言うより、早春の虫のようです。

落ちているヤニタケを中心に、キノコを持って帰ることにしました。
湿気のあるヤニタケの表面や裏面には、モンヒメマキムシモドキ Derodontus japonicus Hisamatsuも多く歩き回っていましたし、その幼虫でないかと思われるものも歩いていました。

(上:モンヒメマキムシモドキ、下:右端にその幼虫らしきもの)

でも、秋に多く見られたムネモンコナガクチキ Mycetoma affine Nikitskyは見つかりませんでした。

キノコの下の落葉を篩うと、ムナクボヨツメハネカクシ Omalium niponense Sharpや、チビハバビロハネカクシ? Proteinus sp.が出てきました。
後種は真っ黒でやや大きいので、小さくて茶色のチビハバビロハネカクシ Proteinus crassicornis Sharpと同じものかどうか良く解りません。

(上:ムナクボヨツメハネカクシ、下:チビハバビロハネカクシ?)

秋に予想したとおりのヤニタケの春の状況が見られ、九酔渓で道草を食って時間が無くなったこともあり、思った以上のいろいろな虫の出現に満足して、帰ることにしました。

帰りがけに、ふと見かけた、倒木に密生したカワラタケを叩くと、アカハバビロオオキノコと共に、見慣れぬハネカクシが2個体落ちてきました。
左の個体はツマグロツヤムネハネカクシ Quwatanabius flavicornis (Sharp)に似ていますが、上翅の毛の点刻列の数が多く、色も黒くて、違うようです。

また、右の個体は一見ネアカマルクビハネカクシ Tachinus trifidus Sharpに似ていますが、この仲間は北方系のグループで、九州からは記録されていないようです。雄の尾節板や雄交尾器の形で区別されるようですが、どちらも良く解りません。

チビハバビロハネカクシ?も含めて、ハネカクシ屋さん、ご教示ください。

(上:ツマグロツヤムネハネカクシの近似種、右:ネアカマルクビハネカクシ?)

やはり、こんな早春のブナ帯には、見たことのない虫がいろいろいます。

それにしても、3月半ばというのに暖かく、シャツとベストだけで一日過ごしてしまいました。
標高800mほどは有るはずの場所が、なんと18℃です。

汗をかいたので、飯田高原の農協のレストハウスに寄り、冷たいお茶を飲んでから、娘の好きなジャージー牛乳を買って帰ることにしました。