やっと晴れた種子島4日目
4月25日
やっと晴れた4日目、どこから攻めようかと色々迷いながら、残された時間は、明日の午前中まで。朝食も少し早めて午前7時にしてもらいました。
最終日はほぼフリーにしておく必要があるので、今日の内にライトFIT等は全て回収しておく必要があります。
種子島は南北に50km余りと存外長く、途中の走りも大変です。とりあえず、南部のトラップは済ませてしまいましょう。
(種子島採集地概要)
と言うことで、宝満神社へ向かいます。
宝満神社近くまで来て、ちょっと、気が変わりました。
まだ少し時間が早く、虫が飛び出す感じではありません。
前之浜
それで、前之浜のベイトトラップ回収から始めることにして、先に、前之浜に向かいます。
(前之浜のベイトトラップ地点)
ベイトトラップには何故か、ほんの少しの虫しか入っていません。本当はもっと、砂浜性のゴミムシダマシやらエンマムシやら、様々なものを期待したのですが。
入っていたのは〇ホソサビキコリ、サビキコリの一種*、◎スナサビキコリ、〇オオサワシラケチビミズギワコメツキのコメツキ4種でした。
(前之浜のベイトトラップ回収品)
サビキコリの一種は、琉球系でしょうが、良く解りません。
(25日採集道程1)
なお、今回も、種子島初記録種には和名の後に*を付けることにします。
また、屋久島と種子島の両方が南限と思われる場合は○を、屋久島の記録がなく、種子島を南限とするする種には◎を和名の前に付けることにします。
同様に、種子島を北限とする種には和名の前に☆を付けることにします。
回収後は、背後の防風林を含めて、広くビーティングをしてみて、〇ツツナガハネカクシ*、アオバアリガタハネカクシ、〇ヒメアシナガコガネ、☆クシコメツキ、セボシジョウカイ、〇ホソヒメジョウカイモドキ*、ムナキヒメジョウカイモドキ、キバナガヒラタケシキスイ*、ミヤモトヒメテントウ*、ナナホシテントウ、◎ナミテントウ*、〇フタイロカミキリモドキ、◎ツヤキバネサルハムシ*、◎スイバトビハムシ*、サカグチクチブトゾウムシ、リュウキュウハナゾウムシ*が採れました。
このうち、ミヤモトヒメテントウもリュウキュウハナゾウムシも、九州西岸沿いに、甑島、五島など、リュウキュウハナゾウムシの方は、佐世保近郊まで分布します。
(左から、ツツナガハネカクシ、ミヤモトヒメテントウ、リュウキュウハナゾウムシ)
私はハマベヒメテントウはミヤモトヒメテントウの赤紋が縮小して、前後に分かれ、4つのモンになった型と考えています。
両者を同種と考えると、学名は古い方のmiyamotoiで、分布も、筑前沖の島、五島、西彼杵半島、島原半島、男女群島、甑島、種子島、トカラ中ノ島と九州西廻り分布で繋がることになります。
木野田さんは他にヒメキノコハネカクシの一種②*、ミツモンセマルヒラタムシ*、◎ウスイロサルハムシ*、ニセホソヒメカタゾウムシ*、コフキゾウムシを採られていました。
琉球から屋久島や九州南部まで北上しているニセウスイロサルハムシではなく、本土系のウスイロサルハムシが分布するのが興味深いです。
この種は屋久島の記録は無いので、種子島が南限になります。
(ウスイロサルハムシ)
國分さんもトビイロマルハナノミ、クロハナボタル、キボシツツハムシと☆ウエノハナゾウムシ*を採られていました。
(ウエノハナゾウムシ、左から、背面、口吻と触角、左前肢)
本種は当初、見たことのない種で、あるいは未記載種かとも思いました。
Kojima & Morimoto(1994)のハナゾウムシの総説の写真等では似たものがなく、良く解らなかったのですが、触角や前腿節のトゲの形など、細部を比較してみたところ、本種に該当することが解りました。
Kojima, H. & K. Morimoto, 2004. Taxonomic study of the subfamily Anthonominae from Japan (Coleoptera, Curculionidae). ESAKIA, (34): 147-186.
本種はトカラ悪石島、沖縄本島、石垣島から記録されていて、種子島は北限記録になります。
宝満神社
少し陽も高くなり、暖かくなってきたので、宝満神社に移動します。
(宝満神社)
まずはライトFITを回収します。
中には、結構虫が入っていて、微小なアリヅカムシが多数入っていました。
しかし、素人にアリヅカムシが同定できるはずもなく、専門家の野村さんに同定を依頼したところ、快く引き受けていただきました。
野村さんによると、「屋久島や本土との関係に興味があり、出かけるつもりでしたが、先を越されました」との返事で、渡りに船と言った感じでした。
アリヅカムシは種子島滞在中、ライトFIT、ベイトトラップ、カーネット、落ち葉篩と、様々な方法で得られましたが、天気や時期が悪かったのか、いずれもごく少数で、この宝満神社のライトFITのみ大量に得られました。どちらにしても、全体でも種数は余り多くなさそうです。
今坂のライトFITに入っていたのは、ムネミゾマルゴミムシ*、ハラアカモリヒラタゴミムシ、〇イクビモリヒラタゴミムシ、クビアカモリヒラタゴミムシ、カラカネゴモクムシ、コバヤシツヤゴモクムシ*、キイロチビゴモクムシ、キボシマメゴモクムシ、ムナビロアトボシアオゴミムシ、クロズホナシゴミムシ*、◎ホソセスジゲンゴロウ、ウスイロシマゲンゴロウ、〇クロシデムシ、〇ヨツボシモンシデムシ、ニセユミセミゾハネカクシ*、ナガハネカクシの一種*、クロズトガリハネカクシ、ネアカトガリハネカクシの近似種*、アオバアリガタハネカクシ、〇ムネビロハネカクシ*
アリヅカムシの一種、◎チャイロチビマルハナノミ*、アオドウガネ奄美亜種*、サビキコリ、◎ヒゲナガコメツキ、☆クシコメツキ、ルイスクシコメツキ、〇オオハナコメツキ、〇コクロハナボタル*、クロハナボタル、ムナキヒメジョウカイモドキ、マルガタカクケシキスイ*、マルキマダラケシキスイ*、〇カトウカミキリモドキ、チビイッカク*、☆ヤクシマウスイロクチキムシ*、ナガニジゴミムシダマシ、ヒサゴクチカクシゾウムシです。
ハネカクシ類はちゃんと同定できていません。
全体的に、河川近くの河畔林での採集のような種構成で、水辺近くで見られるゴミムシ類、ハネカクシ類と、樹林性の種が混じっています。
社の裏は宝満池で、谷の斜面の下には小流もありましたので、そういった構成になったのでしょう。
このうち、ホソセスジゲンゴロウについては、木野田さんのライトFITにも大量に入っていたらしく、彼が♂交尾器を抜いて写真を見せてくれたので、簡単に決定できました。それにしても、種子島は本種の南限になるようです。
琉球では、本土で見られないゲンゴロウ類も多いので、助かりました。
(ホソセスジゲンゴロウ、左から、背面、♂交尾器)
その他、コバヤシツヤゴモクムシ、コクロハナボタルも注目されます。
松田さんのご教示によると、種子島のコクロハナボタルも、本土産(全体黒色で、赤褐色部は無い)とは異なる色彩変異をしているようです。
(左から、コバヤシツヤゴモクムシ、コクロハナボタル)
また、木野田さんのライトFITには今坂分(38種123個体)を超える多くの甲虫(33種206個体)が入っており、上記以外にさらに、フトキノカワゴミムシ、◎アオグロヒラタゴミムシ、◎クロモリヒラタゴミムシ*、オオアオモリヒラタゴミムシ、◎ツヤマメゴモクムシ*、ダイミョウツブゴミムシ、コヨツボシアトキリゴミムシ*、ヒラタアトキリゴミムシ*、マメガムシ、☆ミナミマルガタチビマルハナノミ*、アカマダラケシキスイ、アオツヤキノコゴミムシダマシ、キボシツツハムシ、◎キバラヒメハムシ、キクイムシ2種が入っていました。
キクイムシは全く同定できていません。
このうち、ミナミマルガタチビマルハナノミは、奄美大島から西表島までの分布で、北限記録になります。
(ミナミマルガタチビマルハナノミ)
さて、トラップの分を先に紹介しましたが、林縁や枯れ木のビーティング、草地のスウィーピング等々、ようやく晴れたので、通常の採集にも励みました。
落ちてきたのは、◎アオグロヒラタゴミムシ、ハラアカモリヒラタゴミムシ、◎ネアカクロベニボタル、〇クロミナミボタル、〇クシヒゲジョウカイ、ヒメハナムシの一種、クロテントウ、(仮称)メスアカアオオビナガクチキ*♀、〇フタイロカミキリモドキ、☆ヤクシマウスイロクチキムシ*、〇ウスアヤカミキリ、キボシツツハムシ、アカガネサルハムシ、クロウリハムシ、◎キバラヒメハムシ、◎オオアカマルノミハムシ、◎ハナコブチビゾウムシ*、◎オオミスジマルゾウムシ*、◎イネゾウムシ*です。
ネアカクロベニボタルの本土産は、名前の通り、黒地で上翅基部のみが狭く紅色になる種ですが、種子島産は上翅全体が赤褐色になり、松田さんに同定して貰うまでは本種とは解りませんでした。
クシヒゲジョウカイは本土では盛夏に見られる種ですが、4月にいるとは驚きです。交尾形で繋がったまま落ちてきました。
(左から、ネアカクロベニボタル、福岡県産ネアカクロベニボタル、クシヒゲジョウカイのペアー)
他に國分さんは、☆クシコメツキ、クロハナボタル、〇カトウカミキリモドキ、ワダカミキリモドキを採られています。
ワダカミキリモドキは、カトウカミキリモドキをやや大きくして、上翅の青みを強くし、頭や前胸背・肢などが濃色になる種です。
本州南岸から徳之島まで記録されていて、結構少ない種です。北部九州では見たことがありません。
この日、木野田さんの採集品はありませんでしたが、多分、トラップ回収後は、キノコシバンムシが食い入っているキノコを探して集められていたのでしょう。
そのうち、どんな種が羽化して出てくるか楽しみです。
種子島各地で、最終日にでも落ち葉を篩って持ち帰ろうと思っていたのですが、多分、明日はもう宝満神社に立ち寄る時間は無いと思います。
それで、この後、落ち葉篩をすることにしました。篩って溜まった落ち葉の残渣を持ち帰って、自宅で、簡易ベルレーゼ装置にかける訳です。
簡易と書いたように、機器を備えているわけではありません。
大きなボールの底に水を張って、篩を置き、その上に残渣を乗せて、その上からZライトで照らすわけです。
宝満神社の最も大木が茂っているあたりで篩ってみると、確かに落ち葉は溜まっていましたが、その下は全部砂です。
それで、篩うと通常は黴びた落ち葉の残渣と礫や泥が多少混じるのですが、ここでは、ビニール袋の中にどんどん砂が溜まってしまいます。
これは初めての経験です。
さて、どんな虫が抽出されるか楽しみでしたが、帰宅後、3日ほどかけて抽出した結果は、あまり芳しいものではありませんでした。
(宝満神社の落ち葉から抽出した甲虫)
コウセンマルケシガムシ*、◎ヒサゴムクゲキノコムシ*、ムクゲキノコムシの一種②* Micridium sp. 1、ハバビロハネカクシの一種*、ツノフトツツハネカクシ*、アリヅカムシの一種、ムナビロコケムシの一種①*、オチバゾウムシの一種*、ケシクチカクシゾウムシ、ヒサゴクチカクシゾウムシなどが抽出できました。
落ち葉から抽出すると、いつものことですが、半数くらいは種名の決定が出来ません。
その群の分類が進んでいないと言う事もありますが、地域によって、産する種が違っており、特に離島のデータなど殆ど無いからです。
(ヒサゴムクゲキノコムシ)
この種はかつて、沢田さんに同定していただいた長崎産の本種に似ていたので、一応、その種にしましたが、自信はありません。
以前、ムクゲキノコムシ類を同定いただいた沢田さんに深謝します。
また、あと1種は、同じく沢田さんに同定していただいた久留米産と同じ、未記載種のMicridium sp. 1 だろうと思います。
つぎの写真でソーティング中に、アリヅカムシと一緒に写っています。
ただ、小さすぎて(多分、1mmよりだいぶ小さい)毒瓶の中で紛れて見えなくなってしまいました。
(アリヅカムシの一種とムクゲキノコムシの一種②)
アリヅカムシは野村さんにお願いしたし、また、コケムシもお願いしたいところです。
さらに、ハバビロハネカクシの一種は特に幅広だし、オチバゾウムシは通常濃い赤褐色のところ、種子島産は漆黒に近いので、どちらも、素人目には、既知種ではないような気がします。
(ハバビロハネカクシの一種、オチバゾウムシの一種)
(25日採集道程2)
さて、この日はせっかくの好天なので、昨日、虫が多かった立山周辺と、大野林道に集中的に時間を掛けようと考えました。
それで、弁当を調達したら、一目散に立山入り口まで走ります。
立山入り口
シイの花も3日目となって、追加種もあまりなさそうなので、むしろ、林縁の樹葉や下草、ススキなどをビーティングしていきます。
コヨツボシアトキリゴミムシ*、ケシマルハナノミ*、ルリナカボソタマムシ、◎オバボタル、クロスジツマキジョウカイ、☆ミヤタケヒゲナガジョウカイ、ミヤケヒメナガクチキ*、☆マルモンホソアリモドキ*、☆ヤクシマウスイロクチキムシ*、キボシツツハム、アマミコブハムシ、(仮称)キノダアラゲサルハムシ*、◎キバラヒメハムシ、◎オオアカマルノミハムシ、☆キベリヒラタノミハムシ、〇キバネマルノミハムシ、クロボシトビハムシ、☆コウスアオクチブトゾウムシ*、ニセホソヒメカタゾウムシ*、クチブトノミゾウムシ*、イヌビワシギゾウムシが落ちてきました。
このうち、マルモンホソアリモドキはトカラ中之島から与那国島まで、琉球に広く分布することが知られていましたが、近年、上甑島からも記録されました。
ススキからは、〇オオシリグロハネカクシ*やホソキカワムシ*、〇ウスアヤカミキリが落ちてきました。
(マルモンホソアリモドキ、ホソキカワムシ)
ホソキカワムシはその特異な姿から、初めて長崎県北部でススキから採集したときは、「何だこりゃあ?」と思いました。
他に似た種もないので、図鑑ですぐ名前は解りました。
なぜか、ススキを叩いても、めったに出会えない種です。
道路の中央から色彩豊かな虫がフッと飛び立ったのは、〇ハンミョウでした。
この種も屋久島が南限になります。
(ハンミョウ)
木野田さんは、繰り返しシイの花を掬って、その後は、道路沿いのシャリンバイを始め、花や梢を掬っていました。
〇ホソコハナムグリ、◎マルヒラタドロムシ*、オオダンダラチビタマムシ、クシコメツキの一種①*、ニンフジョウカイの一種B*、キバナガヒラタケシキスイ*、☆(仮称)メスアカアオオビナガクチキ*♂♀、〇フタイロカミキリモドキ、ヘリグロテントウノミハムシ、◎カシワクチブトゾウムシ、ミスジマルゾウムシ、リュウキュウハナゾウムシ*、アマミオビアカサルゾウムシ*を採られていました。
(左から、マルヒラタドロムシ、ホソコハナムグリ)
次に立山へ進みます。
立山
木野田さんは立山でも、さっそく、シイの花を掬い始めました。
(花を掬って中を確かめる木野田さん)
その後、道沿いを長い時間叩いて行かれたようで、木野田さんは、かなり多くの種を採られていました。
コヨツボシアトキリゴミムシ*、ホシハネビロアトキリゴミムシ、クロゲヒメキノコハネカクシ、セダカマルハナノミ*、〇ヒラタハナムグリ、〇ホソコハナムグリ、オオダンダラチビタマムシ、◎アカアシクロコメツキ、アカアシオオクシコメツキ、◎ヒラタクシコメツキ*、クシコメツキの一種①*、ニンフジョウカイの一種B*、☆ミヤタケヒゲナガジョウカイ、〇セボシジョウカイ、
(仮称)メスアカアオオビナガクチキ*♂、ホソカミキリモドキ*、〇カトウカミキリモドキ、〇コマルムネゴミムシダマシ*、〇アメイロカミキリ、キボシツツハムシ、☆オキナワツヤハムシ、クロウリハムシ、◎キバラヒメハムシ、☆ハバビロハネナシトビハムシ*、☆キベリヒラタノミハムシ、◎ルリイクビチョッキリ*、☆コウスアオクチブトゾウムシ*、◎ケブカクチブトゾウムシ、◎カシワクチブトゾウムシ、◎ケナガサルゾウムシ*など、30種です。
このうち、クシコメツキの一種①は琉球系の種と思いますが、良く解りませんでした。
(クシコメツキの一種①)
また、國分さんも、他に◎ヒゲナガコメツキ、☆クシコメツキ、☆カスミナガカッコウムシ、◎シコクフタホシヒメテントウ*、キイロテントウ*、☆ヤクシマウスイロクチキムシ*、オオクビカクシゴミムシダマシ、アカガネサルハムシ、セアカケブカサルハムシ、ヘリグロテントウノミハムシ、〇クロホシクチブトゾウムシ*、ササチャバネキクイゾウムシ*、ホオアカオサゾウムシ*を採られていました。
(オオクビカクシゴミムシダマシ、ササチャバネキクイゾウムシ)
上翅が赤褐色になるキクイゾウとしては、フジの枯れヅルにいるチャバネキクイゾウムシが一般的ですが、この個体には中央にあるべき菱形の黒紋がありません。
??と思っていたところ、前に城戸さんからいただいていた資料を見つけて、ササチャバネキクイゾウムシである事が解りました。
この種は伊豆神津島、三宅島、九州(鹿児島市)、トカラ中之島の分布が知られるようで、暖流(親潮)沿いに分布するようです。
資料を恵与いただいた城戸さんに感謝します。
私はむしろ道沿いの樹葉のビーティングと、枯れ木のハンマーリングをしながら、集落へ戻る方向へ進みます。
マツの枝を叩くと、何故か、〇ミヤマクロハナカミキリが落ちてきました。
(ミヤマクロハナカミキリ)
立ち枯れを叩いて、コメツキダマシが落ちてきたと喜んだのですが、よくよく見ると、アカアシクロコメツキでした。
コメツキも結構立ち枯れに止まっているようです。
他に、◎ヤマトデオキノコムシ*、〇ウグイスナガタマムシ、クロハナボタル、クロミナミボタル、☆カスミナガカッコウムシ、ツバキヒラタケシキスイ*、タイワンツツキノコムシ*、ミヤケヒメナガクチキ*、タカオヒメハナノミ*、ワダカミキリモドキ、〇ウスアヤカミキリ、(仮称)キノダアラゲサルハムシ*、イヌビワシギゾウムシ、シラケツチイロゾウムシ*が落ちたくらい。
林道の発達した樹林の始まり付近まで歩いてきていましたが、特にこれというものは追加できませんでした。
大野林道
先を進めましょう。
大野林道に入り、ともかく際奥の三叉路付近まで行きます。
(大野林道)
ここから木野田さんに運転をお願いして、今坂と國分さんは林道を叩きながら歩いて戻ることにしました。
木野田さんは、少し採集しては車に戻って、車を少し進めてと、その繰り返しです。
途中、植林が続く場所は、車が来るのを待って、車に同乗して通り過ぎ、雑木が出てくるとまた歩き出す、ということを繰り返します。
こうして、ほぼ林道入り口近くのライトFIT地点まで、2km程度は歩いたでしょうか。
結構疲れましたが、それより、へばらずに歩けたことに満足しました。
さすがに、長く歩いて叩いたこともあり、1地点としては最も多い41種を採集することが出来ました。
〇イクビモリヒラタゴミムシ、◎キンモリヒラタゴミムシ*、〇ウスイロヒメタマキノコムシ、オオシマハラボソメダカハネカクシ*、◎ヤマトデオキノコムシ*、ケシデオキノコムシの一種①*、◎ヤクヒゲナガハナノミ*、ルリナカボソタマムシ、キンイロエグリタマムシ琉球亜種、☆クシコメツキ、〇クロミナミボタル、◎オバボタル、☆ミヤタケヒゲナガジョウカイ、〇セボシジョウカイ、☆カスミナガカッコウムシ、〇クロオビセマルヒラタムシ*、〇ヤクチビオオキノコ、
マルミジンムシの一種*、◎キイロテントウダマシ、◎アミダテントウ、◎セスジヒメテントウ、ニジュウヤホシテントウ、ヒサゴホソカタムシ、〇コモンヒメコキノコムシ、ミヤケヒメナガクチキ*、〇カトウカミキリモドキ、〇クロチビアリモドキ*、〇ハムシダマシ、☆ヤクシマウスイロクチキムシ*、〇テントウゴミムシダマシ、ヤマイモハムシ、キボシツツハムシ、アマミコブハムシ、☆オキナワツヤハムシ、◎チビカサハラハムシ、☆ハバビロハネナシトビハムシ*、ヤツボシヒゲナガゾウムシ*、☆コウスアオクチブトゾウムシ*、☆ヤクオビモンヒョウタンゾウムシ、シロアナアキゾウムシ、タイワンモンクチカクシゾウムシ*、ハンノキキクイムシ*が採れました。
キンイロエグリタマムシ琉球亜種とヤクチビオオキノコは初採集で、ちょっと嬉しかったです。
(左から、キンイロエグリタマムシ琉球亜種、ヤクチビオオキノコ)
また、テントウゴミムシダマシが落ちてきて、ちょっと意外でしたが、既に、種子島から記録されていました。
屋久島にもいるようです。
さらに、綺麗な斑紋のヤツボシヒゲナガゾウムシが落ちてきました。
この類は各地に別種がいるので、よくよく確認してみましたが、残念ながら本土に普通にいる種でした。
(左から、テントウゴミムシダマシ、ヤツボシヒゲナガゾウムシ)
また、マルミジンムシの一種は微小種ながら、前胸背は赤褐色、上翅は黒褐色で翅端近くに一対の黄色の紋を持つ美麗種です。
日本産ミジンムシの中でこのような斑紋を持つ種は知られていないと思いますし、全く、属すら解りません。
とりあえず、(仮称)ツマキモンマルミジンムシとしておきます。
(ツマキモンマルミジンムシ)
木野田さんも、國分さんも、同じように叩いていきます。
(林縁をビーティングする木野田さんと國分さん)
木野田さんも多くは同じような種でしたが、別物として、ハラアカモリヒラタゴミムシ、クビアカモリヒラタゴミムシ、コヨツボシアトキリゴミムシ*、〇オオハナコメツキ、クロハナボタル、ルイスコメツキモドキ、ナガサキヒメテントウ*、◎キアシクビボソムシ、セアカケブカサルハムシ、☆キベリヒラタノミハムシ、ミスジマルゾウムシ、ヒサゴクチカクシゾウムシ、キクイゾウムシの一種②*を採られていました。
ナガサキヒメテントウは、微小で黒く丸いヒメテントウですが、長崎とあるにもかかわらず、地元長崎県では採ったことのない種です。
むしろ琉球で良く見られる種のようです。
(ナガサキヒメテントウ、左から、背面、腹面)
國分さんは、ニッポンヨツボシゴミムシ、〇キバネマルノミハムシを追加されていました。
林道入り口付近のトラップ地点まで歩いて、終わりにします。
今日は立山に続けて、良く歩きました。
毎日の採集で疲れているはずですが、次々に新しい種と出会うことで元気が出るのか、思ったより動けました。
最後にライトFITを回収します。
この中には、フトキノカワゴミムシ、◎アオグロヒラタゴミムシ、◎クロモリヒラタゴミムシ*、〇イクビモリヒラタゴミムシ、クビアカモリヒラタゴミムシ、ヒメケゴモクムシ、クロズホナシゴミムシ*、〇クロシデムシ、〇ヨツボシモンシデムシ、〇チビツツニセユミセミゾハネカクシ*、☆オオカンショコガネ奄美・沖縄亜種*、ビロウドコガネの一種①*、◎ヤクヒゲナガハナノミ*、◎アカヒゲヒラタコメツキ*、デメヒラタケシキスイ、ミヤケヒメナガクチキ*、クロバトゲヒメハナノミ*、☆ヤクシマウスイロクチキムシ*が入っていました。
オオカンショコガネ奄美・沖縄亜種は、九州産の原亜種とは、前胸背のシワなどだいぶ印象が違います。
(オオカンショコガネ、左から、種子島産奄美・沖縄亜種、壱岐産原亜種)
アカヒゲヒラタコメツキは九州本土では普通種ですが、種子島産コメツキを総括したArimoto & Ito (2018)には記録されていません。
Arimoto1, K. & R.Ito, 2018. Elateridae (Insecta, Coleoptera) from Tanegashima Island (Ryukyu Islands, Japan). Check List, 14(4): 681-692.
(アカヒゲヒラタコメツキ)
また、クロバトゲヒメハナノミはヒメハナノミのレビジョンであるTsuru(2021)で同定して、念のため畑山さんに写真を見て貰いました。
黄赤褐色の体に上翅と腹部のみ黒ずむ特徴から、本種で間違いないそうです。九州南部から沖縄まで分布します。
(クロバトゲヒメハナノミ)
ただ、Tsuru(2021)は属名をMordellochroaに変更し、従来の属名Tolidostenaはその亜属に降格させていますが、畑山さんは従来のTolidostena属のままで良いという意見だそうです。
Tsuru, T. K., 2021. Revision of the tribe Mordellistenini (Coleoptera: Mordellidae). Jap. S. Syst. Ent. Monog. Ser. (5): 1-282.
木野田さんもライトFITを設置していて、こちらには、他に、サタツヤゴモクムシ*、キイロチビゴモクムシ、ムナビロアトボシアオゴミムシ、ウスオビキノコケシキスイ*、〇カトウカミキリモドキが入っていました。
森田さんが、「サタツヤゴモクムシは飛ばないはずなのに・・・」と、メールしてこられましたが、飛ばないはずのゴミムシも、今坂のライトFITにはフトキノカワゴミムシが入っていたりするので、木登りして入った可能性もあります。
今後、このサタツヤゴモクムシの後翅については、確認してみます。
余談ですが、福岡県の山地では、ライトFITに、しばしばクロナガオサムシ九州亜種やセダカコブヤハズカミキリ北九州亜種なども入ります。
この2種は間違いなく飛べない虫です。
最初は???と思いましたが、クロナガオサムシ九州亜種はガの幼虫などを狙って樹幹を登り、セダカコブヤハズカミキリ北九州亜種も樹幹を這っています。
多分、風等で揺れたFITに触れて、吊しているFITに落ち込むものと考えられます。
そんな風で、飛べない虫もぼちぼちFITで採集されます。
ライトFITを回収した後は、宿に帰ることにしました。
一般道は余り虫は入らなさそうで、カーネットもここで畳みます。
今日のカーネットは殆ど大野林道だったので、採集データも大野林道で良さそうです。
回収した内容を見てビックリ!思いがけず色々入っています。
まず目に付いたのが、◎シリグロオオキノコとEpania(ヒメコバネカミキリ属)です。
(左から、シリグロオオキノコ、Epania属♀)
シリグロオオキノコは本州と九州の分布が知られ、種子島では既に大坪(2013)で記録されていますが、何処でも珍品で、キノコで見つけたことがありません。
種子島が南限になります。
また、Epaniaは、種子島から2種記録されていて、図示した個体は♀で、後腿節の膨らみが弱いことから〇サツマヒメコバネカミキリになります。
本種は本州(紀伊半島)、九州(鹿児島)、種子島、屋久島に分布します。カミキリとしては、比較的分布範囲が限られる種です。
また、目を凝らしていて、真ん丸のシバンムシを見つけました。
シバンムシをやり出してから初めての遠征の、木野田さんは、連日、シバンムシ探しに励んでいました。
しかし、マツでも、樹葉でも、キノコでも採れず、この種がやっと初見です。
木野田さんの同定によると、西田(2024)で紹介されたチビキノコシバンムシの一種* Scuiptotheca sp. 1 (未記載種)だろうと言う事です。
(チビキノコシバンムシの一種)
西田(2024)によると、国内産のこの属の既知種はチビキノコシバンムシ S. hilleri 1種のみですが、この報告で、明らかに違う未記載種3種が、同時に佐賀県嬉野市唐泉山で得られたことが報告されています。
他に、久米島から別の1種を確認したことが追記されており、国内にはまだ相当数の未記載種が存在することを示唆されています。
木野田さんにより、さらに詳細が明らかになることを期待します。
西田光康, 2024. 西九州と対馬のシバンムシについて. こがねむし, (88): 1-17.
その他、エビチャムクゲキノコムシ*、◎ヒメクロセスジハネカクシ*、◎ヒメヒゲナガコガシラハネカクシ*、キバネセミゾハネカクシ、ムナビロコケムシの一種①*、ケシデオキノコムシの一種*、〇ウグイスナガタマムシ、〇クロモンカクケシキスイ*、オオキバチビヒラタムシ*、タカオヒメハナノミ*、◎セグロニセクビボソムシ*、〇ハムシダマシが含まれていました。
エビチャムクゲキノコムシも沢田さん同定の個体と比較して同定しました。
ヒメヒゲナガコガシラハネカクシは、かつて、フタモンコガシラハネカクシとして、九州初記録で記録したことのある種です(今坂・伊藤, 2006)。
その後、和名も学名も両方変わってしまったので、分布記録を追うのは難しくなっています。
今坂正一・伊藤建夫(2006)九州初記録のハネカクシ7種. 月刊むし, (425): 33-34
(エビチャムクゲキノコムシ、ヒメヒゲナガコガシラハネカクシ、セグロニセクビボソムシ)
ケシデオキノコムシの一種は黄褐色で、飛翔していたのでテネラルではないと思いますが、全く名前は解りません。
(ケシデオキノコムシの一種)
以上で、25日の採集は終わりです。
やはり好天に恵まれると、それだけ動けて成果も上がります。
せめて、あと1日か2日、晴れが続くと、もっと色々採れてただろうに、と思いつつ、言っても詮無いことです。
安納海岸24日
なお、前回あれこれ書いていて、24日の最後の地点、安納海岸の採集を忘れていました。
蛇足ながら、付け足しておきます。
この場所は、海岸沿いの県道で、大きなハマウドがいくつも咲いていたので、何か飛来していないか気になって停車したのでした。
木野田さんは、アトホシヒメテントウの近似種*を始め、ナナホシテントウ、ダンダラテントウ、チャイロテントウ、◎ヒメマキムシ*、〇コモンヒメコキノコムシを採られていました。
(アトホシヒメテントウの近似種)
このアトホシヒメテントウの近似種というのは、まさしく、アトホシヒメテントウにソックリの未記載種で、上甑島では海岸のクロマツ葉上に限って、結構沢山見られた種です(今坂・國分,2022)。
今坂正一・國分謙一, 2022. 甑島採集紀行 その4(2020年9月). KORASANA, (98): 89-127.
城戸さんから、アトホシヒメテントウではないことを教えていただきましたが、 まだ未記載のようです。
また、今坂は、ミドリマメゴモクムシ*、〇セボシジョウカイ、◎ナミテントウ*、(仮称)メスアカアオオビナガクチキ*♂、〇ウスアヤカミキリ、トビイロヒョウタンゾウムシ、ヒサゴクチカクシゾウムシを採集しました。
特筆すべきは、ここのハマウドの花には、黒いハエ(ミギワバエ?)の大群が集まっていて、1つの花で千を超えていたものと思われます。
そのため、真っ白い花が、黒、或いは、濃い灰色になっていました。
この花を叩くと、それらのハエが黒い霧のように顔や体に当たってきて閉口しました。集まっていた甲虫はごくごく少なく、ハエに悩まされただけでした。
花は10数個咲いていましたので、これらのハエの総数は万を超えていたものと思われます。
後で、グーグルで覗いてみましたが、近くに小さな川が直接海に流れ込んでいるだけで、他に何もありません。
あのハエの大発生は何だったのでしょう。
つづく