来る3月14日から25日までの12日間、九州大学箱崎キャンパス50周年記念講堂において、熊本県の昆虫相の解明に全生涯を捧げた大塚 勲(いさお)さんの回顧展「大塚勲と熊本県の昆虫」展が開催されます。
会場へは、
徒歩の場合、JR博多駅より地下鉄中洲川端駅で貝塚行きに乗り換えて、箱崎九大前駅下車、松原門から入り矢印のような経路で徒歩約10分、
自家用車で出かけられる方は、国道3号線九大入り口から小松門を入って直進、2ブロック先を左折。
なお、九州大学の構内に車を乗り入れるためには通用門で300円を徴収されます。
「大塚勲と熊本県の昆虫」展は入場無料です。
会場には、大塚さんが集めた熊本県内の昆虫類約8000種2000箱のうち、代表的な種などを中心にインロー箱24箱が展示されています。
大塚さんは、元々チョウの採集・飼育・分類から昆虫の道に入られたようですが、戦後の混乱の中、いち早く同志と共に熊本県内に同好会を組織され、さらにチョウのみならず、トンボ、蛾、甲虫、ハエ、ハチと、あらゆる昆虫類について熊本県における分布の解明に情熱を注がれました。
同定が難しいグループは、直接、専門家の先生のお宅や、学会まで標本を持参して、同定を請われていたことは有名な話です。
大塚コレクションの最大の魅力は、大部分がこうした専門家の同定を経た標本であることです。
さらに、一部の分類群だけではなく、ほとんど全ての昆虫を含んでいることや、そのほとんど全てが熊本県産であることも重要です。
会場に展示されていない大部分の標本は、博物館の標本室の一角に大塚コレクションとしての場所を与えられ、それらを納めるために特注された表本棚に分類順に並べられています。
研究目的の方は、博物館の丸山助教にお願いすれば、それらの標本も見ることができるそうです。
標本の中には、茶箱の中に入ったままの未整理のものも多く含まれており、これらも活用される日が来るのを待っています。
このコレクションに、九州の昆虫相のエッセンスがほとんど全て含まれており、全体としての九州産昆虫を理解するためには、またとない材料になると信じます。
多分、そういう意味で、早々に、九州大学も大塚さんの標本の収蔵に、積極的に取り組まれたのであろうと想像します。
また、未解明の種群の研究を始める学徒にとっては、その群の代表的な九州産(熊本産)が、まるまる専門家の同定ラベルが付いた形でそろっていることになり、研究のスタートラインとして、またとない材料になると信じます。
「大塚勲と熊本県の昆虫」展の会場に並べられているのは、大塚コレクションのごく一部であり、その背後に膨大な数の標本と、それを採集し、調べ、記録して並べた大塚さんの70年余りの日々があったことを想像しながら、標本を眺めていただくと、さらに興味深いと思います。
会場には、大塚さんの著作、主幹発行されていた熊本昆虫同行会誌、生前使用されていた採集用具や標本作製器具なども展示されており、生前の大塚さんが偲ばれます。
また、標本の周囲には、多くのパネルが展示してあり、それらを読んでいただくことで、大塚さんの人生と標本の意義について、さらに理解していただけるものと信じます。
パネルには、大塚さんの遺影と共に、発見された代表的な種や、刊行された報告書類などの生前の業績、大塚さんの活躍の背景としての熊本県における昆虫解明史や、熊本県の代表的な昆虫、などが解説されています。
以上のパネル制作には、今坂と、熊本昆虫同好会の冨嶋さん、塚原さんが協力しました。
最後になりますが、貴重な大塚コレクションを寄贈いただいた大塚さんの遺族の方々、標本の受け入れを進められた九州大学総合研究博物館の多田内修・元館長(農学研究院教授)、標本を収蔵・整理し、「大塚勲と熊本県の昆虫」展を企画頂いた同博物館の丸山宗利助教の各位にも、永年の大塚さんの虫友として、心よりお礼申し上げます。
「大塚勲と熊本県の昆虫」展についての問い合わせ先:
九州大学総合研究博物館 092-642-4252