アオハムシダマシ属をめぐって(その6)

研究再開
2003年の正月、一念発起して研究を再開することを宣言し、協力依頼の手紙を矢継ぎ早に出した。それに答えて、各地の研究者・同好者50名以上の方から協力快諾の返事や、さっそくの標本が届いた。
それから1年余り経った2004年3月には、全種合わせて検視個体数が3000頭を越えた。各地の多くの個体を比較検討してみたところ、国内に予想以上にたくさんの種が生息していることが確認された。

ニシアオハムシダマシグループ
上翅の肩に角張った隆起線が存在する種は、ニシアオハムシダマシ、タカハシアオハムシダマシに加えて、さらに2種みつかった。
1種はNakane博士が京都市大悲山から記載したキアシアオハムシダマシあり、北海道大学博物館のNakaneコレクション中にあるホロタイプ(図1, 2, 3)を確認できた。(図は北海道大学に保存されているホロタイプ:左から、タイプラベル、ホロタイプ背面、♂交尾器背面)

この種はニシアオハムシダマシに酷似し、肢全体が黄褐色で、♂交尾器もよく似ているために、記載文からの判断ではニシアオハムシダマシの亜種的なものと考えていた。
しかし、ホロタイプ確認後、四国の広い地域で同所的にニシアオハムシダマシと共に出現することが解り、互いに別種と判断した。

もう1種は、紀伊半島の大台ヶ原・大峰山系に限って分布するオオダイアオハムシダマシで、体型はタカハシアオハムシダマシに似るが、上翅の隆起線はやや弱く、多少丸みを帯び、肢の色彩はニシアオハムシダマシに似る。
(図はホロタイプ:ホロタイプ背面、♂交尾器背面;触角・足)

この4種は、♂交尾器先端が一本にとがって腹側へ突出することでも共通している。
(左から、オオダイ・タカハシ各♂交尾器図)

(左から、キアシ・ニシの各♂交尾器図)

アカガネハムシダマシグループ
アカガネハムシダマシは近畿地方では優占種で、さまざまな色変わりがでることは先に述べた。
この種は肢と触角が短くて太く、上翅も比較的短く、通常腿節先端は黒くて緑色の光沢がない。
(九州飯田高原産)

♂交尾器の先端は弱く二叉状になっており、パラメラの部分が特に細長い点が特徴的である。
(左から、♂交尾器先端、および、背・側面図)

近畿以外では、色数が少なくなるなどの変異があり、肢の色も暗色部が無くなる個体も見られる。関東以北や四国で確認できないなど、興味深い分布を示す(分布図)。

また、紀伊半島のアカガネハムシダマシと思っていた中に、背面は金緑色に限定され、肢と触角がやや長く、肢全体が黄褐色のものが見つかり、♂交尾器を比較してみるとアカガネハムシダマシと明らかに区別できた。
(図はホロタイプ:ホロタイプ背面、♂交尾器背面;触角・足)

このキイアオハムシダマシは三重県平倉以南でのみ得られており、この地域の固有種と考えられる。
(分布図)

アカガネハムシダマシと共に、♂交尾器の先端は弱く二叉状になっており、パラメラの部分が特に細長い点が共通している。
(♂交尾器図)