久留米では、ほんの10日ほど前の2月10日と11日、夜半から朝までにそれぞれ、5-10cmほど雪が積もりました。
でも、この週末は20度近くまで暖かくなるとの予報で、2月19日(日)の朝から、今年最初の虫採りに出かけることにしました。
今年は久留米市内を再調査して、早い時期に市内の甲虫リストを作ろうと思っていまして、今まで手薄な、低地の採集を頑張ろうと思っています。
それで昨年から考えていた高良台の自衛隊演習地周辺に出かけました。
自宅から車で5分、演習地の中は縦横に一般車が通行できる道があります。
昨年、ハイノキニセサルゾウムシが採れた本山町が住宅地と演習地の境界になります。
良い天気で朝は相当冷えたようで、薄氷が張っていました。
寒くてまだ何もいないと思い、林縁の草地にイエローパンFITを設置することにします。
その後、林縁をビーティングしてみると、今年最初の虫、ワモンサビカミキリが落ちてきました。
落ちてきたときの形が独特です。
しかし後続はなく、気分を変えてキノコの付いた立ち枯れで、スプレーイングです。
樹皮下で越冬していたのか、アシブトコバチの一種が落ちてきました。
(補足
祝さんと三田さんのご教示によるとキアシブトコバチだろうということです。)
クチキムシとイクビゴミムシダマシ、ゴミムシダマシ類の幼虫も。
他に、マダラケブカチョッキリとチュウジョウエグリツツキノコムシ、ベニモンキノコゴミムシダマシ。
冬場でも、日当たりの良い林縁には、虫が集まっていることがあるので、叩いてみました。
落ちて来たのは微小なハチたちです。
多いのはコマユバチの1種で、何種か混じっているようです。
(補足
三田さんのご教示によると、コマユバチではなく、オナガコバチ科の Megastigmus属のなにがしか。イスノキモンオナガコバチに似ているが、正確には不明。写真の個体はすべて雌で、オスは全然色彩がちがっていて、一般的なイメージのコバチ類のように緑がかった金属光沢がある、とのこと。ご教示頂いた三田さんにお礼申し上げます。)
微小で黒いハチも混じっていました。
(補足
同様に、三田さんによると、左の大きな個体がコガネコバチ科、右の小さな個体がヒメコバチ科。コガネコバチの方はアオムシコガネコバチ Pteromalus puparumに色彩や体形が似ているそうです。)
ハチは嫌いではなく、多少は採っていますが、素人ではまったく調べようがないのが難点です。
しかしながら、私同様のハチ音痴にも朗報があります。
このほど、九州大学昆虫学教室の助教、三田さんが、きゅうはち会という、九州のハチ相を調査研究しようという会を旗揚げされました。
インターネットのやりとりを通じて、ハチの同定や、文献探索などを手助けし、九州各県のハチ相の解明を助長して、ひいては、九州産ハチ目録を作成しようという会です。
メールのやりとりが可能であれば参加できますので、参加したい方は、このホームページ左上の「おたより」をクリックして申し込んでください。
私から三田さんに中継し、招待メールを出していただきます。
さて、日当たりの良い草地の縁にも、虫がいないかと探してみます。
この縁の草やシダには、なぜか、モンチビゾウムシだけが沢山いました。
それと、背後にタケがあったからか、シコクフタホシヒメテントウとカワムラヒメテントウです。
あまり虫のいない時期だけに、甲虫以外も何でも一応採集したのが、次の写真です。
左側はカメムシやヨコバイの仲間、右上のハエの仲間は立ち枯れのスプレーで落ちてきました。キノコにいたのだろうと思います。
(追補、
カメムシ類について、まったく紹介していませんでしたが、さっそく、カメムシ屋の大分の伊藤さんからご教示です。写真同定によると、クモヘリカメムシ・ツヤアオカメムシ・シロヘリクチブトカメムシ・ルイスチャイロナガカメムシ?・イトカメムシ?・アカヒメヘリカメムシ・ケブカカスミカメムシ・マルカメムシだそうです。ご教示いただいた伊藤さんにお礼申し上げます。)
日当たりの良い立木には、ツルが絡まっていて、それを揺すると、ヨツモンカメノコハムシと派手派手のヨコバイの仲間が落ちてきました。
このツルは多分、ヒルガオの仲間だったのでしょう。
ヨツモンカメノコハムシは琉球系の外来種ですが、平気で成虫越冬出来るんですね。
この分だと、全国に広がる可能性があります。
この派手なヨコバイの一種は、簡単に図鑑で名前がわかると思ったのですが、暗に相違して図鑑には載っていませんでした。
ご存じの方、ご教示下さい。
(追補
伊藤さんによるとクロスジホソサジヨコバイ Sophonia orientalisと言い、冬場にしかいない虫のようです。
ネットで検索すると、生態もかなり面白い虫のようで、翅端の2つの黒紋が目に、黒い筋が体に見え、頭や本体が隠れてしまう擬態をしていると考えられているようです。詳しくは以下のサイトに。http://blogs.yahoo.co.jp/ho4ta214/35382742.html)
次には、草地に積んである枯れ草を叩いてみることにしました。
微小なナガカメムシの一種が出てきましたが、この種もカメムシ図鑑に出ていません。
(追補
この種も、伊藤さんによると、ヒメネジロツヤナガカメムシ(ヒメツヤナガカメムシ)Diniella pallipesで、海岸から内地まで草本の根際に見られるそうです。)
林縁や草地、枯れ草などで見つかった甲虫は以下の通り。
ワモンサビカミキリとヨツモンカメノコハムシ以外には、ヒメシリグロハネカクシ、オオシリグロハネカクシ、ルイスメダカハネカクシ、マダラチビコメツキ、ヨツボシホソアリモドキ、ケオビアリモドキ、ウスチャケシマキムシ、モンチビゾウムシくらい。
本山町の虫もこれくらいなので、他に移動します。
ここも、イエローパンFITを設置しようと思っていた処、大刀洗町西原の筑後川河川敷です。
水際と草の根際の、どちらも砂地に設置します。
暖かくなったら、ハネカクシ類やミズギワゴミムシ類、その他、水辺の虫達が入ることを期待しています。
多少、水辺の石起こしや、草の根際砂を掘ってみましたが、虫らしいものは何も出てきませんでした。
それではと、高良山へ向かいます。
南斜面の林道に入り、常緑樹林の斜面で立ち枯れのスプレーを試してみます。
スプレーでは、アカハバビロオオキノコとベニモンキノコゴミムシダマシが少し落ちただけで、すぐ枯れ枝落ち葉篩に切り替えます。
枯れ枝落ち葉篩は、西田さんが開発したハネナシナガクチキがメインの採集法で、斜面に枯れ枝が堆積し、そこに落ち葉が被さったところを篩って、虫を探す方法です。
私はビニール袋を被せて篩った細かい落ち葉を持ち帰り、自宅で、簡易ベルレーゼにかけて虫を抽出します。
出てきたのはごく少なく、左から、ヒサゴクチカクシゾウ、ツートンカラーのアナアキゾウムシの一種、下段のスネアカヒゲナガゾウ、イコマケシツチゾウ、チビノミナガクチキなど。
ツートンカラーのアナアキゾウムシの一種は、ほとんど、この落ち枝の篩のみで得ており、いまだ未記載のようです。
また、アリヅカムシも2種、サイカイヒゲナガアリヅカムシ脊振山亜種(左)とマルムネアリヅカムシ(右)です。
高良山でも水辺にイエローパンFITを設置し、さらに、枡形山のクヌギ林にも設置しました。
(高良山のYP-FIT)
(クヌギ林のYP-FIT)
さて、いつ頃になったら、これらのFITに虫が入るようになるのでしょうか?
今年はハチも積極的に採集することにしたので、いろいろ楽しみです。
時期が時期だけに、まともに、虫とは出会えませんでしたが、梅の花も咲いたことでもありますし、桜の花と菜の花と、虫達が飛び回るのもそう遠いことではないような気がします。