2025年の高良山採集会 その3

次は、斉藤さんの採集品を紹介します。

(斉藤さんの採集場所)

斉藤さんの採集場所

6月28日の採集会当日、斉藤さんは私がライトBoxを設置した樹林内のC地点に、白幕を張って灯火採集を実施されました。

(設置場所の林内)

設置場所の林内

斉藤さんは白幕から、以下の80種を採集されていて、実際に一人で白幕から採集された種数としては、彼が最高です。

メダカチビカワゴミムシ○、ヨツボシミズギワゴミムシ、セダカコミズギワゴミムシ、ヨツモンコミズギワゴミムシ○、ヒメツヤヒラタゴミムシ、オオズケゴモクムシ、コゴモクムシ、ミドリマメゴモクムシ、ムナビロアトボシアオゴミムシ、スジミズアトキリゴミムシ、コキノコゴミムシ、コヨツボシアトキリゴミムシ、アカケシガムシ○、コモンシジミガムシ、

ルイスツヤセスジハネカクシ○、アシマダラカワベメダカハネカクシ、チビヒメクビボソハネカクシ、オオドウガネコガシラハネカクシ、コモンクロアリノスハネカクシ、セダカマルハナノミ、トビイロマルハナノミ、ノコギリクワガタ、コブマルエンマコガネ、セスジカクマグソコガネ、クロコガネ、オオコフキコガネ、サツマコフキコガネ、コイチャコガネ、ドウガネブイブイ、サクラコガネ、セマダラコガネ、オオスジコガネ、マルトゲムシの一種○、ヒラタドロムシ、キスジミゾドロムシ、イブシアシナガドロムシ、

アラハダチャイロコメツキ、ヒゲナガコメツキ、ヒメホソキコメツキ○、クチブトコメツキ、ヒラタクシコメツキ、クシコメツキ、アカアシハナコメツキ○、ナガヒゲブトコメツキ、ヒメチャイロコメツキダマシ、(仮称)ハカタオオチャイロコメツキダマシ○、エノキコメツキダマシ、(仮称)ヒメムネミゾコメツキダマシ○、タイワンヒメトゲムシ○、コヨツボシケシキスイ○、ヨツボシケシキスイ、ミツモンセマルヒラタムシ、セモンホソオオキノコムシ、ツヤケシヒメホソカタムシ、ツヤナガヒラタホソカタムシ、ヒュウガホソカタムシ○、コモンヒメコキノコムシ、

オカモトヒメハナノミ○、アマミヒメハナノミ、チビヒメハナノミ、キイロカミキリモドキ、カトウカミキリモドキ、コクロホソアリモドキ、モンシロハネカクシダマシ、ホソアカクチキムシ、ムナビロクチキムシ、フナガタクチキムシ、ヤマトスナゴミムシダマシ○、コスナゴミムシダマシ○、ヘリアカゴミムシダマシ、エグリゴミムシダマシ○、ヨツスジハナカミキリ九州亜種、キマダラカミキリ、テツイロヒメカミキリ、ガロアケシカミキリ、ドウガネツヤハムシ、キカサハラハムシ、コクロアシナガトビハムシ、ウスモンツツヒゲナガゾウムシ、ガンショキクイムシ。

何度も繰り返して恐縮ですが、注目種の(仮称)ハカタオオチャイロコメツキダマシ、エノキコメツキダマシ、(仮称)ヒメムネミゾコメツキダマシ、ヒュウガホソカタムシ、ムナビロクチキムシなどは、斉藤さんも採集されています。

高良山初も17種も採れていて、白幕での灯火採集としては一番多いです。

また、水ものも割と多く、スジミズアトキリゴミムシ、アシマダラカワベメダカハネカクシ、オオドウガネコガシラハネカクシなど、新顔が採れています。

それから、その2でも報告したクロヒメトゲムシは正しくはタイワンヒメトゲムシでしたので訂正しました。
本種については、中村さんと三宅さんから、指摘していただきました。両氏にお礼申し上げます。

(タイワンヒメトゲムシ、上翅点刻)

タイワンヒメトゲムシ、上翅点刻

本種はYoshitomi et al.(2015)により、石垣島と台湾、緑島から新種記載された種です。
最近、伊藤ほか(2023)により見直され、日本本土産の中に、クロヒメトゲムシとタイワンヒメトゲムシが混ざって分布することが報告されました。
私はそれを見落としていたわけです。

Yoshitomi et al., 2015. Jpn. J. syst. Ent., 21(1): 35-58.
伊藤ほか, 2023. さやばねニューシリーズ. (53): 28-36.

2種の区別は、基本的には♂交尾器の違いによるものが確実ですが、上翅の点刻の粗密でもたいてい解るようです。
上翅の点刻は、クロヒメトゲムシでは密で点刻間の距離も近く、タイワンヒメトゲムシではより疎で、点刻間の距離が広く、特に合わせ目附近では点刻がごく少ないことで区別できるようです。

この報告では、クロヒメトゲムシは本州と四国から、タイワンヒメトゲムシは本州、四国、九州、対馬、台湾から記録されています。

(左から、コヨツボシケシキスイ、ヘリアカゴミムシダマシ)

左から、コヨツボシケシキスイ、ヘリアカゴミムシダマシ

コヨツボシケシキスイは、古い図鑑では九州の記録が載っていません。
ブナ体など、もっと標高の高いところで採れる種で、九州ではあまり多くありません。

ヘリアカゴミムシダマシは、既に高良山でも採集していますが、従来は琉球以南と九州では長崎と鹿児島の海岸近くで見つかっていました。

しかしその後、各地で発見されるようになり、本州でも近畿地方で見つかっているようです。
海岸近くで見つかっていた種が、このような低山地で見つかったことも多少不思議です。
この種も麓から飛来したのでしょうか?

(モンシロハネカクシダマシ)

モンシロハネカクシダマシ

本種はハネカクシに似て上翅が短い種ですが、ダマシと言う名前で解るようにハネカクシではなく、チビキカワムシ科に属する種です。
高良山では既に記録されていますが、むしろ、住宅地周辺で見つかり、結構珍しい種です。

斉藤さんは採集会に備えて、数日前の6月22日から、この周辺にFITを2箇所設置されていたそうで、その1つは、駐車場近くの中央分離帯の中です(I地点)。

(I地点・グーグルストリートビューより改変引用))

I地点・グーグルストリートビューより改変引用

ライトは付けず、FITだけで、周囲も吹きっさらしのアスファルト道路と言う環境なのに、何故か、38種が入っていました。
灯火採集との共通種は5種だけで、33種は別物です。

セマルマグソガムシ○、フジチビヒラタエンマムシ○、オチバヒメタマキノコムシ、チビタマキノコムシ○、クロツツマグソコガネ、オオメホソチビドロムシ○、キバネクチボソコメツキ、(仮称)ツクシヒメフトコメツキダマシ○、ネアカヒメフトコメツキダマシ○、キンケヒメフトコメツキダマシ○、ニホンヒメミゾコメツキダマシ、シバタコツツシバンムシ、ケジロヒョウホンムシ○、コケシジョウカイモドキ、マルキマダラケシキスイ、

ツヤヒメオオキノコムシ、カクモンホソオオキノコムシ、ムネビロカクホソカタムシ○、アナムネカクホソカタムシ、チャイロミジンムシ、オオタツマアカヒメテントウ、コヒラタホソカタムシ、ツヤツツキノコムシ、カバイロニセハナノミ○、ミヤケヒメナガクチキ、チャオビヒメハナノミ、アワヒメハナノミ、トビイロクチキムシ、クロツヤキノコゴミムシダマシ、アトモンマルケシカミキリ、チビハナゾウムシ、キクイサビゾウムシ、カシノナガキクイムシ○。

高良山初が11種も入っていますね。

結構、様々な種が、開けた場所も含めて放浪・飛翔しているようです。

(オオメホソチビドロムシ)

オオメホソチビドロムシ

渓流近くの湿気の多い朽木上で見られるオオメホソチビドロムシが、どうしてこんなところで採れたのか不思議です。
周囲にそんな環境は見当たりません。

(仮称)ツクシヒメフトコメツキダマシ、ネアカヒメフトコメツキダマシ、キンケヒメフトコメツキダマシ、ニホンヒメミゾコメツキダマシと、コメツキダマシは4種30頭余りも入っていました。全て畑山さんの同定です。

(キンケヒメフトコメツキダマシと触角)

キンケヒメフトコメツキダマシと触角

本種の触角の2節と3節が同じように短く、皿2つを重ねたようで、面白いです。

FITにはよく入るコメツキダマシですが、これを始めるまでは、科全体としても年間に数頭くらいしか入らない珍品でした。
良く飛び回るようですが、何時、どんな場所を、地表どのくらいの高さで飛び回っているのか、なかなか良く解らない虫です。

(左から、シバタコツツシバンムシ、カクモンホソオオキノコムシ)

左から、シバタコツツシバンムシ、カクモンホソオオキノコムシ

シバタコツツシバンムシは、高良山から既に記録しました(西田・今坂, 2024)が、四国、九州、平戸島で記録されている結構珍しい種です。
西田さんに写真で同定していただきましたが、「体長1.5mmと小さいことと、ツヤがあることから、大丈夫と思うが絶対ではない」とコメントされました。
西田さんは、このサイズの虫でも、♂交尾器を取り出して同定されるようです。

カクモンホソオオキノコムシは、綺麗な虫です。
久留米昆メンバーの城戸さんが福岡県宗像市城山で採集された個体を基に新種記載されました。
そのため、種小名に城戸さんの名前が入っています(Dacne kidoi Nakane)。

この虫を、故・松尾照男さんが平戸島で見つけたのを契機に、既知分布を纏めたのが次の図版です。
屋久島を除くと、何故か、九州北部に集中していて不思議です。
高良山は九州本土ではほぼ南限の記録になるようです。

なお、大塚さんのご教示によりますと、本種は広島県でも記録されているそうです(廿日市市渡ノ瀬ダム; 宮島: 中村, 2014)。四国や中国地方にもいるかもしれませんね。ご教示いただいた大塚さんに厚くお礼申し上げます。

中村慎吾編著, 2014. 広島県昆虫誌(改訂増補版) I~V. 2840pp.比婆科学教育振興会.

(カクモンホソオオキノコムシの分布・松尾, 2022より引用)

カクモンホソオオキノコムシの分布・松尾, 2022より引用

松尾照男, 2022. カクモンホソオオキノコ長崎県平戸島の記録と既産地. こがねむし, (87): 93-94.

斉藤さんのもう一つのFITは、夏目漱石の歌碑のあるG地点です。

(G地点・中央の白い構造物が歌碑・グーグルストリートビューより改変引用)

G地点・中央の白い構造物が歌碑・グーグルストリートビューより改変引用

ここのFITには14種入っていましたが、そのうち以下の9種が追加です。

ムクゲヒメキノコハネカクシ、ヒロエンマアリヅカムシ、オオカンショコガネ、ハラゲビロウドコガネ○、アカハラクロコメツキ、ヒメマキムシ、キボシツツハムシ、イチモンジハムシ、(仮称)シーモンノミヒゲナガゾウムシ○。

このうち、ハラゲビロウドコガネは以前は九州ではいなかったように思います。
九州の低地ではむしろ、カバイロビロウドコガネが一般的でした。
それがなぜか、1980年代後半くらいからポツポツ、九州各地でハラゲが見つかるようになり、現在では、全てハラゲになってしまっています。
カバイロはほとんど駆逐されてしまったかのようです。

ハラゲの♂交尾器は、個体によって、カバイロに似ているものから、大分違う形のものまで、それぞれ個体変異が大きいです。
あるいは、ハラゲは進出先でカバイロとどんどん交雑を繰り返し、カバイロの遺伝子も取り込んだまま、分布を拡大しているのではないかと思ったりします。

どなたか、DNAを解析して、検証していただけないものかと考えています。

(シーモンノミヒゲナガゾウムシ、背面、側面)

シーモンノミヒゲナガゾウムシ、背面、側面

今田さんに、このノミヒゲナガゾウの写真を見てもらったところ、「Choragus sp.(種名未決定)とするしか現状ない種だと思います。毛深く、上翅にC 字様の模様が見える種だと思います。」との返事でした。
C 字様の模様が見えるノミヒゲナガゾウムシの未記載種と言うことで、とりあえず、シーモンノミヒゲナガゾウムシと仮称しておきます。

ノミヒゲナガゾウムシについては、今田さんが研究を進められており、その第一弾として、Imada(2025)が発表されました。
この報告では日本産既知種のうち、Choragus属と、Melanopsacus属に含まれる6種のホロタイプを図示し、特徴について述べられています。
なるべく早く、多くの新種も含めて、日本産の全貌を解明し、解説していただきたいものです。
今後の研究発表をおおいに期待しています。

Imada, S., 2025. The type specimens of the genera Choragus Kirby and Melanopsacus Jordan (Coleoptera: Anthribidae) described by the Japanese Authors:Towards a revision of the tribe Choragini from Japan, Part 1. Jpn. J. syst. Ent., 31(1): 140-147.

南麓林道

(南麓林道での採集地)

南麓林道での採集地

さて、高良山の北側斜面での採集結果を一通り紹介したので、次は、南麓林道沿いに移りたいと思います。

採集地点図のうち、A地点は私のライトBox、L地点は國分さん、H地点は有馬さん、J地点は城戸さん、K地点は大塚さんです。(訂正 有馬さんの採集地点が違っていたので、訂正しました。)

南麓林道では、6月28日には、國分さん、城戸さん、大塚さんが灯火採集を実施されましたが、虫の飛来は北斜面に比べて、だいぶ少なかったようです。
さらに、有馬さんは個人的に、7月2日に灯火採集をされています。

木の茂り具合は、北斜面に比べてやや小ぶりですが、樹林の広がりは、むしろ南斜面の方が広い感じはします。
ただ、南斜面はどうしても日当たりが良い分、乾燥しやすく、樹林性の甲虫は、北斜面の方が多様性が高い傾向があります。

まず、國分さんです。
國分さんは蝶屋さんですが、事務局なので採集会にはいつも灯火採集セットを用意されます。
灯火採集セットを自身で用意できない人のためのものですが、今回の参加者は全員自前で用意されたので、L地点で、一人で採集されました。

通常、私と一緒に出かけたときは、國分さんは、主として蛾類を採集されます。
今回は一人なので甲虫も採集されたのでしょう。全部で14種採られていました。

ムナビロアトボシアオゴミムシ、セマダラコガネ、オオスジコガネ、ヒメクロツヤハダコメツキ○、クロツヤハダコメツキ、アカハラクロコメツキ、ナガコゲチャケシキスイ○、ヨツボシケシキスイ、フタオビホソナガクチキ、ムナビロクチキムシ、キマダラカミキリ、ヤマイモハムシ、ウスモンツツヒゲナガゾウムシ、ツシマオノヒゲナガゾウムシ。

このうち、2種は高良山初です。

次に、有馬さんの7月2日の採集品を紹介します。
有馬さんは、採集会の後も、個人的に灯火での採集を続けられました。
この日は、H地点で灯火採集と、ライトBox、ライトFITも実施されています。

(有馬さんのライトBoxと灯火採集)

有馬さんのライトBoxと灯火採集

灯火採集と、ライトBox、ライトFITの採集品は、それぞれ、16種、32種、24種で、灯火採集の種数を1とすると、それぞれ、2と1.5でした。
種数に限って言うと、Boxが一番効率的のようです。
種構成も、灯火採集は16種中8種(50%)、ライトBoxは32種中22種(69%)、ライトFITは24種中17種(71%)が、その機材のみで採れています。

つまり、特に小型の甲虫に関しては、ライトBoxやライトFITなど、目視に頼らず来たものを全部採る採集法が効率的と言えるでしょう。
こうした採集装置を、なるべく沢山、複数の場所に設置することが、多くの種を採集するには効率が良いと言えると思います。

結局この日、有馬さんは、全体で、以下の58種を採集されています。

メダカチビカワゴミムシ○、ヨツボシミズギワゴミムシ、セダカコミズギワゴミムシ、ヨツモンコミズギワゴミムシ○、クロモリヒラタゴミムシ、クビアカモリヒラタゴミムシ、ミドリマメゴモクムシ、オオアトボシアオゴミムシ、ムナビロアトボシアオゴミムシ、クロズホナシゴミムシ、キベリヒラタガムシ○、ルイスツヤセスジハネカクシ○、ニセヒメユミセミゾハネカクシ、チビヒメクビボソハネカクシ、チャバネコガシラハネカクシ、キアシチビコガシラハネカクシ、ヘリアカバコガシラハネカクシ、

セダカマルハナノミ、コクワガタ、オオコフキコガネ、ビロウドコガネ、ドウガネブイブイ、サクラコガネ、セマダラコガネ、コガネムシ、シロオビチビサビキコリ、フタモンウバタマコメツキ、ヒメクロツヤハダコメツキ○、ヒゲナガコメツキ、ヒメホソキコメツキ○、ヒラタクシコメツキ、クシコメツキ、エノキコメツキダマシ、(仮称)ヒメムネミゾコメツキダマシ○、ニセスジキノコシバンムシ○、ナガコゲチャケシキスイ○、マルキマダラケシキスイ、ヨツボシケシキスイ、

セマルチビヒラタムシ、セモンホソオオキノコムシ、ツヤケシヒメホソカタムシ、ツヤナガヒラタホソカタムシ、コモンヒメコキノコムシ、キイロホソナガクチキ、チャイロヒメハナノミ、チビヒメハナノミ、アワヒメハナノミ、アカモンホソアリモドキ、ホソニセクビボソムシ、モリモトチビキカワムシ、ムナビロクチキムシ、コスナゴミムシダマシ○、キマダラカミキリ、ナカジロサビカミキリ、ウスモンツツヒゲナガゾウムシ、ツシマオノヒゲナガゾウムシ○、カシノナガキクイムシ○、ガンショキクイムシ。

高良山初が9種含まれており、注目種もエノキコメツキダマシ、(仮称)ヒメムネミゾコメツキダマシ、ニセスジキノコシバンムシ、モリモトチビキカワムシ、ムナビロクチキムシ、ツシマオノヒゲナガゾウムシなどが採れていますが、北斜面ほどではないような気がします。

水ものの新顔としては、キベリヒラタガムシがあり、この種は、しみ出し水の水溜まりでもあれば生息する種です。

次いで、城戸さんは、道横に広場があるJ地点に車を泊め、近くに白幕を張られたそうです。

(城戸さんの採集地点・J地点・グーグルストリートビューより改変引用)

城戸さんの採集地点・J地点・グーグルストリートビューより改変引用

近くの谷筋は結構木が茂っていたそうですが、虫の集まりは良くなかったそうで、比較的短時間で終了されたとの話でした。
以下の9種とコメツキダマシの未同定種を採集されたと報告がありました。

ナガヒラタムシ、セスジカクマグソコガネ、ヒメクロツヤハダコメツキ○、セモンホソオオキノコムシ、ヒュウガホソカタムシ○、アオスジカミキリ、キマダラカミキリ、オキナワトビサルハムシ九州亜種、ウスモンツツヒゲナガゾウムシ。

高良山初は2種、アオスジカミキリとオキナワトビサルハムシ九州亜種は、他の人は採集していません。

最後に大塚さんです。

彼は、森林公園から下るハイキングコースが、南麓林道と出会う地点の広場(K地点)に車を泊めて、白幕を張ったそうです。

(K地点・大塚さんの採集地点・グーグルストリートビューより改変引用)

K地点・大塚さんの採集地点・グーグルストリートビューより改変引用

大塚さんは、枯れ木からコヨツボシアトキリゴミムシ、ニホンホソオオキノコムシ、ツヤケシヒメホソカタムシ、コモンヒメコキノコムシ、モリモトチビキカワムシ、ベニモンキノコゴミムシダマシ、ヒサゴクチカクシゾウムシなど7種をを採られました。

また、灯火採集では以下の33種を採られています。

ツヤホソチビゴミムシ○、ヨツボシミズギワゴミムシ、ドウイロミズギワゴミムシ○、セダカコミズギワゴミムシ、コイズミコミズギワゴミムシの近似種○、ウエノコミズギワゴミムシ○、ヒラタコミズギワゴミムシ、チャイロコミズギワゴミムシ、キンナガゴミムシ○、ムナビロアトボシアオゴミムシ、クロズホナシゴミムシ、スジミズアトキリゴミムシ、コキノコゴミムシ、アカケシガムシ○、セマルガムシ○、セマルケシガムシ、

セスジカクマグソコガネ、ヒラタドロムシ○、マスダクロホシタマムシ、ニセクチブトコメツキ○、ナガヒゲブトコメツキ、(仮称)ツクシヒメフトコメツキダマシ○、(仮称)ハカタオオチャイロコメツキダマシ○、(仮称)ヒメムネミゾコメツキダマシ○、セマルチビヒラタムシ、クロホソナガクチキ○、アカモンホソアリモドキ、ガロアケシカミキリ、クビアカトビハムシ、ウスモンツツヒゲナガゾウムシ、ホソチョッキリ、トゲアシヒゲボソゾウムシ○、イネゾウムシ○。

大塚さんの光源は水銀灯で、かなり強力であり、並んで一緒に採集すると、彼の白幕には、いつも私の数倍~10倍以上の虫が集まります。

それからすると、上記の種数というのは、國分さん、城戸さんの話同様、南麓林道の飛来は北斜面に比べると、だいぶ少なかったようです。

それでも、高良山初は15種も来てますし、未記載種のコメツキダマシ3種や、トゲアシヒゲボソゾウムシなど、色々来ています。

(トゲアシヒゲボソゾウムシ)

トゲアシヒゲボソゾウムシ

本種は福岡県では山地性で、英彦山や奥八女の山系では各地で見つかっていますが、高良山のような低山では見つかっておらず、意外でした。

ただ、目に付くのは樹林性の種と言うより、水ものや、河川敷・水辺の石下などにいる種が多いことです。

ツヤホソチビゴミムシは上流域以上の多少日陰になる水際の砂地にいる種ですし、ドウイロミズギワゴミムシはむしろ大河川中流部の砂地河川敷にいる種です。

(左から、ツヤホソチビゴミムシ、ドウイロミズギワゴミムシ、ウエノコミズギワゴミムシ)

左から、ツヤホソチビゴミムシ、ドウイロミズギワゴミムシ、ウエノコミズギワゴミム

ウエノコミズギワゴミムシ、ヒラタコミズギワゴミムシ、チャイロコミズギワゴミムシ、キンナガゴミムシ、スジミズアトキリゴミムシ、ヒラタドロムシも河川の灯火採集で見られる種で、ニセクチブトコメツキは河川敷周辺の草地で見られる種です。

これらの種がどこから大塚さんの白幕に飛来したのか、少し見てみましょう。
その2の有馬さんの白幕と違って、大塚さんの白幕は見晴らしがきく位置ではなく、林で遮られています。

(大塚さんの灯火採集の位置周辺・グーグルアースより改変引用)

大塚さんの灯火採集の位置周辺・グーグルアースより改変引用

さらに、大塚さんの白幕の位置から比較的近くに小渓流が2箇所ありますが、どちらも鬱閉された樹林の中の小流です。
唯一、川ものの可能性を考えられる高良川が1.2kmくらい離れた場所を流れています。
しかし、川幅20m未満のごく小さい川で、上記のような、様々なゴミムシ類や河川種が生息できるとも思えません。

(高良川・グーグルストリートビューより改変引用)

高良川・グーグルストリートビューより改変引用

結局、この大塚さんの白幕に飛来してきている水ものの種が、どこから来ているのか、良く解りません。

有馬さんの白幕に大量に飛来していたヒメドロムシ類も、ここでは見つかっていないので、筑後川から、山越えして飛来したわけでも無さそうです。

なお、ツヤホソチビゴミムシには、良く似たホソチビゴミムシとオオホソチビゴミムシがいます。
少し前まで、私は河川で普通に見られるホソチビゴミムシだけを認識していて、この3種が地元にいることも、そもそも3種の区別点すら私の中では曖昧でした。

それを、是正してくれたのが大塚さんで、矢部川で灯火採集をした折り、ホソチビゴミムシと共に飛来したオオホソチビゴミムシとの区別方法を解りやすく教えていただきました。
大塚さんに厚くお礼申し上げます。

以下の写真を見てください。

(左から、ツヤホソチビゴミムシ、オオホソチビゴミムシ、ホソチビゴミムシ)

左から、ツヤホソチビゴミムシ、オオホソチビゴミムシ、ホソチビゴミムシ

こうして並べると、ツヤホソチビゴミムシは上翅の点刻列がハッキリしていて、すぐに解ります。

難しいのはオオホソとホソチビの区別です。
大塚さんによると、オオホソでは複眼が突出していている割に、複眼そのものの面積はより小さいとのことです。
さらに、写真ではよく見えませんが、複眼の後あたりに長い毛が数本生えているそうです。

一方、ホソチビは複眼の突出はより小さく、逆に複眼の面積は大きく、複眼の後に毛は生えていないそうです。

こうして3種の区別が明らかになると、結構、3種共に身近にいることが解りました。
最も普遍的なのはホソチビゴミムシで、ちょっとした川でも砂礫の水辺があれば見られるようです。

オオホソチビゴミムシは、さすがにかなり大きな川でないと見られないようです。
それでも、筑後川と矢部川では、中流域の砂地河川敷の水辺には、ホソチビゴミムシに混じって、結構見られるようです。

ツヤホソチビゴミムシはやや上流域に入り、河川敷の一部が木立等で日陰になるような場所が増えると出現するようです。

これら3種の棲み分けは微妙で、矢部川上流の星野川では、灯火採集で3種同時に飛来しました。
1つの河川敷でも、ごく狭い範囲で条件を変えて棲み分けているようです。

次に、セダカコミズギワゴミムシです。

(セダカコミズギワゴミムシ)

セダカコミズギワゴミムシ

その2で、図鑑には「後翅を欠く」とあるのに、後翅があるのは何故と書きました。
するとさっそく、森田さん、中村さん、秋山さんから、それぞれ、以下の文献とその内容についてご教示にいただきました。
これらの方々に厚くお礼申し上げます。

秋山美文, 2006. 広島県産ゴミムシ類採集記録.比和科学博物館研究報告, (46): 83-91.
秋山美文, 2007. 有翅のセダカコミズギワゴミムシ.広島虫の会会報,(46):21.
伊藤 淳, 2014. 東京都稲城市の甲虫類 (3). 神奈川虫報, (182): 47-49.

まとめると、本種には後翅の長さに個体変異があり、様々な長さの後翅を持つ個体が共存するようです。
ヒメドロムシのある種群のように、環境が悪くなったら飛び出せる用意を、本来、遺伝的に持っているのでしょう。

さらに、コイズミコミズギワゴミムシの近似種です。

(コイズミコミズギワゴミムシの近似種)

コイズミコミズギワゴミムシの近似種

この種についても、大塚さんには、寺田(2016)を基に、丁寧に説明してくださいました。
大塚さんには重ねてお礼申し上げます。

寺田勝幸, 2016. 広島県で発見されたオビコミズギワゴミムシ属の1種について. 広島虫の会会報, (55): 5-9.

この報告では、この近似種と、トカラコミズギワゴミムシ、コイズミコミズギワゴミムシとの、形質ごとのそれぞれの相違点が上げられています。

最終結論がやや歯切れが悪いのは、コイズミコミズギワゴミムシが♀で新種記載されたためでしょう。
この種の♂は未知のため、コイズミとその近似種を♂交尾器での比較が出来ず、近似種との異同をハッキリさせることが出来ないということにありそうです。

この近似種とトカラとは、複眼の大きさ(トカラが小さい)、側頭の大きさ(トカラが広い)、上翅条線の様子が異なる(トカラコが浅い)などの特徴で、♂交尾器は良く似ているものの、区別は比較的容易だそうです。

さらにトカラは地下性で飛ばないことから、灯火に飛来する近似種とは、生態的に区別できるかもしれません。

近似種とコイズミの異同に関しては、上翅条線の様子が異なる(明瞭な条線の数が違う)くらいで、本質的な違いはなさそうです。

それで、結論としては、この近似種はコイズミに近いということになります。
あるいは、コイズミの地域変異との捉え方もできるかもしれません。
どちらにしても、コイズミの基産地(和歌山県那智山)で♂が再発見されて、♂交尾器が再記載されない限り、この近似種の確定はできないようです。

本種群については、私は平尾台からトカラコミズギワゴミムシを報告しています(今坂ほか, 2026)。
ホームページ上では小石原で灯火に来た個体をトカラとして紹介しています。
また、上甑島からは、ライトFITで採れたコイズミコミズギワゴミムシを報告しています(今坂ほか, 2021)。

コイズミコミズギワゴミムシの♂が再記載されれば、これらの記録も見直しが必要になると思います。

今坂正一・細谷忠嗣・國分謙一・伊藤玲央・有馬浩一, 2021. 甑島採集紀行 その3 (2020年7月). KORASANA, (96): 21-98.
今坂正一・和田 潤・國分謙一, 2026. 平尾台で2022年に採集した甲虫類. KORASANA, (106): 131-173.

最後に、セマルガムシについて、紹介します。

当初、大塚さんが、南麓林道で採集した個体を、ヒメセマルガムシと報告されました。
私はそれまで、ヒメセマルガムシの分布は図鑑類には北海道、本州と書いてあることから、九州にはいないものと思っていました。

しかし、最近、九州にも分布することが報告されているそうで、大塚さんは、採集した個体がやや小ぶりなことから、ヒメセマルガムシとされたようです。

改めて、この類の解説が載っている林(2008)を参考にして2種の区別点を調べてみたところ、2種は♂交尾器の形と、複眼の大きさで区別できるようです。

林(2008)の付図から、両目を含む頭の幅(a)と、複眼1つの横幅(b)を計測してみたところ、b/aは、セマルが19.6%、ヒメセマルが8.9%で、ヒメセマルの複眼ははセマルの半分以下の大きさであることが解りました。

(頭部と複眼、左から、セマルガムシ、ヒメセマルガムシ、林(2008)より改変引用)

頭部と複眼、左から、セマルガムシ、ヒメセマルガムシ、林(2008)より改変引用

また、報告では、「ヒメセマルガムシは灯火では得られていない」との一文もありました。

高良山産は大塚さんの計測ではb/aが15%とあり、灯火に飛来していたので、セマルガムシと判断したわけです。

林 成多, 2008. 日本産セマルガムシ属の同定と分布. ホシザキグリーン財団研究報告, (11): 93-102.

以上、6月28日の久留米昆蟲研究會高良山採集会と、その後の採集分を纏めて紹介しました。
この期間に高良山から確認できた甲虫は313種で、高良山初は113種に上ります。
事前にリストアップした1000種と合わせると、1113種が確認されたことになります。

また、採集会の6月28日採集分だけに限ると、北斜面で208種、南斜面で93種、合計で238種が採れていました。
7名での合計と言うことを考えても結構な種数で、高良山の種多様性はかなり高いと思われます。

北斜面は南斜面の倍以上の種が確認されており、メンバーが実感したとおりでした。
北斜面のみで確認された種は145種、南斜面のみが30種、両方で確認されたのは63種です。

この両方で確認された種の大部分は、さすがに樹林性の種でした。
何度も紹介した(仮称)ツクシヒメフトコメツキダマシ、(仮称)ハカタオオチャイロコメツキダマシ、エノキコメツキダマシ、(仮称)ヒメムネミゾコメツキダマシや、ヒュウガホソカタムシ、モリモトチビキカワムシなどの注目種も両側斜面で確認されていました。

これらの種は確実に、高良山で世代交代しながら生息していると考えられます。

思った以上に興味深い結果が得られたので、今年も、もう少し高良山の調査を継続したいと思います。