会誌 KORASANA 106号が発行されました

久留米昆蟲研究會より会誌 KORASANA 106号が、2026年1月19日に発行されました。

事務局では希望される方にそのKORASANA 106号を3000円で頒布しておりますので、その内容について紹介したいと思います。

KORASANA 106号をご希望の方は、このホームページ右上の「おたより」をクリックして申し込まれるか、あるいは直接、事務局 國分謙一 kokubu1951@outlook.jp
までお申し込みください。

また、スマートフォンやタブレットでご覧の方は、左下のメニューから、最下段のおたよりを選び、申し込んで下さい。

今回は23名の著者に55編の報文を投稿していただきました。

KORASANA № 106. 20260119 目次

報文
越智 恒夫 [ 小笠原 隆氏より頂いたアオハムシダマシ属の記録(2)(コウチュウ目:ゴミムシダマシ科、ハムシダマシ亜科) ] ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
元永 学 [ 「隧道マレーゼ」採集法の手引き ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
今田 舜介 [ かつての珍品ナガフトヒゲナガゾウムシの分布拡大の現状 ]・・・・・・・・・17
今田 舜介 [ 伊吹山におけるゾウムシ上科の文献記録 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・28

森田 誠司 [ 五島列島中通島のクロゴモクムシHarpalus (Pseudoophonus) pastor niigatanus Schauberger の記録 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
森田 誠司 [ 茨城県産数種のゴモクムシ類について ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・38
森田 誠司 [ 北海道風蓮湖のホッカイチビヒョウタンゴミムシ(新称)Dyschiriodes (Dyschiriodes) fassati (Kult, 1949) (鞘翅目:オサムシ科)の記録 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41
森田 誠司 [ ハネアカナガゴミムシのホロタイプについて ]・・・・・・・・・・・・・・・・47
森田 誠司 [ オオヒラタミズギワゴミムシBembidion (Melomalus)altaicum habui Jedli.ka の静岡県と茨城県からの記録とその所属 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49

堤 隆文 [ 英彦山でクロソンホソハナカミキリを採集 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・54
堤 隆文 [ 直方市でクビアカモモブトホソカミキリとクスベニカミキリを採集 ]・・・・・・・54
和田 潤 [ 九州初記録のキボシフトヒゲコメツキを採集-オオクロキノコゴミムシダマシの副産物として- ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55
足立 一夫 [ 福岡市内でのベーツヒラタカミキリの採集記録 ]・・・・・・・・・・・・・・・56
大塚 健之・今坂 正一[ 福岡県内2 か所でイネネクイハムシを採集 ]・・・・・・・・・・・・57
大塚 健之 [ オオクロキノコゴミムシダマシ福岡県篠栗町からの記録 ]・・・・・・・・・・58
大塚 健之 [ 熊本県八代市でチビコクヌストを採集 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・58
大塚 健之 [ 福岡県の河川敷の灯火採集で得られた甲虫の記録 ]・・・・・・・・・・・・・59
大塚 健之 [ 福岡県朝倉市でクロトラカミキリを採集 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・60

城戸克弥・今坂正一[ 「福岡県レッドデータブック2024」掲載の甲虫類の出典と現状]・・・・61
中島 淳・岩﨑 朝生・山本 佑治[ 福岡県うきは市におけるヒコサンセスジゲンゴロウの記録 ]75
小旗 裕樹 [ 長崎県と熊本県で採集したヤエヤマニセツツマグソコガネ ]・・・・・・・・・76
小旗 裕樹 [ 熊本県阿蘇市にてライトトラップに飛来したダイコクコガネを生存証明として撮影 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・77
小旗 裕樹 [ 石川県能登半島で採集した甲虫類 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・79
小旗 裕樹 [ 福岡県で採集した体型が細長いヒラタクワガタ雄 ]・・・・・・・・・・・・・81

野村 周平・西田 光康
[ 2021 年佐賀県太良町において落葉ふるいにより採集された土壌甲虫-付 FIT と落葉ふるいで得られた甲虫の比較一覧表― ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・83
[ 2021 年佐賀県太良町においてFIT により採集されたコケムシ ]・・・・・・・・・・・・・93
[ 2022 年佐賀県太良町において2 種のFIT により採集されたアリヅカムシ ]・・・・・・・・97
[ 2022 年佐賀県太良町においてFIT により採集されたコケムシ ]・・・・・・・・・・・・115

小旗 裕樹 [ 福岡県下の筑後川中流域で採集したムネホシシロカミキリとキバネアラゲカミキリ ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・112
廣川 典範 [ 佐賀大和インターチェンジ傍のホソコハナムグリとウスコモンマダラ ]・・・・125
廣川 典範 [ 佐賀市のモンキタマムシ ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・127
廣川 典範 [ 住宅街のオオシロカミキリ ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・128
廣川 典範 [ 杖材からマルクビケマダラカミキリ ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・129

今坂 正一・和田 潤・國分 謙一[ 平尾台で2022 年に採集した甲虫類 ]・・・・・・・・・・131
國分 謙一・今坂 正一[ 北九州市、平尾台の蝶とセミ(2021-2023 年) ]・・・・・・・・・・174
築島 基樹 [ 久留米市におけるハマダラハルカの目撃記録 ]・・・・・・・・・・・・・・・180

村上 貴文 [ 採集記録の訂正(八女市のクロヒカゲモドキ) ]・・・・・・・・・・・・・・・181
村上 貴文 [ 五島市(福江島)でウスキシロチョウを目撃 ]・・・・・・・・・・・・・・・・181
村上 貴文 [ 八女市黒木町でのゼフィルスの記録 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・182
村上 貴文 [ 八女市でのミヤマチャバネセセリの記録 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・183
村上 貴文 [ 八女市でのクモガタヒョウモンの記録 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・184
村上 貴文 [ 八女市黒木町でのヒョウモン類の記録 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・185
村上 貴文 [ 大分県宇佐市でのヒカゲチョウの記録 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・186
村上 貴文 [ ヒカゲチョウの南限調査記録 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・187
村上 貴文 [ 大分県宇佐市でのキマダラモドキの記録 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・188

小旗 裕樹 [ リュウキュウムラサキを久留米市田主丸町片の瀬公園で採集 ]・・・・・・・・188
今坂 正一・木野田 毅・國分 謙一・塚原 和之[ 2024 年に採集した種子島の直翅系昆虫 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・189
今坂 正一 [ ミヤマアカネとベニイトトンボを八女市で採集 ]・・・・・・・・・・・・・・192
今坂 正一 [ 筑後川でキオビエダシャクを採集 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・193

長田 庸平 [ 沖縄県豊見城市瀬長島のリュウキュウアブラゼミ ]・・・・・・・・・・・・・194
長田 庸平 [ 沖縄島でナガサキアゲハ雄の短尾型を採集 ]・・・・・・・・・・・・・・・・194
長田 庸平 [ アオノクマタケランの実を吸汁するシロウラナミシジミ ]・・・・・・・・・・195
長田 庸平 [ 沖縄県南城市でムラサキツバメを採集 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・195
長田 庸平 [ ツマムラサキマダラの矮小個体を採集 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・196
長田 庸平 [ アコンの枝に産卵するカバマダラ ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・196

コ ラ ム (斎藤 猛) コブマルエンマコガネを見る ~やぶにらみの観察メモ~・・・・・・・・130
編集後記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・197
訂正 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・198
投稿規定 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・199

(表紙)

表紙

表紙解説 ヒコサンセスジゲンゴロウ

今回の表紙には、本号掲載の「福岡県うきは市におけるヒコサンセスジゲンゴロウの記録」に用
いられた写真を採用しました。掲載をご快諾いただいた著者の中島 淳氏、岩﨑 朝生氏、山本 佑治
氏に深く御礼申し上げます。詳細につきましては、本号75 頁をご参照ください。 ( 築島 基樹 )

さっそく、本文の紹介に移りましょう。

まずは、越智さんの「小笠原 隆氏より頂いたアオハムシダマシ属の記録」の2回目で、中部~関東~東北地方に加えて、紀伊半島産(奈良県・天川村弥山)のものが多数含まれていて、全体で9種を記録されています。
綺麗な図版を付けていただいていますが、この仲間は、なかなか、写真だけでは種の区別が出来ない難しさがあります。

(越智図版)

越智図版

それから、今号のトピックの1つ、元永さんの「「隧道マレーゼ」採集法の手引き」です。
隧道マレーゼとは、初めて見る言葉ですが、ある条件がそろったトンネルの壁に、多数の飛来してきた昆虫類が集まる現象を言います。
シバンムシ研究の第一人者、酒井・元愛媛大教授の命名だそうです。

この隧道マレーゼが有効に働く為には、特殊な地形が必要なようです。
谷を上がってきた気流がトンネルに吸い込まれて、飛来した虫がトンネルの外に出られず、壁面に溜まる事になるようです。
詳しい条件は本文を参照してください。

(有効な隧道マレーゼの例)

有効な隧道マレーゼの例

地形以外にも、ある程度の標高と、周辺の植生、車がほとんど通らないトンネルで、1KM程度の長さもあることが必要なようです。
こうしたトンネル探索のために、県内各地のトンネルを探索された模様です。

(愛媛県内の有望なトンネル)

愛媛県内の有望なトンネル

隧道マレーゼで捕獲された甲虫類の写真が次の2葉ですが、甲虫ではほぼ全ての飛翔する科が出現しています。

(隧道マレーゼで捕獲された甲虫類1)

隧道マレーゼで捕獲された甲虫類1

(隧道マレーゼで捕獲された甲虫類2)

隧道マレーゼで捕獲された甲虫類2

多いときは、一度に数100個体を確認できると言うことですので、各地で、こうしたトンネルを探してみられてはいかがでしょうか・・・。

つぎは、今田さんの、「ナガフトヒゲナガゾウムシ」です。

(ナガフトヒゲナガゾウムシ)

ナガフトヒゲナガゾウムシ

この種はかつて珍品と思われていましたが、現在では日本国中、広範囲に分布が知られているようです。
今田さんは、本種がその地域で初めて記録された報告を丁寧に拾い集めることで、本種の国内での分布の経緯を調べて、本種をインドシナからの移入種と推定されています。

(ナガフトヒゲナガゾウムシの分布図、新発見時期により色分けされている)

ナガフトヒゲナガゾウムシの分布図、新発見時期により色分けされている

国内で最初に見つかったのは和歌山県(1978年)で、それが近畿、中部に広がり、1990年代になって、中国地方と関東でも見つかり、2000年頃から、四国、九州、北関東に及んでいった経過が良く解ります。
分布拡大の要因として、ナラ枯れが上げられています。

次に、森田さんによるゴミムシ類の5編です。

五島列島中通島のクロゴモクムシ記録
茨城県産数種のゴモクムシ類について
北海道風蓮湖のホッカイチビヒョウタンゴミムシ(新称)の記録
ハネアカナガゴミムシのホロタイプについて
オオヒラタミズギワゴミムシの静岡県と茨城県からの記録とその所属

(付図)

付図

クロゴモクムシ記録には、この個体の計測結果を始め、大陸の原亜種や、近似種であるニセクロゴモクムシとの検索表が付けられています。

茨城県産数種のゴモクムシ類では、5種のゴモクムシ類を記録し、種の特徴なども解説されています。

北海道風蓮湖のホッカイチビヒョウタンゴミムシは国内初記録で、その特徴について詳細に再記載されています。
近似種との区別点も紹介され♂交尾器図も示されています。
ただ、アマチュアの立場からすると、全体図や、この種群の検索表も示していただくと、よりこの種をイメージ出来るような気がします。

ハネアカナガゴミムシは、上翅が赤褐色を呈する特異なナガゴミムシですが、それだけで、果たして他の種と区別して良いものかと、ホロタイプを調べ、その結果を報告されたものです。

オオヒラタミズギワゴミムシを静岡県と茨城県からの記録され、亜属と亜種を決定されています。

堤さんは英彦山からクロソンホソハナカミキリを、直方市からクビアカモモブトホソカミキリとクスベニカミキリを報告されました。

また、和田さんは、熊本県南小国町のクヌギの伐採木から、オオクロキノコゴミムシダマシを採集され、その追加を狙って通われた際、紋付きの微小なコメツキ2型を採集されました。

サイズも斑紋も違い、てっきり2種と考えて、鈴木さんに見てもらったところ、1種の雄雌で、それも九州初記録となるキボシフトヒゲコメツキだったというわけです。

(キボシフトヒゲコメツキ♂♀)

キボシフトヒゲコメツキ♂♀

足立さんは、福岡市内の老松神社からベーツヒラタカミキリを記録されました。
九州では、暖流に直接洗われる九州西岸から北九州までと、宮崎から大分県南部まではこうした南方系の種が分布しますが、有明海沿岸では見られません。

(ベーツヒラタカミキリ)

ベーツヒラタカミキリ

大塚さんと今坂は、それぞれ個別に筑後川周辺で採集したイネネクイハムシを報告しました。
かつては、水辺があれば何処でも見られ、イネの害虫とされてこの和名が付けられたと思いますが、最近はめったに見られません。

(イネネクイハムシ、左から、今坂採集、大塚採集)

イネネクイハムシ、左から、今坂採集、大塚採集

大塚さんは昨年の成果の内、福岡県篠栗町のオオクロキノコゴミムシダマシと、熊本県八代市のチビコクヌストを報告されました。

(左から、オオクロキノコゴミムシダマシ、チビコクヌスト)

左から、オオクロキノコゴミムシダマシ、チビコクヌスト

また、筑後川と矢部川で実施した灯火採集の成果として、記録の少ない4種を報告されています。

(左から、コマルケシゲンゴロウ、アカアシホシカムシ)

左から、コマルケシゲンゴロウ、アカアシホシカムシ

(左から、ベニオビジョウカイモドキ、コヒメコクヌストモドキ)

左から、ベニオビジョウカイモドキ、コヒメコクヌストモドキ

なお、本文中のルリキオビジョウカイモドキはベニオビジョウカイモドキの誤りで、解説のツルヨシに付く等はベニオビの生態です。

さらに、朝倉市烏集院からクロトラカミキリを記録されています。

(クロトラカミキリ)

クロトラカミキリ

これは、斉藤さん、國分さん等と溜池巡りをした際、偶然湖畔に咲いていたナンキンハゼの花で見つけたものです。
記録の少ない本種が一度にまとまって採れ、何処で発生しているのか首をひねったものです。

それから、次は2024年に発行された福岡県レッドデータブックに掲載された、甲虫類の出典を纏めたものです。

城戸さんは2001年から、私は2014年から甲虫を担当していますが、ブック本体では未だに、選定根拠とした文献がほとんど掲載されていません。

それでその都度、別にこうして作成しているわけです。

次の中島さん等のヒコサンセスジゲンゴロウですが、カラー写真は、表紙の方に拝借しました。

ヒコサンセスジゲンゴロウは英彦山産を基に新種記載された種です。
近似のナチセスジゲンゴロウとの異同が問題視されていて、ホロタイプ同士の検鏡では決着が付かず、遺伝子を調べて確定させようという話になっています。

(ヒコサンセスジゲンゴロウとうきは市の生息地)

ヒコサンセスジゲンゴロウとうきは市の生息地

ただ、原産地の英彦山では記載後再発見されておらず、あちこち探索が続けられています。

今回発見されたうきは市は、筑後川の南岸に位置し、正確には英彦山山系とは言えません。
それでも、今までの記録からすると、基産地に1番近い場所です。
あるいは、英彦山山系での再発見までの次善の方法として、うきは市産で分析を試みても良いかもしれません。

小旗さんは、ヤエヤマニセツツマグソコガネを長崎・熊本両県から、ダイコクコガネを熊本県阿蘇市から、能登半島で採集した17種の甲虫と、福岡県産ヒラタクワガタの大牙が細長く体形も細長いことを報告されています。

(上段: ヤエヤマニセツツマグソコガネとその生息地、下段: 飛来したダイコクコガネ)

上段: ヤエヤマニセツツマグソコガネとその生息地、下段: 飛来したダイコクコガネ

ダイコクコガネの減少の原因の1つとして、ウシの飼料に混ぜて与えられる抗生物質ではないかと言われています。
その影響を受けない鹿糞を食餌にしてる可能性を、そのサイズが小ぶりなことから推定されています。

ダイコクコガネは阿蘇地方では採集禁止になっているとのことで、木幡さんは採集せずに、写真撮影だけに留められたようです。
50年以前には、都市部を除いて、どこの農家でも農作業用や自家用の牛乳絞りのため、数頭の牛馬を庭で飼っていました。
そんな時代には家の灯りにも飛んでくるほどの普通な種でした。

(能登半島で採集したマイマイカブリとヒメスナゴミムシダマシ)

能登半島で採集したマイマイカブリとヒメスナゴミムシダマシ

(福岡県産ヒラタクワガタ)

福岡県産ヒラタクワガタ

野村さんは、西田さんが2021年と2022年に佐賀県太良町において、落ち葉篩いと、FITによって得られたアリヅカムシとコケムシを主とする土壌甲虫を精査・同定され、報告されました。

最初の報告は、2021年太良町帆柱岳で落ち葉篩いで採集された土壌動物の種構成と、同地のFITで得られた種構成を比較されたものです。
このうち、得られたアリヅカムシとコケムシの総数は、FITで42種、落ち葉篩で20種で、合計は54種だそうです。

(2021年に佐賀県太良町で採集した土壌甲虫)

2021年に佐賀県太良町で採集した土壌甲虫

FITで全体の78%程度が採れているものの、落ち葉篩のみで採れた種も8種(15%)もあり、様々な採集方法を試す必要がありそうです。

なお、この時得られたアリヅカムシ34種のうち、九州初記録1種、佐賀県初記録が5種も含まれていたそうです。

2つめは上記2021年の太良町帆柱岳に加えて、太良町田古里川でのFITで採集されたコケムシの報告です。
全部で12種のコケムシを記録されていますが、5種が既知種で、7種は未記載種のようです。
どれもこれも良く似た種で、小型であるのも相まって、アマチュアでは2-3種の違いを認識できる程度でしょう。

(2021年に佐賀県太良町で採集したコケムシ)

2021年に佐賀県太良町で採集したコケムシ

3つめは、2022年に帆柱岳で地上FITと吊り下げFITを実施し、得られたアリヅカムシの構成を比較した報告です。
総計で44種が確認され、地上FITのみが13種、吊り下げFITが9種で、共通が22種だそうです。
ただ、2021年との比較で、その年度にしか採れていない種があるのが不可解と言うことです。

(2022年に佐賀県太良町で採集したアリヅカムシ)

2022年に佐賀県太良町で採集したアリヅカムシ

最後に、同様に2022年に採集されたコケムシです。
今回は2種類のFITを用いた成果ですが、前回より7種増えて19種になっています。
佐賀県初記録も5種追加されたそうです。こうなってくると、コケムシはほとんど素人にはお手上げです。

(2022年に佐賀県太良町で採集したコケムシ)

2022年に佐賀県太良町で採集したコケムシ

小旗さんは、筑後川中流部のクワの河畔林より、ムネホシシロカミキリとキバネアラゲカミキリを報告されました。
ムネホシシロカミキリの話題の中で、長く久留米昆蟲研究會の事務局を務められた荒巻さんの名前と写真が掲載されたのも懐かしく思いました。

(筑後川のクワから見つかったムネホシシロカミキリとキバネアラゲカミキリ)

筑後川のクワから見つかったムネホシシロカミキリとキバネアラゲカミキリ

廣川さんは、佐賀大和インター傍で採集された、ホソコハナムグリとウスコモンマダラを報告されました。

(ホソコハナムグリとウスコモンマダラ)

ホソコハナムグリとウスコモンマダラ

さらに佐賀市のモンキダマムシ、佐賀大和インター傍のオオシロカミキリ、杖作成のために山から採ってきて置いておいた枯れ木からマルクビケマダラカミキリが羽化したことなどを報告されています。モンキタマムシは外来種で、長崎市と鹿児島市が有名ですが、佐賀でも生息しているとは意外でした。

次は今坂ほかの「平尾台で2022 年に採集した甲虫類」です。
平尾台の調査は、福岡県レッドデータブックの調査の一環として、2021年から始めましたが、2021年以前の分については報告したものの(今坂ほか, 2021)、2022年分については、報告しないままになっていました。

平尾台の位置

今坂正一・國分謙一・和田 潤・築島基樹, 2021. 平尾台で2021年までに確認された甲虫類について-福岡県RDB調査の一環として確認された昆虫類を含む-. KORASANA, (97): 135-198.

平尾台の主な採集地点

2022年は3月から10月まで種々のトラップ類も含めて丁寧に調査した結果、806種を確認することが出来て、新たに、368種を追加することが出来ました。
さきの報告で795種を報告していたので、平尾台産甲虫類は1163種が記録されたことになります。

特筆種を纏めたのが次の図版1で、さらに、未記載種が多く得られたコメツキダマシ類を図版2に纏めました。
ただ、年間通じて調査した割りには、期待した草原性の種の新発見は少ないままで終わりました。詳細は本文を参照してください。

(平尾台図版1)

平尾台図版1

(平尾台図版2)

平尾台図版2

次の國分さんと今坂の報告は、この平尾台で確認した蝶48種とセミ7種を記録したものです。

この結果を以前の記録と比較すると、オオウラギンヒョウモン、ツマグロキチョウなど、草原性の種を中心に17種を再確認できませんでした。
多少とも草原の性格が変化しているようです。

築島基樹さんは日本固有種でREDにも掲載されているハマダラハルカを久留米市から記録されました。

(ハマダラハルカ)

ハマダラハルカ

五島福江島からウスキシロチョウを、八女市黒木町からアカシジミとミズイロオナガシジミを、八女市矢部村からミヤマチャバネセセリを、同じく八女市の星野村と矢部村からクモガタヒョウモンを、八女市黒木町からメスグロ・ミドリ・ウラギンのヒョウモン3種を報告されています。

(アカシジミほか)

アカシジミほか

(ヒョウモン類)

ヒョウモン類

また、大分県宇佐市のヒカゲチョウと、本種の南限調査として、熊本県産山村田尻の記録を報告されています。、
さらに、宇佐市からはキマダラモドキも報告されています。

(ヒカゲチョウ)

ヒカゲチョウ

(キマダラモドキ)

キマダラモドキ

小旗さんは迷チョウのリュウキュウムラサキを、筑後川河畔の久留米市田主丸町片の瀬公園から記録されています。

(リュウキュウムラサキ)

リュウキュウムラサキ

今坂ほかは、2024年に出かけた種子島の直翅系昆虫18種を塚原さんに同定していただいて報告しました。
行ったのは春で、バッタ類のほとんどが幼虫の時期でしたが、種子島から記録が無いと思われる2種も見つかり、報告した甲斐がありました。

(付図)

付図

今坂はまた、甲虫探索中に出会った矢部川上流星野川のミヤマアカネと、上陽町下横山の湿地にいたベニイトトンボを記録しました。
前者はおとなりの佐賀県では極端に減少しているそうです。

(ミヤマアカネとベニイトトンボ、生息地も)

ミヤマアカネとベニイトトンボ、生息地も

さらに、筑後川で灯火採集をした際、飛来したキオビエダシャクを記録しました。
南方系の昼飛ぶ蛾と思っていたのでビックリです。
福岡・佐賀両県ではまだ知られていないようです。

(キオビエダシャク)

キオビエダシャク

長田さんは、今回は6編の短報を投稿されました。

沖縄県豊見城市瀬長島のリュウキュウアブラゼミ、沖縄市で採集されたナガサキアゲハ雄の短尾型、アオノクマタケランの実を吸汁するシロウラナミシジミ、沖縄県南城市で採集されたムラサキツバメ、ツマムラサキマダラの矮小個体、アコンの枝に産卵するカバマダラについての報告です。

(長田付図1)

長田付図1

(長田付図1)

長田付図1

最後に、斉藤さんはコラムとして、コブマルエンマコガネの各部の形の面白さに注目し、左前脛節を素描されています。

(コブマルエンマコガネ)

コブマルエンマコガネ

解説を読むと、斉藤さんにとって、種を認識すると言うことは、描いて確認すると言うことのようです。
描くことで今まで見えていなかったその種の形を見直し、その形から見えてくるその種の生態、生き方が確認できるそうです。

今後も、様々な種の、様々な部分を描きつつ、虫たちの生き方に思いを馳せていただきたいと思います。