ずいぶん久しぶりの五家荘 再録

本文は2015年5月に投稿したトピックですが、ホームページの移行に伴って消失していましたので、再録しておきます。(2024. 6. 19再録

5月前半の荒れた天気が嘘のように、20日を過ぎてから穏やかな晴天が続いています。

久留米ではこのところ、30度を超える真夏日も多く、5月26日、避暑も兼ねて、五家荘まで出かけてみることにしました。

五家荘に採集に出かけるのは、熊本の故・大塚さんに葉木(はき)を案内していただいたのが最初で、1982年5月11日のことです。
この時は、葉木の二合の谷での採集が大部分で、甲虫140種余りを採集して、さっそく大塚さんに勧められて、そのうち77種を熊昆に投稿しました。
この時以来、熊昆の会員でもあります。

今坂正一(1982)五家荘で採集した甲虫. 熊本昆虫同好会報, 28(1): 1-4.

もちろん熊昆会報への搭載もこの文章が初めてでした。
その後33年が経ち、大塚さんも数年前に亡くなってしまい、感慨深い物があります。

五家荘は平家の落人集落の裔ということで有名な山里で、標高1000m近く、切り立った渓谷が続き、その中に点々と集落があります。
かつては泉村でしたが、現在は八代市泉町という表記になっています。
大塚さんにより、1993年には村史の一環として「泉村の陸上昆虫目録」が作られています。

大塚勳(1993)泉村の陸上昆虫目録. 泉村の自然-資料編-, 51-192.

この本には、甲虫1112種を始め、トンボ22種、バッタ21種、カメムシ162種、ハチ219種、ハエ128種、チョウ・ガ1333種など、昆虫類3058種が記録されています。

その大部分は大塚さんを始めとした熊昆メンバーの採集品で、特に、昆虫のほとんどの目を網羅されていることと、チョウ・ガが甲虫の種数を上回っていることが注目されます。

大塚さんの専門はまずチョウ、そして、ガでしたので、甲虫を上回るのは当然です。
それにも増して、これだけ多くの目の種のリストを同好会単位で作成することは、よほど、多くの専門家の先生方とのお付き合いを維持できないと不可能なことです。
学会等で見かけた大量の標本箱を包んだ大風呂敷を思い出します。

泉村に限らず、大塚さんは、熊本県全県の昆虫相解明に尽力され、記録と文献そして標本は膨大な量になっていました。
晩年はその取りまとめに心を砕かれていたようですが、あまりにも膨大になり過ぎてしまい、時間が足りなくなられたのでしょう。
残された標本の多くが九州大学の総合博物館に寄贈され、大学の管理者により標本の再整理とリスト作りが進められていることは喜ばしいことです。

さて、御船インターで高速を降りて、五家荘への国道の入り口まで来ると、表示が、砥用町から美里町に変わっていました。
町村合併で町名が変更になったようです。
従来は砥用町の商店街を通り抜けていた国道445号線は、商店街を避けて広いバイパスで繋がっていました。

(砥用から五家荘方面)

砥用から五家荘方面

足繁く通っていた白鳥山林道が、1900年代の終わり頃道路の崩壊等で通行止めになって以来、ほとんど五家荘には足を踏み入れていません。
唯一、10年ほど前に、思い立って、樅木から椎葉越えを経て、宮崎県側まで出かけたことがありますので、その時以来と思われます。

国道を登り始めると、山麓のごく一部で広いバイパスは終わり、すぐに一車線だけの元の酷道に戻ります。
延々と葛籠折れの急坂が続き、峠近くから下の眺めは、昔と殆ど同じでした。

(峠手前からの砥用方面の眺め)

峠手前からの砥用方面の眺め

砥用から二本杉峠まで10km足らず、この間に1000m近く登るので大変です。
葛籠折れの細い道は速度も出せず、たかだかこの距離を30分ほどかかってしまいました。

今日の目的は、まずは葉木の二合の谷に入ることです。
二本杉峠を越えると、こちらも新道が真っ直ぐ開通して下っていて、5分ほど降りると左側に二合の谷の入り口が見つかりました。

(二合の谷の入り口)

二合の谷の入り口

ここは、石灰岩の谷で、地表の石全てが真っ白です。

(二合の谷)

二合の谷

早めに自宅を出発したので、まだ、9時を少し過ぎたところ、さっそく採集を開始します。
気温も15度程度で低く、樹葉を叩いても、ほとんど虫は落ちてきません。

今日の目的は、イマサカアラゲサルハムシ Demotina imasakai Isono 九州(熊本)の再発見です。

(イマサカアラゲサルハムシ、右上:左前肢腿節、右中:腹節末端、右下:左上翅側面)

イマサカアラゲサルハムシ、右上:左前肢腿節、右中:腹節末端、右下:左上翅側面

この種類は、私の葉木での採集品を元に、Isono(1990)によって新種記載され、私に献名された種です。

Isono, M., 1990. A revision of the genus Demotina (Col., Chrysomelidae) from Japan, the Ryukyus, Taiwan and Korea. I. Jap. J. Ent., Tokyo, 58(2): 375-382.

本種は原記載以降、どこにもその写真や図は掲載されたことはなく、ハムシ屋さんにもほとんど認知されていませんでした。それを、数年前、私のホームページのトピックとして「最新ハムシ事情図説6 カサハラハムシ属紹介 1」に掲載しました。
その折に改めて気がついたのですが、本種の記録は私が採集した11個体のみで、その後も一切本種の採集記録は有りません。
世界中でこの五家荘葉木だけがその産地ということになります。

ちょうど、手元に当時の採集メモが残っており、葉木では1984年6月16日と8月4日に採集していました。
6月はナガゴミムシ類探索の目的で故・笠原さん・大谷さんを案内して九州脊梁各地を歩き、8月には故・阿比留さん・本田さん(当時は岩崎さん)と出かけていました。

どちらのメモでも、山地ではやや普通の、コブアラゲサルハムシ Demotina tuberosa 本州(栃木以南),四国,九州(福岡・佐賀・大分・熊本),対としてメモしているので、本種の存在については、まったく気がついていなかったようです。
それらの個体が後に、礒野さんによって新種として記載されたわけです。

上記2種の区別については、ホームページの解説を参照下さい。

最新ハムシ事情図説6 カサハラハムシ属紹介 1
https://coleoptera.jp/2023/11/01/最新ハムシ事情図説6-カサハラハムシ属紹介1%e3%80%80再/

葉木では2回ともこの二合の谷で採集しているはずで、再発見には、まずここを探すに限ると思ったわけです。

二合の谷は谷が狭く、谷の向きのせいか、午前中は陽が当たらないようで、林内はヒンヤリしています。
下草は殆ど無く、葉を掬えないので、細い立ち枯れをハンマーリングしていきます。

(林内)

林内

時折甲虫が落ちてきますが、ごく少しです。

(シロカレキゾウムシ)

シロカレキゾウムシ

見慣れぬ白っぽいカレキゾウが落ちてきて、調べたらシロカレキゾウムシ Karekizo impressicollis 本州,四国,九州でした。
九州では福岡・佐賀・大分・熊本で記録され、上記泉村リストにも記録されていますが、私はあまり採ったことがありません。

(クモゾウムシの一種)

クモゾウムシの一種

さらに、3mmに満たないクモゾウムシの一種が落ちてきました。
細長い体型、褐色の上翅、1-3列に並んだ上翅間室の丸い鱗毛などが特徴的ですが、該当する種は見つけられませんでした。

谷は、あちこちで土砂崩れによる白いガレ場が覆っていて、かつての谷の様相とは全く異なっています。
その上、渓流の両側には立木も幼木も下草もまったくありません。
クマザサさえ生えていないのは異様でさえあります。

(土砂崩れによる白いガレ場)

土砂崩れによる白いガレ場

以前は、沢の左岸側には平らな岸辺が有り、下草の茂る普通に歩ける登山道があったはずです。
1984年当時、その道沿いにベイトトラップをかけて、シイバナガゴミムシやヒコサンナガゴミムシ南九州亜種を採りました。

これはどうも大雨による土砂崩れだけではなさそうです。

(キリシマチビオオキノコ)

キリシマチビオオキノコ

キノコの生えた立ち枯れからキリシマチビオオキノコが落ち、別の立ち枯れからコチビキカワムシも落ちてきました。

(コチビキカワムシ)

コチビキカワムシ

しかし、何処まで行っても、斜面の上の方まで、ひたすら、白い瓦礫と幼木の幹が見えるだけでまったく下草はありません。
叩ける草も、木の葉も無いでは、ハムシ類は全く採れそうにありません。
これは、鹿の食害に間違いないでしょう。

(斜面の様子)

斜面の様子

今日は、イマサカアラゲサルハムシの再発見を目指して、意気込んでこの二合の谷に来たのでしたが、少なくとも、この谷では無理なようです。
1時間も頑張らないうちに、早々に諦めて降りることにしました。

谷の外に出て、国道沿いを見回すと、道沿いには普通にクマザサも下草も生えています。
鹿も国道沿いには出てこないのでしょう。

少し進むと、木漏れ日の下の斜面に、コアカソが多く生えていました。

(コアカソ)

コアカソ

叩いてみると、トゲアシトビハムシ Apthonoides beccarii 九州(福岡・長崎・大分・熊本)がいます。
天狗が掃いていると言う一本歯の高下駄を思わせる、脛節の長いトゲが特徴的です。

(トゲアシトビハムシ)

トゲアシトビハムシ

やや山地の落葉樹林のコアカソには比較的普通ですが、それでも局地的です。
長崎県では、多良山系の山地の他、島原半島南端の海岸に聳える標高100mに満たない岩山(岩戸山)で採れていて、ここだけ、他の産地とまったく条件が異なっています。
さらに、佐賀県では山地も含めて記録が無く、虫の生息条件というのは解らないものです。

水がしみ出している場所に生えたオタカラコウの仲間には、ヒメツヤハムシがいました。

(ヒメツヤハムシ)

ヒメツヤハムシ

林縁の草地をスウィーピングしてみると、先頃までチュウジョウナガスネトビハムシと誤って呼ばれていたナガスネトビハムシの一種がいました。
改めて草地を眺めると、花も終わって目立たないコンロンソウが生えていましたので、それに付いていたのでしょう。

この種の♂は前・中肢の符節第一節が大きく広がり、赤くて目立つので、ダイコンナガスネトビハムシの♂との区別は簡単ですが、♀同士ではなかなか難しいです。

ところで、この文章を書いている最中に佐々木さんから電話があり、本種の名前が決定された由。
外へ出て郵便物を確かめると、日本甲虫学会会誌のエリトラが届いていて、さっそく滝沢さんの論文を確認するとヒロアシナガスネトビハムシ Psylliodes sasakii Takizawaとして新種記載されていました。

Takizawa, H., 2015. Notes on Japanese Chrysomelidae (Coleoptera), III. Elytra, Tokyo, New Series, 5(1): 233-250.

情報を頂いた佐々木さんありがとうございました。そして、また、佐々木ハムシが出来て良かったですね。

(ヒロアシナガスネトビハムシ)

ヒロアシナガスネトビハムシ

セスジトビハムシも落ちてきましたが、ここには、ホストとして知られているハンノキは無いので、シデ類でも食べているのでしょうか?

(セスジトビハムシ)

セスジトビハムシ

本種は九重黒岳ではよく見かけますが、それ以外では殆ど見ません。
九州では他に、福岡と対馬・壱岐の記録があり、前記泉村リストには含まれていません。

二合の谷の、中とその周辺で採れた甲虫は以下の通りです。
比較的大きいものと、微小なものに分けています。

(二合の甲虫・大中)

二合の甲虫・大中

(二合の甲虫・微小)

二合の甲虫・微小

葉木はこの程度のようなので、気分を変えて二本杉峠まで戻ります。
売店の自動販売機から飲み物を買って、ちょっと一服。
さて、どこへ行こうかと考えてから、栴檀轟(センダントドロ)の滝へ行ってみることにしました。

この滝周辺にも、大塚さんに連れて行っていただいた記憶があります。
たしか、カエデの花を掬って、ニンフジョウカイ類やハナカミキリ類を採集したと思います。
1989年4月25日に一緒に採集したようで、この日の大塚さんの採集品をホロタイプとして、高橋さんと一緒にオオツカニンフジョウカイ Asiopodabrus ohtsukai Takahashi et Imasaka 九州(福岡・大分・熊本・宮崎・鹿児島)を新種記載しました。

Takahashi, K. & S. Imasaka, 2010. A revision of the pseudolictrius species group of the genus Asiopodabrus (Coleoptera, Cantharidae). Jpn. J. syst. Ent., 16(1): 123-160.

当初、本種は、長崎・佐賀に分布するリョウコニンフジョウカイ Asiopodabrus ryokoae ryokoae Imasaka 九州(佐賀・長崎)の亜種的なもの、と考えていたのですが、脊振山亜種 Asiopodabrus ryokoae sefurisanus Imasaka et Takahashi 九州(佐賀脊振山)と比較して、明らかに形態差が大きかったので、別種に分けることにして、大塚さんに献名したものです。

栴檀轟の滝周辺は、自然公園という表示がありましたが、行ってみると開けていて木も小さく、特に虫が採れそうな雰囲気では無くて、かつて本種を採ったときの深山幽谷と思った記憶とは、ぜんぜん違っていました。

空き地に車を停め、お昼の時間でもあるので、まず弁当を拡げて腹ごしらえをします。
それから、改めて、虫の採れそうな所の物色です。

川沿いに来た道を戻ってくると、右手にクヌギの幼木林がありました。
谷沿いに結構広がっているようです。

(クヌギの幼木林)

クヌギの幼木林

ここでハンマーリングで頑張ってみましょう。
やってみると、谷沿いで、比較的日当たりが少なく、湿気も保たれているせいか、それなりに虫もいるようです。
以下のように大・中型のものには特筆すべき種はいませんでした。

(クヌギの幼木林の甲虫・大中)

クヌギの幼木林の甲虫・大中

微小なものには、老眼のためよく見えていませんが、多少期待が持てそうです。

(クヌギの幼木林の甲虫・小)

クヌギの幼木林の甲虫・小

帰宅してから調べてみると、思ったよりいろいろ含まれていたようです。
順に見ていきましょう。

まず、ツヤホソクロツツキノコムシ Orthocis nigrosplendidus 北海道,本州,四国,九州(福岡)です。

(ツヤホソクロツツキノコムシ)

ツヤホソクロツツキノコムシ

本種は背面にまったく毛が無く、前胸背側縁に広い稜があるのが特徴です。
近縁種としてはツヤナガホソツツキノコムシ Orthocis ishiharaiくらいしかなく、後者はより小さく細くて華奢なようです。
本種は図鑑や昆虫総目録ではツヤクロツツキノコムシの和名が使用されています。
熊本県の記録は良く分かりませんが、無いのではないかと思います。

川那部(2004)の解説によりますと、本種は山地性で、キノコからは得られず、枯れ木のみで見付かるそうです。
このクヌギ林でも、キノコの付いていないクヌギの立ち枯れから落ちてきました。

川那部 真(2004)日本産ツツキノコムシ科検索図説IV. 甲虫ニュース, (145): 1-5.

(ワダオオキクイムシ)

ワダオオキクイムシ

本種は、今年早春にも、黒岳のクヌギからハンマーリングで落とした例を紹介しましたが、クヌギの立ち枯れは好きなようです。

(セダカヒメテントウ)

セダカヒメテントウ

本種は、何から落ちてきたのか、覚えがありません。
生木も立ち枯れも両方叩いてますが、すべて、クヌギなので、そのどちらかでしょう。
九州では、福岡・大分の記録がありますが、熊本の記録はあるかどうか確認できていません。

(テントウダマシ3種)

テントウダマシ3種

ここのクヌギ林で最も興味深かったのは、テントウダマシ3種です。
右の種はイツホシテントウダマシ Leistes decoratus 本州,四国,九州です。
福岡・大分では比較的採れていますが、他の県では知りません。綺麗な黒紋を持つ種です。

次いで、中央のマルガタテントウダマシ Bystodes orbicularis 本州,九州です。

(マルガタテントウダマシ、右上:触角、右下:前胸側縁)

マルガタテントウダマシ、右上:触角、右下:前胸側縁

触角は10節で、前胸側縁内側の側溝は顕著で前縁近くまで伸びています。上翅には点刻列はありません。
九州では長崎県多良岳から今坂・松尾(1984)として記録したのが九州からの初記録で、他に三宅(2013)による大分県豊栄林道の記録がある程度です。

今坂正一・松尾照男(1984)マルガタテントウダマシ九州の記録. 月刊むし, (157): 36.

最後に、左端はベニモンマルガタテントウダマシ Dialexia hisanoi 本州(神奈川・福井),九州(大分)です。

(ベニモンマルガタテントウダマシ、右:♂翅端にある丸い窪み→赤矢印)

ベニモンマルガタテントウダマシ、右:♂翅端にある丸い窪み→赤矢印

この種はクヌギ立ち枯れから6個体が落ちてきました。キノコは付いていなかったと思います。
前胸背に側溝は無く、上翅の点刻列も無いので、Dialexia属は間違いの無いところでしょう。
紅紋は、上翅中央というより、むしろ、肩部から中央にかけてぼんやり褐色になっている個体が殆どで、その点は佐々治(1980)の解説(上翅中央に大きな赤紋)とは合いません。

九州からは、佐々木(2011)による大分県佐伯市直川の記録が唯一のようですが、その写真とは良く似ています。
赤矢印で示した♂翅端の小孔より、一応、この種と考えています。

佐々治寛之(1980)日本産テントウダマシ科概説. 甲虫ニュース, (49): 1-4.
佐々木茂美(2011)県下初記録のマルガタテントウダマシ2種. 二豊のむし, (49): 120.

クヌギ林ではハンマーリングで次々に興味深い種が見つかっています。

久留米市高良山を始め、九重黒岳、英彦山山麓他で試してみていますが、ミジンムシ類など各地で共通に採れる種があり、これらの種は明らかにクヌギの生木の樹幹に依存しているようです。また、クヌギ立ち枯れ木で必ず見られるクロアシムクゲキスイ、ハガタホソナガクチキなどもあります。

一方で、今回のマルガタテントウダマシ2種のように、その場所だけで見られた種もあります。

クヌギの幼木林は全て植林された林と思いますが、普通の雑木林より、よほど、高率で立ち枯れ木が見つかります。
また、枯れていない生木でも、見上げると、あちこちに枯れ枝が着いていて、その比率も、他の樹種より多いようです。

それらの枯れ木に、条件が良ければ、多くの菌類が着生するのでしょう。
特に、クヌギに依存していない種であっても、クヌギ林に多く存在する枯れ木や菌を目指して、周辺から集まってくるのだと思います。
原生林や自然林に隣接したクヌギ林は、そういう意味で、ハンマーリングの最大の狙い目と言えるようです。

叩けそうなクヌギを全て叩いてしまった後で、目先を変えて渓流沿いの木を物色していると、大きなオニグルミが見つかりました。
枯れ木があったので叩くと、チチブニセリンゴカミキリ四国・九州亜種 Niponostenostola niponensis pterocaryaiの♀が落ちてきました。

九州産は、従来、コジマベニスジカミキリと呼ばれていた種ですが、この個体は、ベニスジと言われるほどクッキリとした紅筋がありません。
泉村リストにはコジマベニスジとして掲載されています。

(チチブニセリンゴカミキリ四国・九州亜種)

チチブニセリンゴカミキリ四国・九州亜種

あと一カ所やりたいと思いつつ、葉木まで戻ると、旧道沿いに材が積んであるところが見つかりました。

(旧道沿いに積んである材)

旧道沿いに積んである材

しばらく、熱心に叩いて採れた甲虫が次の通りです。

(旧道沿いに積んである材にいた甲虫・大)

旧道沿いに積んである材にいた甲虫・大

(旧道沿いに積んである材にいた甲虫・小)

旧道沿いに積んである材にいた甲虫・小

結局、特筆すべき種は見られませんでしたが、最後に、伐採木枯れ木の下面に縄張りを張っていたセダカコブヤハズカミキリ南九州亜種 Parechthistatus gibber grossusが2♂見つかりました。

(セダカコブヤハズカミキリ南九州亜種)

セダカコブヤハズカミキリ南九州亜種

祖母以南でしか見つからない本亜種に出会えたことで、本日の採集打ち止めということにしました。

目的のイマサカアラゲサルハムシには出会えませんでしたが、採集データを再検討すると、6月16日と8月4日です。
ということは、今回はちょっと時期尚早だったかもしれません。
それに、2回ともこの二合の谷で採集したはずと思ったのは早合点で、8月4日の方は、当時、葉木にあった民宿の周辺のビーティングか灯火採集で得ているようです。

ということは、必ずしも、二合の谷でなくても良いことになるので、6月中旬以降に、リベンジに来る必要がありそうです。

来たとき同様に、細い葛籠折れの国道をユックリ走ってから、帰りがけに、砥用で久方ぶりの「豆腐の味噌漬け」を買って帰りました。
この珍味は、九州内でも、なぜか、この砥用周辺でしか見たことがありません。

沖縄の唐芙蓉にも似ていますが、ちょうど味噌風味の緩いチーズといった感じで、もっとアッサリしています。
ビールのつまみに最適で、帰宅後、一風呂浴びて、採集品を眺めながら、ユックリ味わってみようと思います。

(豆腐の味噌漬け)

豆腐の味噌漬け