2008年のヤニタケ

「黒岳のキノコに集まるこの甲虫は何だ!!」と題して、ヤニタケに集まる正体不明の甲虫のことをお知らせしたのは、ちょうど、一年前でした。

実は、まだ暑さも残る9月初旬に、黒岳を覗いてみました。

 

あたりはまだ青々とした盛夏そのままで、昨年ヤニタケが付いていた倒木からは、まったく、ヤニタケの痕跡すら見られませんでした。
毎年、虫たちに饗されて、影も形もないように食べ尽くされ、分解されていくもののようです。

さて、昨年初めてヤニタケに出会ったのが、11月10日のことだったので、再び、11月5日に、「そろそろだろうな」と考えて出かけてみました。

黒岳は、まだ、紅葉も七部と言ったところで、昨年よりまだ大分早いような感じでした。

さっそく、件の倒木を見に出かけてみると、あらら、この2ヶ月足らずのうちに、ヤニタケはすっかり復活していました。生えている位置は、多少、ずれているようです。

こうしてみると、条件さえ整えば、同じ倒木から、複数年に渡って発生するようで、虫たちにしたら、安心して、全てを食い尽くしてしまえるわけです。

写真で解るように、鮮やかな色合いでみずみずしく、まだ、全てが幼菌で、触るとシイタケより柔らかな感触でした。
名前の由来となったヤニが、表面にも裏面にも無数の水玉となって浮いており、ストロボ撮影をするとキラキラと美しく輝きました。

残念ながら、虫たちはまだほとんど訪れていないようで、長い時間あちこち見渡しましたが、ようやく、ムネモンコナガクチキ Mycetoma affineが1個体見つかっただけです。

昨年(11月10日)、多数のムネモンコナガクチキを見つけた際は、すでに多くのヤニタケが成熟して黒褐色に変色し、サルノコシカケ様に堅くなっていました。

この状態になるまで、まだ、2週間以上かかるような気がします。
その頃、また、出かけてみようかと考えています。

昨年は再び、11月15日に黒岳を訪れて、ヤニタケをいくらか持ち帰り、自宅で観察を続けたところ、モンヒメマキムシモドキ Derodontus japonicus、ホソアカバコキノコムシダマシ Pisenus chujoiも見つかりました。

ムネモンコナガクチキとモンヒメマキムシモドキについてはヤニタケ中より幼虫も発見し、ムネモンコナガクチキでは1齢(わらじむし型)、2齢(潜り込み型)、終齢(歩く足がやや発達)のそれぞれで、生態に応じた違った体形をしていることに気が付きました。このことを含めて、今年当初に報告しましたので、興味のある方はご覧下さい。

今坂正一 (2008) ヤニタケをめぐる甲虫たち. 二豊のむし,(46): 1-16.

ヤニタケがまだ早かったので、林内を彷徨って、樹皮剥がしをしてみました。
ケヤキ生木の樹皮下からは越冬中のマダラフトヒゲナガゾウムシ Basitropis nitidicutisが現れ、倒木のコケむした樹皮を剥ぐと、ツノクロツヤムシ Cylindrocaulus patalisがビックリしたように、頭を上げました。

草地を歩いていたキュウシュウツチハンミョウ Meloe auriculatusも見つけましたが、この種は晩秋のみに見られるようです。

河原の石越しでは、多数のゴミムシ類が見つかり、コホソクビゴミムシ Brachinus stenoderusは、触るとプップッと小さな可愛らしい音と共に、お尻から白煙を吹き出しました。ミイデラゴミムシでは火傷するほどですが、本種ではほとんど熱さは感じないようです。

この日採集した甲虫類の写真です。あまり、珍しそうな種はありませんでしたが、小型のハネカクシはちゃんと同定できていません。

駐車場まで戻ってきて、用を足しに行くと、トイレの外壁に多数のテントウムシ Harmonia axyridisが集まってきていました。越冬場所を探しているのでしょう。

灯りに引かれてきたと思われる蛾の一種が窓に静止していましたが、独創的で奇抜な柄をしていました。
帰宅して図鑑を調べてみましたが、見つけ出すことが出来ませんでした。
ご存じの方はご教示いただけないでしょうか?

(補足)
さっそく蛾屋さんの坂井さんからご教示があり、本種は晩秋の蛾で種名はニトベエダシャクだそうです。
てっきり、ヤガの仲間と思っていたので、図鑑でも見つからなかったのでしょう。
以下のサイトに写真と解説があります。

ニトベエダシャク

また、大分昆の三宅さんに確かめたところ、大分県では二例目だそうです。
ヤニタケ同様、こんなシーズンオフの山中に、人知れず出現する生き物も結構多いのですね。
ご教示いただいたお二人にお礼申し上げます。