幹掃き採集 その2

2007年5月2日に、前回と同じ長崎県多良山系の轟の滝付近に再び幹掃き採集に出かけました。

前回と比較して、大分、春が進行しており、葉上にも虫が多く見られました。
前日雨が降っていたこともあり、樹幹は前回のように乾燥してなくて、適度な湿り気が見られました。

マメヅタも大分、新葉が増えていましたが、トホシニセマルトビハムシの数はそれほど多くありませんでした。

前回トホシニセマルトビハムシを掃き落としたマメヅタのついたタブの樹幹からは、本種とクロジュウニホシテントウとコマルガタテントウダマシが、

すぐ近くの同ハムシが得られたタブからは待望のタラメツブテントウが落ちてきました。しかし、前回メツブテントウがいたシイの大木からは、何も得られませんでした。

渓流沿いの林内には、タブ、シイなどの大木が多く、樹幹にはマメヅタ、ツタ・テイカカヅラなどのツル植物、コケ、のいずれかの着生が見られましたが、最も多様な虫が見られたのがマメヅタで、次いでコケ、ツル植物や何も着生していない樹幹からはほとんど虫は得られませんでした。

前回お知らせしたチビドロムシの一種はコケに多く、確実にコケの中で生活する優占種のようです。また、同定出来ていませんが、微小なクチカクシゾウムシの一種もコケから多く見つかりました。

樹種に関係なく樹幹で最も多く見られたのはクロホシテントウゴミムシダマシでした。

興味深いことに、ほぼ同じ環境で見られたトホシニセマルトビハムシ、クロジュウニホシテントウ、タラメツブテントウ、メツブテントウがほとんど同様な形・色・柄をしていることです。このことに、生態的な意味があるかどうかは解りません。

不思議なことに、大岩に着生しているマメヅタからはまったく虫が得られず、コケからも得られた虫は少数でした。同じように見えても、虫にとっては、樹幹でないといけないようです。
また、イチイガシやシイなど、樹皮の表面に複雑な割れ目などがあって、虫の隠れる場所が多いと思われる樹種からも、植物が付着していない物からはほとんど虫が落ちてきませんでした。

その他に、偶然か、必然かは解りませんが、オオコキノコムシ(九州初?)、アカバマルタマキノコムシ、セマルチビヒラタムシ、アカハムシダマシ、カワツブアトキリゴミムシ、バイゼヒメテントウ、キアシチビオオキノコムシ、クロチビオオキノコムシ、ホソチビオオキノコムシ、コキムネマルハナノミなどが樹幹から落ちてきました。

実は、地元の久留米市高良山や先日出かけた菊池市菊池渓谷でも幹掃き採集は試みてみましたが、マメヅタやコケはあるものの、まったく、成果は得られませんでした。轟の滝付近での採集経験を加えると、幹掃き採集には6つのポイントが有りそうです。

1.空中湿度の高い渓流沿いが良い
2.大木の生育する場所が良い
3.マメヅタ、コケ等、樹幹の表面に植物が着生するものが良い
4.陽当たりの良い場所、林内のうっぺいされて暗い場所は良くない
5.林縁で、木漏れ陽が時に当たる、あるいは、一日のごく一部の時間、陽が当たる、風通しの良い場所が良い
6.今のところ、常緑樹林が良い(夏季にはブナ帯でも可能かもしれない)

幹掃き採集も、結構極めると、かなり面白い成果が期待できそうです。
良かったら、各地で、試してみて下さい。
なお、記録すべき重要な種が何種か得られたので、別途、雑誌等に正式に記録しておきたいと思っています。