幹掃き採集 その6 梅雨が明けても幹掃き採集?

なかなか明けなかった九州の梅雨は、7月23日になってようやく梅雨明け宣言が出されました。末期に台風まで来襲して、今年の梅雨は、例年の1.5倍くらいは降ったようです。幸いにして、北部九州は土砂崩れや浸水、強風の害も免れ、無事に夏を迎えました。

7月24日午後から、仕事の空き時間が出来て、四度、多良の轟の滝に出かけました。

夏休みとあって、入り口の駐車場は多くの車が見られ、管理人らしいおばさんが寄ってきて、渓谷への入場料を徴収されてしまいました。九重の黒岳でも公園の清掃管理費名目で徴収されますが、金額が安いにもかかわらず、なんとなくひっかかるのは私だけでしょうか?

渓谷の周りは濃い緑の中、うねるようなヒメハルゼミの大合唱に包まれていました(写真)。

轟の滝付近

いつものように、まずシイの大木から幹掃き採集を始めると、お定まりとでも言うようにメツブテントウ(写真左下)が落ちてきました。ズーッといるのだな、と思いながら、マメヅタを掃くと、こんどは、トホシニセマルトビハムシが(写真上)。

トホシニセマルトビハムシとメツブテントウ、クロジュウニホシテントウ

春でも、梅雨が明けても、同じように虫はいるんだ、と思いながら、幹掃きを続けていくと、その後は、パッタリと追加が止まってしまいました。
ただ、トホシニセマルトビハムシは、マメヅタを丹念に掃いていくと、あっちで1つ、こっちで1つと、思い出したように落ちてきます。決して複数では落ちてこないことから、広範囲に分散してしまっているようです。この種は成虫越冬のようで、そうなると、ほとんど通年成虫が見られるようです。

タブの立ち枯れからは、セミスジコブヒゲカミキリ(写真)とキマワリが落ちてきました。

セミスジコブヒゲカミキリ

コケからは、名前の解らないいつもの微小アナアキゾウムシ(写真上)と、マルモンササラゾウムシ(写真下)が・・・。後者は小さいながら、上翅のマルモンがなかなかキュートです。佐賀・長崎両県から記録されていますが、多良山系からは初めてです。

微小アナアキゾウムシ
マルモンササラゾウムシ

コケの間から、クロホシテントウゴミムシダマシ、カワツブアトキリゴミムシ、メダカチビカワゴミムシの常連は相変わらず見つかりますが、いかにも、個体数が少なく、やはり、梅雨が明けて、夏枯れの始まりか・・・という感じがしました。後で土地の人に尋ねたら、今年の長崎は、雨の少ない梅雨だったそうで、例年の7割くらいしか降らなかったということです。近くでも、相当雨が降り続いた久留米とは、ずいぶん違うようです。

汗を拭き拭き、いつものように、キャンプ場まで歩いてみました。
シイの立ち枯れから、メツブテントウより小型の薄い色のテントウが落ちてきて、すわ、タラメツブ!!と思ったのですが、後で確かめると、クロジュウニホシテントウで、なかなか、タラメツブは手強いようです。

流れる汗を拭ってから、清流の中に手を付けて涼を採り、顔を洗ってから、渓流の中に横たわる大岩のコケを掃いてみると、ツヤチビホソアリモドキ(写真)が出てきました。こういう場所にのみに生息する種です。どう言うわけか、多良山系の長崎側では記録していなかったようです。

上の方にキノコが付いている立ち枯れの樹幹(写真)からは、ツキワマルケシキスイ(写真左)とコモンチビオオキノコ(写真中)が落ちてきました。おまけに、ホソカッコウ(写真下)まで採れました。普通、吹き上げなど、山頂の葉上で採れる本種が、こんなところで何をしているのだろう?

ツキワマルケシキスイとコモンチビオオキノコ
ホソカッコウ

コケのついた樹幹にはコヒゲナガハナノミ(写真)が多く見られ、どうも水物の甲虫は樹幹が好きなようです。

春に多かったゴミムシは、羽化直後のものが少数見られただけで、端境期のようです。コメツキも少なく、クリイロアシブトコメツキと、ルイスクシコメツキ、クシコメツキが1個体ずつ見られただけでした(写真、左から)。ルイスクシコメツキは多良山系の長崎側では初めてです。
樹幹の虫が少ない時期は、捕食者も少ないようです。

コナラやカシなどの葉上に盛夏に見られるハイイロチョッキリ(写真)も、暑いのか、日陰の樹幹にヒッソリ静止していました。

帰りに小さな滝の所まで来ると、女の子たちの歓声がして(写真)、見ると、中学生の男の子たちが替わる代わる滝の上から滝壺にジャンプしていました(写真)。それを女の子達が滝壺の脇から声を上げながら見物していました。気持ちよさそうだなあ、と思うと同時に、彼等の若さにうらやましさを感じました。