平尾台の昆虫調査 3
3月20日には自宅のサクラは満開になりました。
(満開のサクラ)
ソメイヨシノも福岡で開花が発表されました。いよいよ春到来です。
3月24日、國分さんと平尾台に行きました。
例の林縁のトラップ回収からです。
國分さんは林縁を叩いています。
(林縁でビーティング)
國分さんは、アカタデハムシとツブノミハムシ落とし、林内の朽ち木割りではアオハナムグリとオオクチキムシを、枯れたススキからはクロモンヒラナガゴミムシを採られていました。
クロモンヒラナガゴミムシは福岡県RDBの準絶滅危惧です。枯れススキの中で成虫越冬していたのでしょう。
(クロモンヒラナガゴミムシ)
私はひたすらトラップ回収です。
イエローパントラップには相変わらずハチとハエは沢山入っています。
(イエローパントラップ)
ピットフォールトラップも含めて、メダカチビカワゴミムシ、ヒメツヤゴモクムシ、ミナミナガヒメタマキノコムシ、フトツツハネカクシ、ミゾムネマグソコガネ、ウスチャケシマキムシ、イタドリハムシ、アカイロマルノミハムシ、ケチビコフキゾウムシ*が入っていました。
*が付いているのは平尾台から初記録です。
(ケチビコフキゾウムシ)
林の中のFITも回収します。
(林内)
FITではヒメマキムシ、アカバコキノコムシダマシ、ミナミウスイロツツハネカクシ*、ヨツモンミジンムシ(無紋型?)が入っていましたが、今週は雨続きで虫は少なかったようです。
(ミナミウスイロツツハネカクシ)
本種はミナミの文字で解るように、南方系種だが九州ではまだ、福岡・長崎両県の記録しかありません。樹皮下にいる種ですが、FIT以外ではなかなか見つからないからです。
(ヨツモンミジンムシ無紋型?)
一見、オオミジンムシと思ったのですが、毛の具合も違い、前回報告した(仮称)ヨツモンミジンムシの無紋型かもしれないと思い直しました。そう言えばかつて、上翅の前紋が無くて二紋になった(仮称)アトモンミジンムシと言う名でもホームページに掲載したことがありますが、無紋、二紋、四紋と、全て個体変異かもしれません。
(ヨツモンミジンムシの色彩変異?、左から、無紋型、二紋型: 島原半島産、四紋型)
林縁の草地に戻って石起こしをしてみました。
佐賀・長崎県境の大野原では4月中旬に、石起こしでセアカオサムシ、オオアオホソゴミムシ、ヒトツメアオゴミムシを始めとして、種々のゴミムシ類を採集しています。
越冬から目覚めた虫は地表に出てきますが、この時期、野焼き等で隠れるところが無くなった虫達の隠れ場所として数少ない石下が選ばれるのだと思います。
そこら中に白い石灰岩の石が見えますが、ほとんどは岩の頭が顔を出しているだけで、起こせるような石はごく僅かです。
(動かせる石を探す)
それでも探せば多少動く石もあります。
次々に起こしてみますが、ほとんど、クモとダンゴムシとムカデくらいで、肝心の甲虫はいません。
まだ、少し早すぎるのでしょう。
カナヘビが2頭、仲良く眠っていました。
(カナヘビ)
結局、小一時間石を起こして、出てきた虫はカメムシが数個体とヨツボシテントウダマシけ。
(ヨツボシテントウダマシ)
まだ早すぎるようなので、石起こしはあきらめて、ピットフォールトラップを増やすことにしました。
林縁のすぐ近くにドリーネがあるので、その底に向かって埋めることにします。
(ドリーネの底に向かってピットフォールトラップ: 白いカップを埋める)
このドリーネというのは、カルスト台地のいたるところにある窪地のことですが、夏場は草が生い茂って底がどうなっているのかよく解りません。
ドリーネの底は縦穴が開いていて近寄ると危険と言われているので、朧気に近づくのを避けていました。
しかし、冬季から春季の草が無い時期に見ると、周囲を石灰岩のカルストに囲まれた中に平坦な窪みがあるだけです。ドリーネ以外の部分はまさに、岩の塊であることが、冬季には実感されます。
(林縁脇のドリーネ)
底まで降りてみると、焼け焦げたススキの株がまばらに生えているだの、平坦な泥地でした。数日前に結構雨が降ったはずですが、水溜まりは見られませんでした。
それで思い至ったのですが、これはちょうど、コーヒーをペーパーフィルターで抽出した後の状態だと想像できます。
雨が降れば、周囲より低い位置に水が溜まり、その底の石灰岩の岩盤に水が抜ける穴があれば、そこから下に抜けて、水はなくなるわけです。
ドリーネと言えるほどの大きな穴になっているということは、長い間(何万年?何千万年)に、相当多量の水がその底から抜けたと言うことに他なりません。
ただ、その抜け方ですが、ほどよいフィルターがあって(抜ける穴が小さくて)、抜け方が緩やかなのでしょう。大穴でもあれば、ペーパーフィルターが破れて穴があいた時のように、コーヒーの粒もそこから流れ出してしまうので、底に泥は溜まらないはずです。
そして、破れたときは年年、穴はどんどん大きくなって、縦穴になるのでしょう。
探すと所々に、穴の開いたドリーネも見られます。
(穴の開いたドリーネ)
(穴の拡大図)
これらは縦穴の赤ちゃんで、これが数万年も経てば立派な縦穴になるのかもしれません。
(縦穴の出来始め)
また、このドリーネの泥地は、梅雨など雨が降り続いたり、大雨などの時は、水を吐ききれずに池や湿地になり、泥は長時間水分を保つと思われるので、結局、ドリーネの数だけ不定期の湿地ができることになるかと思います。
道理で、台地上にはどこにも池も湿地も見られない割に、水生昆虫や湿地性のゴミムシなどが沢山記録されているわけです。ルリナガツツハムシが広範囲にいるわけも解りました。
この点、虫があまりいない早春から平尾台の調査を始めた最大の成果と思います。
さて、台地上のあちこちを探索して、耕作放棄地に菜の花が大量に咲いている場所を見つけました。スウィーピングをするとハナバチ類とハエ類が沢山いたので、ここにも、イエローパントラップを置くことにしました。
(菜の花とイエローパントラップ)
スウィーピングしたネットの中身をビーティングネットの上にあけると、大量のゾウムシが走って、あるいは飛んで逃げようとします。数年前に福岡県から日本初記録として記録された外来種のオオダイコンサルゾウムシです。
(オオダイコンサルゾウムシのペア)
この種は数年で、西は脊振山の佐賀県側から東は北九州、南は奥八女の星野村まで広がっているようです。良く飛び回るので、分散力も強いのでしょう。
この菜の花群落では、数百の本種に対して、元々菜の花に見られたダイコンサルゾウムシは1頭みただけです。
(オオダイコンサルゾウムシとダイコンサルゾウムシ)
この草地では、他にはイチゴハナゾウムシとコガタルリハムシをみただけです。
もう少し探索を続けたかったので、クヌギ林横の溜池を見に行くと、工事の車が止まっていて、駐車が出来ません。そのまま下って、常緑樹林に入ったところで、道横に駐車スペースを見つけ、車を止めます。
林縁を叩いていくと、ヒサカキの花が咲いています。
叩くとバラバラと微小なハナムグリハネカクシが落ちてきました。サイズが大小色々あるので、なるべく採集して帰宅して調べてみると、キュウシュウハナムグリハネカクシ唯一種で、その♂♀でした。最大1.5倍以上の体長差があります。
(キュウシュウハナムグリハネカクシ)
今日はこれで終わりにして、下っていきました。
平尾台入り口の交差点手前にある池横にやや広い駐車スペースがあります。
(池)
たいてい、ここで調査を終了し、車の上に付けてるカーネットをたたみます。
今日は気温が余り上がらなかったので、飛んでる虫は少なかったようで、甲虫は同定できない微小なヒゲブトハネカクシの仲間と、ケシガムシ、キュウシュウハナムグリハネカクシ、クロヒメカワベハネカクシ、マグソコガネ、オドリコソウチビケシキスイだけでした。
(クロヒメカワベハネカクシ)
(マグソコガネ)
今日は、この池の岸辺の林内にも、イエローパントラップとFITを置くことにします。
(岸辺に置いたイエローパントラップとFIT)
帰るには少し時間が早いので、浄水場のある谷を少し探索して詰めることにしました。
奥にお寺のある谷は、道横を雰囲気の良い谷川が流れており、ちょっと良い感じです。
(道沿いのクヌギ)
この道はお寺の裏あたりで、林道がゲートで交通止めになっていました。
午後から良い天気になったこともあり、夕方のこの時間になって、アカタテハとルリタテハが飛び回っては、葉上や石の上で日光浴をしていました。
(アカタテハ)
(ルリタテハ)