「綾町・照葉樹林探訪」2024 その2

さて、大分時間が空きましたが、「綾町・照葉樹林探訪」2024 その1 1a. 川中の続きです。

「綾町・照葉樹林探訪」2024 その1
2023年は7月22日から26日まで、宮崎県綾町の照葉樹林に採集に行きました。メンバーは久留米昆蟲研究會のメンバーのうち、久留米周辺から、國分さん、有馬さん、斎藤さん、大塚さん、私の5名。そして、大阪から畑山さん、福岡の和田さん、大分県臼杵...


参加メンバー10名の採集データを集めるのに時間が掛かりました。

(綾町の採集地)

綾町の採集地

今坂・國分組は、ライトFITの回収のために、6月8日の午後、川中を訪れました。

今坂はライトFITを回収し、その後、落ち葉篩いを行いました。
なお、前回同様、綾町初記録の種には和名の後ろに*を付けます。

その間、國分さんはやはりビーティングを続けられており、ムナビロアトボシアオゴミムシ、アカガネチビタマムシ、クチボソコメツキ、ルイスコメツキモドキ、キボシツツハムシ、セアカケブカサルハムシ、サカグチクチブトゾウムシを採集されました。

ライトFITの入り具合は、4日間も置いた割りに低調でしたが、唯一、クヌギの立ち枯れに吊したFITには、クワガタ類を始めとしてあれこれ入っていました。

(クヌギの立ち枯れに吊したライトFIT)

クヌギの立ち枯れに吊したライトFIT

採集できたのは、ハネビロアトキリゴミムシ、アカケシガムシ、ミヤマクワガタ、コクワガタ、コクロコガネ、ハラゲビロウドコガネ、ドウガネブイブイ、サクラコガネ、ヒゲナガコメツキ、ネアカクロベニボタル、ウドハナボタル、ケジロヒョウホンムシ*、ベニモンマルケシキスイ、(仮称)クマドリヒメハナムシ*、ヒゲブトチビヒラタムシ*、(仮称)キムネミジンムシ*、キイロテントウダマシ、ミヤケヒメナガクチキ、クチキムシ、ホソアカクチキムシ、フナガタクチキムシ、クロナガキマワリ、オオマダラヒゲナガゾウムシ*、キスジヒゲナガゾウムシ、クロアシヒゲナガヒラタミツギリゾウムシ、アラムネクチカクシゾウムシなどです。

ネアカクロベニボタルとウドハナボタルは松田さん同定です。お礼申し上げます。

このうち、クマドリヒメハナムシと仮称した種は、2mm未満の種が多いヒメハナムシ科としては大型で、3mm前後もあります。
前胸に太い赤い横線と、上翅にも太いU字の赤線を持ち、ちょっと、歌舞伎の隈取りを連想したので、このように仮称しました。
初めて見る種ですが、こんなにハッキリした紋を持つ種が知られていないはずはなく、未記載種だろうと思います。

(クマドリヒメハナムシ、左から、背面、赤黒強調し図案風に編集した図、隈取りの一例)

クマドリヒメハナムシ、左から、背面、赤黒強調し図案風に編集した図、隈取りの一例

また、キムネミジンムシと仮称した種は、マエキミジンムシの前胸を、全体黄褐色にしたような種で、この種についても見覚えはありません。
この川中周辺は、確かに、綾の照葉樹林の中核と言える場所ですが、こうして、次々と、見たことも聞いたこともないような種が出現するのは、想像以上です。

(キムネミジンムシ)

キムネミジンムシ

さらに、ヒゲブトチビヒラタムシは平野(2009)に掲載されている未記載種で、本州、九州(長崎), 対馬、五島(福江島)、伊豆御蔵島、奄美大島、徳之島、石垣島、西表島に分布することが知られています。
宮崎県・綾町から初記録になります。

平野幸彦, 2009. 日本産ヒラタムシ上科図説 第1巻 ヒメキノコムシ科・ネスイムシ科・チビヒラタムシ科. 63pp. 昆虫文献 六本脚

(訂正: 当初、九州初記録と書きましたが、西田さんのご教示によると、既に、長崎県大村市狸ノ尾(西田, 2020)と福江島(西田, 2019)から記録されたということです。ご教示いただいた西田さんにお礼申し上げます。

西田光康, 2019. 長崎県の離島で得た甲虫類. こがねむし, (84): 17-36.

西田光康, 2020. 大村市狸ノ尾で2017-2019年に得た甲虫類. こがねむし, (85): 1-15.)

(ヒゲブトチビヒラタムシ)

ヒゲブトチビヒラタムシ

ケジロヒョウホンムシとオオマダラヒゲナガゾウムシについても、綾町の記録はありません。
オオマダラヒゲナガゾウムシは体長10mm以上で、♂の触角はひどく長く、特に、先端3節が細長いのが特徴です。

(オオマダラヒゲナガゾウムシ)

オオマダラヒゲナガゾウムシ

最後に、クロアシヒゲナガヒラタミツギリゾウムシです。
本種はすでに、綾町からは数例記録されていますが、全国的に見ると、数箇所の産地しか知られていない珍種です。

(クロアシヒゲナガヒラタミツギリゾウムシ)

クロアシヒゲナガヒラタミツギリゾウムシ

また、川辺に置いたライトFITには、期待したほどではありませんでしたが、水辺に居る、タンゴヒラタゴミムシ*、キイロチビゴモクムシ、コホソクビゴミムシ、アシナガミゾドロムシ、ユミセミゾハネカクシ*などが入っていました。

ライトFIT回収の後は、落ち葉篩です。
綾町はヤマビルの多産地で、昨年7月に来たときは、忌避剤を用いたりして、本腰を入れて用心していました。
しかし、参加者10名ほどの中で、噛まれたのは2名だけで、私自身は見もしなかったので、今回は油断していました。

地表に這いつくばって落ち葉を篩うわけで、ヤマビルと遭遇しないわけがない、と言うことを忘れていました。
林床は薄暗いこともあり、目視で確認することはありませんでしたが、篩い終わって、手袋を脱ぐと、左手の人差し指と中指の間の又に、血が出ています。

慌てて体中探してみましたが、姿はありません。
手袋の中まで知らぬうちに侵入し、さっさと血を吸って、また知らぬうちに退散したものと思われます。
痛くも痒くもないので、厄介です。
それにしても、敵も然る者と感心することしきり。

ともあれ、篩った落ち葉サンプルはビニール袋に入れて自宅まで持ち帰り、後日、いつものように、簡易ベルレーゼにかけました。

(簡易ベルレーゼ)

簡易ベルレーゼ

種子島より、よほど種数があるようなので、アリヅカムシはまた、野村さんに同定をお願いしたところ、快諾していただきました。

多分、綾町では落ち葉篩いをする人がほとんどいなかったように思えます。
と言うのも、抽出された甲虫20種のうち、10種が綾町初記録で、その中の6種は宮崎県でも初記録でした。

宮崎県・綾町初記録種はコアカツブエンマムシ*、ヒサゴムクゲキノコムシ*、コゲチャナガムクゲキノコムシ*、シンドシウム属ムクゲキノコムシの一種*、ケチビヒョウタンヒゲナガゾウムシ*、オチバゾウムシの一種②*の6種です。

このうち、ムクゲキノコムシ類は、以前、沢田さんに同定していただいた福岡県産などと比較して同定しています。
全て1.5mm前後の極微小甲虫です。

(左から、ヒサゴムクゲキノコムシ、コゲチャナガムクゲキノコムシ、シンドシウム属ムクゲキノコムシの一種)

左から、ヒサゴムクゲキノコムシ、コゲチャナガムクゲキノコムシ、シンドシウム属ムクゲキノコムシの一種

また、オチバゾウムシは国内で3種命名されていますが、各地からそれぞれ多少違った感じの個体が見つかります。
まだちゃんと研究がなされてなく、各地に固有種が分布するようです。
綾町産の♂の前符節は広がらず、これが広がるナガサキオチバゾウムシとは違うタイプのようです。

(コアカツブエンマムシ、オチバゾウムシの一種②背面、同側面)

コアカツブエンマムシ、オチバゾウムシの一種②背面、同側面

(追補

ホームページ掲載後、中村さんから「オチバゾウムシ属については、最近、9種が追加記載されています」と、文献をご教示いただいたので、以下に紹介します。
記載文献は2編で、種の頭に、文献番号を示しておきます。番号がない種は既知種です。ご教示いただいた中村さんに厚くお礼申し上げます。

①Yoshitake, H., 2021a. Eight new edaphic weevils of the genus Otibazo Morimoto (Coleoptera, Curcurionidae, Molytinae) from the Ryukyus, Southwestern Japan. Elytra, Tokyo, New Seriese, 11(1): 167-181.

②Yoshitake, H., 2021b. A new Otibazo (Coleoptera, Curcurionidae, Molytinae) from Kyoto Prefecture. Elytra, Tokyo, New Seriese, 11(Supplement): 231-234.

①アマミオチバゾウムシ Otibazo amamiensis Yoshitake 奄美大島(湯湾)
①イシガキオチバゾウムシ Otibazo chuhi Yoshitake 石垣島(オモト岳)
①ヒラノオチバゾウムシ Otibazo hiranoi Yoshitake 沖縄本島(ヤンバルウカ)
①ヤンバルオチバゾウムシ Otibazo hoshinai Yoshitake 沖縄本島(ヤンバル辺土名)
イワワキオチバゾウムシ Otibazo morimotoi Nakane 本州
ナガサキオチバゾウムシ Otibazo nagasakiensis Morimoto 九州,男女
①スミヨウオチバゾウムシ Otibazo nakamurai Yoshitake 奄美大島(三太郎峠)
①オキナワオチバゾウムシ Otibazo okinawaensis Yoshitake 沖縄本島(ヤンバル辺土名)
オオシマオチバゾウムシ Otibazo oshimaensis Morimoto et Miyakawa 伊豆諸島
①イリオモテオチバゾウムシ Otibazo seidaii Yoshitake 西表島(古見)
②ウエノオチバゾウムシ Otibazo uenoi Yoshitake 本州(京都芦生演習林)
①ヨナグニオチバゾウムシ Otibazo yonaguniensis Yoshitake 与那国島(満田原森林公園)

本土では、近畿地方で北部と中部に1種ずつ知られています。
九州では少なくとも、西九州と東・南九州は別物です。

気になるのは、奄美大島で2種、沖縄本島北部で3種知られていることです。
これらの種は混生しているのでしょうか、それとも、微妙に棲み分けているのでしょうか?

先に、種子島の記事で掲載したオチバゾウもこれらの既知種とは、一見して、真っ黒で違って見えたので、まだまだ、島ごと、そして、本土でも様々な種が分布するものと考えられます。研究の進展が楽しみです。)

この他、綾町初記録種として、ケシガムシ*、コウセンマルケシガムシ*、タバコシバンムシ*、ワタナベヒサゴクチカクシゾウムシ*も抽出できました。

(左から、ケシガムシ、同・中胸腹板突起、ワタナベヒサゴクチカクシゾウムシ背面、同側面)

左から、ケシガムシ、同・中胸腹板突起、ワタナベヒサゴクチカクシゾウムシ背面、同側面

タバコシバンムシは木野田さんに同定と、写真撮影をお願いしました。厚くお礼申し上げます。

(タバコシバンムシ、左から、♀背面、腹面、産卵管、支柱突起)

タバコシバンムシ、左から、♀背面、腹面、産卵管、支柱突起

その他の抽出された甲虫は、イクビモリヒラタゴミムシ、クロズホナシゴミムシ、ヤマトマンゲツガムシ、オチバヒメタマキノコムシ、ルイスセスジハネカクシ、ツノフトツツハネカクシ、ナガヒゲブトコメツキ、ムネクリイロボタル(幼虫)、トゲアシゾウムシ、アカナガクチカクシゾウムシです。

ヤマトマンゲツガムシは既に綾町からは記録されていますが、真ん丸で盛り上がり、球を半分に切ったような種です。
九州(福岡英彦山・福智山・釈迦岳、宮崎綾町)と済州島の記録がありますが、まだ、記録例の少ない種です。

(ヤマトマンゲツガムシ)

ヤマトマンゲツガムシ

川中では、今坂・國分組以外に、的場さんと松田さんが採集されています。

◎6月3日的場さんの任意採集結果

的場さんはゾウムシ類が専門で、同定済みのゾウムシ類について、結果をお知らせいただきました。

川中神社周辺でのビーティング等で、キスジヒゲナガゾウムシ、クロホシメナガヒゲナガゾウムシ、ミツギリゾウムシ、カシワクチブトゾウムシ、サカグチクチブトゾウムシ、クワヒメゾウムシ*、シバタカレキゾウムシ*、ホソクチカクシゾウムシ、ヒサゴクチカクシゾウムシ、(仮称)ワカヤマケブカキクイゾウムシ*、チャバネキクイゾウムシを採集されたそうです。あと、タキグチモモブトホソカミキリも採られています。

このうち、ワカヤマケブカキクイゾウムシと仮称した種は、従来は、的場さんが採集された和歌山県の数箇所のみで知られていたそうです。
故・森本先生が新種として報告される予定だったそうですが、キクイゾウムシの総説が未完のまま、そのままになっているそうです。
当然、九州、宮崎県・綾町共に初記録です。

(左から、ワカヤマケブカキクイゾウムシ、オオケブカキクイゾウムシ)

左から、ワカヤマケブカキクイゾウムシ、オオケブカキクイゾウムシ

的場さんによると、「本種の特徴はオオケブカキクイゾウムシよりも小型で、上翅各間室に1列の黄灰色毛を有する。
毛は2種類あり、細い針状毛と、棍棒状で先端が裁断状の毛があり、交互に列生する。
毛の長さは、どちらも間室幅とほぼ同じ長さで、針状毛は寝ており、棍棒状毛は立って後方に曲がる。
前胸背は網目状に点刻され、上翅基部とほぼ同幅か広い。その側縁は弧状。」ということです。

比較のため並べてみたオオケブカキクイゾウムシは、Webページの日本産ゾウムシデータベースに掲載されている画像を加工して引用しています。
この個体は、城戸さん採集の福岡県古処山産だそうです。

従来の、綾町でのオオケブカキクイゾウムシの記録は、見直しが必要かもしれません。

また、クワヒメゾウムシとシバタカレキゾウムシも綾町から初記録です。

以上、同定結果とワカヤマケブカキクイゾウムシについての写真と情報を、お知らせいただいた的場さんに、厚くお礼申し上げます。

◎6月3日松田さんの任意採集結果

松田さんは、この日、ライトFITを設置する傍ら、任意採集も実施されています。
一部を除いて松田さんの同定です。同定結果をお知らせいただいた松田さんにお礼申し上げます。

クロヘリアトキリゴミムシ、アバタセスジハネカクシ*、ヒゲナガクロコガネ、コクロコガネ、ジュウシチホシハナムグリ、エダヒゲナガハナノミ、クチボソコメツキ、クチブトコメツキ、ネアカクロベニボタル、ホソホタルモドキ、クロオビセマルヒラタムシ、ルイスコメツキモドキ、ホソカミキリモドキ、カトウカミキリモドキ、ドウボソカミキリ、ヒメヒゲナガカミキリ南九州亜種、オビレカミキリ*、セアカケブカサルハムシ、クロウリハムシを採られています。

また、6月8日の任意採集で、クロツヤハダコメツキ、ホソベニボタル、ルイスコメツキモドキ、ミツボシホソナガクチキ、ドウボソカミキリを採られています。

このうち、アバタセスジハネカクシは宮崎県・綾町共に初記録です。
また、オビレカミキリは綾町初記録です。南物なので、当然、綾町から記録があるものと思っていたので意外でした。

(左から、アバタセスジハネカクシ、オビレカミキリ)

左から、アバタセスジハネカクシ、オビレカミキリ

1b. 綾南川

綾南川のポイントは、県道沿いの川中の手前、1-2km付近が調査の中心です。

今坂・國分組に、1日遅れで綾町入りした大塚・斎藤組は、到着後、すぐに綾南川に向かったそうです。
採集ポイントは、昨年、灯火採集を実施した場所とほぼ同じ。
川中の手前、1-2km付近は、うねうねと道が湾曲していますが、その川側への曲がりごとに、すれ違い車避けの広場があり、採集ポイントになっています。

(採集ポイントの1つ)

採集ポイントの1つ

大塚・斎藤組は川に向かっての鞍部にライトFITを設置し、ビーティングなど任意採集を行い、夜まで留まって、灯火採集をされたそうです。
なお、この後も含めて、斎藤さん採集は大部分今坂が同定し、大塚さんは自身で同定され、一部の種は今坂が再確認しています。

任意採集では、斎藤さんは、コヨツボシアトキリゴミムシ、ヤマトデオキノコムシ、ヘリアカデオキノコムシ、ネアカクロベニボタル、ヒメボタル、ムネアカクロジョウカイ、ウスオビキノコケシキスイ、フタトゲホソヒラタムシ、ケナガツツキノコムシ、カトウカミキリモドキ、クロホシテントウゴミムシダマシ、トガリシロオビサビカミキリ、シマトゲバカミキリ、スネアカヒゲナガゾウムシ、ネブトヒゲナガゾウムシ、シリジロメナガヒゲナガゾウムシ、カシワクチブトゾウムシ、ガロアノミゾウムシ、アトジロカレキゾウムシ*を採られています。

(アトジロカレキゾウムシ)

アトジロカレキゾウムシ

また、灯火採集では、ゴホンダイコクコガネ、ヒゲナガクロコガネ、クリイロコガネ、オオスジコガネ、ワダカミキリモドキ、オオクチキムシを採集されました。

一方、同行の大塚さんは、任意採集でカワツブアトキリゴミムシ、ハギキノコゴミムシ、キノコアカマルエンマムシ、ヒメクロデオキノコムシ、アオハナムグリ、(仮称)コケチビドロムシ*、オバボタル、クロオビセマルヒラタムシ、ルイスコメツキモドキ、ミヤマオビオオキノコ、タイワンオオテントウダマシ、クロミジンムシダマシ、ヒサゴホソカタムシ、サシゲホソカタムシ、ダルマチビホソカタムシ、

モリモトヒメナガクチキ、ナガニジゴミムシダマシ、キマワリ、アヤモンチビカミキリ、ガロアケシカミキリ、タノオアラゲサルハムシ、セアカケブカサルハムシ、ヤツボシヒゲナガゾウムシ、ヨリメオビモンヒゲナガゾウムシ、コモンヒメヒゲナガゾウムシ*、キスジヒゲナガゾウムシ、ミツギリゾウムシ、サカグチクチブトゾウムシ、クワヒメゾウムシ*、シラケツチイロゾウムシ*、シバタカレキゾウムシ*、タイワンモンクチカクシゾウムシ、チャバネキクイゾウムシを採られています。

このうち、シラケツチイロゾウムシは宮崎県・綾町共に初記録です。ここでも、コケチビドロムシが採れています。
また、コモンヒメヒゲナガゾウムシ、クワヒメゾウムシ、シバタカレキゾウムシは綾町初記録です。

(左から、シラケツチイロゾウムシ、コモンヒメヒゲナガゾウムシ)

左から、シラケツチイロゾウムシ、コモンヒメヒゲナガゾウムシ

(左から、クワヒメゾウムシ、シバタカレキゾウムシ)

左から、クワヒメゾウムシ、シバタカレキゾウムシ

灯火採集では、大塚さんはオオアオミズギワゴミムシ、アオグロヒラタゴミムシ、ムナビロアトボシアオゴミムシ、ハネビロアトキリゴミムシ、モンキマメゲンゴロウ、ナガチャコガネ、ヒゴシマビロウドコガネ、ヨツボシケシキスイを追加されていますが、あまり虫が飛来しなかったようです。

大塚・斎藤組は、綾南川には1日置いて6月8日に、ライトFIT回収のため訪れたそうです。

ライトFITで、斎藤さんはツマアカナガエハネカクシ、コクワガタ、コクロコガネ、ドウガネブイブイ、サクラコガネ、クチブトコメツキ、エグリクチブトゾウムシを採られています。

大塚さんは、もっぱら、林縁の梢や、草地のスウィーピングを行い、オオアオモリヒラタゴミムシ、ベーツホソアトキリゴミムシ、ヒラタアトキリゴミムシ、マメコガネ、トカラダンダラカッコウムシ?*、フタモンクロテントウ、クロスジイッカク、クリイロクチキムシ、テントウゴミムシダマシ、シイサルハムシ、ヤナギルリハムシ、モンキアシナガハムシを採集し、落ち葉からクビカクシゴミムシダマシも採られています。

(梢をスウィーピングする大塚さん)

梢をスウィーピングする大塚さん

トカラダンダラカッコウムシは、屋久島、トカラ列島、奄美大島に分布し、九州本土からはまだ知られていません。
綾町産は、体型(特に、上翅の短さ)と、上翅中央の黄褐色紋などは、奄美大島産の本種と良く似ています。
しかし、全体的に黒味が強く、特に上翅基部の黄褐色紋を欠き、地色(黒色)のままです。

ダンダラカッコウムシの仲間は、琉球列島では、北部に本種が、南部にリュウキュウダンダラカッコウムシが分布することになっています。
しかし、各島のものを並べてみると、島ごとに色や形に変異があり、全体としては、何処までが種か、亜種か、全体で何種いるのか、良く解らない状況にあります。
その意味で、綾町産も真にトカラと判断して良いのかどうか、今のところ解らないので、?マークを付けました。

(左から、奄美大島産トカラダンダラカッコウムシ、綾町産トカラダンダラカッコウムシ?)

左から、奄美大島産トカラダンダラカッコウムシ、綾町産トカラダンダラカッコウムシ?

次に、今坂・國分組ですが、6月7日夕方、ライトFIT設置目的で綾南川を訪れ、今坂が設置している間に、國分さんは周辺のビーティングを行いました。

(綾南川のライトFIT)

綾南川のライトFIT

國分さんの採集品はフタモンウバタマコメツキ、クロツヤハダコメツキ、オバボタル、クリノウスイロクチキムシ、アカバネツヤクチキムシ、フナガタクチキムシ、テントウゴミムシダマシ、セアカケブカサルハムシです。

8日はライトFIT回収後に、クリの花を見つけて掬ってみました。

(クリの花)

クリの花

クロヘリアトキリゴミムシ、ヒゴシマビロウドコガネ、オオヒラタハナムグリ*、ヒメホソキコメツキ、オオオバボタル、ドウイロムクゲケシキスイ、チャイロヒメハナノミ、オトヒメハナノミ*、 (仮称)キイクロヒメハナノミ、フナガタクチキムシ、ヒメクロトラカミキリ、コカシワクチブトゾウムシ*、カシワクチブトゾウムシ、ヒラセノミゾウムシが入りましたが、個体数は多くありません。このうち、オトヒメハナノミとキイクロヒメハナノミは畑山さんの同定です。

オトヒメハナノミは四国、九州に分布する種ですが、宮崎県・綾町共に初記録です。
オオヒラタハナムグリはブナ帯の花に多い種です。
綾町でも大森岳林道の高い所でなら採れて当然と思われるので、採れてないのが意外でした。
また逆に、こんな低標高(210m程度)の花で採れたのも意外で、他にそうした例は知りません。

(オオヒラタハナムグリ)

オオヒラタハナムグリ

その後、周辺の枯れ木等を叩いて、クロゲヒメキノコハネカクシ、クロヒメキノコハネカクシ、チャイロズマルヒメハナムシ、フタトゲホソヒラタムシ、ナミテントウ、ケナガツツキノコムシ、カシノナガキクイムシ*を採っています。

本州各地で甚大な被害が出ている、ナラ枯れの原因となるカシノナガキクイムシが、綾町で記録されていないのも不思議です。
そう言えば、九州ではナラ枯れはかなり局所的で、目立つほどではありません。
綾町ではナラ枯れは確認されているのでしょうか?

(カシノナガキクイムシ♂)

カシノナガキクイムシ♂

また、ライトFITにはチビタマキノコムシ、セダカマルハナノミ、ハラゲビロウドコガネ、シロオビチビサビキコリ、ルイスクシコメツキ、クロミスジヒシベニボタル*、キタジュウジベニボタル*、クギヌキヒメジョウカイモドキ、マルキマダラケシキスイ、(仮称)クマドリヒメハナムシ*、ヒラタコメツキモドキ、クシヒゲニセクビボソムシ*、アカバネツヤクチキムシ、コマルキマワリ、ツツゾウムシ、アラムネクチカクシゾウムシ、ヒメクチカクシゾウムシ、サクキクイムシが入っていました。

川中で採れたクマドリヒメハナムシがここでも入っていました。綾南川沿いには広く分布するようです。
クロミスジヒシベニボタルとキタジュウジベニボタルは、綾町初記録です。
松田さんに同定していただき、綾町初記録なので、写真撮影もお願いしました。

肩部に赤紋があるのも共通で、一見、互いに良く似ていますが、前胸背の形と、背面の隆起線の形が違います。

(左から、クロミスジヒシベニボタル頭胸部、同背面、キタジュウジベニボタル背面、同頭胸部)

左から、クロミスジヒシベニボタル頭胸部、同背面、キタジュウジベニボタル背面、同頭胸部

また、クシヒゲニセクビボソムシは♂の触角が長い櫛状になる顕著な種ですが、宮崎県・綾町共に記録のない種です。

(クシヒゲニセクビボソムシ♂)

クシヒゲニセクビボソムシ♂

最後に、川中に続いて、綾南川でも、道沿いの谷間を見つけて落ち葉篩いをしました。

(綾南川の落ち葉篩いをした場所)

綾南川の落ち葉篩いをした場所

この時もスッカリ油断していましたが、宿に戻って着替えようとして、シャツを脱ぐと、衿が真っ赤に染まっていました。
いよいよ、本格的にヤマビルにやられたようでしたが、血は止まっており、ヤマビルも見つかりませんでした。
仕事(吸血)が済むと、速やかに消えるようです。

後日、簡易ベルレーゼで抽出できたのは、アリヅカムシを除いて、クロツヤヒラタゴミムシ*、クロズホナシゴミムシ、コウセンマルケシガムシ*、ヤマトマンゲツガムシ、コアカツブエンマムシ*、コゲチャナガムクゲキノコムシ*、アカセミゾハネカクシ、マメダルマコガネ、ムネクリイロボタル(幼虫)、クロテントウゴミムシダマシ*、ズグロキハムシ、フトヒゲチビツチゾウムシ、オチバゾウムシの一種②*など13種ですが、半数近い6種は綾町初記録です。
互いに近いこともあり、川中の落ち葉から出た種と8種(62%)が共通でした。

他に、綾南川では、木野田さん、安藤さん、畑山さん、松田さん、松村さんも採集されています。

木野田さんは6月3日に灯火採集でヒメキンイロジョウカイを採集されています。

また、安藤さんも同じく6月3日の灯火採集でニセコガシラアオゴミムシ、クロズホナシゴミムシ、キノコゴミムシ、ツマアカナガエハネカクシ、トビイロマルハナノミ、ナガチャコガネ、ホソホタルモドキ、マルヒラタケシキスイ、リュウキュウホソヒゲヒメハナムシ、ルイスチビヒラタムシ、クロオビセマルヒラタムシ、クロチビオオキノコ、ミヤマオビオオキノコ、ナミテントウ、ダンダラテントウ、フタオビツツキノコムシ、ツヤケシヒメホソカタムシ、オニツノゴミムシダマシを採集されています。
安藤さん採集分は木野田さんの同定で、写真撮影もお願いしました。

このうち、リュウキュウホソヒゲヒメハナムシは従来は、奄美大島、沖縄本島、石垣島で記録されており、琉球系の種です。
しかし、綾町からは、既に、笹岡(2018a)により、綾南川から記録されています。

笹岡康則, 2018a. 2018年綾町照葉樹林で確認された甲虫類. タテハモドキ, (55): 1-8.

(左から、リュウキュウホソヒゲヒメハナムシ、背面、腹面)

左から、リュウキュウホソヒゲヒメハナムシ、背面、腹面

畑山さんは、6月3日から8日に、昨年とほぼ同じ場所に設置されたライトFITで、クロモリヒラタゴミムシ、コキノコゴミムシ、ヒラタアトキリゴミムシ、クロヘリアトキリゴミムシ、ゴホンダイコクコガネ、クギヌキヒメジョウカイモドキ、(仮称)クマドリヒメハナムシ*、オオキバチビヒラタムシ、ベニモンムネビロオオキノコ、カトウカミキリモドキ、クリノウスイロクチキムシ、アカバネツヤクチキムシ、フナガタクチキムシ、ナガニジゴミムシダマシ、カシワクチブトゾウムシ、ルイスザイノキクイムシを、

また、松田さんは、6月7日から8日に、畑山さんとほぼ同じ場所に設置されたライトFITでコキノコゴミムシ、ベーツホソアトキリゴミムシ、フタホシアトキリゴミムシ、ヒラタアトキリゴミムシ、ゴホンダイコクコガネ、オオカンショコガネ、ナガチャコガネ、クロコガネ、アカビロウドコガネ、ツヤコガネ、エダヒゲナガハナノミ、シロオビチビサビキコリ、オオサビコメツキ、キバネクチボソコメツキ、ヒメホソキコメツキ、クチブトコメツキ、ヒラタクシコメツキ、クシコメツキ、

ルイスクシコメツキ、コクロハナボタル、(仮称)クマドリヒメハナムシ*、オオキバチビヒラタムシ、カツオガタナガクチキ、カトウカミキリモドキ、ワダカミキリモドキ、クリノウスイロクチキムシ、ホソアカクチキムシ、アカバネツヤクチキムシ、フナガタクチキムシ、ツノボソキノコゴミムシダマシ、カシワクチブトゾウムシ、コホシメカクシゾウムシ、アシナガオニゾウムシを採られています。
上記両氏の採集分は、大部分、今坂の同定です。

最後に、途中から参加された松村さんは、6月8日に綾南川でビーティングとスウィーピングを行われています。
採集されたのはコカブトムシ、ゴホンダイコクコガネ、ヒメスジコガネ、アオドウガネ、ナガチャコガネ、クロツヤハダコメツキ、オオハナコメツキ、クシコメツキ、ベニモンムネビロオオキノコ、クリイロクチキムシ、カトウカミキリモドキ、ホソカミキリモドキ、ホソカミキリ、クロサワヒメコバネカミキリ、ナガゴマフカミキリ、アオヒゲナガクチブトゾウムシ*です。
カミキリモドキ以外は、ご自身の同定です。

このうち、クロサワヒメコバネカミキリは、本州、四国、九州から知られる稀種で、綾町からは、昨年、綾南川から記録されたばかりです(笹岡, 2023)。

笹岡康則, 2023. 2022年、2023年綾照葉樹林で確認された甲虫類. タテハモドキ, (61): 4.

(クロサワヒメコバネカミキリ♂)

クロサワヒメコバネカミキリ♂

松村さんによると、クリの大木の根元近くの樹幹を這っていたそうで、産卵場所を探す♀を探していたのかもしれません。
本種は本来はブナ帯に分布する種です。

結局、川中と綾南川を併せた綾南川エリアで、299種が見つかりました。

つづく