「綾町・照葉樹林探訪」2024 その1

2023年は7月22日から26日まで、宮崎県綾町の照葉樹林に採集に行きました。
メンバーは久留米昆蟲研究會のメンバーのうち、久留米周辺から、國分さん、有馬さん、斎藤さん、大塚さん、私の5名。
そして、大阪から畑山さん、福岡の和田さん、大分県臼杵の堤内さんの全員で9名でした。
全て久留米昆蟲研究會の会員でしたので、頭に、久留米昆メンバーによる・・・とのタイトルを付けました。

この内容については、昨年(2023年)、5回に渡って、ホームページに掲載しましたので、興味のある方は、久留米昆メンバーによる「綾町・照葉樹林探訪」で検索してみて下さい。

また、その後、精査して、久留米昆の会誌・KORASANA 103号に投稿していて、9月くらいには発行される予定です。

さて、2023年の成果に気を良くして、2024年も出かけることにしました。
しかし、昨年は盛夏で温度も湿度も高く、思うように動けなかったので、今年は多少とも動ける6月初旬に設定しました。

(綾町の位置)

綾町の位置

畑山さんは、当初、彼の専門の虫(コメツキダマシ・ハナノミ)はほとんど見込めないとして、不参加を表明されていましたが、相棒のベニボタル専門の松田さんが「行きたい」と言い出されたためか、彼も来ることになりました。
月齢を勘案して、関西組は6月3日から9日までの日程が設定されました。

また、その話が色々伝わったためか、和歌山の的場さん、ゴミムシダマシの権威の安藤さん、先頃、沖縄甲虫図鑑を発行された松村さんも参加することになりました。

久留米からは、前回参加組の内、月始めは仕事の都合が付かない有馬さんを除く、國分さん、斎藤さん、大塚さん、私の4名が、またまた参加することになりました。
こうして2024年も、地元の案内としての笹岡さん、木野田さんを加え、総勢10名の調査が計画されたわけです。

ただ、蓋を開けてみると、関西勢の調査の中心は御池(みいけ)を始めとした霧島山系が主体となり、綾町は久留米勢が主として調査することになりました。

前回は、時間的経過に沿って紹介しましたが、今回は、メンバーそれぞれの動きが複雑で煩雑になるので、採集場所ごとに、メンバーそれぞれの採集分をお伝えしたいと思います。

久留米勢の採集日程は以下の通りです。

今坂・國分組
2024年6月5日久留米→綾町(正午到着)
午後1時~2時過ぎ 綾神社 ライトFIT設置
午後3時~9時半 川中 ライトFIT設置、任意採集、灯火採集

6月6日 木野田さんの案内で
午前9時半~10時半 綾南川河畔・三本松橋、任意採集
午前9時半~11時過ぎ げんだぼの森、任意採集
午前11時半~12時半 古屋の溜め池、任意採集
午後は雨が強くなったので、周辺の下見

6月7日 木野田さんの案内で
午前9時~12時 大森岳林道、任意採集
午前12時半~午後1時 綾北川道沿い、任意採集
午後2時~午後3時半 イオンの森、任意採集
午後4時~午後4時半 綾南川、ライトFIT設置
午後5時10分~5時40分 綾南川河畔・三本松橋、ライトFIT設置

6月8日 
午前8時半~10時 川中、ライトFIT回収、任意採集、落ち葉篩い
午前10時10分~10時30分 綾南川、ライトFIT回収、落ち葉篩い
午前10時50分~11時10分 三本松橋、ライトFIT回収
午前11時20分~12時 綾神社、ライトFIT回収、落ち葉篩い
午後は雨

大塚・斎藤組
6月6日
午後1時~午後10時半 綾南川、任意採集、ライトFIT設置、灯火採集

6月7日 木野田さんの案内で
午前9時~12時 大森岳林道、任意採集、ライトFIT設置
午前12時半~午後3時 綾北川道沿い、任意採集

6月8日 
午前8時~10時 大森岳林道、任意採集、ライトFIT回収、落ち葉篩い
午前10時~11時半 綾北川道沿い、任意採集
正午~午後1時 綾南川、任意採集、ライトFIT回収、落ち葉篩い

関西勢(畑山、松田、的場)の日程はあちこちに飛びますので不連続ですが、
6月3日
午後3時過ぎ、丸目岳を経由してセンター到着。
3人で綾南川と川中神社に向かう。
松田は川中キャンプ場駐車場付近にライトFIT2カ所と、少し手前の川沿いの斜面にライトFITを2カ所をセット。
畑山は昨年と同じ川沿いの斜面(綾南川)に3か所セット。これは8日に回収。
夕食後、大森岳林道のゲート付近で畑山、松田それぞれにナイター。
近くにライトFITを畑山1個、松田2個をセット。

6月4日御池へ向かい、安藤、笹岡、木野田が合流。

6月5日に沖縄から松村合流。

(御池で記念撮影、前列、左から、的場、畑山、安藤、後列、左から、松村、松田)

御池で記念撮影、前列、左から、的場、畑山、安藤、後列、左から、松村、松田

6月6日に的場が帰るため、畑山が宮崎空港まで送り。

6月7日
畑山、松田、松村の3名で午後に、大森岳林道ゲート付近のライトFITを回収。
新たにゲート奥に、畑山はブラックライト+LEDのライトFITを3ヶ所、松村がさらにカーブの奥に5カ所のライトFIT、松田は手前に3ヶ所のライトFITを設置。綾神社にも畑山、松田共にライトFITを設置。

6月8日
畑山、松田、松村の3名で、綾南川、川中、大森岳林道ゲート付近、綾神社のライトFITを回収。

(丸目岳で記念撮影、左から、松田、畑山、松村)

丸目岳で記念撮影、左から、松田、畑山、松村

6月8日の夜、残った6名で会食。

(最終日の会食1、左から、斎藤、國分、松村、畑山、松田)

最終日の会食1、左から、斎藤、國分、松村、畑山、松田

(最終日の会食2、左から、松田、畑山、今坂、斎藤、國分、松村)

最終日の会食2、左から、松田、畑山、今坂、斎藤、國分、松村

1週間ほど前の天気予報では、この期間、綾町はほぼ晴れる予報でした。
確かに、久留米勢が出かける直前の6月4日まではずっと晴れていて、早めに到着した畑山さんからは、「カラカラに乾燥していて、虫が居ない」とのぼやきが入っていました。
しかし、今坂・國分組が出発した6月5日は何とか天気が保ったものの、その後はずっと雨模様。
雨の合間にちょこちょこ採集を繰り返す結果になりました。
今坂・國分組にとっては、種子島に続き、綾町も雨に明け暮れた採集行となったわけです。

おまけに予定最終日の9日は大雨の予報ということで、普通なら粘って1時間でも余分に採集するところを、朝の起き抜けから早々に帰路につき、お昼には自宅に戻るという異例の調査になりました。

以下に、採集地ごとに状況と、採集品を紹介します。

綾ユネスコエコパーク内は、大きく、綾南川エリア、大森岳林道エリア、その他のエリアの3地区に分けています。

(綾町の採集地)

綾町の採集地

綾南川沿いでは、最奥の、川中キャンプ場から川中神社周辺を川中と表示し、綾大吊り橋付近より川中キャンプ場手前までを綾南川と表示し、この2箇所を綾南川エリアとします。
大吊り橋の手前は「その他のエリア」に含め、南俣と表示します。

また、大森岳林道エリアは、林道入り口付近と、ゲートを入ってから標高600m付近までを大森岳林道と表示し、一応、2つに区別します。

それ以外の場所は、全て「その他のエリア」に含め、上記の南俣、そして綾北川(川沿い)、イオンの森、綾神社、護国神社、古屋の溜め池、げんだぼの森、三本松橋などが含まれます。
概略、この順で紹介していきましょう。

  1. 綾南川エリア

1a. 川中
綾南川沿いに県道26号を北上し、大吊り橋の先5kmほど進んで、右手に降りると川中キャンプ場です。
県道26号をさらに2kmほど進むと小林市須木に入るので、ほぼ、綾町のはずれと言う事になります。
このキャンプ場一体と、吊り橋を渡って対岸の川沿い、そして、川中神社周辺を「川中」と表示しています。

6月5日午後3時過ぎ、今坂・國分組は、県道からキャンプ場に降りました。河川のすぐ手前で駐車します。

(駐車場所の周辺)

駐車場所の周辺

吊り橋のすぐ手前に川中自然公園の看板がありました。

(川中自然公園の看板)

川中自然公園の看板

この後、採集したのは、ほぼ、この看板に表示されている範囲です。
まず、各処にライトFITを設置します。
駐車場所横の川沿いの斜面、川を渡って神社への谷沿いの道を進んだ平地、集落跡があったと思われるクヌギ林、吊り橋の手前など、計5基のライトFITを設置しました。
川の見えるFITは、川物が何か入ることを期待したわけです。

一通りライトFITの設置が終わったので、採集を始めます。
樹葉や枯れ木等を叩いていきますが、余り虫が落ちません。
笹岡さんからも、「乾燥が酷くて、普通なら枯れ木にはキクイムシがいくつも見られるのに、今年はそれも見られない」と聞いています。

大照葉樹林のまっただ中で、それも、川沿いの湿気ムンムンの場所のはずが、どうしたのでしょう。
この日はやや気温も低く、動き回らない限りは、そう汗もかかない感じです。

國分さんは林縁の樹葉を中心にビーティングされていましたが、やはり、「虫が少ない」と言われていました。

それでも、ヒゴシマビロウドコガネ、ホソサビキコリ、クロツヤハダコメツキ、クチブトコメツキ、オオハナコメツキ、ネアカクロベニボタル、クロハナボタル、カタモンミナミボタル、オバボタル、ホソホタルモドキ、ムネアカクロジョウカイ、コマダラコキノコムシ、クロチビアリモドキ、クリノウスイロクチキムシ、クリイロクチキムシ、キイロクチキムシ、クロホシテントウゴミムシダマシ、テントウゴミムシダマシ、ヤハズカミキリ、バラルリツツハムシ、マダラアラゲサルハムシ、フジハムシ、イチモンジカメノコハムシ、キボシメナガヒゲナガゾウムシ、ホソチョッキリ*、コナライクビチョッキリ、ヒゲナガホソクチゾウムシ、カシワクチブトゾウムシなど28種を採られていました。

ネアカクロベニボタルとクロハナボタルは、松田さんに同定していただきました。厚くお礼申し上げます。

なお、綾町初記録の種には和名の後ろに*を付けます。
何処でも普通に見られるホソチョッキリが初めてなんですね。

今坂は、立木のハンマーリングや、キノコの付いている樹はスプレーなどもしてみましたが、確かに、落ちてくる虫は少なかったです。

國分さん採集分以外に、カタボシホナシゴミムシ、コヨツボシアトキリゴミムシ、ベーツホソアトキリゴミムシ、ナミツヤムネハネカクシ*、クロゲヒメキノコハネカクシ、クロヒメキノコハネカクシ、ホソスジデオキノコムシ、ヒメデオキノコムシ、シリアカデオキノコムシ、(仮称)コケチビドロムシ*、キバネクチボソコメツキ、ツキワマルケシキスイ、ウスオビカクケシキスイ、ヨツボシオオキスイ、トモンチビオオキノコ、ベニバネテントウダマシ*、オオヒメテントウ*、クロミジンムシダマシ、アヤモンヒメナガクチキ、アカオビニセハナノミ、ナミアカヒメハナノミ、アカカタハナノミ*、

カトウカミキリモドキ、キイロフナガタハナノミ*、ハムシダマシ、オオクチキムシ、アカバネツヤクチキムシ、コブスジツノゴミムシダマシ、チビコブツノゴミムシダマシ、マルツヤキノコゴミムシダマシ、クロテントウゴミムシダマシ*、オニツノゴミムシダマシ、タキグチモモブトホソカミキリ、ニセビロウドカミキリ、セミスジコブヒゲカミキリ、タマツツハムシ*、チビカサハラハムシ、カサハラハムシ、キカサハラハムシ、エノキミツギリゾウムシ、ニセマダラカレキゾウムシ、マダラクチカクシゾウムシが採れていて、國分さんとの重複分6種を合わせると48種が採集できました。

なんだかんだと言っても、それなりに虫は多く、綾町では最も多様性が高い場所であることは確実です。

このうち、コケチビドロムシは、17年前に長崎県多良山系の谷間で、幹掃き採集により多数採集した物を報告(今坂, 2007)して以来、何度か仮称のまま報告しています。
この種は、明らかに未記載種と思われるのにもかかわらず、未だに新種記載されません。
渓流沿いの樹幹のコケの中から見つかる種で、幼虫は流水生と推定されます。
未記載種であるため、一般にはほとんど認知されておらず、宮崎県・綾町共に記録はありません。

(コケチビドロムシ)

コケチビドロムシ

今坂正一, 2007. 2001年以降に長崎県多良山系で採集した甲虫. こがねむし, (72): 7-17.

また、アカカタハナノミは、ヒメハナノミ類と同サイズながら、後肢に段刻を持たないハナノミ族の種です。
上翅の両肩部に赤褐色紋を持ち、翅端前中央部には金色の毛紋を持つ美麗種で、近似のゼンチハナノミとは、金色の毛紋が円~四角形でかなり大きいことで区別されます。
後種が北海道~九州に分布するのに対して、本種は本州と九州に分布し、個体数もより少ないようです。

ちょうど、ゼンチハナノミもこの後の、大森岳林道入り口のライトFITで、畑山さんが採られているので2種並べてみましょう。

(左から、アカカタハナノミ、ゼンチハナノミ、黒矢印→肩部の赤紋、赤矢印→翅端近くの金毛紋)

左から、アカカタハナノミ、ゼンチハナノミ、黒矢印→肩部の赤紋、赤矢印→翅端近くの金毛紋

2種共に、綾町のみならず、宮崎県の記録も無いようです。
いつもながら、同定していただき、写真撮影もお願いした畑山さんに、お礼申し上げます。

さらに、ベニバネテントウダマシは北海道から九州まで分布する種ですが、九州では余り見ない種で、福岡・佐賀・大分などから記録があるものの、宮崎県・綾町、共に記録がありません。

(ベニバネテントウダマシ)

ベニバネテントウダマシ

その他、ナミツヤムネハネカクシ、タマツツハムシも同様に宮崎県・綾町、共に記録が無いようですし、オオヒメテントウとキイロフナガタハナノミ、クロテントウゴミムシダマシは綾町の記録がありません。

(左から、ナミツヤムネハネカクシ、タマツツハムシ)

左から、ナミツヤムネハネカクシ、タマツツハムシ

(左から、オオヒメテントウ、キイロフナガタハナノミ、クロテントウゴミムシダマシ)

左から、オオヒメテントウ、キイロフナガタハナノミ、クロテントウゴミムシダマシ

さらに、エノキミツギリゾウムシは福井県から屋久島まで分布する珍しいミツギリゾウムシですが、宮崎県、とりわけ綾町では記録が多いようです。

(エノキミツギリゾウムシ)

エノキミツギリゾウムシ

夕方になり、今日はここで灯火採集をすることにしました。
木々の間から川面と対岸をすかし見ながら、白幕を張ることにしました。

一方、今日はまた1つの試みを考えてきました。
手元に予備のバッテリーとHIDがあり、また、BOX型のライトトラップも用意してきたので、これを、白幕とは少し離れたグラウンドの方に設置しようと思ったわけです。
白バケツの中には、殺虫剤として酢酸エチルを入れたボトルを入れております。
この装置なら、オスバン水で受けるライトFITとは異なり、粉物の蛾なども普通に採集できるはずです。

(白幕とは反対側のグラウンド)

白幕とは反対側のグラウンド

(設置したHIDを使ったBOX型のライトトラップ)

設置したHIDを使ったBOX型のライトトラップ

BOX型ライトトラップの結果については、後で紹介します。

さて、白幕を張っての灯火採集の準備は出来ましたが、なかなか、日が暮れません。
とりあえず、買ってきておいた弁当を広げて夕食です。

そして、やや暗くなり始め、虫が動き始めましたが、カワゲラ、トビケラなど水生昆虫ばかりで、甲虫は全く来ません。

そのうち、水生昆虫が白幕を覆い尽くす勢いになりましたが、夕方から一段と気温が下がってきたこともあり、甲虫は来ません。
蛾はチラホラ来始め、そのうち、どんどん数を増してきます。
國分さんは蛾採りで大わらわです。

(白幕に来た蛾を採集する國分さん)

白幕に来た蛾を採集する國分さん

白幕の方にも、今回はオスバン液のFITではなく、酢酸エチル入りBOXを受け皿にしたFITを用意しました。
これで、小型の蛾も採れますが、残念ながら、期待した微小甲虫はほとんど飛来していないようです。

白幕に鮮やかな紅色が見えたので、確認すると、ベニツチカメムシでした。ボロボロノキの実から吸汁する、暖帯林の代表的な美麗カメムシです。

(飛来したベニツチカメムシ)

飛来したベニツチカメムシ

白幕に甲虫は来ず、暇なので、100mほど離れたグラウンドに設置したライトBOXを見に行くことにします。
来てみるとこちらも、トビケラ等水生昆虫が群がっています。
ただ、コガネなど甲虫もチラホラ来てて、ライト向きの方向なのか、見渡せる環境なのか、まだこちらの方が、白幕より甲虫は来ているような気がします。

白幕に戻りながら、ついでに立ち枯れや樹幹を照らして見ると、甲虫が付いています。

(樹幹にいたオニツノゴミムシダマシ♀と、オオサビコメツキ)

樹幹にいたオニツノゴミムシダマシ♀と、オオサビコメツキ

白幕に戻ってみると、ちらほらと、ゴホンダイコクコガネ、ナガチャコガネ、ヒゲナガクロコガネが来るようになりました。

水生昆虫の飛来がひとしきり終わって、代わりに蛾の飛来が増えてきました。
思いがけなく、ゲンジボタル、ヒメマルミツギリゾウムシ、オオゾウムシなども飛来し、ノコギリクワガタ、センチコガネも来ました。

ヒメマルミツギリゾウムシは福井県以西の本州から、琉球、台湾等まで分布する種ですが、何処でも滅多に見られない種です。
綾町では昨年、木野田(2023b)により記録されました。

木野田毅, 2023b. 宮崎県のミツギリゾウムシ科紹介1. タテハモドキ, (61): 9-10.

(ヒメマルミツギリゾウムシ)

ヒメマルミツギリゾウムシ

良い加減疲れてきたので、午後9時過ぎには、撤収の準備を始めました。
白幕の前に設置したライトBOXを見てみると、水生昆虫に混じって、蛾が沢山と、小型の甲虫も多少は入っています。
中身をタッパーに移し、持ち帰ります。

帰宅してから確認した中身は、フタモンクビナガゴミムシ、クロズトガリハネカクシ、ツマアカナガエハネカクシ、アカバヒメホソハネカクシ、ショウリョウヒゲブトハネカクシ、シロヒゲアリノスハネカクシ*、ツヤケシビロウドコガネ、ヨツボシケシキスイ、クロミジンムシダマシ、カタモンヒメクチキムシ、マルツヤキノコゴミムシダマシ、テントウゴミムシダマシ、シラオビゴマフケシカミキリ、サクキクイムシ、シラカシノキクイムシなどでした。

(シロヒゲアリノスハネカクシ)

シロヒゲアリノスハネカクシ

さて、問題のグラウンドのライトBOXです。

こちらには、白幕の前のBOXの、数倍の水物が溢れています。
そして、困ったことに、酢酸エチルを入れた容器の中にもダンゴになって虫が入り込んでいます。
虫を容器から取り出して、酢酸エチルを回収しようと思ったとたん、手を滑らせてBOX(白バケツ)の中に酢酸エチルをぶち撒けてしまいしました。

中に入っていた水生甲虫も蛾も甲虫も一瞬にして酢酸エチルに浸かり、簡単に回収できないベチョベチョの状態になってしまいました。
しようがなくて、そのまま大きなジップ袋の中に流し込みます。

このサンプルは、封をしたまま自宅まで持ち帰りましたが、その間酢酸エチル浸けのままで、当然、蛾や水物の華奢な個体は、標本として使い物になりませんでした。
反省点としては、酢酸エチルを入れた容器には、紙等でフタをして、虫が入らないようにしておくことと、BOXの中でひっくり返らないようなしかけをしておく必要があることです。

それでも、後日、丹念にソーティングしてみたところ、このグラウンドのライトBOXには、オオアオミズギワゴミムシ、キベリヒラタガムシ、コモンシジミガムシ、エビチャムクゲキノコムシ*、チビタマキノコムシ、ニセユミセミゾハネカクシ、キバネクビボソハネカクシ、キバネセミゾハネカクシ、ヤエヤマニセツツマグソコガネ、クチブトコメツキ、デメヒラタケシキスイ*、カトウカミキリモドキ、マダラニセクビボソムシ*、(仮称)ヨコモンニセクビボソムシ*が入っていて、白幕の前に置いたBOXとは、3種しか重複していません。

このうち、ヨコモンニセクビボソムシと仮称した種は、今までに1度も見たことのない斑紋の種です。
ニセクビボソムシ科には、日本産としてリストアップされていながら、今まで図鑑類に掲載されたことのない種が、リスト種の半数以上存在します。
これらの種についての手がかりは全く無く、今のところ、記載文や解説など、一般には入手できないので、本種が未記載種かどうかも含めて不明です。

(ヨコモンニセクビボソムシ)

ヨコモンニセクビボソムシ

また、エビチャムクゲキノコムシとデメヒラタケシキスイは宮崎県と綾町から、マダラニセクビボソムシは綾町から知られていません。

(左から、エビチャムクゲキノコムシ、デメヒラタケシキスイ、マダラニセクビボソムシ)

左から、エビチャムクゲキノコムシ、デメヒラタケシキスイ、マダラニセクビボソムシ

以上、綾町初記録の種は、いずれも3-4mm以下の微小種で、灯火採集の白幕に来たものを見つけるのは、ほとんど不可能です。
やはり灯火採集は、今後、こうしたBOX型を採用して、見なくても採れる方法を実行することが必要と思われます。

つづく