雨の種子島2日目
4月23日
予報では、前線が種子島の真上を通過し、終日、雷と雨の荒れた1日になるとのことです。
短い採集旅行とあっては、そんなことはかまっていられません。
元々、来る1週間前の天気予報で、4泊5日の種子島滞在中、晴れは4/25の1日のみと言う事でした。
フェリーや宿の予約があり、台風が来てフェリーが欠航でもしない限り予定は変えられません。
宿で、まあまあ豪華な朝食を済ませてから、雨の中、傘をさして採集用具他、必要な荷物を積み込みます。
今日は、昨日まだ見ていない南部から回るつもりです。コメツキ屋の有本君のお奨めの宝満神社と前之浜を見に行くつもりです。
有本君、種子島の採集地の情報、ありがとうございました。
(23日午前中 日程地図)
出発して、木野田さんにナビをしてもらいながら、宝満神社を目指します。海岸近くの神社ながら、社叢が良く繁っているそうです。
どんどん走って行くと、ロケットの発射基地の方へ行ってしまいそうになりました。
少し戻って左折し、西方向へ。直ぐ左折して進むと、宝満神社の表示がありました。林内に狭い道が見えます。入ると100mほど奥がかなり広い駐車場でした。
(宝満神社の駐車場)
右手は大木の林、左手と前方はやや木が小さいようです。
小雨の中、國分さん、木野田さんは採集道具を降ろし、私はカッパと長靴を付けて、ライトFITの設置場所を探します。
なるべく、立ち枯れを・・・と思いつつ、3箇所ほどライトFITを設置し、イエローパントラップも草地に2基置きました。
(宝満神社のライトFIT 立ち枯れに吊す)
雨も小降りになったので、採集を始めます。
林縁を叩くと、チャバネアオカメムシやクサギカメムシなどがやたらと落ちてきますが、甲虫はあまり落ちてきません。
木野田さんが、神社の参道を奥の方に入り、キノコが沢山着いた良い立ち枯れを見つけたそうで、ライトFITを下げたそうです。
私も参道を進んでみると、奥右手に社がありました。その裏手が広い池で、多分、この宝満池がご神体なのでしょう。
(宝満池)
駐車場から参道、お社までの右手の谷が特に木が大きく、良く繁っていました。
小雨が降ったり止んだり、たまに陽がでたりで、思いのほか暑く、カも出てきました。カッパを着てると汗でグチャグチャで、脱いで雨に打たれた方が涼しそうです。
濡れた樹葉を叩いて、コヨツボシアトキリゴミムシ*、〇ヒラタハナムグリ、〇オオハナコメツキ、クロハナボタル、モンクチビルテントウ*、〇カトウカミキリモドキ、☆ヤクシマウスイロクチキムシ*、ナガニジゴミムシダマシ、キボシツツハムシ、アカガネサルハムシ、セアカケブカサルハムシ、◎キバラヒメハムシ、イネゾウムシ*を採りました。
なお、和名の前の〇は屋久島と種子島を南限とする種、◎は屋久島の記録が無く、種子島を南限とする種、☆は種子島を北限とする種です。
また、和名の後の*は、種子島初記録種です。
このうち、クロハナボタルは、通常は黒い前胸が黄褐色で、松田さんによると、亜種になるかもしれないと言うことです。甑島と屋久島では、それぞれ、甑島亜種、屋久島亜種として区別されています。
(クロハナボタル種子島亜種?)
また、外来種であるモンクチビルテントウは、種子島にもしっかり侵入していました。
木野田さんは他に〇イクビモリヒラタゴミムシと☆クシコメツキを、國分さんはダイミョウツブゴミムシと◎オオアカマルノミハムシを採られていました。
このうち、クシコメツキは背面の毛の黄褐色味が強く、ちょっと感じが違うと思ってたら、屋久島亜種とされていました。この亜種は屋久島、種子島、口之永良部島、トカラ中ノ島・悪石島・宝島から記録されています。
(クシコメツキ屋久島亜種)
なお、種子島のコメツキムシはArimoto & Ito, 2018でそれまでの記録は総括されていて、種子島から43種が記録されています。
Arimoto1, K. & R.Ito, 2018. Elateridae (Insecta, Coleoptera) from Tanegashima Island (Ryukyu Islands, Japan). Check List, 14(4): 681-692.
雨がまた酷くなったので、前之浜に移動します。
前之浜は屋久島南端の広い砂浜で、車では、ほぼ中央部の前之浜海浜公園に横付けできます。
今回は時間が無く、公園の周辺を短時間探索しただけですが、砂浜の後縁は広い草地で、その後ろにかなり広い海岸林が広がっています。ここにベイトトラップを設置しました。
(ベイトトラップを設置した海浜公園の砂浜の草地)
木野田さんは、駐車場周りのマツを主体にビーティングされていました。
(マツをビーティングする木野田さん)
ライトFITを置くことも考えましたが、風当たりが強そうで、草地にイエローパントラップを置いただけです。
(草地のイエローパントラップ)
駐車場横にはシャリンバイが植栽されていて、花に〇ヒメアシナガコガネ、☆クシコメツキ、クロクシコメツキ、〇セボシジョウカイ、ナナホシテントウ、フタイロカミキリモドキ、◎キバラヒメハムシ*などが集まっていました。
林縁を叩くと、クロスジツマキジョウカイ、クロスジヒメテントウ*、サカグチクチブトゾウムシ、コフキゾウムシ、イネゾウムシ*、ウスアヤカミキリなどが落ちてきました。
クロスジヒメテントウはむしろ、琉球に多い種ですが、九州や本州南岸の暖流に洗われる地域で見つかります。
植え込みの下の草地では、クズに◎ツヤキバネサルハムシ*が見られ、ハマヒルガオからサツマイモヒサゴトビハムシが見つかりました。
種子島産の本種については、今坂・石関(2012)により、沖縄本島、鹿児島県知覧町と共に、西之表市から記録しています。
この報告では、本種がサツマイモのみならず、ヒルガオやエンサイ(空心菜)を加害し、葉のみならず、茎や根も加害することから注意を呼びかけています。
また、日本本土で見つかっている本種は全て♀で、原産地の北アメリカでは雌雄そろっているにも拘わらず、日本産は♀のみで繁殖している可能性を述べています。
(サツマイモヒサゴトビハムシ)
同じくサツマイモを加害するヨツモンカメノコハムシが関東以西の西日本に広がっているのに対して、未発表ながら、サツマイモヒサゴトビハムシの新産地としては中甑島を知るのみです。
イモに幼虫が食い入ることが知られているので、これ以上広がらないことを期待します。
今坂正一・石関 博, 2012. サツマイモヒサゴトビハムシのエンサイへの加害, および国内における分布と単為生殖個体群の存在について. さやばね ニューシリーズ,Tokyo,(5): 119-129
林縁にグミの花が咲いていたので、もっと他の虫がいないか探してみました。
(グミの花)
叩いてみましたが、ムナキヒメジョウカイモドキが追加できただけでした。
(ビーティングネット上のムナキヒメジョウカイモドキ)
木野田さんは、他に、アオバアリガタハネカクシ、○ヒラタハナムグリ、ヒメヒラタタマムシ、アカアシクロコメツキ、ケブカクロコメツキ、〇オオハナコメツキ、○ホソヒメジョウカイモドキ*、ナガクチキムシの一種?、○カトウカミキリモドキ、☆ヤクシマウスイロクチキムシ*、キボシツツハムシ、カサハラハムシの一種③*、ワタミヒゲナガゾウムシ、◎カシワクチブトゾウムシを採られています。
このうち、ヒメヒラタタマムシについては、1回目に紹介しました。
また、ナガクチキムシの一種?については、色々問題があるので、この後、次回3回目の、立山入り口の項で詳しく紹介します。カサハラハムシの一種③についても、良く検討する必要があるので、後で検討します。
さらに、國分さんは、クロハナボタル、○ミドリカミキリ、ヘリグロテントウノミハムシ、ニセホソヒメカタゾウムシ*、◎マツノコキクイムシ*を採られていました。
本土では極端に少なくなったミドリカミキリが見られたのは、意外でした。
(ミドリカミキリ)
小さなヒョウタン型のニセホソヒメカタゾウムシは、初めて見る種で、黒島、トカラ中之島・宝島のみで知られている種です。
第1回目で、キボシツツハムシとコウスアオクチブトゾウムシの例から、種子島にはトカラ系の虫の影響は少ないと書いたばかりですが、本種は正真正銘、トカラ系としか言いようがありません。
なかなか、理屈をこねるのは難しいものです。本種は、このあと、各地で見つかりました。
(ニセホソヒメカタゾウムシ)
雨も予報ほど酷くないので、1日動けそうです。
南種町まで走って、飯屋を探すと、定食屋さんが見つかりました。夜は居酒屋になりそうです。少し遅くなっていたので、出来るかどうか聞いたとこ、白飯はもうなく無くなったとの返事。麺ならあるということで、それならと、入ることにしました。
私が注文したのは、天ぷらラーメン。天ぷらうどんはよく食べますが、これは初めてです。出てきたのは、確かに、ラーメンの上に天ぷら各種がのっています。
(天ぷらラーメン)
出汁があっさりしているので、麺のうどんを中華麺に変えた感じ。それなりにいけます。
昼食後、原之里へ向かいます。
(23日午後の行程 1)
南種子町から国道58号線を北上し中種子町へ。
そこから2度左折して、原之里到着が2時。
やはり雨が降り続いているので、ちょっと、トラップをチェックするだけにします。
(原之里)
砂地に設置したベイトトラップには、◎ハラビロハンミョウと◎コホソトビミズギワゴミムシが入っていました。
(左から、ハラビロハンミョウ、コホソトビミズギワゴミムシ)
他にはまだ、たいして入っていないようなので、トラップはそのまま継続します。
ハラビロハンミョウに限らず、ハンミョウ類は、なぜか、ベイトトラップによく入ります。
ベイト(エサ)を入れなくとも、水だけでも入るので、水面の煌めきか何かを気にして集まるのかもしれません。
コホソトビミズギワゴミムシは、従来は、北海道や本州の北部のみで記録されていました。
宮崎県の海岸でも記録されていますが、ゴミムシの森田さんは「種子島産は問題あり」と言われていました。
その後、処置されていないようなので、そのままにしておきます。
周辺を叩いていた國分さんは、〇オオハナコメツキ、クリサキテントウ、ヨツモンカメノコハムシ、ワタミヒゲナガゾウムシ、トビイロヒョウタンゾウムシ、コフキゾウムシ、マツノシラホシゾウムシ*を採られていました。
この後、ここからは、ドライバーを木野田さんに交代してもらって、昨日、榎戸さんが推奨された立山近くの県道沿いを目指します。
(23日午後の行程 2)
一旦、中種子町の市街地に戻って、今度は県道76号を北上し、すぐ、右折して県道75号に入ります。
この県道はまだ旧道のままで、海岸とつかず離れず、種子島東岸を北上します。
立山の少し手前、丁度、中種子町と西之表市の境界当たりで、咲き残りのシイの花を見つけました。
写真は、晴れた25日のものです。写真の右手樹林がシイの花です。
市町界当たりで面倒なので、立山入り口と表示しておきます。
(立山入り口)
ここまで、山のかなたの斜面には黄色い花が見えるものの、手が届きそうなシイはほとんど花が終わっていました。
当然、掬える花もなかったので、ここぞとばかり停車しました。
さっそく、50年余り使っているつなぎ棹を繋いで掬ってみます。
シイの花はかなり濡れていましたが、少ないながら虫がいます。
ネットの中には、〇ヒメアシナガコガネ、〇ハナムグリ、ニンフジョウカイの一種A*、ニンフジョウカイの一種B*、ムナキヒメジョウカイモドキ、◎クチキムシ*、☆ヤクシマウスイロクチキムシ*、カサハラハムシの一種③*、◎カシワクチブトゾウムシが入っていました。
クチキムシが種子島初記録で、さらに、南限記録とは意外でした。
屋久島では採れていないようです。
ニンフジョウカイ類は、時期的な可能性としては、考えてはいました。
しかし、隣の屋久島から記録されているのはミツメニンフジョウカイ唯1種です。
分化型の本土系種であるヒメオサムシ類、ヒメハナカミキリ類がいずれも分布しないこともあり、種子島に分布するのは難しかろうと考えていました。
それでも、もしいたら新種の可能性が高いので、期待していたグループの1つです。
(ニンフジョウカイ、左からA♂、B♀)
入っていたのは2個体のみで、それも♂♀だったので、当初、1種かと思っていました。
しかし、24日以降もぽつぽつ採れ、Bタイプの♂も見つかったので、2種だろうと思います。
頭と前胸の黒紋が違っています。
2種とも明らかにミツメニンフジョウカイではなく、また、琉球各島にそれぞれ分布するイハニンフジョウカイ系の全体黄色いタイプでもありません。
明らかに、本土系の色彩をしています。
ニンフジョウカイ類については、東大でニンフジョウカイを始めた中村君に見て貰うつもりで、彼がどんな判断を示すか楽しみです。
それにして、種子島で1-2種のニンフジョウカイがいるとすると、屋久島にはもっといて良いですね。
こちらも中村君に期待しておきましょう。
木野田さんと國分さんは、採集地が近いこともあり、ここと、次の立山の標本を一緒にしたと言う事なので、次で紹介します。
立山の林道は、前日、榎戸さんが案内して下さったとき、あっぽーらんどから広い新道を南下してきて、この立山から先は工事中ということで、立山の集落から先には入りませんでした。
しかし、入ってみると、郵便局や小学校の跡もあり、立山は、かつてはある程度大きな集落だったようです。
突き当たりを右折し、林道に入っていきます。
集落を過ぎた当たりで、尾根沿いに発達したシイ林が出てきて、少し走るとやはり両側にシイの花が咲いています。
(立山)
木野田さんは長竿を繰り出して花を掬っていました。
國分さんは林縁を叩いていきます。
木野田さんは、タカオヒメハナノミ*、ホソカミキリモドキ*、〇カトウカミキリモドキ、☆ヤクシマウスイロクチキムシ*、☆コウスアオクチブトゾウムシ*、
國分さんはさらに、〇クロミナミボタル、☆ドウイロムナゲサルハムシ*、☆キベリヒラタノミハムシ、〇キバネマルノミハムシを採られていました。
シイの花上・葉上には、カトウカミキリモドキ、ヤクシマウスイロクチキムシ、コウスアオクチブトゾウムシの3種のみが溢れています。
クロミナミボタルも初見でした。
(クロミナミボタル)
種子島初記録のドウイロムナゲサルハムシには感動しました。
この種は本土にいるムナゲサルハムシに緑銅色の金属光沢を付けた感じの種で、トカラ中ノ島、奄美大島、沖縄本島で記録されており、屋久島の記録はありません。
(ドウイロムナゲサルハムシ)
同様の分布を示すキベリヒラタノミハムシは、種子島から徳之島まで広く知られており、沖縄本島は別の亜種になります。
立山の林道は、少し先まで走ってみましたが、このシイ花あたりまでが良い樹林で、その先は植林と畑跡になりました。
ここにもライトFITを掛けるつもりでしたが、雨が酷くなったので、先を急ぎます。
今回、この近くでもう一箇所目を付けていたのは、大川田川に架かるカシミヤ橋の手前から左折して、大川田沿いに走る大野林道です。
この林道は途中、種子島と屋久島の固有種・ヤクタネゴヨウマツの自生地をほぼ中間地点として、数km続いています。
この林道、雨のせいかもしれませんが、入り口早々から暗く、あまり車も入っていなさそうで、道が大丈夫かどうか心配になりました。
(大野林道入り口付近)
入ってみると、奥は普通に整備された林道で、すぐ横を清冽な谷川(大川田川)が音を立てて流れています。
(林道から見える谷川)
種子島は平たい島で、標高も低く、森らしい森もあまりないと思っていました。
しかし、この大川田川の渓谷は深山幽谷の様相を呈し、標高が100m余りしか無いとは思えないほどです。
ともかく、最奥の分岐地点まで行ってみましたが、やっと標高140m程度、ここから引き返します。
飛び飛びに植林地を交えながらも、かなり良い自然林も残って居ます。
多分、種子島の中で、最も自然度の高い渓谷と言えるかもしれません。
(林道最奥の少し手前、発達した樹林)
林道脇に開けた明るい場所があったので、少し叩いてみます。
道横は大部分、ホウロクイチゴやクワズイモに被われています。
(道横でビーティング)
私は幸先良くルリナカボソタマムシを落とし、立山で採ったニンフジョウカイの一種B*も落ちてきたので、俄然、力が入ります。
(ホウロクイチゴ葉上のルリナカボソタマムシ)
クロスジツマキジョウカイ、☆ミヤタケヒゲナガジョウカイ、〇セボシジョウカイなどのジョウカイ類も落ちてきました。
エダヒゲナガハナノミがいくつも落ちてきたと思いましたが、本土産と少し違うような気がしました。
この種は奄美大島など琉球列島各地では、それぞれ、別亜種として区別されています。
しかし、よくよく確かめてみると、屋久島固有の◎ヤクヒゲナガハナノミ*でした。
この種も、それぞれの亜種が奄美大島と西表島で知られていて、この2箇所では両種が分布するようです。
その場合、常にヤクの方の体長が大きいと解説されています。
(左から、ヤクヒゲナガハナノミ♂、九州産エダヒゲナガハナノミ♂)
種子島でここが一番虫が多いような気がしたので、改めて、林縁を叩いていきます。
採れたのは、◎イクビモリヒラタゴミムシ、オオシマハラボソメダカハネカクシ*、○ヒラタハナムグリ、オオダンダラチビタマムシ、アカアシオオクシコメツキ、トゲアシヒラタケシキスイ、○フタイロカミキリモドキ、〇カトウカミキリモドキ、☆ヤクシマウスイロクチキムシ*、○マダラアラゲサルハムシ、オキナワトビサルハムシ*、☆コウスアオクチブトゾウムシ*、アマミオビアカサルゾウムシ*、シロアナアキゾウムシなどが落ちてきました。
オキナワトビサルハムシは、原亜種が奄美大島から西表島までの各島に分布し、四国、九州と山口県の一部に、九州亜種が分布します。
中間の種子島の個体がどちらに属するのか、気になります。
しかし、今回は1個体のみなので、今後数を得て、亜種を決定したいと思います。
(オキナワトビサルハムシ)
また、クシコメツキの一種①については、琉球系のクシコメツキと思いますが、今のところ同定できなかった種です。
(クシコメツキの一種①)
木野田さんは、他に◎コルリアトキリゴミムシ*、アオヘリアトキリゴミムシ、☆クシコメツキ、ルイスコメツキモドキを、
國分さんは◎オバボタル、○ニシジョウカイボン*、☆オキナワツヤハムシを採られていました。
コルリアトキリゴミムシは木野田さんは「見たことが無い」と言われていました。
そのはず、北アメリカから、家畜の飼料に紛れて侵入したと言われている外来種です。
九州でも物流の激しい福岡周辺でしか見つかっていないので、都城の木野田さんが見ていないのは当然です。
それにしても、種子島にどうやって入ったのでしょう。
馬毛島の建設作業くらいしか思い当たりませんが。
(コルリアトキリゴミムシ)
また、種子島近傍の、屋久島産のニシジョウカイボンは、Yajima & Nakane(1969)で、亜種 yakushimanusとされています。
しかし、Okushima(2005)は西日本各地のluteipennis(奥島はジョウカイボンの亜種、今坂は別種との見解)に含めています。
屋久島亜種の特徴としては、
「触角は黒いが基部2節は淡色、上翅の合わせ目が黒く、翅端も黒い。肢は赤褐色で、腿節は黒い、脛節と符節は、しばしば黒褐色」と書かれています。
しかし、今回の種子島産♀は、上翅は一様に褐色で黒い部分は無く、腿節・脛節は黒色で、触角と符節は黄褐色です。
これは九州南半分に分布する黄肢型とまったく同じ色彩型です。
今のところ、種子島産は1♀を見ただけなので、屋久島亜種が有効かどうかも含めて、将来の検討課題です。
(ニシジョウカイボン♀)
Yajima, T., & T. Nakane, 1969. On the species of the genus Athemus in Japan, with description of afew new forms (Insecta, Coleoptera, Cantharidae). Bull. Nat. Sci. Mus., 12(2): 183-189.
Okushima, Y., 2005. A taxonomic study on the genus Lycocerus (Col., Cantharidae) from Japan with zoogeographical considerations. Jpn. J. syst. Ent. Mon. ser. 2: 1-383.
また、オキナワツヤハムシは、その後、私も採集しました。
採った瞬間、やや小さくて丸っこく、金銅色の光りも強かったので、ドウガネツヤハムシと別物とは思いました。
しかし、タラノキから、同じ感じで落ちてきたので、??と感じたのでした。
木元・滝沢(1994)に、背面は全体青藍色と書かれていますが、種子島産で見た個体は全て金銅色でした。
小楯板の後の、上翅の合わせ目の部分に、大きくてハッキリした点刻が無いのが、本種の特徴です。
(オキナワツヤハムシ、2つの矢印の間に大きくてハッキリした点刻が無い)
木元新作・滝沢春雄, 1994. 日本産ハムシ類幼虫・成虫分類図説. 539pp. 東海大学出版会.
そろそろ夕刻の時間になったので、帰ることにして、林道の入り口付近の立ち枯れにライトFITを3基、木野田さんも2基設置しました。
(大野林道で設置したライトFIT)
そこから、中種子町のJAに寄って、夜弁当を買い、宿に戻りました。
この日、実は、車に入れたはずのクーラーボックスが見当たらず、お茶が切れそうになっていました。
しかし、宿に戻ると、駐車場の隅に白いBOXが鎮座していました。
車に入れるため脇まで持ってきて、入れるのを忘れたものと思われます。
歳をとると、毎日こんな風で、困った物です。
つづく