第2回甑島調査(夏)の4回目で最終回、下甑島6月28日の続きです。
尾岳の後は、西岸沿いの林道を南下し、林の状態を見ながら瀬々野浦付近、片野浦付近を経由して手打に戻ります。
手打のスーパーが午後5時に閉まるので、少し早いですが、夕食分の弁当と翌朝の朝食を買って「きまま館」に連絡しました。春にお世話になった2階建ての宿の方は満員と言うことで、別の古い平屋に案内されました。
こちらは海岸通りからすぐのところで、広い駐車場があり、かえって車の出入りには便利のようです。ともかく、宿の鍵を貰って、荷物を置いてから、まだ時間があるので、暗くなるまでトラップ類を掛けに行くことにします。
近くが良いので、内藤さんのお勧めで、砂浜が有るという青瀬の海岸に行くことにしました。
〇青瀬 76種(*19種) 6月28日から7月1日
青瀬の集落を通り過ぎる直前に川を横切る橋があり、その先から海岸に降りる道がありました。そこを下ると、それほど広くはなかったのですが、ちゃんと、草付きの砂浜がありました。
春にもこの橋は何度も通ったのですが、橋下に砂浜があることは気がつきませんでした。草付きで川がすぐ近くに直接流れ込む砂浜ということは、多少期待できるかもしれません。
國分さんは、ゴミや石をはぐって、ハマベエンマムシ、ヨツボシテントウダマシ、マルチビゴミムシダマシ、クロズハマベゴミムシダマシを採られていました。
伊藤君は29日の回収の際、ちょっと立ち寄っただけですが、それでも、アカアシコハナコメツキとアカボシホソアリモドキ*を採集しています。
アカボシホソアリモドキは、トカラ中之島から与那国島までの琉球の砂浜で得られている種です。下甑島が北限記録になります。
今坂は砂浜にはベイトトラップを、見渡せる場所にはライトFITを設置しました。
(砂浜のベイトトラップと、ライトFIT設置)
翌29日の回収ではライトFITに思った以上の甲虫が入っていて、意外でした。
コハンミョウ、クロオビコミズギワゴミムシ*、キボシマメゴモクムシ、オオホソクビゴミムシ、フチトリケシガムシ*、セマルケシガムシ、コモンシジミガムシ、キベリカワベハネカクシの近似種*、ニセユミセミゾハネカクシ*、チビクビボソハネカクシの近似種*、ホソアバタウミベハネカクシ*、カクコガシラハネカクシ*、エビイロマルムネハネカクシの近似種*、ツマアカマルハナノミダマシ*、ヤエヤマニセツツマグソコガネ*、シロスジコガネ*、ヤマトアオドウガネ、サンカクスジコガネ、ハスモンムクゲキスイ*、ヒメムクゲオオキノコ*、ケナガマルキスイ*、セグロツヤテントウダマシ*、クロオビホソアリモドキ*など47種が入っていました。
このうち、海浜の砂浜特有の種をいくつか紹介します。
(シロスジコガネ、ヤマトアオドウガネ)
サンカクスジコガネは琉球系のコガネで長崎県島原半島が北限、九州西廻り分布種です。九州とその付近の離島産は固有亜種に区別されていましたが、最近、原亜種に含められています。
水辺の近くの裸地などの種。甑島で唯一採集しているハンミョウはコハンミョウだけです。この場所は、狭いながら河川と砂浜がセットであり、甑島では数少ない海浜性ハンミョウの生息が期待できる場所なので、今後、さらに精査してみたいと思います。
(コハンミョウ、クロオビコミズギワゴミムシ)
ツヤテントウダマシ類はホコリタケの仲間から見つかりますが、セグロツヤテントウダマシはホコリタケなど有りそうにないヨシ原から草地、海岸などで見つかります。何を食べているのか今のところ不明です。
また、ベイトトラップには、大量のスナサビキコリ、オオサワシラケチビミズギワコメツキ*、アカアシコハナコメツキが入っていました。さらにもう1日、延長して掛けてみましたが、ミイデラゴミムシ、ハマベオオヒメサビキコリ、コシキクチボソコメツキ、クリイロクチキムシ、マルチビゴミムシダマシ、ハマヒョウタンゴミムシダマシ、トビイロヒョウタンゾウムシくらいで、あまり追加できませんでした。
ライトFITも、この日の成果に気をよくして、翌日も延長して掛けてみましたが、結局、その後は吹き飛ばされて壊れただけでした。
話は飛びますが、有馬さんはこの青瀬から少し山地に入った樹林で、7月1日にスクリーンを張っての灯火採集を実施され、以下の20種を採集されています。
オオアオモリヒラタゴミムシ、オオホソクビゴミムシ、セスジカクマグソコガネ、ヒメカンショコガネ、ナガチャコガネ、オオコフキコガネ、サツマコフキコガネ、アカビロウドコガネ、アオドウガネ、サンカクスジコガネ、スジコガネ、オオサビコメツキ、フタモンウバタマコメツキ、イガラシカッコウムシ、アカマダラケシキスイ、シワナガキマワリ、セミスジコブヒゲカミキリ甑島亜種、キボシツツハムシ、シロアナアキゾウムシ、マツアラハダクチカクシゾウムシ*。
帰りがけに、さらに瀬尾観音滝にもライトFITを掛けました。
〇瀬尾観音滝 21種(*3種) 6月28日から29日
29日の回収では、イクビモリヒラタゴミムシ、イツホシマメゴモクムシ、セマルケシガムシ、マメガムシ、オオドウガネコガシラハネカクシ、サツマコフキコガネ、クリイロコガネ*、コシキクチボソコメツキ、トウキョウムネビロオオキノコムシ*、カトウカミキリモドキが入っていました。
ここのクリイロコガネは通常の栗色のタイプてす。
また、伊藤君は回収時の29日に以下の種を採集していますが、多分、ビーティングで採ったものと思われます。
クズノチビタマムシ、ミツモンセマルヒラタムシ、ケナガマルキスイ*、セスジヒメテントウ、カワムラヒメテントウ、ナミアカヒメハナノミ、チャイロヒメハナノミ、ホソクビアリモドキトカラ亜種、コマルノミハムシ、スグリゾウムシ、コフキゾウムシ。
ここのホソクビアリモドキもやはりトカラ亜種でした。
(ケナガマルキスイ、ホソクビアリモドキトカラ亜種)
その後、宿に帰りがてら、佐之浦にもライトFITを掛けたのですが、これも風で全滅していました。佐之浦での採集については、後でまた詳しく述べます。
今坂、國分、内藤の3名は、そのまま、きまま館に戻ったのですが、伊藤君は藺牟田にナイターに出かけたことは、先に書いた通りです。
きまま館では、買ってきた弁当やら、持参したカップ麺やらを、思い思いに食べつつ、今日の採集品を整理し、その後は、上甑島での採集品などを披露しました。
<6月29日> 下甑島2日目
朝から小雨模様でしたが、下甑島初採集の伊藤君の為にも、下甑島の採集地を西海岸沿いからグルッと一周してみようかと言うことになりました。
それで4名3台の車に分乗し、まず、最も樹相が良さそうな瀬々野浦を目指します。
〇瀬々野浦 187種(*37種) 6月29日から7月2日
今坂(2019)で報告した、ハナノミの未記載種ホソオクロヒメハナノミが瀬々野浦で採れていたので、何とか探索したいと、まず、海岸沿いの海浜植物のセリ科の花を探します。しかし、見渡す限り、ここの海岸には花は見当たらず、しようがなくて、砂浜にベイトトラップを設置しました。
翌30日に回収したコップには、ナガヒョウタンゴミムシ、ミイデラゴミムシ、ハマベエンマムシ、ヒメコガネ、オオサワシラケチビミズギワコメツキ*、アカアシコハナコメツキ、コスナゴミムシダマシ、ヒメカクスナゴミムシダマシ、アカアシヒメゴミムシダマシ、トビイロヒョウタンゾウムシが入ってましたが、特に目新しい種は入っていませんでした。
伊藤君は少し戻った、放棄された耕作地と思われるススキ原で、根際のカメムシを狙ってか、しきりと草をかき分けて篩っているようです。
トラップを掛けた後は、強風と今にも崩れそうな天候の中、余りやる気がせず、國分・内藤両氏を誘って展望台に上がってみました。
その後、上の林道沿いに戻って、昼食をとることにして、展望台から降りてくると、伊藤君はまだ藪の中で頑張っていました。
後で見せていただいた彼の採集品には、アラハダドウナガハネカクシ*、マルケシハネカクシの一種*、クロハナケシキスイ*、マルヒラタケシキスイ、キムネタマキスイ*、カギヒゲチビヒラタムシ*、ルイスチビヒラタムシ、ホホビロホソヒラタムシ*、キイロセマルキスイ*、ケナガマルキスイ*、オオミジンムシ*、シコクフタホシヒメテントウ*、ニジュウヤホシテントウ、クロスジヒメテントウ*、コゲチャミジンムシダマシ、ニセクロオビケシマキムシ*、ツヤケシヒメホソカタムシ、フタモンヒメハナノミ、クロヒメハナノミ、ケオビアリモドキ、ウスアヤカミキリ、サビアヤカミキリ、コシキハネナシサビカミキリ、コゲチャサビカミキリ、セスジクビボソハムシ*、モンキアシナガハムシ、ヨモギトビハムシ、シロヒゲナガゾウムシ、メナガヒゲナガゾウムシの一種*、ヒラセクモゾウムシ*、クロクチカクシゾウムシ*、ケシクチカクシゾウムシ*、タイワンモンクチカクシゾウムシなど76種も含まれていました。
小型の目立たない種ばかりですが、甑島初記録種のオンパレードです。今までこうした微小な種を丹念に採る人が少なかったものと思われます。
(キムネタマキスイ、左が♂、右が♀)
(マルヒラタケシキスイ、カギヒゲチビヒラタムシ)
オオミジンムシは本州、四国(未記録)、九州(英彦山: 未記録)に分布するようですが、かなり珍しい種のようで、ほとんど記録がありません。
(ホホビロホソヒラタムシ、オオミジンムシ)
サビアヤカミキリは琉球から九州(南部)まで分布し、西廻り分布種で、長崎県野母崎が北限です。
(サビアヤカミキリ、セスジクビボソハムシ)
(ケシクチカクシゾウムシ、背面、側面)
今坂・國分・内藤の3名は早くから上の林道まで上がり、お昼も済ませて、伊藤君が来るのを待っていましたが、彼はなかなか現れませんでした。
だいぶ待った後に、ようやくて上がってきましたが、それでも、お昼は食べていないと言うことで、彼が食べ終わるまで待っていました。上記のような大量の虫を採っていたとしたら無理のないことです。
待っている間に、林道沿いに咲いているセリ科の花を掬ってみたところ、クロヒメハナノミの一種が入り、後で畑山さんに同定していただいたところ、狙っていたホソオクロヒメハナノミは入っていませんでしたが、もう1種のコシキクロヒメハナノミが含まれていました。畑山さんにお礼申し上げます。
それから、西海岸沿い標高300mほどを北上する林道を、林の状態を確認しながら、尾岳へ向かって走ってみました。樹の大きさや繁り具合などからすると、瀬々野浦の上部くらいが、下甑島でも一番発達した林のようです。
所々にライトFITを設置しながら、道沿いを叩いてみたりしましたが、霧がたちこめて見通しがきかず、場所によっては強風が吹き渡り、なかなか良い場所が見つかりません。
林道の曲がりっ鼻に駐車スペースがあり、倒木などがあったので、車を停めて叩いてみます。コシキハネナシサビカミキリとアトモンマルケシカミキリ、タイワンモンクチカクシゾウムシが落ちてきて、他に何かいないか道沿いを物色していると、葉上にこれ見よがしにトラフホソバネカミキリ*が静止しています。風を避けて留まっていたのでしょうが、これは、嬉しかったです。葉上からオキナワカミキリモドキも落ちてきました。昼間に採れるのはオキナワカミキリモドキのようです。
(トラフホソバネカミキリ♀、オキナワカミキリモドキ)
この道沿いで、國分さんはヒメウラナミジャノメ(1♂)を採集し、ベニシジミとクロセセリを見ただけで、悪天候ではしようがなく、すぐにビーティングに切り替えられました。コハラアカモリヒラタゴミムシ、ムネアカクロジョウカイ、トビイロカミキリ、ハスオビヒゲナガカミキリ、ニセビロウドカミキリ、チャバネツヤハムシ、タバゲササラゾウムシなどを採られていました。
伊藤君は一番良さそうな林のところで、おもむろに斜面を降りていきます。この斜面で腰を据えて落ち葉を篩うつもりとのこと。悪天候で、林床も濡れてベタベタの中、落ち葉を篩うという彼の言に、年寄り3名は呆れ、先を急ぐことにします。
後日、見せていただいた彼のタトウには、あの暗さの中、落ち葉をかき分けて良く見えたものと思える微小種を中心に、59種が含まれていました。今坂としては、完全に脱帽です。
エグリゴミムシ、ヒメオサムシ甑島亜種、フジチビヒラタエンマムシ*、オチバヒメタマキノコムシ、ヤマトホソツツハネカクシ*、コシキコバネナガハネカクシ、キバネクビボソハネカクシ、ミジンヒメキノコハネカクシの近似種*、シャープカレハハネカクシ*、イトヒゲニセマキムシ*、クロツツマグソコガネ、ネアカクロベニボタル、クロヒラタケシキスイ*、ツヤマルケシキスイ*、アシナガマルケシキスイ*、サカイマルヒメキノコムシ*、ルイスチビヒラタムシ、チャイロセマルキスイの近似種、ヒゴノムネビロオオキノコムシ、コゲチャミジンムシダマシ、ヨコモンヒメヒラタホソカタムシ*、キタツツキノコムシ、アカモンホソアリモドキ、アラメヒゲブトゴミムシダマシ、オオクチキムシ、コブスジツノゴミムシダマシ、アメイロホソゴミムシダマシ、トビイロカミキリ、ホシベニカミキリ、イチモンジハムシ、ホシモンマダラヒゲナガゾウムシ、オチバゾウムシの一種など。
(ヒメオサムシ甑島亜種、ホシベニカミキリ)
イトヒゲニセマキムシは山地性の虫と思っていましたが、湿気があれば、低地でも生息しているのですね。
(ヤマトホソツツハネカクシ、イトヒゲニセマキムシ)
(ツヤマルケシキスイ、サカイマルヒメキノコムシ)
甑島固有種と思っているチャイロセマルキスイの近似種も、樹相が良ければ低標高でもいることが解りました。
(チャイロセマルキスイの近似種、ヒゴノムネビロオオキノコムシ)
伊藤君は翌30日も瀬々野浦近くの「しんきろうの丘」で、エグリゴミムシ、ルイスオオゴミムシ、ムネトゲセスジハネカクシ、コシキコバネナガハネカクシ、アカバハネカクシ、ヤクシマヒメキノコハネカクシ*、コチャイロコメツキダマシ、オオクチキムシ、カタモンヒメクチキムシ、クロテントウゴミムシダマシ、ハネナシセスジキマワリ、サタアナアキゾウムシなど24種を採集しています。
翌30日のライトFITの回収ではクロヘリアトキリゴミムシ、チビクロセスジハネカクシ*、ホソツヤケシコメツキ、(仮称)ホソヒゲナカミゾコメツキダマシ*、クロハナボタル下甑島亜種、チャオビヒメハナノミ、カグヤヒメハナノミ、サタカミキリモドキ、キマワリ、チャバネキクイゾウムシなど16種が入りましたが、強風でいくつか飛んでいたこともあり、瀬々野浦の林道ではもっとちゃんとトラップも含めて採集をしたいものです。
(サタカミキリモドキ♂)
ライトに来たのはサタカミキリモドキで、この種は夜間活動性かもしれません。
なお、後日のことですが、6月30日には、今坂の勧めで有馬さんがこの瀬々野浦の林道沿いにバナナトラップを仕掛けられ、そのチェックを兼ねて、7月1日と2日に林道沿いで16種を採集されています。数は少ないですが、今回、誰も採っていない種としてヒメトラハナムグリ、ネムノキナガタマムシ、リュウキュウルリボシカミキリなど数種含まれています。
コクワガタ屋久島亜種、クロツヤハダコメツキ、クリイロクチキムシ、キイロクチキムシ、トゲヒゲトビイロカミキリ、トビイロカミキリ、ヤハズカミキリ、ヤマイモハムシ、カシワツツハムシ、マダラアラゲサルハムシ、キカサハラハムシ、クロケシツブチョッキリ、イヌビワシギゾウムシ。
バナナトラップの方は、大部分雨と強風で役に立たず、アカマダラケシキスイ、ヨツボシケシキスイ、オオゾウムシが見られただけでした。クワガタとハナムグリ類がドッサリ採れるはずだったのですが・・・。
伊藤君を瀬々野浦の斜面に残して、今坂・國分・内藤の3人は尾岳、青瀬、瀬尾と回り、採集をして、トラップを回収したのは、先に述べたとおりです。
途中、有馬さんから連絡が入り、無事甑島に到着した報告と、今後の予定について問い合わせがありました。その結果、本日夜は全員参加で、佐之浦で有馬さんの強力ライトを使っての夜間採集をしようということになり、3人は一足早く宿に戻り一服した後、再度出かけて来ようということになりました。
伊藤君はその後、手打、瀬尾、青瀬で採集したようです。
〇手打 5種(*4種) 6月29日
採集しているのは次の5種だけですが、そのうちの4種が甑島初記録です。キノコものが3種含まれていますが、どんな採集をしたのでしょうね。
シロスジコガネ*、ミツボシチビオオキノコ*、キイロアシボソテントウダマシ*、チャバネムクゲテントウダマシ*、コシキハネナシサビカミキリ
(ミツボシチビオオキノコ、キイロアシボソテントウダマシ)
キイロアシボソテントウダマシは長崎原産で、従来はかなりの珍品でしたが、FITが流行しだしてから、結構、あちこちで見かけるようになりました。しかし、伊藤君はFITの採集ではないので、何から得たのか機会があったら聞いてみたいと思います。
有馬さんと伊藤君もきまま館に到着して、準備が出来たので、全員(5名)で佐之浦に向かいます。
〇佐之浦 68種(*6種) 6月29日から7月1日
当初、良く樹林が繁った谷を望む、見晴らしの良い場所に白幕を張ろうと考えていたのですが、風が強くて、とても張れそうにありません。それで陸橋の下で風よけになる部分を見つけ、思い思いに、白幕を3つ、張ることにしました。中央の強力ライトは、有馬さんのクワガタ採集用の特注品です。
夕刻になり、ヒメハルゼミの合唱が聞こえます。各地で少なくなっているセミですが、甑島では健在のようです。暗くなってから、いくつもライトに飛んできました。
(ヒメハルゼミ、♂♀)
せっかくなので、みんなで記念写真を撮りました。
(夜間採集の5人、左から、國分、内藤、有馬、伊藤の各氏、撮影は今坂)
國分さんは専らガを採集し、甲虫は今坂に渡しました。ここのものも含めて、春と夏に甑島で採集した蛾は、すでに佐々木さんが記録してくださいました。キオビクロヒゲナガ、クロシオゴマフボクトウ、シロトリバ、キイロトゲエダシャクなど78種です。
佐々木公隆, 2019. 2019年に採集された鹿児島県薩摩川内市甑島の蛾類. KORASANA, (92): 177-182.
甲虫では、トゲバゴマフガムシ、キヌコガシラハネカクシ、ヒメカンショコガネ、アオドウガネ、ドウガネブイブイ、サクラコガネ、ヒメコガネ、サンカクスジコガネ、スジコガネ、ワダカミキリモドキ、シワナガキマワリ、トゲヒゲトビイロカミキリ、マダラアラゲサルハムシ、キイロクワハムシ、ガロアノミゾウムシなどの20種だけです。
コカブトムシ*は有馬さんが拾って下さったのですが、ちょっと嬉しかったです。
ワダカミキリモドキは九州では大分・宮崎などで記録されていて、福岡・佐賀・長崎などでは知られていません。下甑島では海岸沿いの灯火に良く来るようです。
(コカブトムシ、ワダカミキリモドキ)
アオドウガネには、やはり、本土亜種と奄美亜種が混じっています。赤矢印は側縁隆起の末端の位置です。上甑島からは数が採れていませんが、本土亜種だけで、奄美亜種は確認していません。
(アオドウガネ、左から、奄美亜種、本土亜種)
伊藤君はカメムシを拾う傍らビロウドコガネ、ウスアヤカミキリ、アトモンチビカミキリ、ホソチョッキリを採集していました。
30日にも佐之浦のライトトラップ地点から旧道を奥に入った地点で採集しました。得られたのは、イクビモリヒラタゴミムシ、クロヘリアトキリゴミムシ、コヒゲナガハナノミ*、クチボソコメツキ*、クロハナボタル下甑島亜種、ムーアシロホシテントウ、カトウカミキリモドキ、ビロウドカミキリ、ヤハズカミキリ、クロオビトゲムネミカミキリ、セアカケブカサルハムシ、ウリハムシモドキ、ナスナガスネトビハムシ、クロホシクチブトゾウムシ、アカナガクチカクシゾウムシなど26種です。
國分さんはその他にハラアカモリヒラタゴミムシ、キンモリヒラタゴミムシ、ヒメクロツヤハダコメツキ、コシキクチボソコメツキ、キマワリ、アトモンチビカミキリ、ツヤキバネサルハムシを採集されています。また、キマダラセセリ(1♂)を採集し、ナガサキアゲハとモンシロチョウを見られたそうです。
今坂は前日に設置したライトFITを回収し、さらにもう1日掛けました。それでも2日合計で、クロオビコミズギワゴミムシ*、クロシデムシ、ミヤマクワガタ、ヤエヤマニセツツマグソコガネ*、クリイロコガネ*、フタモンウバタマコメツキ、クシコメツキ、ルイスクシコメツキ、ミヤマオビオオキノコムシ、シワナガキマワリ、ノコギリカミキリ、オオミスジマルゾウムシなど17種しか採れていません。
<6月30日> 下甑島3日目
朝食を済ませてから、明日はもう4人は帰ると言うことで、宿でみんなで記念写真を撮りました。
(宿での記念撮影、左から、今坂、國分、内藤、伊藤、有馬)
それから、思い思いに出かけます。
今坂、國分、内藤の3名は瀬々野浦、尾岳、藺牟田、青瀬、佐之浦と回って、トラップ回収と採集をしました。この間、國分さんは瀬々野浦でクロマダラソテツシジミを1♂採集しています。
有馬さんは瀬々野浦のトラップ類を見回った後で、片野浦近くの林道でビーティングをやられたそうです。さらに、7月2日にも採集されています。
〇片野浦 29種 6月30日, 7月2日
採集されたのは、キンモリヒラタゴミムシ、ナガチャコガネ、サビキコリ、クチブトコメツキ、ヒラタクシコメツキ、ムナグロナガカッコウムシ、ドウイロムクゲケシキスイ、ヨツスジハナカミキリ亜種?、フタオビミドリトラカミキリ、セミスジコブヒゲカミキリ甑島亜種、リュウキュウルリボシカミキリ、ニセシラホシカミキリ、キカサハラハムシ、ヨモギハムシ、アカタデハムシ、クロケシツブチョッキリ、トゲアシゾウムシ、ミスジマルゾウムシ、ムネスジノミゾウムシなど29種、および、キタキチョウ(1♂)。
ヨツスジハナカミキリは♂後脛節の膨らみは弱く、九州本土とは違います。
(ヨツスジハナカミキリ♂)
30日の夜はまたもや雨風で、大雨の様相を呈し、ナイターには行かず、宿でゆっくりお別れパーティと虫談義に費やしました。おかげで、ライトFITでグチャグチャの採集物も、何とかタトウに移すことが出来ました。
<7月1日> 下甑島4日目甑島最終日
前日に続き、この日も雨で、大雨で飛行機が飛ぶかどうか心配と言うことで、内藤さんは朝の高速船で帰って行かれました。後で聞いた話では、高速道路がストップしたり、飛行機が遅れたり、さまざまなトラブルがあったそうですが、当日の内に夜中前にはなんとか千葉のご自宅へ着かれたそうです。大変ご苦労様でした。
今坂、國分、伊藤の3名は午後のフェリーの予定で、まだ半日採集可能です。有馬さんはまだ、2日まであるので、トラップを見回って、ライトトラップの場所探しに出かけるそうです。
今坂、國分組は雨の中、回収し残している佐之浦と青瀬のトラップを回収しました。
しかし雨が強くなり、手打に戻って、きまま館のオーナーがやられている喫茶店(喫茶 α夢: アルファム)で一休み兼昼食です。
オーナーに再会を約して、店を後にし、途中で雨上がりの道横の花でハチ類を掬って、長浜港へ。伊藤君と合流してフェリーに乗船し、串木野港で別れて一路久留米へ向かいます。
その後も土砂降りの中を、ワイパーを最速にしながら運転を続け、それでも高速に乗る頃には小降りになり一安心、久留米には午後10時着。初日以降、梅雨の雨にたたられながら、それでも、思った以上に虫が採れた甑島行きでした。