当日は温かく良いお天気で、今年は初参加の城戸さんが自宅まで車で迎えに来て下さると言うことで、待ち合わせの午後4時まで、何やかやと雑用を片づけて待っておりました。
時間通り着かれた城戸さんの車に乗り込み、道案内をしながら今年の虫取り計画の話に花が咲きます。
30分ほどで吉野ヶ里温泉に到着、駐車場では今年も昨年同様、山口から駆けつけて頂いた山本さんの姿。
さっそく、ホテルのチェックインをして、温泉で暖まります。
今年は祝さんは体調不良で、案内のメールは塚田さんに替わってやって頂きました。しかしその塚田さんもあまり体調が良くなく、少し遅れそうとのこと。
では宴会の手配をどうしようかと思っていたところ、そちらは祝さんが駆けつけてやって下さいました。
宴会の始まりはいつものように三宅さんの乾杯で始めます。
一人ずつ、自己紹介をして頂きましたが、今年は西田さんと、遠く四国から毎年参加して下さる宇都宮さんが奥様同伴。ご本人ではない奥様としての女性の参加は今年が初めて。
お酒を注いで頂いたり、鍋を注ぎ分けて頂いたりで、お世話方に大変助かりました。
今年の目玉は何と言っても初参加の城戸さんです。
城戸さんは、甲虫の分野では新種を沢山発見されている方としても有名です。キド○○という虫がいくつもあって、その多くが珍奇虫で、ちょっとやそっとでは採集できない虫ばかりです。
お仕事は小学校の校長さんですが、今春退職されるそうで、春からは虫取り三昧の日々を送る計画のようです。
できれば、家から近くの適当な採集地を1-2箇所決めて、年間通って調査をしてみたいと話されていました。
可能なら一緒に採集に出かけて、是非、城戸さんの採り方を教わりたいと思っています。
それから、山口から参加の山本さん、北九州の田畑さん、久村さん、糸島の祝さん、福岡から廣永さん、大分からは三宅さんと佐々木さん、熊本から宮崎さんと富島さん、長崎の松尾さんと中原さん、佐賀の古川さん、最初に紹介した二組のカップルと、それに遅れてきた鹿児島の塚田さんに私で、今回は19名の出席者でした。
今年は九大関係者は皆無で、その点寂しかったようです。
欠席の丸山さんは、アリの巣に依存する昆虫の図鑑作りのまさに締め切り直前だそうで、半徹夜状態で追い込みにかかられているということで、涙を呑んでお誘いを諦めました。近々出版されるそうで楽しみです。
一渡り、食事とお酒が済むと、さっそくあちこちに人垣ができ、話の輪が広がります。皆さんの楽しげな顔が見られます。
いつものように、照明付の顕微鏡を持参してきましたが、今回はあまり標本を持参されていないようです。
それでも、松尾さんの虫にみんな首をひねっていました。
元の写真は目玉の虹色模様や前胸の金毛がそれはもう素晴らしいのですが、ホームページには大きいサイズの写真が載せられないので残念です。
(ツリアブモドキ?)
背面からはこんな感じ。羽の中に大きく透けた部分があるのと、先端のコウモリのようなフックが特徴的ですね。
この種は、松尾さんの教え子で九州東海大学に進学した学生が、阿蘇の長陽駅付近で採集した(自販機ライトに飛来)そうです。
松尾さんによると、
「当初ディプテラ類の中でも変わったものだと思い、アカツリアブモドキに近縁と見当を付け、文献をいろいろ引っ張ってみたら、台湾から記載されている以下の両種に行き当たりました。
ツリアブモドキ科(Nemestrinidae) アカツリアブモドキ属(Nycterimyia)の、N. kerteszi Lichtwardt,1912 あるいは、N. fenestroclatrata Lichtwardt,1912。
採集者との共著で,より近似種と思われるN. kerteszi Lichtwardt,1912として報告しようと考えていました」ということです。
ユスリカの専門家である山本さんのご意見を聞いているうちに、結局、三枝先生に調べてもらおうということになりそうです。
インターネットにも、奄美大島産の同じような種が掲載されているそうです。
さらに、こちらの顔面もすごいですね。目の上のかんざしのような物は♂の触角です。
前から見たら本当に可愛いですね。
松尾さんによると、
「草原の真っ黒ジュシホシツツハムシの調査の折に同行者がスウィーピングしたもので、最初昆虫類のどの目に所属するのかまったく見当が付かず、いろいろな方にご教示を受けることになりました。
甲虫のようでハチのようで・・・ネジレバネまで疑ってしまいました。浅学です。
今思うと、以前に「昆虫と自然」誌だったか「月刊むし」誌だったかに畑山さんの写真があったのを思い出した次第です。
また、以前の年賀状にも載せられていましたね。大阪の初宿さんの報文ありました(つねきばち)。
ともあれ特異的な触角と前翅形態で驚きの種ですね。
その後Rhipiphorus(コバネオオハナノミ)のようだとネット検索したら、北アメリカ南部産などの情報などがヒットし、画像もたくさんあって、なるほどと思いました」とのことです。
この種は兵庫県と阿蘇の草原で得られているコバネオオハナノミの新種で、ハナバチの巣に寄生すると考えられています。
肩の所に黄色く小さく見えるのが上翅で、後翅は大きく、常に露出しています。大きく枝分かれした触角は、♂が♀を探すためと考えられ、先に羽化した♂が、ハナバチの巣の入り口で待ちかまえるか、あるいは花上で待ちかまえて♀との交尾の機会を待っているのでしょう。
しかし、実際に花上で得られているのは大半が♀で、♂は極少なく、まだ新種記載までは至っていないようです。興味のある方は、是非、標高800〜1000m程度の草原でお盆前後に、ミヤマハハコなど小さな白い花をたくさん付ける花上を狙ってみてください。
(コバネオオハナノミの一種♂)
ということで、今坂も、何度となく畑山氏からハッパを掛けられてこの2-3年、瀬の本高原などに探索に出かけましたが、まったく姿を見せて貰えなかった種です。
ですから、松尾さんから送られてきた画像を見て、「エー、それはない!」と一瞬思ってしまいました。
一方、三宅さんは、ハードデイスクに入れて持ってきた珍奇種の写真をパソコン上でふんだんに見せて下さいました。
昨年以上に磨きのかかった合成画像で、ある意味、顕微鏡で見るより細部まで良く見えます。
三宅さんにそのうちの4種のすばらしい画像を提供していただき、解説もお願いしました。
ホームページでは写真が小さくて、その雰囲気だけしかお伝えできないのが残念ですが。
ニホンフチドリムクゲキノコムシ Nossidium japonicum Sawada
本州に分布が知られる1mmに満たない微小種。表皮が残らない古い朽木倒木のスプレーイングで得られた。樹種アカガシ。ケブカフチドリムクゲキノコムシ N. pilosellum (Marsham)、アナバケデオネスイ Mimemodes cribratus (Reitter)、ニセデオネスイ Europs ferrugineum Reitter、ホソテントウダマシ Panamomus brevicornis Gorham、マルツヤヒメマキムシ Holoparamecusellipticus Wollastonなど珍品微小種がこの朽木から採れた。
ルイスツツヒラタムシ Ancistria lewisi Reitter
熊本県湯山でのSharpの採集品(1981年)をReitter (1889) が記載した後、1世紀以上記録がなかったのではないか。最近、屋久島で1頭(♀)が記録され、対馬でも採れたと聞く。2012年は大分県の3ヵ所で一気に18頭が採れた。標本および写真を見た人は少ない。
記載は5mmほど、とされるが被写体は6.2mmの雄大な♂個体。
メダカヒメヒラタホソカタムシ Microsicus oculata (Sharp)
北海道、本州に分布が知られる希少な種。最近、いずれも大分県の九重山群と傾山で採れた。記録はまだ未発表。樹皮の残る立ち枯れ木で採集された。
ダウリアノミゾウムシ Tachyerges dauricus (Faust)
本州東北地方でわずかに記録がある。数々の希少種が発見されている熊群山の中腹で、またも正体不明?の珍品がわずか1頭採集された。
三宅さんは、以上の合成写真を次のようなシステムで撮影されています。
元々は九州大学の丸山さんに手ほどきを受けられたと言うことですが、三宅さん独自の方法がかなり加えられているようです。
今から深度合成写真を撮ってみたい人のために、撮り方を解説していただきました。
ちなみに、上記の松尾さんの写真も同様の方法で撮られているそうです。
<三宅式マクロ深度合成写真撮影システム 解説:三宅 武>
マクロ撮影は工夫次第です。私の場合、極力安上がりの組み合わせですが、基本的には「月刊むし」に丸山さんが紹介した深度合成写真撮影法と同様のシステムです。
システム写真を紹介します。
カメラはオークションで購入したNationalの安物(FZ50-S)にクローズアップレンズ(RAYNOX)を組み合わせています。
これをコピースタンド(これもオークションで手に入れた安物)に装着しています。
照明はスタンド式の蛍光灯を1対、これにカメラ本体のストロボも使いますが、ストロボ光はあらぬ方向に向いているので銀紙を加工して被写体に向かうよう工夫しました。
これに標本台座の解剖顕微鏡を置いていますが、これもオークションによる掘り出し物でした。
カメラ:LUMIX C-FZ50
スタンド:LPL CSC10
マクロスライダー:Velbon
レンズアダプター:
RAYNOX 35mm CM3500
マクロレンズは6, 12, 24各倍率
解剖顕微鏡:Kent
バックシート:マット紙グレー
ピン固定:デザイン消しゴム
照明拡散用のディフューザー(トレーシングペーパー加工)は、被写体の光沢が強い場合(テントウムシやハムシなど)に使用しますが工夫を要します。
なお30〜50枚ほど連続撮影したコマを合成する深度合成ソフトはCZM(Combine ZM)を使っていますが、これは無料ソフトです。
上記撮影法は基本的に小型、微小種向きの技法です。
丸山宗利研究室をネットで検索すれば、このソフトの使い方が懇切に紹介されています。
10mm以上の大型種では50〜70カットも撮影しますが、この場合、2回に分けて合成し、それぞれをさらに合成すると、作業時間が節約できます。
カメラとコピースタンドの間にMACRO SLIDERを装着していますが、これは無くてもよいものです。カメラ位置の微調整に使っていて便利ですが高価です(20年以上前から使用)。
Windows Vista,または7の場合はCZMの後継ソフトCZPをお勧めします。
http://hadleyweb.pwp.blueyonder.co.uk/CZP/Installation.htm
この中の「CombineZP Package」のリンクをクリックするとソフトがダウンロードできます。
CZMとインターフェースが少し変わりますが、ほとんど同じ使い方です。
<これから取り組む方へ>
深度合成撮影は誰にでも簡単にできますが、照明、バック処理や撮影コマ数など慣れるに従って作品のレベルが上がり、欲が出て、さらにスキルアップする楽しみもあります。
安上がりのシステムでもビックリするような写真が撮影できます。
私自身も発展途上で、LED照明、より美しいバック処理に無反射ガラス暗箱の導入などを検討中で、試行錯誤を楽しんでいます。
ソフトの使いこなしは慣れです。導入後の不明な点はお問い合わせください。
三宅メール アドレス: miyake27@ori.bbiq.jp
ということで、数々の珍品の写真を堪能した後で集合写真を撮って、一次会をお開きにしました。
さらに、午後10時前には宴会場を出て、二次会に出かけました。
いつもの居酒屋です。
貸し切りに近い状態で、さらに2時間ほど虫の話を楽しみました。
12時過ぎになって、店を出るときの写真が次のものです。
存分に虫の話をして、みんないい顔をしているでしょう。
ということで、良かった良かったでお終いになるのですが、今回は後がすごいことになりました。
その後、所用で1月23日まで出かけ、旅行中、咳が止まらず困りました。幸い熱も出ずそれ以上にはひどくならずに帰宅すると、出席メンバーの一人から「どうやら、卑弥呼の湯でインフルエンザをもらったらしく、昨日まで伏せっていました」とのメール。
その後続々と風邪やらインフルエンザやらの報告が相次ぎ、確認した中で、まったく大丈夫だったのは参加した19人中、山本さん唯一人。
比較的軽くて、寝ずに済んだのが、私と、何故か、祝さん・塚田さん・城戸さんなど元々軽い風邪模様だった人たちで、何ともなかった他の人はかえって、ひどい発熱か寝込むかして2〜3日、ひどい人は1週間近く寝込まれたようです。
誰が病原か?と言う詮索はさておき、すごい感染力ですね。
皆様、ノロウィルスも猛威を振るっていると言いますし、くれぐれもご用心、ご自愛下さい。