−ルリナガツツハムシがいた!!−
今年の梅雨は、九州ではしっかり降っています。
南九州ほどの被害こそ出ていませんが、梅雨入りしてから、怒濤のように降ったり、霧雨が続いたり、とにかく、切れ目がありません。
それが、この3日ほど、梅雨の晴れ間が広がるとの予報が出て、その最も晴れそうな7月7日、瀬の本へ出かけることにしました。
北部九州では、晴れの七夕など、何年ぶりでしょう。
前回、瀬の本まで、日田〜九重〜牧ノ戸峠経由で3時間かかりましたが、その後、黒川温泉〜南小国〜鯛生金山〜矢部村〜黒木町〜八女を経由するルートを見つけ、2時間で行けることを発見しました。
朝7時前に家を出て、9時には例の草窪地(そうわち)に着いておりました。
前日までの雨と、夜露に濡れて、草原は白く光っています。
雫に逆光が反射しきれいです。
さっそく、道横の斜面を掃いていくと、ビーティングネットが雫でグシュグシュになりました。
草陰にマルバハギを見つけ、掃こうとして、いきなり緑が目に入りました。
いるんだ〜。
じっと見ていると、お尻を後足で掻き出すようなしぐさをしていましたが、糞をするとき、足も手伝うのでしょうか?
野焼き草原+窪地+湿気+マメ科、とのセオリーを積み重ねて、この場所を選定して通ってきたわけですが、それでも、感心してしまいます。
余りにも当然の結果ながら、こう簡単に当たるとは思いませんでした。
確か、熊本県からはまだ報告されていなかったはずで、国内で、6ヵ所目の産地と言うことになります。
(ルリナガツツハムシの左:♂、右:♀)
日当たりが良い株は敬遠するようで、多少、草陰のを好むようです。
マルバハギだけではなく、ヤブツルアズキ?(後の補足説明を参照)にもいます。
(ヤブツルアズキ?)
(補足:ヤブツルアズキは小原さんに写真で同定していただきましたが、ツルがなければ、畑などから逃げ出したアズキの可能性もあるそうで、標本での確認が必要のようです。)
斜面を降りて、窪地の底に降りると、マルバハギには虫が溢れています。
圧倒的に多いサクラサルハムシを筆頭に、アオガネヒメサルハムシ、マルキバネサルハムシ、アオバネサルハムシと、だいたいこの優先順位で無数に付いています。
株によっては、チビアオゾウムシが集中して何百となく付いていて、他の株では、アオヒゲナガゾウムシが、そして、ミドリクチブトゾウムシはあちこちに分散して付いています。時折、チビイクビチョッキリが落ちてきますが、すぐに飛んでしまいます。
マルバハギだけではなく、マメ科であれば、メドハギもヤブツルアズキ?も、そして、クララやクサフジまで、これらの虫たちが付いています。
これらの草を手当たり次第に掃いていくと、大部分は同じ顔ぶれですが、時折、ルリナガツツハムシが見つかり、そして、ハギチビクロツツハムシも見つかりました。後者は、北九州の平尾台産も確認していますので、3つ目の産地になります。
草窪地のマメ科の葉上では、ルリナガツツハムシやハギチビクロツツハムシはかなり弱小で、日当たりの悪い株や、はしっこの斜面の小さいメドハギなど、周辺に追いやられているようです。
大野原では、ルリナガツツハムシはメドハギでしか見つかりませんでしたので、ホストはメドハギに限定されるもの考えていました。
しかし、ここでは、ヤマハギ、ヤブツルアズキ?、メドハギ、クサフジから落ちてきて、これらの草と一緒に容器に入れて置いたところ、いずれにも食痕があったので、これらのマメ科もホストに加えてよさそうです。しかし、クララ葉上からは見つかりませんでした。
ホストになるマメ科植物の種類より、むしろ、それらが生えている場所の、光りの当たり具合や湿気、そして、直下に産卵され幼虫が成育する土壌の湿気の具合が最優先するようです。
さらに、競合する優占種との力関係も影響するのでしょう。
圧倒的な同じ顔ぶれに多少はうんざりしながら、次々に掃っていくと、それでも時折、新顔が見つかります。
ハギアラゲサルハムシもやはりいました。しかし、全部で3個体しか見ていませんので、ここではかなり少ないようです。
さらに、マルバハギからは、タテスジキツツハムシ、ジュウシホシツツハムシなども見つかりました。マルバハギ喰いのハムシのオンパレードです。ここのジュウシホシは、余所のより黒紋が大きく見えます。
(上:タテスジキツツハムシ、下:ジュウシホシツツハムシ)
一方、かなり繁茂しているクサフジからは、上記のメンバーも少しは見つかるものの多少顔ぶれが違うようです。
ヒゲナガマメゾウムシ Bruchidius lautus (Sharp)と、クロマメゾウムシ Bruchus loti Paykull、ベッチチビコフキゾウムシ Sitona lineellus (Bonsdorf)
はクサフジからしか落ちてきません。
草地の上をヒョウモンが軽やかに飛んでいきます。
草の隙間の空間を選んで降下していき、また別の隙間を探しているようで、ホストのスミレを探しているのでしょう。
なんとかクサフジに静止したところを撮影したと思った途端に飛ばれてしまいました。
あちこち探索を続けながら、疲れたのか、やっと花に止まって吸密を始めました。
大野原のオオウラギンヒョウモンとは違っていて、ちゃんと斑紋を確認すると、2字違いのオオウラギンスジヒョウモン♀のようです。
昔の記録を見ると、むしろ後者の方が珍品だったようですが、昨今はまったく逆転して、こちらは多少増えているとの話も聞きます。
いいかげんマメ科に飽きて、ススキを叩くとクロルリトゲトゲ Rhdinosa nigrocyanea (Motschulsky)が落ちてきました。
クロモンヒラナガゴミムシもススキでないところから落ちてきましたが、ススキ以外にも、あちこち歩き回るのでしょう。
(上:クロルリトゲトゲ、下:クロモンヒラナガゴミムシ)
また、斜面のススキにからまったヤブツルアズキ?のあたりで、前回も同じ場所で採集したコバンゾウムシの一種が採れましたが、なぜか、同じ数メートルの範囲でしか見られません。オウコバンゾウムシと思いながら、まだ種が確定できず、ホストも良く解りません。
白くて小さい見慣れぬハムシが採れて、どうも、ヒメウスイロハムシの♀のようです。
突然、オバボタルにしては一寸大きいのが、目の前をふらふら飛んでいると思って掬うと、小型のマドボタルでした。
♂交尾器はまだ確認していませんが、多良岳から不明種として報告したヒメマドボタルのようです。
森林だけではなく、こんな草地にもいるとは思いませんでした。
この草窪地なら、エサになる貝が住めるだけの湿度は有りそうですが・・・。
草窪地をどんどん下っていって、湿地へ出ると紫の花が咲いています。
アヤメだ!!
だから前回、アヤメトビハムシがいたんだ。
そう思いながらアヤメを掃いていくと、再びアヤメトビハムシがいました。
先の方に、アヤメの群落があり、結構生えています。
帰宅して確認すると、これはノハナショウブでした。
アヤメトビハムシのホストとして報告したいと思いますが、花にも葉にも、食痕を見つけることはできませんでした。
見つけた個体数も少ないので、最盛期は別の時期かも知れません。
突然、深みに足を突っ込んで、倒れそうになり、長靴の上まで泥ドロになったので、湿地も止めにしました。
良い感じではあるのですが、他に虫が見つからないのです。
弁当にしながら、林縁の草地を見ていると、シジミらしいのがチラチラ飛んで、ススキの上に静止しました。
何だろうと、弁当を中断してカメラをかまえてよく見ると、クロシジミのようです。
その2につづく
(補足:今まで述べてきたハギについて、マルバハギかヤマハギか混乱していて、今回の文章も、すべて、一旦、ヤマハギと表示しましたが、その後、小原さんに再確認したところ、マルバハギで良いそうです。ということで、本文中にヤマハギと書いていたものを、すべてマルバハギに訂正しました。ご教示いただいた小原さんに感謝いたします。)