虫屋の忘年会−付 九大博物館の文献と標本の受け入れ−

12月27日(土)、吉野ヶ里駅近くの吉野ヶ里温泉で、虫屋の忘年会を開催しました。
この会は、元々は、アセスメント調査の仲間で忘年会を始めて、今年で3回目です。

年々、参加者は虫屋が多くなってきたので、アセス以外の大学関係者や、アマチュア同好者など、知り合いに呼びかけて開いています。

温泉(スーパー銭湯)に浸かって、階上で宴会、同じ敷地内で宿泊というのが便利で、年末か、年始に行ってきています。

今年は、九大関係者では、博物館の丸山さん、比文の細谷さん、理学部院生の横川さん(最近出たクワガタ・ハンドブックの著者)、

アセス関係では、個人でやられている三宅さん、祝さん、平原さん、田畑さん、今坂、古川さん、冨嶋さん、岩切さん、塚田さん、

それから、アセス会社にお勤めの久村さん、西田さん、廣永さん、宇都宮さん、

日田の名物・昆虫巡査こと佐々木さんの、総勢17名が参加して下さいました。

今回はカモ鍋をつつきながらの気楽な言い放題の会で、専門は甲虫の人が比較的に多いのですが、
田畑さん(脈翅・直翅・ハネビロウンカ・ハバチ)、塚田さん(カメムシ)、久村さん(カメムシ)、祝さん(ハナアブ)、廣永さん(フンバエ)、古川さん(ガ・チョウ)と、
それ以外の分野の人も多彩で、いろいろ、常識外の思いがけない話が聞けました。

甲虫をやっている人でも、
丸山さん(アリの巣のヒゲブトハネカクシ)を筆頭に、かつてはマイナーだったハネカクシを好む人が多く、
三宅さんや平原さん、今年は今坂や岩切さんも、ハネカクシを追いかけています。

一人ずつ、自己紹介や、好きな虫のことを話し、一部は、標本や著作、別刷り等を持ち寄って、おおいに盛り上がりました。

その後、2次回の会場に移り、引き続き虫の話で盛り上がりましたが、改めて見渡すと比較的若い人が多く、心強く感じました。

通常の虫の会では、今坂より年齢の下の人は数えるほどですが、今回は30〜40才台が中心で、今年はやりのアラフォーが多くを占めていました。

年末で帰省中の学生さんたちに参加していただけなかったのが残念でしたが、次回からは、そのあたりも考慮したいと思います。

(九大博物館の文献と標本の受け入れについて)

この中で出てきたトピックとして、虫屋の皆さんにお知らせしておきたいことが2つ有ります。

第一は、九大博物館で、今後、個人所蔵の昆虫文献と標本の、受け入れを実施されるということ、

第二は、同じく、九大博物館で、昆虫の研究・分類・採集についての、啓蒙的な一般の人向けの講座の開講を考えられていることです。

どちらも、詳細はこれからですが、実行されると、普通のアマチュア虫屋にとっても、大変楽しみになります。

特に第一の問題は、虫屋の大部分が抱えている難問の1つが、解決されることになり、歓迎すべき事です。

昨年、熊本の中心的な虫屋さんであった大塚さんが、ご逝去されたことは、私のホームページでもお知らせしました。

その後、親しい人たちと九大の先生方の奔走で、2000箱とも言われている昆虫標本が、九州大学総合博物館に収蔵されました。

この大塚標本は、
ほとんどが熊本県産であること、
昆虫類の全てのグループを網羅していること、
大部分が専門家の同定を経て、同定ラベルが付いていることなど、
九州の昆虫を調べるのには、大変優れた基礎的な標本と考えられます。
たぶん、5000種以上が含まれているのではないかと想像しています。

加えて、熊本昆虫同好会報を除く文献・蔵書類も収蔵されたそうです。
どちらも、今後、研究者が利用できるように、整理されることになっているようです。

丸山さんの話では、今後も、虫屋さんから寄贈される文献については、積極的に博物館で受け入れをされると言うことです。

高齢で昆虫趣味が継続できなくなった方、
没後の文献の行き先が決まっていない方などは、
九大で永久保存をしてくださるということなので、所有文献について、直接、丸山さんにご相談下さい。
九州を始め、日本中の同好会誌、生物系クラブ等の部誌、個人出版物なども収集したい考えのようです。

一方、今のところ、所蔵標本については、無条件での受け入れは難しいようです。

標本の受け入れは、管理等の多大な手間が掛かることから、いろいろな条件をクリアする必要があると思われます。

しかし、大塚さんの場合のように、九大がその価値を認めた場合は、収蔵される場合もありますので、こちらも、個別に相談下さい。

このところ亡くなられた大物虫屋の標本と、文献の行く末を見ておりますと、一番大事なことは、元気で活動できるうちに、虫屋本人が処理し、あるいは、行き先を遺言しておくべきであるようです。

虫に興味を見いだせない親族にとっては、標本も文献も、場所塞ぎの重荷にしか過ぎず、その価値を十分に評価することは難しいようです。
適正な標本の管理や、適正な場所への寄贈を期待するのは、ほぼ不可能と考えられます。

自身で処置しない限り、早晩、朽ち果てる覚悟をしておいた方が良さそうです。

あるいは、九大でも、アイバンクみたいな、生前に収蔵の予約をするような制度を作って頂けるなら、都合が良いのかも知れません。

双方に、収蔵予約証明書(大学側)・譲渡書(標本の所有者)などを交わしておけば、亡くなった際に、即座に収蔵可能な状態に成るのではないかと思います。

私自身、70才くらいを一つのくぎりとして、その様なことを考えるべきかと思っているところです。
少なくとも、パラタイプをかなりの数、所有していますので、そちらは、なるべく早く公的なところに置くべきとは考えています。