2025年の高良山採集会 その2

続いて、有馬さんの採集品を紹介します。

(有馬さんの採集場所)

有馬さんの採集場所

6月28日、有馬さんは所用があり、集合場所の駐車場に少し遅れて到着されました。
他のメンバーは、既に思い思いに、それぞれの場所へ出かけた後で、多少、暗くなりかけたこともあり、有馬さんは安直(有馬さん言)に、場所探しを諦めて、集合場所の駐車場(D地点)で白幕を張ることにされたそうです。

(森林公園の駐車場)

森林公園の駐車場

駐車場の北端は、展望台にもなっていて、筑後川を含む筑後平野北部(久留米~大刀洗町~小郡~朝倉)が眺望できます。

(左から、展望台からの長め、白幕の設置場所)

左から、展望台からの長め、白幕の設置場所

有馬さんは、この場所で白幕を張り、HIDライトと、LEDのブラックライトで灯火採集をやられたわけです。標高は272mです。

夕暮れになり、点灯後しばらく経ってから、私は自身の白幕への飛来が少ないので、他はどうかと、有馬さんの白幕を見に出かけました。

するとビックリ、意外にも、有馬さんの白幕は、飛来した虫で溢れていました。

この日は風もなく、気温は高く、湿度も高いという、所謂ナイター日和で、有馬さんの白幕は、従来の灯火採集の教科書通り、樹林を広く見渡せる位置にありました。
しかし、これは蛾類や、クワガタ・コガネなど、飛翔力の強いグループを相手にした場合で、中小の甲虫相手の場合は余り当てはまりません。

発達した樹林の場合は、むしろ、多少鬱閉した、風当たりが殆ど無いような場所の方が、小型の思わぬ種が飛来するものなのです。

「遅れてきた怪我の功名」と、有馬さんはおっしゃっていましたが、間違いなく、この日、1番虫が集まっていたのは、有馬さんの白幕でした。
それも、個体数だけで言うなら、私の白幕の5~10倍くらい多かったと思われます。

有馬さんがら採集されたのはトウキョウヒメハンミョウ、エゾカタビロオサムシ○、ヨツボシミズギワゴミムシ、オオアオモリヒラタゴミムシ、ヒメツヤヒラタゴミムシ、アカアシマルガタゴモクムシ○、コゴモクムシ、チビツヤゴモクムシ○、ミドリマメゴモクムシ、ムナビロアトボシアオゴミムシ、オオキベリアオゴミムシ、トックリゴミムシ○、コキノコゴミムシ、チビカクコガシラハネカクシ○、ニセヒゲナガコガシラハネカクシ○、トビイロマルハナノミ、ノコギリクワガタ、ヒラタクワガタ、セスジカクマグソコガネ、オオコフキコガネ、セマダラコガネ、キスジミゾドロムシ、イブシアシナガドロムシ、

フタモンウバタマコメツキ、クシコメツキ、(仮称)ハカタオオチャイロコメツキダマシ○、アカマダラケシキスイ、ヨツボシケシキスイ、ナミテントウ、ヒメカメノコテントウ、フタオビホソナガクチキ、キイロカミキリモドキ、カトウカミキリモドキ、キバネカミキリモドキ、キイロゲンセイ、ヤマトスナゴミムシダマシ○、コスナゴミムシダマシ○、ニセノコギリカミキリ、クロカミキリ、アオスジカミキリ、キマダラカミキリ、トゲヒゲトビイロカミキリ○、テツイロヒメカミキリ、ワモンサビカミキリ、イボタサビカミキリ、スギケブカサルハムシ○、ウスモンツツヒゲナガゾウムシ、フタモンツツヒゲナガゾウムシ○、アシナガオニゾウムシの49種です。

高良山初も12種入っています。

さらに、この有馬さんの白幕から、私が採集させてもらったものが、同様に49種で、しかも有馬さんの採集品との共通種は15種だけで、以下の34種(69%)は別の種です。
同一の白幕から、同じ種を3割しか採っていないというのは不思議ですね。

セダカコミズギワゴミムシ、ヨツモンコミズギワゴミムシ○、チャイロコミズギワゴミムシ、タナカツヤハネゴミムシ、アトワアオゴミムシ、チビゲンゴロウ、ウスモンケシガムシ、アカケシガムシ○、キバネケシガムシ、コモンシジミガムシ、ニセヒメユミセミゾハネカクシ、アカバクビブトハネカクシ、チビヒメクビボソハネカクシ、キアシチビコガシラハネカクシ、

セダカマルハナノミ、アオドウガネ、アシナガミゾドロムシ、ヒゲコメツキ、ヒメホソキコメツキ○、カクムネクロベニボタル○、デメヒラタケシキスイ○、モンチビヒラタケシキスイ、コヨツボシケシキスイ、ミツモンセマルヒラタムシ、ニセミツモンセマルヒラタムシ、マルガタキスイ○、ウスチャケシマキムシ、ツヤケシヒメホソカタムシ、ヒゲブトゴミムシダマシ、ムナビロクチキムシ、トゲアシクビボソハムシ、マルキバネサルハムシ、ツシマオノヒゲナガゾウムシ、ガンショキクイムシ、サクキクイムシ。

この中にも高良山初が6種あります。

私の方は比較的小型の種ばかりに目が行っていたかもしれませんが、1つの白幕で採集しているのに、有馬さんと私で、これほど種構成が違うのにもあきれます。一人一人、全然違うところを見ているのですね。

結局、有馬さんの白幕には、二人の採集品を併せて、少なくとも、84種もの甲虫が飛来していたことになります。

このうち、(仮称)ハカタオオチャイロコメツキダマシについては、その1で紹介しました。

飛来したメンバーを見てみると、所謂普通種が大部分で、さすがに見通しの良い場所で採れたものは、移動力も適応力も大きい種が多いようです。

(エゾカタビロオサムシ)

エゾカタビロオサムシ

勿論主体は付近の樹林で発生していると思われる森林性の種です。
しかし、その1でも述べたことですが、ここでは、特に水ものの飛来が注目されます。

ゴミムシ類では、セダカコミズギワゴミムシ、ヨツモンコミズギワゴミムシ、チャイロコミズギワゴミムシ、タナカツヤハネゴミムシ、チビツヤゴモクムシ、オオキベリアオゴミムシ、トックリゴミムシ

(左から、タナカツヤハネゴミムシ、チビツヤゴモクムシ)

左から、タナカツヤハネゴミムシ、チビツヤゴモクムシ

止水性のチビゲンゴロウ、トビイロマルハナノミ、

(左から、オオキベリアオゴミムシ、トックリゴミムシ)

左から、オオキベリアオゴミムシ、トックリゴミムシ

トックリゴミムシなど、通常、水辺や水中でしか見られない種です。

それに、河川中に生息するコモンシジミガムシ、キスジミゾドロムシ、イブシアシナガドロムシ、アシナガミゾドロムシ、

(左から、アシナガミゾドロムシ、キスジミゾドロムシ、イブシアシナガドロムシ)

左から、アシナガミゾドロムシ、キスジミゾドロムシ、イブシアシナガドロムシ

また、ほぼ水辺の石下や植物の根際で見られるニセヒメユミセミゾハネカクシ、アカバクビブトハネカクシ、チビヒメクビボソハネカクシ、キアシチビコガシラハネカクシ、ニセヒゲナガコガシラハネカクシ、トゲアシクビボソハムシなどが飛来しています。

全体として、まるで、樹林を背負った河川敷ででも灯火採集をしたような感じです。

これらの水もの種は何処から飛来したのでしょう。改めて、駐車場の周囲を見渡してみましょう。

(駐車場から見下ろす地域、グーグルから改変引用)

駐車場から見下ろす地域、グーグルから改変引用

有馬さんの灯火から、地図上で最も近いのは660m位置に池のマークがあり、その上の谷には小渓流があるようです。その他、真北・864mの所には水源地の池が、北西1166mの所にも池があります。

直接確認したわけではありませんが、グーグルで眺めた限りでは、これらの池の周囲は林が被っていたり、岸辺はそのまま落ち込んでたりして、これらの甲虫が生息できるような草付きの裸地があるようには見えません。

では、これらの水ものは、一体何処から飛来したのでしょうか?

少なくとも、アシナガミゾドロムシ、キスジミゾドロムシ、イブシアシナガドロムシなどのヒメドロムシ類は、河川中流域の水中に生息する種です。渓流にいる種ではありません。

そうすると、筑後川から飛来したと考えるのが自然でしょう。

(筑後川と有馬さんの灯火の位置、グーグルアースより改変引用)

筑後川と有馬さんの灯火の位置、グーグルアースより改変引用

ただ、標高差300m近く、直線距離で3kmほどあります。
微小なヒメドロムシなどの水生甲虫がそれほど飛ぶのでしょうか?

昨年の正月、ホームページに、「2024年の池と川巡り 池巡り その1」をアップしました。

その、「朝倉市烏集院(うすのいん)・鐘突(かねつき)溜池」の項で、溜池なのに、河川種のカワベナガエハネカクシ、ヒラタドロムシ、キベリナガアシドロムシ、キスジミゾドロムシ、イブシアシナガドロムシ、アワツヤドロムシ、(仮称)マルチビドロムシの7種が含まれていることを報告しました。

また、その2回目の「2024年の池と川巡り 池巡り その2」では、
https://coleoptera.jp/2025/01/10/2024%e5%b9%b4%e3%81%ae%e6%b1%a0%e3%81%a8%e5%b7%9d%e5%b7%a1%e3%82%8a-%e6%b1%a0%e5%b7%a1%e3%82%8a%e3%80%80%e3%81%9d%e3%81%ae2/

「朝倉市須川・小隈裏(おぐまうら)溜池」の項で、なぜ池で河川種が採れるのか?という疑問を提示しています。

結論として、「河川種の成虫は、基本的には遡上拡散するものの、その多くが(あるいは一部が)、発生場所から上流側に向けて、扇型に拡散していって、水気のある場所を探索し、運良く河川に着水したものが産卵し、世代交代するということではないか」と考えています。

飛翔範囲に溜池など止水環境があっても、やはり水気に引きつけられ、着水し産卵するものの、こちらは世代交代できず消滅する、と言うことではないかと思います。

あるいは、タンポポの綿毛種子のようなものと考えても良いかもしれません。
ヒメドロムシ類は多いときは無数に飛来しますので、よけいに、タンポポの綿毛種子を想像してしまいます。

と言うことで、この溜池の場合は、小川から1km程の距離でしたが、気象条件が良ければ、3kmであっても、筑後川から高良山山頂付近まで、飛来したのではないかと考えています。個体数の多さもその事を裏付けているように思います。

水ものや、水辺や裸地などで生活する種全般にわたって、多少とも、このような性質を持っていると考えないと、有馬さんの白幕の種構成を理解できません。

(スギケブカサルハムシ)

スギケブカサルハムシ

スギケブカサルハムシは従来は九州(南部)、屋久島、トカラ列島などで見つかっていた暖地系の種です。しかし、近年福岡県各地でもポツポツ見つかっています。

ヒノキやスギの葉上で見られるそうで、温暖化に相まって、スギ植林地沿いに、北上しているのかもしれません。

(セダカコミズギワゴミムシ)

セダカコミズギワゴミムシ

本種は林床性の虫で、落ち葉篩いなどでも見つかる種です。体色は濃い褐色でやや幅広です。

本種には良く似たキイロマルコミズギワゴミムシという種があり、こちらは湿地の泥土の水際などで見つかる種です。体色は薄い黄白色で、体幅はより狭く、より小型です。

この個体の同定に、なぜ近似種を持ち出したかと言いますと、保育社の甲虫図鑑IIには、「後翅を欠く」と書いてあり、一瞬、同定を躊躇したからです。

(左から、甲虫図鑑IIから改変引用、19はキイロマル、20はセダカ、後翅を伸ばした高良山産セダカ)

左から、甲虫図鑑IIから改変引用、19はキイロマル、20はセダカ、後翅を伸ばした高良山産セダカ

上野俊一・黒澤良彦・佐藤正孝, 1985. 原色甲虫図鑑 (II). 514pp. 保育社.

写真で解るように、高良山産は明らかにセダカに良く似ていて、後翅は上翅の2倍近くあります。明らかに飛来してきました。

久留米周辺では本種はしばしば灯火に飛来し、この日、大塚さんも南麓林道で採集されています。

この図鑑に掲載されている、後翅が退化したセダカは何処の産地のものでしょうか?

産地によって、後翅が退化したり、発達したりしているのか、あるいは、後翅がないものと、あるものは別種なのか、興味が尽きません。
ご存じの方はご教示ください。

なお、インターネットで調べてみたところ、藤本(2019)に、香川県琴平町琴平山で「灯火下で得られた」とあり、これも飛来してきた可能性があります。

藤本博文, 2019. 香川県本土で採集したオサムシ科甲虫の記録. 香川生物, (46): 57-74.

さて、この駐車場では、小旗さんも、有馬さんとは少し離れた場所で、白幕を張られていました。
それで、先に、その成果を紹介してしまいましょう。

小旗さんからの連絡では、オオアトボシアオゴミムシ、オオキベリアオゴミムシ、セスジカクマグソコガネ、キュウシュウカクマグソコガネ、オオコフキコガネ、セマダラコガネ、オオスジコガネ、キスジミゾドロムシ、イブシアシナガドロムシ、クロルリゴミムシダマシ○、キマダラカミキリ、トゲヒゲトビイロカミキリ○、ウスモンツツヒゲナガゾウムシと、ヒメスナゴミムシダマシを採られていて(以上小旗同定)、あと、2種類が未同定ということでした。

このうち、クロルリゴミムシダマシとトゲヒゲトビイロカミキリが高良山初になります。
また、キュウシュウカクマグソコガネは、九州西岸沿いの長崎県では比較的普通ですが、高良山を始め、福岡県では比較的少ないようです。

ヒメスナゴミムシダマシはちょっと気になったので、確認のため送っていただくことにして、未同定分2種も送っていただきました。

2種は、ミドリマメゴモクムシとトビイロマルハナノミでしたが、それより、驚いたのは、ヒメスナゴミムシダマシを疑われた個体は、シナスナゴミムシダマシ○でした。

(左から、シナスナゴミムシダマシ背面、♂交尾器背面・側面・筑後川産今坂採集分)

左から、シナスナゴミムシダマシ背面、♂交尾器背面・側面・筑後川産今坂採集分

本種については、別報文で、改めて詳しく報告したいと思いますので、ここでは、かいつまんで紹介します。

本種についての情報は、秋田・益本(2016)が最初で、それまで、国内にこんな種がいるという存在自体を知りませんでした。

秋田勝己・益本仁雄, 2016. 日本産ゴミムシダマシ大図鑑. 月刊むし・昆虫大図鑑シリーズ 9, 302pp.

この図鑑では本州と大分県の離島・姫島の記録があるくらいで、九州本土の記録はありません。一昨年(2024年)、中村さんから、九州での分布の問い合わせがありましたが、無いと答えただけです。

その後、アセスの仕事で、九州の分布は確認しましたが、まだ、正式記録はありません。

本種の実物を確認できたことで、ようやくどんな種か認識できて、その目で筑後川の記録個体を見直したところ、ヒメスナゴミムシダマシで記録した個体の大部分が、本種の誤りであることが解りました(今坂ほか, 2024)。

今坂正一・有馬浩一・國分謙一・斎藤 猛, 2024. 筑後川の甲虫相-その1 中流域-. KORASANA, (102): 31-106.

本種は大河川の中流部河川敷にいて、灯火に飛来することが解ったわけです。

それで、この小旗さん採集のシナスナゴミムシダマシ♂ですが、河川敷以外で見つけたのは始めてです。それも標高272mもの山地での発見です。
ヒメドロムシなどの水生甲虫と同様、この種も筑後川から飛んできたと考えるしかないのですが、本種はそれほど飛ぶような感じではないので、不思議です。

有馬さんの採集品に戻りましょう。

(有馬さんの採集地点)

有馬さんの採集地点

有馬さんは、駐車場から左下の、ハイキングコースを2-30mほど下ったあたり(E地点)にも、UVライトFITを下げられていました。

(E地点と今坂所有の有馬さんのUVライトFITと同型)

E地点と今坂所有の有馬さんのUVライトFITと同型

有馬さんのUVライトFITには、50種の甲虫が入っていました。
そして、このうち、100mほどしか離れていないにもかかわらず、駐車場の白幕では採れなかった種が以下の36種も含まれていました。
と言うことは白幕との共通種は14種(28%)しかないことになります。

メダカチビカワゴミムシ○、クロモリヒラタゴミムシ、チャイロホソヒラタゴミムシ、クロズホナシゴミムシ、ハギキノコゴミムシ、ニセトガリハネカクシ、クロズトガリハネカクシ、ムクゲヒメキノコハネカクシ、モンクロアリノスハネカクシ○、ヒメコブスジコガネ、コブマルエンマコガネ、ナガチャコガネ、クロコガネ、ハラゲビロウドコガネ○、オオスジコガネ、ヒゲナガコメツキ、アカアシハナコメツキ○、ナガヒゲブトコメツキ、

(仮称)ヒメムネミゾコメツキダマシ○、ナガコゲチャケシキスイ○、グルーベルホソチビヒラタムシ、オオキバチビヒラタムシ、セマルチビヒラタムシ、ヒメムクゲオオキノコムシ、ヒラタコメツキモドキ、ヒメヒラタホソカタムシの一種○、ツヤナガヒラタホソカタムシ、コモンヒメコキノコムシ、キイロホソナガクチキ、アカモンホソアリモドキ、モリモトチビキカワムシ、クリノウスイロクチキムシ○、カタモンヒメクチキムシ○、ベニモンキノコゴミムシダマシ、ノコギリカミキリ、アトモンマルケシカミキリ。

灯火機材の違いもありますが、やはり、オープンで数キロ先まで見渡せる環境の白幕と、鬱閉された樹林内のFITでは、それだけ、飛来する種構成が違うということでしょう。

このうち高良山初は9種含まれています。

また、追加種の大部分が樹林性の種で、D地点で採れていない水ものは、1つも含まれていません。

さらに、ここでも、その1で紹介した注目種、(仮称)ヒメムネミゾコメツキダマシとヒメヒラタホソカタムシの一種、モリモトチビキカワムシなども採れています。

(左から、有馬さん採集の、ヒメムネミゾコメツキダマシ、ヒメヒラタホソカタムシの一種)

左から、有馬さん採集の、ヒメムネミゾコメツキダマシ、ヒメヒラタホソカタムシの一種

モンクロアリノスハネカクシ、ヒメコブスジコガネ、ナガコゲチャケシキスイ、グルーベルホソチビヒラタムシ、ヒラタコメツキモドキなどもちょっと良いですね。

(グルーベルホソチビヒラタムシ)

グルーベルホソチビヒラタムシ

結局、6月28日の有馬さんの白幕とUVライトFITの採集品の合計だけで119種になり、これは凄い種数です。

有馬さんは、採集会の成果に気を良くして、その後も高良山の調査を続けられました。

7月2日には南麓林道(H地点)で、白幕を張っての灯火採集と、UVライトBoxとUVライトFIT、

7月6日には夏目漱石の歌碑のあるG地点で、ビーティング等の任意採集、

7月7日は先の駐車場横(E地点)で、UVとLEDを使ってのライトFIT、

7月11日は同じくG地点でのLEDライトFIT、

7月20日は再度、駐車場横(E地点)で、UVとLEDを使ってのライトFIT、

7月21日は、ほぼ高良山山頂にあたるF地点でのUVとLEDを使ってのライトFIT、

8月12日も三度、駐車場横(E地点)で、UVとLEDを使ってのライトFITです。

有馬さんは会社帰りに、高良山に立ち寄ってライトFITを設置し、北側に降りるとご自宅に帰れます。
夕食後、時間を見て、FIT回収に行けば良いということで、何度も繰り返されたわけです。

煩雑になりますので、地点ごとに、成果は纏めて紹介します。
なお、H地点は南麓林道になりますので、後の回にまわします。

駐車場横(E地点)

7月7日、20日、8月12日に実施されています。この3回合計で97種です。
会社帰りに、ちょっと機材を置いておくだけですので、これはかなり、コスパの良い効率的な採集ということになります。

97種のうち、6月28日の採集会の折採れていなかった種は、次の74種になります。
同一場所でも季節が移っていくと、飛来する種が徐々に変わっていくのが解ります。

ナガヒラタムシ、ホソチビゴミムシ○、キイロチビゴモクムシ、ナガマメゴモクムシ○、イツホシマメゴモクムシ○、カドツブゴミムシ、ヒメキノコゴミムシ、ヤセアトキリゴミムシ、イクビホソアトキリゴミムシ、ヒラタアトキリゴミムシ、コシマゲンゴロウ、ウスイロシマゲンゴロウ○、セマルマグソガムシ○、ヒメガムシ、クロシデムシ、ツマキクビボソハネカクシ○、ツマグロムネスジハネカクシ○、クロヒメキノコハネカクシ ○、セダカマルハナノミ、

ミヤマクワガタ、コクワガタ、スジクワガタ、ノコギリクワガタ、オオカンショコガネ、サツマコフキコガネ、アカビロウドコガネ、ヨツバコガネ、アオドウガネ、ドウガネブイブイ、セマダラコガネ、スジコガネ、リュウキュウダエンチビドロムシ○、サビキコリ、フタモンウバタマコメツキ、オオクシヒゲコメツキ、オオナガコメツキ、キバネクチボソコメツキ、ヒラタクシコメツキ、クロヒメトゲムシ○、セマダラナガシンクイ、

ツツガタホソシバンムシ、ヒサマツシバンムシの近似種①、ムネアカタマキノコシバンムシの近似種①、チビキノコシバンムシの一種③○、ニセスジキノコシバンムシ○、デメヒラタケシキスイ○、アカマダラケシキスイ、ヒメアカマダラケシキスイ○、ヒレルチビヒラタムシ○、ヒラムネホソヒラタムシ○、ミツモンセマルヒラタムシ、セモンホソオオキノコムシ、ムクゲミジンムシ○、ヒメカメノコテントウ、ウスチャケシマキムシ、ヒュウガホソカタムシ、

ナミアカヒメハナノミ、チャイロヒメハナノミ、アワヒメハナノミ、ヒメハナノミダマシ○、ホソアカクチキムシ、ヤマトスナゴミムシダマシ○、モンキゴミムシダマシ、アメイロホソゴミムシダマシ○、モトヨツコブゴミムシダマシ○、エグリゴミムシダマシ○、ニセノコギリカミキリ、クロオビカサハラハムシ、ウスモンツツヒゲナガゾウムシ、コモンヒメヒゲナガゾウムシ○、カシワクチブトゾウムシ、キクイサビゾウムシ、ガンショキクイムシ、サクキクイムシ。

高良山初が22種も含まれています。

また、鬱閉環境にもかかわらず、水ものも相変わらずホソチビゴミムシ、キイロチビゴモクムシ、コシマゲンゴロウ、ウスイロシマゲンゴロウを始めとして、ボツボツ見られます。オープンで直接見える環境以外でも、水ものはかなりあちこち徘徊しているようです。

興味深い種としては、西田さんに同定していただいたツツガタホソシバンムシ、ヒサマツシバンムシの近似種①、ムネアカタマキノコシバンムシの近似種①、チビキノコシバンムシの一種③、ニセスジキノコシバンムシなどのシバンムシ類を挙げることができます。

日本産シバンムシ類は、西田さんの集計で84種が判明しています(西田, 2022)が、私の手元にあった標本を見ていただいただけでも、48種が見いだされ、そのうち、4割近い19種は学名が確定できない未記載種と思われる種でした(西田・今坂, 2024)。

西田光康, 2022. ヒョウホンムシ科シバンムシ類のリストを作ってみた. こがねむし, (87): 22-31.
西田光康・今坂正一, 2024. 今坂正一が所蔵していたシバンムシ類について. こがねむし, (89): 25-39.

この同定に関連して、チビキノコシバンムシ類についての解説メモをいただききました。
日本産シバンムシ類の分類学的一端を紹介するために、西田さんの許可を得て、ここに搭載しておきます。

チビキノコシバンムシ属 Sculptothecaについて  2025年9月27日現在 西田光康作成

外部形態においては、体型、体長、上翅点刻、被毛色、触角中間節、頭楯、頭裏の触角収納部等に種間差が認められる。外部形態によるsp.1とsp.2の区別、また、♂交尾器によるsp.2とsp.3の区別は、今は困難。

外部形態による検索表

1.上翅点刻列の点刻は2~3個が連なる、体長は大きく2mm以上(愛知県5♀)・・・・・・・・・ S. sp.6
- 上翅点刻列の点刻は1個の大点刻が連なる ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

2.点刻列の点刻は底が見えるほどに浅い ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
- 点刻列の点刻は大きく深い ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

3.体長は2mm以上(佐賀・福岡2♀)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ S. sp.5
- 体長は1.9mm以下(佐賀・福岡4♂3♀) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ S. sp.3

4.体長は1.5mm以下、被毛は白色、L/W=1.7程度で太短い(久米島2♂1♀)・・・・・・・・・・ S. sp.4
- 体長は1.6mm以上 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5

5.被毛は白色、L/W=1.8程度で太短い、頭楯は広く浅く平面(佐賀・大分4♂4♀) ・・・・・・・ S. sp.1
- 被毛は黄色味を帯びる、L/W=1.9以上で少し長い、頭楯の平面部は狭い(佐賀meny exs.)・・・・S. sp.2

体形

体形は、sp.1とsp.4が太短く、sp.5とsp.6が2mm以上で大きい。

(背面の概形、左から、S. sp.1♂、S. sp.2♂)

背面の概形、左から、S. sp.1♂、S. sp.2♂

(背面の概形、左からS. sp.3♂、S. sp.4♂)

背面の概形、左からS. sp.3♂、S. sp.4♂

(背面の概形、左からS. sp.5♀、S. sp.6♀)

背面の概形、左からS. sp.5♀、S. sp.6♀

上翅の点刻

点刻列の点刻は融合し、sp.1、sp.2、sp.4は大きく深い。
sp.3とsp.5は小さく浅い。sp.6は融合せず2~3個の点刻となる

(上翅表面の点刻、左から、S. sp.1♂、S. sp.2♂)

上翅表面の点刻、左から、S. sp.1♂、S. sp.2♂

(上翅表面の点刻、左からS. sp.3♂、S. sp.4♂)

上翅表面の点刻、左からS. sp.3♂、S. sp.4♂

(上翅表面の点刻、左からS. sp.5♀、S. sp.6♀)

上翅表面の点刻、左からS. sp.5♀、S. sp.6♀

検索表 第2案として、以下のようにも検索できる。

1.太短い(L/W=1.8未満)(L=前胸前縁~翅端) ・・・・・・・・・・・・・・・ 2
- より細長い(L/W=1.8以上) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
2.大きく(1.8-2.1mm)、触角の中間節は尖る ・・・・・・・・・・・・・ S. sp.1
- 小さく(1.4-1.5mm)、触角第3節が肥大し尖る ・・・・・・・・・・・ S. sp.4
3.大きい(2mm以上) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
- 小さい(2mm未満) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
4.上翅の点刻列は1個の大点刻が連なる ・・・・・・・・・・・・・・・・ S. sp.5
- 上翅の点刻列は2~3個の点刻が連なる・・・・・・・・・・・・・・・・ S. sp.6
5.上翅の点刻は大きく深い ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ S. sp.2
- 上翅の点刻は小さく浅い ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ S. sp.3

西田さんの話では、日本で唯一、本属で記録されているチビキノコシバンムシ Sculptotheca hilleri (Schilsky)は、本州、四国、九州に分布するとされるが、古い時代の簡単な記載のため、上記6種のどれに当たるか解らないということです。

シバンムシ類を同定していただき、チビキノコシバンムシ属の解説の公表を許可いただいた西田さんに、厚くお礼申し上げます。

その他の採集品の内、やや標高の高い場所の水辺に生息するナガマメゴモクムシが採れたのは意外でした。

(左から、ナガマメゴモクムシ、スジクワガタ♀)

左から、ナガマメゴモクムシ、スジクワガタ♀

また、スジクワガタ♀は、当初、今坂はネブトクワガタと勘違いしていました。
有馬さん(クワガタ屋さん)に指摘されて、ようやく誤りに気がついたのですが、クワガタも♀の同定は難しいです。

(クロヒメトゲムシ)

クロヒメトゲムシ

本種はエノキの樹液に集まる種ですが、水辺に生えているエノキ以外ではあまり見かけません。

(左から、ヒュウガホソカタムシ、ヒメハナノミダマシ)

左から、ヒュウガホソカタムシ、ヒメハナノミダマシ

有馬さんもヒュウガホソカタムシを採られていました。

日本産ハナノミダマシには、ホソハナノミダマシ、コハナノミダマシ、ヒメハナノミダマシ、キイロハナノミダマシの4種が記録されていますが、前2種は正体も分布範囲も不明のようです。

通常、2-3mmと小型のものをヒメハナノミダマシ、より大型で3.5-4mmのものをキイロハナノミダマシとしていますが、再検討が必要のようです。
畑山さんによると、どちらのサイズのものも、まとまって採れないので、なかなか検討できないそうです。

夏目漱石の歌碑横(G地点)

7月6日と11日に実施されています。2回合計で16種を採集されていますが、特筆する種はありません。
それでも、高良山初は3種含まれています。

ヨツバコガネ、ネムノキナガタマムシ○、オオクシヒゲコメツキ、オオナガコメツキ、ヒメホソキコメツキ○、ヒラタクシコメツキ、クシコメツキ、キアシマメコメツキ、ヒロオビジョウカイモドキ、ヒラタコメツキモドキ、ナミテントウ、ツヤケシヒメホソカタムシ、ムナビロクチキムシ、ニセノコギリカミキリ、イボタサビカミキリ、ハイイロチョッキリ○。

高良山山頂直下(F地点)

7月21日に実施されましたが、ほとんど虫は来なかったそうです。

ヨツバコガネ、アオドウガネ、セマダラコガネ、スジコガネ、オオナガコメツキ、ナガヒゲブトコメツキの6種で全て他の地点で出ている種です。

有馬さんは、高良山で、6月28日から8月12日までに、南麓林道分を除いて、158種を採集されています。

つづく