南大隅初日(5月8日)
グーグルで、久留米から南大隅までの道程と時間を検索してみたところ、所要時間は高速も含めて4時間34分でした。
お昼には現地に着いておきたいと考えて、7時に國分さん宅を出発することにしました。
天気予報では、今日(8日)と中日の10日、そして、最終日(i2日)が晴れで、9日と11日はかなり強く雨が降りそうです。
貴重な晴れを無駄にできません。
九州縦貫道は晴れで快適にドライブを続けます。
昨年春の種子島行きのドシャブリ出発とは大違いです。
途中、休み休み走り、12時前には高速を降りてすぐ、コンビニに寄り、弁当と飲み物(ついでにビールも)調達します。
車にナビは着いていないので、前もってメモしてきた道順の通りに走っているつもりが、途中、吾平町のあたりで迷ったらしく、なかなか峠越えの道(県道563号線)にたどり着けません。
あとで解ったことですが、国道561号線と県道68号線が複雑に重複・離合していて、そのせいで横道に誘導されてしまったようです。
30分ほど余分に時間を浪費して、辺塚へ下る峠道にたどり着いたのが午後1時過ぎ。
調査地の範囲で、最も高標高(標高800m)の位置にあるビジターセンターに立ち寄ってみることにしました。
峠手前にある分岐から左に折れ、10分足らずでビジターセンターに着きます。
途中は、植林と若い二次林、そして公園化された草地などで、あまり良さそうではありません。
(左奥がビジターセンター)

ビジターセンター手前の散策路との分岐に、保護林の看板がありました。
(緑の回廊の看板)

時間も押しているので、急いで昼食を取ります。
(昼食中の國分さん、先は自然観察路)

なお、出発前に個人的に集計した南大隅から記録されている甲虫の総種数は1173種でした。
この後紹介する種のうち、南大隅から未記録と思われる種には、*印を付けておきましたが、既知記録をご存じの方があれば、ご教示ください。
また、南大隅産甲虫の分布特性としては、本土系で南大隅を南限とする種が大部分と思われますので、このグループには特に印をつけません。
南大隅産甲虫の中で、一番、注目すべき分布パターンは、海流分布をしたと思われる種で、それも種子島・屋久島、あるいは南大隅を出発点として、九州西岸、四国南岸、紀伊半島南岸、時には伊豆諸島まで分布する分布型です。これらの種群を、種子島・屋久島型と名付け、和名の後に◎印を付けます。
便宜的に、今のところ、種子島・屋久島と南大隅のみで知られる種もこの分布型に含めておきます。
さらに、種子島・屋久島よりさらに南方の、琉球や東南アジアなどを出発点として、日本本土まで広く分布する分布型があり、一般に南方系と一括りにしています。
この中にはコスモポリタン的に亜熱帯から温帯まで広い適応力を持つ南方系広域分布種と、むしろ限定的に、日本本土でも暖流に直接洗われる無霜地帯など温暖な地域に限って分布する暖地種の、2つの分布型がありますが、ここでは、それらを区別せず○を付けておきます。
今のところ、南方系で南大隅を北限とする種は知られていません。このグループはさらに北方まで分布します。
逆に、本土系でありながら種子島・屋久島まで南下して分布する種には△印を付けます。◎との区別が解りにくい場合もありますが、上記のように限られた沿岸地方のみに分布する種群が◎で、各地、本土内陸まで広く分布する種群が△と、ハッキリ区別できるでしょう。
最後に、現時点での数少ない、南大隅固有種とその他・分布範囲不明種には☆を付けておきます。
この報告の最後に、これらの各グループの集計をしてみたいと思います。
昼食後、自然観察路の林縁を叩きながら、2-300m歩いてみました。
晴れていても多少肌寒く、葉上にほとんど虫は見られません。
後で確認すると、このあたりで標高800mもあり、花や葉の開き具合は春の初めの感じです。
(自然観察路の林縁)

イタヤカエデに緑の花が少し着いていて、ヒラタハナムグリ△、ヒメクロコメツキ、キバネホソコメツキ、コガタクシコメツキ△*、チビニンフジョウカイ*、カワリキスイ*、クロヒメテントウ、クロフナガタハナノミ*、ナガハムシダマシ*、チャイロヒメハナカミキリ、フタオビヒメハナカミキリ、コマルノミハムシ△*などがいました。
南大隅2回目の2015年同様、南のものを採りに来たというのに、最初に採れたのが温帯性のPidonia(ヒメハナカミキリ類)とは・・・。
また、未記録種として*印を付けた種は、今回の成果の1つですが、その大部分が、微小な春物の普通種にすぎません。
虫屋が、特に記録したいと思うような種ではなく、春に南大隅で採集する人もほとんどいなかったので、記録が無かったと言うことだろうと思います。
今回の成果は、大部分がそのような傾向です。
花以外の、林縁の葉を叩いて落ちてきた種としては、ウスチャチビマルハナノミ*、マツナガジョウカイ△*、ヒメマキムシ△*、マダラアラゲサルハムシ△、ツブノミハムシ、アカバネタマノミハムシ、ルリイクビチョッキリ△、アトモンヒョウタンゾウムシ☆、ホソアナアキゾウムシ△*くらい。
このうち、ウスチャチビマルハナノミとマツナガジョウカイは、多少とも記録の少ない種です。
両方ともやや山地性で、同定が難しいので記録が少ないのだろうと思います。
(左から、ウスチャチビマルハナノミ、マツナガジョウカイ)

また、アトモンヒョウタンゾウムシは森本先生の研究で、霧島山地以南の南九州の固有種で有ることが明らかになっています(森本ほか, 2015)。先年調べた、綾町・九州山地を含む九州中北部・西部にはオビモンヒョウタンゾウムシがいて、ほぼ、えびのの低地が分布境界のようです。
本種の上翅斑紋は個体変異が多く、さまざまな斑紋が見られます。
(アトモンヒョウタンゾウムシ)

森本 桂・中村剛之・官能健次(2015) 日本の昆虫 Vol. 4 クチブトゾウムシ亜科(2), 758pp.
道沿いのススキを叩くと、細長くて妙ちくりんな形のホソキカワムシ○が落ちてきました。
南方系の虫で、九州中部以北では、海岸沿いに点々と局地的な分布をする種ですが、南大隅では、標高に関係なくいるんですね。
(ホソキカワムシ)

國分さんも、大分、観察路の先まで、林縁を叩いていました。
この後もそうですが、國分さんの採集品を確認させていただいたのは帰宅した後で、旅行中、全く、何を採られているのか、確認する余裕がありませんでした。
それで、旅行中は、自身で採集した標本の範囲内の、それも比較的大型で解りやすい種しか採れたと思っていなかったわけです。
その結果から、今回の成果は、今までで最も低調と認識していました。
それがちゃんと、顕微鏡下で國分さんの標本を確認してビックリ!!
見たこともない、6mmほどの細長いミツギリゾウムシが入っていました。
(初めて見るミツギリゾウムシ、背面・斜め側面)

故・森本先生が書かれたミツギリゾウムシ科研究入門(森本, 2008)で調べてみると、上翅の合わせ目に黒い筋があり、キスジツツホソミツギリゾウムシ◎*で間違いなさそうです。
森本 桂, 2008. ミツギリゾウムシ科研究入門 1 -概説と日本産の種-. 月刊むし, (443): 4-16.
解説を読んで2度ビックリ。
「三宅島の阿古と南東林道で1978年5月に採集された5頭で記載したもので、宮川氏と大熊氏はその後これらの採集した枯れ木を含めて14回に及ぶ採集で努力したが採れていない。」と記されています。
記載以降2例目かと喜んだのですが、念のためインターネットで検索してみると、ガッカリ!!
残念ながら、その後いくつかの記録があるようです。
日本産ゾウムシデータベースには屋久島白谷-雲水峡の1987年5月の記録があり、鈴木さん制作のジャパニーズビートルには三宅島を始め、御蔵島、九州、屋久島の表示がありました。
まあ、2例目では無く、九州の具体的な記録も確認できていませんが、それでも、かなりの珍品であることは確かなようです。
6mm前後の細長い体形と、同属他種がキクイムシの巣穴から発見されていることから、本種もキクイムシの巣穴に入り込んでそれらを捕食すると推察されます。
本種もその1で述べた、所謂屋久島系の種の1つで、海流分布をする種と考えて良さそうです。
本種を始めとして、今回は全く國分さんに良いところを持って行かれました。
その1の80年前の大先生の採集記ではありませんが、今回は全く私の完敗です。
國分さんは、上記以外に、ルイスキムネマルハナノミ*、クロツヤクシコメツキ、クロチビアリモドキ△*、キバネマルノミハムシ△、カシワクチブトゾウムシ△*を採られていました。
ルイスキムネマルハナノミも、山地性で少ない種です。
足が黒っぽいのと保育社の図鑑などに載っていないので、キムネマルハナノミと誤同定されることがありますが、後者はより大きく、上翅も長めです。
九州ではキムネマルハナノミはほとんど見つかりません。
(ルイスキムネマルハナノミ)

しばらく叩いて、虫影が薄いので、先を急ぐことにしました。
湊原旅館へは、前もっては「昼過ぎには到着する」と伝えていたので、電話して「3時くらいには・・・」と連絡しました。
下っていくと、県道への分岐の少し手前で、道横に白い花が見えました。ミズキが咲いています。
(道横のミズキの花→)

急遽、車を止めて掬ってみましたが、ヒメキンイロジョウカイ、ホソヒメジョウカイモドキ◎、ツバキヒラタケシキスイ○*、ムネアカチビケシキスイ○*、ニシアオハムシダマシ、ニセヨコモンヒメハナカミキリを追加したくらい。
花はよく咲いていますが、寒いからか、ケシキスイとPidoniaと、ニシアオハムシダマシが多いだけで、種数も個体数も少ないので、先を急ぎます。
峠を越えると、林の状態が一変しました。
植林はごく少なくなり、自然林の木も大きくなりました。
県道563号線と言えども、通行量はごく少ないようで、道は多少荒れています。
うねうねと曲がりくねり、暗い場所も多く、道幅も狭くて、すれ違いが難しい場所もあります。
到着予定の時間も迫っているので、途中、大木や立ち枯れ、渓流の良さそうな林を横目で見ながら、とにかく、宿を目指しました。
湊原旅館は海岸のすぐそばにあり、平屋で広い中庭がありました。
(湊原旅館のすぐ前の道)

(湊原旅館と駐車場)

(湊原旅館の入り口)

宿に着いてから、女将に県道563号線を通ってきた話をすると、驚かれて、現地の人は殆ど利用しない道ということでした。
納得です。
荷物を急いで部屋に運び入れてから、女将にお願いして、急いで庭にライトトラップのスクリーンを設置させていただきました。
(宿の庭にライトトラップ→)

夕方まで余り時間が無いので、さっそく、今日の灯火採集の場所探しと、ライトFITの設置場所を探しに、杉山谷へ向かう県道74号線沿いを走ってみます。
(辺塚周辺の採集地地図)

自衛隊の射撃場を過ぎて、10分ほど走ると、小田さんに教えていただいた打詰の廃道になっている林道の入り口に着きました。
場所を確認しただけで、先に進みます。
さらに、10分程度走ると、オオスミヒゲナガのポイント・杉山谷です。
杉山谷橋の前後が一番良さそうです。
(杉山谷橋の表示)

(杉山谷橋周辺)

時間も押してきたし、風も強いので、今日は、お試しということで、杉山谷ではなく、手前の打詰・小田ポイント周辺でナイターをすることに決めます。
この林道入り口周辺は比較的平坦で、林道は荒れてはいるものの、歩きやすそうです。
(林道周辺)

とりあえず立ち枯れなどにライトFITを5つだけ設置します。
(ライトFIT)

國分さんは、その間、枯れ木のハンマーリングと、立ち枯れのスプレーをやられていたようで、朽木性やキノコ食の面白い種を採られていました。
全体的には、ちょっと、乾燥が強いようです。
國分さんは、コヨツボシアトキリゴミムシ○、(仮称)コケチビドロムシ○*、ツキワマルケシキスイ、カタモンヒメクチキムシ△*、ムネアカヒメクチキムシ*、コブスジツノゴミムシダマシ○、オニツノゴミムシダマシ○を採られていました。
このうち、コケチビドロムシは斑模様の種で、幼虫は渓流棲と思われ、成虫は樹幹のコケの中に集団で潜ることから、こう仮称しています。
最初、多良山系の渓谷で、コケ蒸した樹幹の幹掃き採集で見つけた種ですが、九州以南の照葉樹林で見つかる未記載種です。近いうちに、吉富さんが種名決定をやってくださると期待しています。
また、ムネアカヒメクチキムシは、一応、カタモンヒメクチキムシに良く似た、上翅に黄褐色の紋を4つ持つ種を当てました。
従来、この形のものは、本州・四国・九州産がムネアカヒメクチキムシ1種として扱われていました。
しかし、ゴミムシダマシ大図鑑で、日本各地のものが別種として扱われ、九州産が固有種として、この名前になっています。
ただ、図版に掲載された大分県産の個体は、ほとんど紋らしいものが見えず、四紋ではありません(秋田・益本, 2016)。
確実には♂交尾器で区別できそうですが、今回得られたのは♀で、その意味で、真にムネアカヒメクチキムシであるかどうか、確認できていません。
(左から、コケチビドロムシ、ムネアカヒメクチキムシ?)

秋田勝己・益本仁雄, 2016. 日本産ゴミムシダマシ大図鑑. 月刊むし・昆虫大図鑑シリーズ 9, 302pp.
コブスジツノゴミムシダマシはサルノコシカケに、オニツノゴミムシダマシもキノコ類にいる種ですが、余り多くありません。
どちらも、♂には立派な角があります。
(♂の角、左から、コブスジツノゴミムシダマシ、オニツノゴミムシダマシ)

トラップ掛けがすんだ時点で5時を過ぎたので、急ぎ、夕食に宿に戻ります。
宿は、かなり趣のある作りで、女将が一人で切り盛りされています。
昼間は食堂も営業されており、一人ではなかなか大変なようです。
(宿の中)

(食堂)

夕食もあれこれボリュームがあり、食べきれなくて、翌日からもう少し、減らしていただくようにお願いしました。
特に、ゾウリエビと伺った平べったいエビは、日替わりで出していただきました。
フライに、刺身、天ぷら、味噌汁と、手を変え品を換え出てきて、大変美味しかったです。
(夕食)

本当なら、ビールでも飲んで、ゆっくり味わいたい夕食メニューでした。
しかし、ナイターに出かけるのでゆっくりしてはいられません。
今日はとりあえず雨ば降らないはずで、急ぎ食事を済ませます。
慌てて、打詰まで走り、夕暮れが迫る中、廃道林道の少し手前の県道上で、海まで見通せる場所にスクリーンを設置します。
風が強いこともあり、なんとか風当たりが強くない場所を選んで設置しましたが、それでも柱を手で押さえておく必要がありそうです。
(灯火採集のスクリーン)

新兵器のブラックライトBOXは、低い位置に見通しの良いところが見つからず、車のボンネットに上げました。
(ブラックライトBOX)

あたりは急速に暗くなってきましたが、灯りに何も来ません。
普通は微小なユスリカ・ウンカ・ハネカクシなどがまず来て、しだいに、小型→中型の甲虫が続くのですが、それが殆ど来ません。
来て欲しくないカメムシすら来ないと、寂しい限りです。
結局、この日は、白幕にほとんど虫が集まらないまま終わってしまいました。
甲虫どころか、カメムシや蛾もほんの少し飛来しただけで、白幕は終わりまで、ほとんど白いままでした。
得られた甲虫は、ヤエヤマニセツツマグソコガネ○*、コクロコガネ、コイチャコガネ△、ヒゲコメツキ△、サビキコリ△、オバボタル△、セボシジョウカイ△、マルムネジョウカイ、ヒメキンイロジョウカイ、デメヒラタケシキスイ○*、ヒメアカマダラケシキスイ△*、クロホソナガクチキ、アオオビナガクチキ△、ニシアオハムシダマシ、シロトラカミキリ、セアカケブカサルハムシ○、クロウリハムシ○です。
本土系で種子島・屋久島までいる△印の種が多いのが目立ちます。
このうち、コクロコガネは本州、四国、九州の低山地で普通に見られる種で、クロコガネよりやや小さく、背面の光沢は、ややつや消し状で、前胸前縁に立った黒くて長い毛が一列に並ぶのが特徴です。
(南大隅産コクロコガネ)

南大隅産の本種については、KORASANA 編集で活躍されている築島さんが新発見をされ、私にご教示いただきました。
築島さんは、南大隅産の♂交尾器先端に、他産地では見られない針状の突起(左図の矢印)があることを発見されたのです。
(コクロコガネの♂交尾器先端、左: 南大隅産、右: 福岡県産)

築島さんは、久留米昆の城戸さんや、私、その他何人かの人に声を掛けて、南大隅産を始め、各地のコクロコガネを集めて、♂交尾器を見てみられたようです。
その結果、南大隅産の♂交尾器には例外なく、先端に針状突起(図左の矢印)が見られたそうです。
一方、その他の地域の♂交尾器には、多少、個体変異が見られるものの、針状突起のある個体は見つからなかったようです(図右の矢印)。
築島さんは、さらに多くの、各地域の個体を検討した上で、このことを正式に報告したいという意向です。
それで、読者の中で、コクロコガネの♂を提供しても良いという方は、このページ右上の「おたより」の欄からメールしていただくか、あるいは、直接、築島さんにメールしてください。
築島基樹 tsukimoto0809@yahoo.co.jp
隣接する高隈山地を始め、鹿児島県、宮崎県各地の♂交尾器をまず、確認する必要があると思います。
もちろん、九州各地を始めとして、四国、本州各地の標本も見てみたいと希望されていますが、図鑑類を始め、各地の本種♂交尾器を図示したものの中には、この針状突起のある個体は見つかっていません。
私の感触としては、この針状突起が見られる範囲の個体群=(イクオール)南大隅固有ではないかと考えています。
一方、クロコガネ属の♂交尾器は、種ごとに、全然違う形をしています。
しかし、コクロコガネの南大隅産と福岡県産では、このトゲ以外の部分はほとんど同じプロポーションです。
(コクロコガネ♂交尾器全形、上: 南大隅産、下: 福岡県産)

このことから考えると、トゲの有る無しは、亜種程度の違いかもしれません。
是非、築島さんに、ご支援・ご協力をよろしくお願いします。
さて、打詰での灯火採集は、蛾も少なく、國分さんも手持ち無沙汰のようでした。
風はさらに強まり、白幕を押さえておかないと倒れそうで、これ以上無理と判断しました。
それで、早めに切り上げて、宿に戻ることにしました。
宿に戻って確認すると、宿の庭に張った白幕には、打詰より、むしろこちらの方が虫が来ています。
キベリゴモクムシ○、イツホシマメゴモクムシ○、ムナビロアトボシアオゴミムシ○、クビナガゴミムシ○、ダイミョウツブゴミムシ○、ヒラタアトキリゴミムシ○、アオバアリガタハネカクシ○*、トビイロマルハナノミ○*、ゴホンダイコクコガネ、ヒゲナガクロコガネ、マルトゲムシの一種△*、ホソサビキコリ△、クシコメツキ、ムネクリイロボタル、ニシジョウカイボン△、アカマダラケシキスイ○、キイロセマルキスイ○*、ヒメムクゲオオキノコムシ○、キアシクロヒメテントウ、ウスモンヒメコキノコムシ○*、アトボシハムシ△、オオバコトビハムシ○*、ハコベタコゾウムシ、シロアナアキゾウムシ○などが来ていました。
ほとんど、集落近くの低地で見られる普通種ですが、3mm以下の微小種は未記録のようです。
個人的には、福岡では採れない南もののクビナガゴミムシが嬉しかったです。
各地で色彩変化するニシジョウカイボンは、ここでは九州山地などの黄足型と同じようです。
また、外来種のマルトゲムシの一種も、何処でもいるようです。種子島でも見つかりましたし・・・。
(左から、クビナガゴミムシ、ニシジョウカイボン、マルトゲムシの一種)

ちょっと意外だったのが、ゴホンダイコクコガネと、ヒゲナガクロコガネです。
どちらも既に記録されていますが、南大隅にもシカが侵入しているとは知りませんでした。
この後、サルとイノシシはよく見かけましたが・・・。
(左から、ゴホンダイコクコガネ、ヒゲナガクロコガネ)

また、ヒゲナガクロコガネですが、この種は九州固有で、通常、標高500m以上からブナ帯まで多い種です。
ただ、古い遺存種のようで、長崎県と佐賀県には分布せず、地元、久留米周辺の山地にもいません。
少なくとも福岡県では、英彦山や釈迦岳など、純然たる山地性の虫と考えていましたが、ここ南大隅では、波の音が聞こえる平地でも採れました。
南大隅では、従来の記録を見ても、ブナ帯など高山性の虫が、照葉樹林の平地~低山地で採れている例が結構多いようです。
この傾向は、昨年調査した綾町でも同様でした。
南九州の十分に発達した照葉樹林には、ブナ帯など、かなり高標高に棲息が限られる種も棲息可能な、環境の多様性が有るようです。
寝る前に、今日採集した標本を整理しました。
ビジターセンターから始めて、佐多辺塚~杉山谷の2往復の間ずっと着けていたカーネットには、
チビヒメクビボソハネカクシ○*、ニホンタマキノコムシモドキ*、ダンダラチビタマムシ、オバボタル△、チャイロホソチビヒラタムシ☆*、ベニモンツヤミジンムシ*、ハネミジカキクイムシが入っていました。
通常であれば、ヒゲブトハネカクシ類などハネカクシの仲間や、キクイムシ類を始めとして、大量の虫が入るはずの所、ごく少なかったです。
このうち、チャイロホソチビヒラタムシは、平野図説に載っている未記載種で、本州(東京・和歌山),九州(長崎西彼杵半島)ほか、その後各地で記録されているようですが、まだ、全貌は掴めていません。
(チャイロホソチビヒラタムシ)

平野幸彦(2009)日本産ヒラタムシ上科図説 第1巻 ヒメキノコムシ科・ネスイムシ科・チビヒラタムシ科. 63pp. 昆虫文献 六本脚.
つづく