このトピックは、2008年3月23日にアップしたものですが、リニューアル時に消失ししていたため、再録します。
日本のハムシ科(Chrythomelidae)は、古くはBaly・Jacobyなど主として欧米の研究者によって先鞭が付けられ、その後、中條道夫・木元新作・Gressitt・中根猛彦・大野正男の諸先生により、大部分の分類大系が完成しました。
その後も、滝沢春雄・鈴木邦雄・小宮義璋の先生方により研究が続けられ、特に、大学を定年退職された小宮先生は、今からはりきって、国内産ハムシの再検討をバリバリ実施するとの意気込みの矢先、一昨年急逝されたことは、非常に残念でなりません。最後の論文は琉球のLipromorphaの再検討(2006)です。
一方で、その小宮先生の死を悼んで、滝沢・鈴木両先生を中心に、小宮先生と親交のあったハムシの好きな人たちの中で、さらにハムシ類を調べていこうという機運が高まっていることも事実です。
日本産ハムシは、木元新作・滝沢春雄(1994)日本産ハムシ類幼虫・成虫分類図説. 539pp. 東海大学出版会, 東京. によって、分類学的には、ほぼ完成かと思われていました。
しかし、その後、滝沢さんは、Neocrepidodera (2002)、Psylliodes (2005)、Gonioctena (2007)など属単位の再検討を矢継ぎ早に発表され、鈴木さんもコルリクビボソハムシ Lema michioi (2005)、ヤヒロミドリトビハムシ Crepidodera yahiroi (2006)などの新種を発表されています。
ハムシ屋の間でも、まだまだ国内産の中に検討すべき種群や新種の存在が知られており、トビハムシ亜科を中心として、調べる必要のある課題は多いようです。
また、滝沢さんは2006年から「日本産ハムシ科生態覚書1~3」を公表され、分布・生息環境・ホスト・出現期・幼生期について、現在までに判明している事実のまとめを試みられています。今のところ、だいたい分類順にムシクソハムシ亜科まで済んだところですが、これを読むと、種によって、特にホストや幼生期の面では、未知の事柄がいかに多いか、今更乍らに気づかされます。
ハムシにはまだまだ、調べる必要のある事が、沢山存在するようです。
興味のある方は、今後、是非、一緒に調べましょう。
次回より、日本産としてのニューフェースや、問題のある種群などを紹介する予定です。あくまでも、問題提起のつもりですから、解決までは届かない場合もあることをお断りしておきます。ハムシに興味を持つ方々のヒントになれば幸いです。
なお、引用した文献は以下の通りです。
Komiya, Y., 2006. Studies on the genus Lipromorpha (Alticinae, Chrysomelidae, Coleoptera) in Japan, with description of a new species. Elytra, Tokyo, 34(1): 199-205.
Suzuki, K., 2005. Description of a new species of the genus Lema (Coleoptera, Chrysomelidae, Criocerinae) from Honshu, Japan. Elytra, Tokyo, 33(1): 86-94.
Suzuki, K., 2006. Description of a new species of the genus Crepidodera (Coleoptera, Chrysomelidae, Alticinae) from Honshu, Japan. Elytra, Tokyo, 34(1): 189-198.
Takizawa, H., 2002. A revision of the genus Neocrepidodera Heikertinger in Japan (Chrysomelidae: Alticinae). Ins. matsumurana. New ser.ser. 59: 39-53.
Takizawa, H., 2005. A revision of the genus Psylliodes Latreille in Japan (Chrysomelidae: Alticinae). Ins. matsumurana. New ser. 62: 175-185.
Takizawa, H., 2007. A revision of the genus Gonioctena Chevrolat in Japan (Coleoptera, Chrysomelidae). Ins. Matsumurana. New ser. (63): 35-50.
滝沢春雄(2006)日本産ハムシ科生態覚書 (1). 神奈川虫報, (156): 1-8.
滝沢春雄(2007)日本産ハムシ科生態覚書 (2). 神奈川虫報, (157): 17-26.
滝沢春雄(2007)日本産ハムシ科生態覚書 (3). 神奈川虫報, (158): 37-48.