KORASANA 88号が発行されました

久留米昆蟲研究會より会誌 KORASANA 88号が3月25日に発行されました。

230ページの大冊です。紙質とカラーページもグンとグレードアップしました。
事務局では希望される方にそのKORASANA 88号を3500円で頒布しておりますので、その内容について紹介したいと思います。

KORASANA 88号をご希望の方は、このホームページ左上の「おたより」をクリックして申し込まれるか、あるいは直接、事務局 國分謙一 kokubu1951@outlook.jp までお申し込みください。

なお、今年度はさらにあと1冊「釈迦岳特集号」を発行予定で、年会費は3500円ですから、今後も会誌を希望される方は入会いただいた方がずいぶんお得になります。

ここで88号の内容を紹介する前に、86号と87号について簡単にお知らせします。

昨年、ホームページにおいてKORASANA 85号の紹介をしました。

久留米昆蟲研究會会誌KORASANA85号が発行されました
http://www.coleoptera.jp/modules/xhnewbb/viewtopic.php?topic_id=185

その後発行された86号と87号についてはお知らせしておりませんでしたので、ざっと目次等だけでも紹介をしておきます。

KORASANA 86号 2017年2月28日発行

86号表紙)
86号表紙)

報文
田畑 郁夫 [ ウンカ・ノート 2 ] ・・・・・・・・・・・・・・・・1
田畑 郁夫 [ カタログ的表現における≠記号の有用性 ・・・・・・・21
田畑 郁夫 [ キリギリスはチョン・ギースであり、ギース・チョンではない話 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
田畑 郁夫 [ クツワムシの名の由来に関する私見 ]・・・・・・・・23
田畑 郁夫 [ セスジツユムシ、ウンゼンツユムシ、エゾツユムシの鳴き方 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
田畑 郁夫 [ 宮本正一さんとの接点 ]・・・・・・・・・・・・・・25
田畑 郁夫 [ 白水隆さんとの接点と書き遺しておきたいこと ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
田畑 郁夫 [ 馬場金太郎さんとの接点 ]・・・・・・・・・・・・・31
畑山 武一郎[ アジアで初めて記録されたスジアシハナノミ属について ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
矢後 勝也 [ 鳩山邦夫代議士と八重山 ]・・・・・・・・・・・・・37
城戸 克弥 [ 福岡県のヒラタムシ上科 ]・・・・・・・・・・・・・41

前回、ページ数の関係で85号から溢れた田畑さんの報告とエッセイ等、畑山さんの世界で3種しか知られていないハナノミの属の1種の日本新記録、矢後さんの昨年急逝された鳩山邦夫さんへの追悼文、城戸さんの労作・福岡県のヒラタムシ上科のまとめなどが掲載されています。

KORASANA 87号 2018年2月13日発行

87号表紙)
                                                    87号表紙)

報文
大平 仁夫 [ 荒巻健二さんの思い出から ]・・・・・・・・・・・・1
岩橋 正 [ 荒巻健二氏を偲んで ]・・・・・・・・・・・・・・・3
溝部 忠志 [ 荒巻健二さんありがとうございました ]・・・・・・・4
國分 謙一 [ 荒巻健二氏を想う ]・・・・・・・・・・・・・・・・5
佐々木 茂美[ 荒巻さんの逝去を悼む ]・・・・・・・・・・・・・・7
緒方 靖哉 [ 荒巻健二さんを偲んで ]・・・・・・・・・・・・・・8
小林 修司 [ 荒巻さんとの思い出 ]・・・・・・・・・・・・・・・8
小旗 裕樹 [ 椎矢峠の思い出に荒巻健二さんを偲ぶ ]・・・・・・・9
廣川 典範 [ ありがとうございました ]・・・・・・・・・・・・・10
大塚 健之 [ 師匠 荒巻健二氏のご逝去を悼む ]・・・・・・・・・ 11
日下部 良康[ 九州・久留米のオヤジ 荒巻健二さんを偲 ]・・・・・ 12
足立 一夫 [ 荒巻さんとのカミキリの想い出 ]・・・・・・・・・・13
築島 基樹 [ 荒巻先生との想い出 ]・・・・・・・・・・・・・・・15
今坂 正一 [ 虫を餌に人を釣る 荒巻健二さん ]・・・・・・・・・ 18
今坂正一・築島基樹・國分謙一(編)[ 荒巻健二氏による虫屋誕生記 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
國分謙一・今坂正一・築島基樹(編)[ 荒巻健二氏著作目録(1980-2017) ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54

14名の方の荒巻さんへの追悼文と、ホームページでも紹介した荒巻さん自身による虫屋誕生記、そして、荒巻さんによる著作目録が掲載されています。

なお、86号、87号は共に3000円で頒布します。

さて、本題の88号の紹介です。

KORASANA 88号 2018年3月25日発行

今回の表紙は城戸克弥氏画によるヒメチャイロコガネです。

88号表紙
                                                      88号表紙

報文
緒方 靖哉・伊藤 建夫[ 福岡市東区地域におけるハネカクシの採集記録 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
緒方 靖哉 [ 福岡県粕屋郡犬鳴山におけるヒメハナカミキリムシの採集記録 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
緒方 靖哉 [ 熊本県矢部町椎矢峠と菊池市菊池渓谷における
ヒメハナカミキリムシの採集記録 ]・・・・・・・・・・・・・・・・4
緒方 靖哉 [ 福岡県田川郡添田町英彦山におけるヒメハナカミキリムシの採集記録 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
緒方 靖哉・堤内 雄二[ 福岡市東区でのタマムシ採集記録(その2) ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
齋藤 正治 [ 福岡県の甲虫類準絶滅危惧種の採集報告 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
森田 誠司 [ 対馬からHarpalus aenigmaニセケブカゴモクムシ(新称)の記録 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
伊藤 玲央・今坂 正一[ 福岡県内で採集したカメムシ類の記録(2017年) ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
江頭 修志 [ 熊渡山の甲虫類(3) ?FITとFIT以外で得られた熊渡山の甲虫類? ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
城戸 克弥 [ 福岡市志賀島で採集した甲虫類 ]・・・・・・・・・・35
城戸 克弥 [ 丸山式FITで得られた福岡市志賀島の甲虫類 ]・・・・ 44
城戸 克弥・江頭 修志 [ 福岡県沖ノ島産甲虫類の追補 ]・・・・・ 51
城戸 克弥 [ 福岡県のコガネムシ上科 ]・・・・・・・・・・・・・57
越智 恒夫 [ 愛媛県におけるチビシデムシ類の採集記録 ?四国初記録となるタンバチビシデムシとアンドウチビシデムシを採集? ]・・・・・ 125
小林 修司 [ 伊平屋島・沖縄本島採集記 ?台風の影響で伊平屋島には1泊しかできず? ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 128
小林 修司 [ ルリセンチとミドリセンチ採集記 ?奈良県、滋賀県を走り回る? ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 135
白土 幸治 [ 2017年与那国島カミキリ採集記 ?ぶらり、親父と虫の旅? ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 139
田畑 郁夫 [ 深倉峡における九州北部豪雨の惨状 ]・・・・・・・ 146
田畑 郁夫 [ 八女市矢部村御側上流?釈迦林道のアワフキ・ツノゼミ類 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 147
田畑 郁夫 [ 八女市矢部村御側上流?釈迦林道のヨコバイ・ハゴロモ類 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 169
田畑 郁夫 [ 八女市矢部村御側上流?釈迦林道の長翅目・脈翅目 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 179
田畑 郁夫 [ 八女市矢部村御側上流?釈迦林道のトゲオトンボ(蜻蛉目)とアリヤドリコバチ(膜翅目) ]・・・・・・・・・・・・・・・・・ 182
田畑 郁夫 [ ヨコバイ・ノート 3 ]・・・・・・・・・・・・・・ 183
吉美 信一郎[ タテハモドキの異常型について ]・・・・・・・・・ 188
吉美 信一郎[ 2017年中の主な採集歴 ]・・・・・・・・・・・・・ 189
村上 貴文 [ 福岡県八女市でミスジチョウ、カラスシジミ、シータテハを採集 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 191
今坂 正一 [ ハナムグリハネカクシ類雑記 (2016-2017) ]・・・・ 195
正木 清 [ サビキコリ対馬亜種について ?九州周辺のサビキコリの変異について? ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 213
藤本 博文 [ 荒巻健二さんとの思い出 ]・・・・・・・・・・・・ 219
畑山 武一郎[ 日本産コメツキダマシ科概説1 日本産コメツキダマシ科全種リストおよびチャイロコメツキダマシ族の属までの検索表 ]・・・・221
築島 基樹 [ 筑後地方におけるヒメドロムシ科3種の採集記録 ]・・229

短文
築島 基樹 [ 耳納山系におけるムカシヤンマの採集記録 ]・・・・・22
江頭 修志 [ 迷蝶タテハモドキの久留米市での採集記録(2) ]・・・ 34
齋藤 正治 [ 高良山でブンゴキノコゴミムシダマシを採集 ]・・・ 145
築島 基樹 [ 久留米市におけるコガタノゲンゴロウの死骸目撃記録 ]・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 145
溝部 忠志 [ 沖ノ島で聞いたチョウセンケナガニイニイ?の声 ]・ 187
築島 基樹 [ コガタスズメバチの古巣から羽脱した昆虫 ]・・・・・187
村上 貴文 [ 福岡県筑後市でクロコノマチョウを採集 ]・・・・・ 192
村上 貴文 [ 福岡県筑後市でウスイロコノマチョウを採集 ]・・・ 192
村上 貴文 [ 福岡県筑後市でジャコウアゲハを観察 ]・・・・・・ 193
村上 貴文 [ 福岡県筑後市でウスキシロチョウを目撃 ]・・・・・ 193
村上 貴文 [ 福岡県筑後市でのクロマダラソテツシジミの観察例 ] 194
村上 貴文 [ 福岡県八女市でクロシジミを採集 ]・・・・・・・・ 194

今回はページ数が230ページと、過去最高の量を誇るだけではなく、19人の著者による長短43編の報告が掲載されており、非常に多彩であり、かつ充実しております。

久留米昆蟲研究會では、会員から提出された原稿は、嘘と、間違い、非常識な内容以外は全て掲載することにしております。
同好会(名称は研究会ですが)の会誌は、各人の趣味・知識・活動・研究等を自由に発表する場と考えておりますので、今後も自由で多彩な原稿をお待ちしています。昆虫に関連する内容であれば、分野や地域は問いません。

88号の内容を詳細に紹介しますと230ページ分のスペースが必要になりますが、ここでは、かいつまんで紹介することにします。

目次の順に紹介することにします。

緒方靖哉氏は所蔵のヒメハナカミキリ類の記録を纏められました。地域毎に、先行文献の内容も紹介されているのが特徴です。福岡県内から10種、熊本県椎矢峠から11種、同じく菊池渓谷から3種を記録されています。別報でハネカクシ、ナガタマムシについても報告されています。

齋藤正治氏は県内で採集したコカブト、クロモンヒラナガゴミ、クスベニカミキリなど甲虫福岡県RED種の紹介です。

森田誠司氏はニセケゴモクムシに2種含まれているという話の予報的な報告です。今後、2種の区別方法・分布など詳細な報告が期待されます。

伊藤玲央氏と今坂は2017年に福岡県内で採集したカメムシ類23 科96 種を報告しました。
久留米市高良山を基産地とするチャイロノミカメムシ、福岡県初記録のクロキノコカスミカメ、コブヒゲカスミカメ、セダカマルカスミカメ、カクムネヒメヒラタカメムシ、アカヒラタカメムシなどが報告されています。

カメムシ図版
                                                                                 カメムシ図版

江頭修志氏は熊渡山の甲虫類(3)の報告です。
先報までに333種を報告しておられ、これに丸山式FITと通常の採集方法を加えて、253種を追加されています。主要な顔ぶれは次の図版参照。

熊渡山の甲虫図版
                                                                                  熊渡山の甲虫図版

城戸克弥氏は福岡市志賀島で採集した甲虫類を、通常の採集のものと、丸山式FITによるものと分けて報告されています。

通常採集の法はヒメハマベエンマムシ、ホソケシマグソコガネ、スナサビキコリ、アカオオハナコメツキ、ニホンタケナガシンクイ、クロキオビジョウカイモドキ、ルリキオビジョウカイモドキ、ミドリカミキリ、ケチビコフキゾウムシ、チャマダラヒメゾウムシなど。

FITではイチハシチビサビキコリ、ウスグロミゾコメツキダマシ、オオマドボタル、ヒメマドボタル、デベソマルヒメキノコムシ、ニセケブカネスイの近縁種、イチハシホソカタムシ、アバタツヤナガヒラタホソカタムシ等です。

また、城戸克弥・江頭修志両氏は、2015年に宗像市の調査の一環として宗像市沖ノ島の調査を実施され、「福岡県沖ノ島産甲虫類の追補」を発表されました。この報告では、九大所蔵の過去の調査の標本も調査されて、オオサビコメツキの近似種、ホソヒラタデオキスイ、ツツハムシの一種、ナガカツオゾウムシ、オオダイコンサルゾウムシなどを追加されています。

沖ノ島図版
                                                                                        沖ノ島図版

さらに、城戸克弥氏は本誌でのゴミムシダマシ上科、ヒラタムシ上科に引き続き、「福岡県のコガネムシ上科」をまとめられました。

この報告は九大所蔵の文献を初めとして600編を超える膨大な報告を引用してまとめられた労作です。過去の記録の中には学名等の変遷でどの種を指しているのか不明なものや、分類等の進歩で、実際に福岡県内に生息している種かどうか判別できないものも多々あったように伺っています。

クワガタ16種、マダラ、ルリ、キュウシュウニセコルリ、ニシコルリ九州亜種、チビ、マメ、ミヤマ、オニ、ノコギリ、オオ、スジ、キュウシュウヒメオオ、アカアシ、ヒラタ、コ、ネブト、

コブスジコガネ4種、ムネアカセンチ、オオセンチ、センチ、アカマダラセンチ、フチトリアツバ、

コガネムシ科139種、このうち、ニセマグソ、ヒメセスジカクマグソ、ウエノマルマグソ九州亜種、マルマグソ、クロモンマグソ、ダイコク、ミツノエンマなど食糞群44種、

キョウトアオハナムグリ、ミヤマオオハナムグリ、アカマダラハナムグリ、チビサクラコガネ、オオサカスジコガネ、イツツバクロチャイロコガネ、チクゼンチャイロコガネ、ヒメチャイロコガネ、スジビロウドコガネなど食葉群95種を記録されています。

88号表紙に使用されたヒメチャイロコガネの画はこの報告の付図として描かれたものです。氏が採集された甲虫の中で最初に新種になった種であるとか。

越智恒夫氏は「愛媛県におけるチビシデムシ類の採集記録」を発表され、四国初記録となるタンバチビシデムシとアンドウチビシデムシを始めとして、愛媛県産チビシデムシ類12種を報告されました。

チビシデムシ図版
                                                                                 チビシデムシ図版

小林修司氏はいつものように、いかにも虫屋の採集紀行というべき「伊平屋島・沖縄本島採集記」と「ルリセンチとミドリセンチ採集記」を発表されています。

前者は沖縄県伊平屋島へのイヘヤノコギリクワガタとガゼラエンマコガネ、後者はあわよくばヤマトエンマコガネをも狙った採集紀行のようです。その顛末と結果は?本誌をご覧下さい。

白土幸治氏は毎回、「ぶらり、親父と虫の旅」との副題の付いた採集紀行を発表されています。
今回は「2017 年与那国島カミキリ採集記」と題されて与那国島のカミキリ採集を書かれています。

与那国島にはヨナグニキマダラカミキリ、ヨナグニゴマフカミキリ、ヨナグニウスアヤカミキリ、ヨツスジカミキリ、ヨナグニゴマダラカミキリ、ヨナグニジュウジクロカミキリなど固有(亜)種も多く、ハブもいなくて採集しやすいので、のんびり採集には最適です。

それにしても、熟年父子での遠征採集はあまり聞かないし、うらやましいですね。

齋藤正治氏は「高良山でブンゴキノコゴミムシダマシを採集」を発表されています。本種は最近、大分県産で新種記載され、その後、熊本と福岡で1例ずつ記録されている程度、まだまだ珍品です。

田畑郁夫氏は、今回は、「八女市矢部村御側上流?釈迦林道のアワフキ・ツノゼミ類」「八女市矢部村御側上流?釈迦林道のヨコバイ・ハゴロモ類」「八女市矢部村御側上流?釈迦林道の長翅目・脈翅目」 「八女市矢部村御側上流?釈迦林道のトゲオトンボ(蜻蛉目)とアリヤドリコバチ(膜翅目)」「ヨコバイ・ノート 3」を発表されました。

アワフキ類図版
                                                                                  アワフキ類図版

毎回そうですが、欧文の参考文献の多さと、膨大なシノニミック・リストには感心します。これだけ多くの文献を入手し、読み解いて、リストを作成するには、よほどの根気と理解力が必要かと思われます。

記録された種については、シノニム関係も含めて、本誌を参照していただく必要があると思います。

ヨコバイ類図版
                                                                                 ヨコバイ類図版

ヨコバイ・ミミズク図版
                                                                              ヨコバイ・ミミズク図版

溝部忠志氏は「沖ノ島で聞いたチョウセンケナガニイニイ?の声」を発表されました。溝部氏は対馬でのチョウセンケナガニイニイ採集の経験を踏まえた上でこの文を書かれています。

沖ノ島が世界遺産に認定されて、今後おいそれとは再調査できないことから、疑いであっても書いておこうと思われたようです。

吉美信一郎氏は「タテハモドキの異常型について」と「2017年中の主な採集歴」を投稿されました。前者では、翅の輪郭に丸みを帯びる夏型♂、開張38mmの超小型夏型♂、前翅の大きな目玉紋の下部にもう一つ小さな目玉紋が出現した秋型♂などを図示され、後者では33種の採集記録を報告されています。

タテハモドキの異常型図版
                                                                               タテハモドキの異常型図版

村上貴文氏は八女市で採集したミスジチョウ、カラスシジミ、シータテハ、クロシジミ、筑後市で確認したクロコノマチョウ、ウスイロコノマチョウ、ジャコウアゲハ、ウスキシロチョウ、クロマダラソテツシジミを報告されています。

今坂は、2015年の九州、2016年の四国石鎚山系に続き、「ハナムグリハネカクシ類雑記 (2016-2017)」として2016-2017年の採集記録を報告しました。
九州ではアラハダキイロの♀が確認できたくらいで、新しい種の発見はありませんでしたが、新産地、発生時期、訪花植物など多くの知見を追加しました。

ハナムグリハネカクシ類の訪花植物
                                                                       ハナムグリハネカクシ類の訪花植物

今回の目玉は秋山・大塚両氏による広島県の調査で、広島県固有と考えられる((仮称))ヒロシマハナムグリハネカクシが発見されました。

(ヒロシマハナムグリハネカクシ♂♀)

(ヒロシマハナムグリハネカクシ♂交尾器)

また、両氏からタイプ産地付近のサイゴクハナムグリハネカクシがもたらされ、九州産もサイゴクとして良いこと、四国産エヒメはサイゴクと同じ物と言うことも解りました。

ハナムグリハネカクシ図版
                                                                              ハナムグリハネカクシ図版

さらに、ハナムグリハネカクシ類探索で訪れた五家荘で、なんと、33年振りにイマサカアラゲサルハムシを再発見したので、何の関連性もなく恐縮ですが、同文の中で記録しました。

33年振りに再発見した五家荘のイマサカアラゲサルハムシ
                                                             33年振りに再発見した五家荘のイマサカアラゲサルハムシ

正木 清氏にはチャグロヒサゴコメツキに引き続き、「サビキコリ対馬亜種について― 九州周辺のサビキコリの変異について ―」を書いていただきました。

対馬産サビキコリには、本土に広く分布する原亜種と対馬亜種 (チョウセンサビキコリ)の2亜種が知られています。

これらが本当に亜種関係にあるとすると、亜種の定義から考えて、少し変です。

サビキコリ対馬亜種図版
                                                                               サビキコリ対馬亜種図版

正木氏は対馬産の2つのタイプのサビキコリ標本を使って、このあたりを考察されています。

併せて周辺を含めた九州産サビキコリの変異についても言及されています。

九州産サビキコリの変異
                                                                               九州産サビキコリの変異

藤本博文氏の「荒巻健二さんとの思い出」ですが、これは本来87号の荒巻さん追悼号に掲載すべく書かれた追悼文です。まったくもって、編集部の不手際で落としてしまったもので、急遽88号への掲載となりました。

著者は九州大学へ入学直後に久留米昆虫同好会事務局の荒巻さんに電話をかけ、荒巻さんのご自宅を訪問されたそうです。

荒巻さんの人柄と、九州での採集指南について懐かしく回顧され、追悼されています。

畑山武一郎氏には前々からお願いしていた「日本産コメツキダマシ科概説1」を書いていただきました。

この報告には、最新知見の日本産コメツキダマシ科34属79種の全種リストと、チャイロコメツキダマシ族の属までの検索表が掲載されています。

日本産コメツキダマシ科研究の現状は、あまりにも未記録種あるいは未記載種が多いまま放置されていると言えるそうです。

リストには図鑑に載っていない種、あるいは、その属に未記録種や未記載種があるかどうかということも表示していただきました。

さらに、日本産チャイロコメツキダマシ族 Macraulaciniの属までの検索表ですが、こちらは、検索に使用されている形質の説明に、写真を用意されています。

コメツキダマシ検索付図1
                                                                                 コメツキダマシ検索付図1

絵解き検索ではありませんが、ご本人は絵付き検索と言われています。

日本産チャイロコメツキダマシ族には1日本未記録属を含め10属が含まれるそうで、これらの検索になります。

1. メスグロミゾコメツキダマシ属 Torigaia
2. クシヒゲチャイロコメツキダマシ属 Hodocerus
3. ケモンクロミゾコメツキダマシ属(新称)Ceratus [日本未記録属]
4. クロクシヒゲコメツキダマシ属 Procladidus
5. トゲバコメツキダマシ属 Spinifornax
6. アナムネミゾコメツキダマシ属 Thambus
7. ヒメミゾコメツキダマシ属 Dromaeolus
8. チャイロコメツキダマシ属 Fornax
9. ヒゲナガチャイロコメツキダマシ属 Serrifornax
10. ホソツツコメツキダマシ属(新称)Melanoscython

コメツキダマシ検索付図2
                                                                                コメツキダマシ検索付図2

なお、順次、コメツキダマシ科全体の検索表の見直しも寄稿していただく予定です。

最後に、
築島基樹氏は「筑後地方におけるヒメドロムシ科3種の採集記録」を発表されました。この2-3年のフンドシ流し採集の成果の一部と言うことです。

記録されたのは、キュウシュウカラヒメドロムシ、クロサワドロムシ、ヨコミゾドロムシで、全てご自宅周辺の小川での採集記録です。

ヒメドロムシ付図
                                                                                     ヒメドロムシ付図

以上で88号に掲載された報文の紹介を終わります。

次号89号は釈迦岳特集号で、2017年度に採集されたものを中心に、甲虫1000種超、蛾500種超、チョウ、カメムシ、ハチ、バッタ、ハエ、水生昆虫などの報告が掲載される予定です。