前書きにも書かれているが、初版・広島県昆虫誌は、比婆科学教育振興会の50周年記念として1997年11月に発行されている。
2分冊総ページ1330ページの当時でもすごい量と質を誇り、30目409科7039種の広島県産昆虫が記録されている。
確か、中村さんにから、この改訂増補版に向けて、毎年発行される広島県産昆虫の記録の追加入力を依頼されたのは2003年4月の事だったと思う。
その入力の方法やら、企画やら伺いに、娘たちやカミさん連れで、庄原市のご自宅まで訪問したことを覚えている。
翌2004年までに発行された記録を入力し、結果をお届けしたのが2005年4月、入力件数は5万件ほどあり、かなり手強かった。延べ日数30日くらいはかかったと思う。
それから約10年、毎年平均2万件程度の入力をして、出来上がったのが上記の本である。
初版からすると、広島県昆虫誌(改訂増補版)は種数は2583種(1.36倍)の増加であるが、総ページ数では2.1倍にも達している。
まさに広島県産昆虫の記録を網羅した本と言うことができ、地域ファウナに関心を持つものとして、ぜひ、地元のファウナもこのようにまとめてみたいと思われる羨望の元になりそうな本である。
その一助となれたことをうれしく思う次第である。
勿論、編著者である中村さんは、初版を含めて、50年以上、あるいは70年近く、文献を集め、標本を集め、各専門家に同定を依頼し、結果を出版し、そのための資金も確保して、この本を作成し続けてこられたわけである。
ご自身では「老いの一徹」と話されているが、地域ファウナの解明にかける並々なるぬ努力と執念、そして学識は、なまやさしいものではない。
記録されている目の種数構成について、集計表を示す。
私の興味は、特に甲虫目についての部分にあるので、その点を紹介してみる。
甲虫目は114科3760種が記録されている。隣県の岡山県で104科3540種(山地, 2012)、日本国内で最も多くの種が記録されている神奈川県で119科4127種(平野, 2004)であるから、県ごとの地域ファウナとしてはかなり優秀な数字と言える。
この平野(2004)における解明度などの算出方法を参考にして、究極的には、4500種程度の甲虫が広島県には産すると予想されており、現在の解明度は84%程度になるようである。
どちらにしても、県単位での甲虫の種数は、究極的には4000種を越えると予想されるので、3000種を越えることが当面のベースであり、3500種を超してようやくその県の概要を述べる資格があると言えると思う。種数だけが問題ということではなく、その程度の調査精度は必要と言うことである。
甲虫の中でも特に興味があるハムシ科(マメゾウムシを含む)について、同様に種数を数えてみると、広島県では307種、岡山県では290種、神奈川県では306種である。
また、今坂が独自に集計している数字を上げると、離島も含めて、長崎県が263種、佐賀県が196種、福岡県が284種、大分県が290種、また、山口県が238種、九州本土では354種である。
この数字は概ね甲虫目全体の数字とも相関しており、ある意味各県の甲虫解明のバロメーターにもなる。ハムシ科では県ごとにほぼ甲虫目の1割、300種がめやすのようである。